ティザーがあまりにもホラーアニメ過ぎるのと現実が辛いので文を書いて現実逃避した
「それでは今日はこのあたりで。次回は明後日、よろしくお願いいたしますわ」
豊川の号令でピリついた空気が霧散する。
今日はなかなかにハードだった。
案はあったトリプルギター、それの試奏段階。
覚えたスコアはぐちゃぐちゃになるし、動きもめちゃくちゃになるし。
それでも練習で一回もミスらしいミスをしなかったのは、他のギターの二人のおかげもあってこそだけど。
「それでは、私はこれで。失礼いたします」
まただ。
豊川はそそくさとスタジオを後にする。
バンドには少なからず結束力というか、そういうのが求められると思うんだが。
「さきこ、今日も早いね~」
「仕方ないでしょう、豊川さんは忙しい方なので」
リズム隊は納得しているようだ。
それも込みでこのバンドにいるのだろう。
「あー...遅かったか~...」
「祥、いつも早い」
ギター組は少し納得してない様子。
これでステージ上では化けるんだから本当にわからない。
「さて、かーえろ...」
ギターとカバンを背負って立ち上がると、肩を叩かれる。
「碧くん、ちょっと待っててもらっていい?」
「え?...まぁ、良いけど」
「すぐまとめるから、ちょっと待っててね」
初華が俺を呼び止めた。
なにかあるのだろうか。
「おや、三角さんと一緒に帰宅ですか?」
「多分、そうなるんじゃないかな」
「では、ファンに気を付けて。刺されないように、ですよ」
「そんな野蛮はファンはいねぇだろ...ご忠告どうも。また明後日」
「はい、また明後日」
若葉、祐天寺、海鈴を軽く見送って、初華を待つ。
「お待たせ。じゃあいこっか」
「はいよ」
「碧くんと帰れるなんて嬉しいな」
「...リップサービスがお上手なようで」
「私、あんまり冗談は言わないタイプなんだけどなぁ」
「だとしたら刺されないように気を付けろ、あんたアイドルなんだからな」
心臓に悪い。
常日頃からこんなことを言われてないだけマシと考えるべきか。
「あ、ちょっとあそこ寄っていい?」
「ん...カフェ?いいけど」
「じゃあ行こ!」
腕を引っ張られながら歩く。
初華の笑った顔、ステージ以外だと初めて見た気がする。
学校じゃそんな笑ってない、様な気もするし。
「碧くん?」
「ん?」
呼ばれてから、無意識に顔を見てたことに今更気付いた。
「どうしたの?見つめられたら照れるよ?」
「奇麗な顔してんなって思っただけ。カフェ行くんだろ、行こうぜ」
「...碧くんだって、リップサービス上手じゃん」
「...どうも」
綺麗な人に褒められて、悪い気はしない。
お互いが遠慮した空気のまま、カフェまで歩いた。
カフェに入って、窓側の席に座る。
「碧くんなににする?」
「昼...にしちゃ遅いし、夜、にしちゃ早いので...パンケーキにするか」
「いいね、私もそれにしようかな。飲み物どうする?」
「見栄張ってブラックコーヒーとか言いたいけど、カフェオレで」
「ふふっ、じゃあ私もそうしようっと。すみませーん!」
初華が流暢に注文を済ませている間に、合計金額を軽くはじき出しておく。
「(4桁...まぁ出せるか)...ありがと、三角さん」
いいながら顔をあげると、不機嫌そうな初華と目が合う。
「...なんで苗字なの」
「名前で呼んだら騒がれるだろ、まったり過ごせなくなるぞ」
「...気遣ってくれたんだ、ごめん。ありがとう」
「...んで、なんでわざわざ二人きりでカフェなんか来ようと思ったわけ?」
裏に何かがある。
俺は絶対的な確信を持っている。
別に初華に裏があっても気にはしないが、それが俺に対することであるならはっきりさせておきたい。
「え、碧くんと楽しくお茶しようと思ってきただけだけど...?」
「...まぁ、それならいいんだけどさ」
「...でも、聞きたいことも、なくはないかな?」
「...だろうと思った」
口に笑みを浮かべ、目は対照的に冷え切ってる初華が、少しだけ怖い。
「祥ちゃんのこと、どこまで知ってる?」
「....というと?」
「祥ちゃん、いつもすぐ帰っちゃうし、一緒に帰ろうって言っても『芸能人としての自覚が~』っていつも言うし。私のことを気遣ってくれるのは分かるんだけど、それにしてはなんか、冷たい、というか、さ?」
「なるほどね...」
話が終わったタイミングでちょうどよくパンケーキとカフェオレが来たので、いったん中断して食べることにする。
「...ふふっ」
「...なんだよ」
「かわいい顔して食べるから、思わず。ごめんね」
「...可愛いって言われても嬉しくねえぞ」
「本心なのになぁ」
アイドルに揶揄われて無表情を保てる人間と友達になりたい。
「...でさ、どこまで知ってるの?」
パンケーキを半分ぐらい食ったタイミングで初華から問いが飛んでくる。
「正直言うと、何も知らない」
「ほんとに?」
「...メンバーで幼馴染に話してないんだから、俺に話すわけないでしょ」
「外部だったら遠慮なく、とか...ない?」
「ないだろ。守秘義務だろ」
きっぱり言うと、初華が肩を落とした。
何というか、大型犬に見えて仕方ない。
「そっか...」
「...悪かったな、役に立てなくて」
「ううん。こっちこそごめんね、変なこと聞いちゃって」
俺をカフェに連行した時とは、また違う笑顔。
「...いつか、隠し事せずにバンドできるかな」
「...当分は難しそうだな。さて、出るか」
「うん」
「何も全部出さなくたって。自分の分ぐらいは出したのに」
「たまにはかっこつけさせてくれない?俺も男だからさ」
「...今の時代だとそれも怪しいよね」
「...生きづらい世の中だな」
更新が止まってた間にメンバーの誕生日ががががが
どうしよう