迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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お久しぶりです
ティザーがあまりにもホラーアニメ過ぎるのと現実が辛いので文を書いて現実逃避した


16:内情とアイドルとお茶

「それでは今日はこのあたりで。次回は明後日、よろしくお願いいたしますわ」

 

豊川の号令でピリついた空気が霧散する。

今日はなかなかにハードだった。

案はあったトリプルギター、それの試奏段階。

覚えたスコアはぐちゃぐちゃになるし、動きもめちゃくちゃになるし。

それでも練習で一回もミスらしいミスをしなかったのは、他のギターの二人のおかげもあってこそだけど。

 

「それでは、私はこれで。失礼いたします」

 

まただ。

豊川はそそくさとスタジオを後にする。

バンドには少なからず結束力というか、そういうのが求められると思うんだが。

 

「さきこ、今日も早いね~」

「仕方ないでしょう、豊川さんは忙しい方なので」

 

リズム隊は納得しているようだ。

それも込みでこのバンドにいるのだろう。

 

「あー...遅かったか~...」

「祥、いつも早い」

 

ギター組は少し納得してない様子。

これでステージ上では化けるんだから本当にわからない。

 

「さて、かーえろ...」

 

ギターとカバンを背負って立ち上がると、肩を叩かれる。

 

「碧くん、ちょっと待っててもらっていい?」

「え?...まぁ、良いけど」

「すぐまとめるから、ちょっと待っててね」

 

初華が俺を呼び止めた。

なにかあるのだろうか。

 

「おや、三角さんと一緒に帰宅ですか?」

「多分、そうなるんじゃないかな」

「では、ファンに気を付けて。刺されないように、ですよ」

「そんな野蛮はファンはいねぇだろ...ご忠告どうも。また明後日」

「はい、また明後日」

 

若葉、祐天寺、海鈴を軽く見送って、初華を待つ。

 

「お待たせ。じゃあいこっか」

「はいよ」

 


 

「碧くんと帰れるなんて嬉しいな」

「...リップサービスがお上手なようで」

「私、あんまり冗談は言わないタイプなんだけどなぁ」

「だとしたら刺されないように気を付けろ、あんたアイドルなんだからな」

 

心臓に悪い。

常日頃からこんなことを言われてないだけマシと考えるべきか。

 

「あ、ちょっとあそこ寄っていい?」

「ん...カフェ?いいけど」

「じゃあ行こ!」

 

腕を引っ張られながら歩く。

初華の笑った顔、ステージ以外だと初めて見た気がする。

学校じゃそんな笑ってない、様な気もするし。

 

「碧くん?」

「ん?」

 

呼ばれてから、無意識に顔を見てたことに今更気付いた。

 

「どうしたの?見つめられたら照れるよ?」

「奇麗な顔してんなって思っただけ。カフェ行くんだろ、行こうぜ」

「...碧くんだって、リップサービス上手じゃん」

「...どうも」

 

綺麗な人に褒められて、悪い気はしない。

お互いが遠慮した空気のまま、カフェまで歩いた。

 

カフェに入って、窓側の席に座る。

 

「碧くんなににする?」

「昼...にしちゃ遅いし、夜、にしちゃ早いので...パンケーキにするか」

「いいね、私もそれにしようかな。飲み物どうする?」

「見栄張ってブラックコーヒーとか言いたいけど、カフェオレで」

「ふふっ、じゃあ私もそうしようっと。すみませーん!」

 

初華が流暢に注文を済ませている間に、合計金額を軽くはじき出しておく。

 

「(4桁...まぁ出せるか)...ありがと、三角さん」

 

いいながら顔をあげると、不機嫌そうな初華と目が合う。

 

「...なんで苗字なの」

「名前で呼んだら騒がれるだろ、まったり過ごせなくなるぞ」

「...気遣ってくれたんだ、ごめん。ありがとう」

「...んで、なんでわざわざ二人きりでカフェなんか来ようと思ったわけ?」

 

裏に何かがある。

俺は絶対的な確信を持っている。

別に初華に裏があっても気にはしないが、それが俺に対することであるならはっきりさせておきたい。

 

「え、碧くんと楽しくお茶しようと思ってきただけだけど...?」

「...まぁ、それならいいんだけどさ」

「...でも、聞きたいことも、なくはないかな?」

「...だろうと思った」

 

口に笑みを浮かべ、目は対照的に冷え切ってる初華が、少しだけ怖い。

 

「祥ちゃんのこと、どこまで知ってる?」

「....というと?」

「祥ちゃん、いつもすぐ帰っちゃうし、一緒に帰ろうって言っても『芸能人としての自覚が~』っていつも言うし。私のことを気遣ってくれるのは分かるんだけど、それにしてはなんか、冷たい、というか、さ?」

「なるほどね...」

 

話が終わったタイミングでちょうどよくパンケーキとカフェオレが来たので、いったん中断して食べることにする。

 

「...ふふっ」

「...なんだよ」

「かわいい顔して食べるから、思わず。ごめんね」

「...可愛いって言われても嬉しくねえぞ」

「本心なのになぁ」

 

アイドルに揶揄われて無表情を保てる人間と友達になりたい。

 

「...でさ、どこまで知ってるの?」

 

パンケーキを半分ぐらい食ったタイミングで初華から問いが飛んでくる。

 

「正直言うと、何も知らない」

「ほんとに?」

「...メンバーで幼馴染に話してないんだから、俺に話すわけないでしょ」

「外部だったら遠慮なく、とか...ない?」

「ないだろ。守秘義務だろ」

 

きっぱり言うと、初華が肩を落とした。

何というか、大型犬に見えて仕方ない。

 

「そっか...」

「...悪かったな、役に立てなくて」

「ううん。こっちこそごめんね、変なこと聞いちゃって」

 

俺をカフェに連行した時とは、また違う笑顔。

 

「...いつか、隠し事せずにバンドできるかな」

「...当分は難しそうだな。さて、出るか」

「うん」

 


 

「何も全部出さなくたって。自分の分ぐらいは出したのに」

「たまにはかっこつけさせてくれない?俺も男だからさ」

「...今の時代だとそれも怪しいよね」

「...生きづらい世の中だな」

 




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