ずっと、俺が存在する意味を考えている。
あらゆる時間、あらゆる場所で、俺がいる意味を。
何を必要とされているのか、何ができて、何が求められて。
その時、俺はそれに応えられるのか。
ずっと、ずっと。
「...碧」
永遠に。
俺が、
「碧」
「...あれ、若葉...?」
顔を上げると、心配のような、そんな表情の若葉。
生憎と表情は読めないが、そんな気がする。
そういえば、ここは事務所のロビーだったか。
「碧、ここで寝るのはダメ」
「違うよ、ちょっと考え事」
「...何を?」
「...俺の存在意義?」
以外と食いついてくれるようで、ソファの横のスペースを叩き、座るように促す。
若葉は少し離れて座って、俺の言葉を待っているようだ。
「顔バレたじゃん、そうなったら俺ってどうなんのかなって」
「...でも、やることは一緒」
「そうは言ってもさ。ガールズバンド時代に殴りこんどいて、男がいるってのも」
そこまで言うと若葉の表情が少し歪んだ。
「...ごめん」
「何で謝るのさ」
「...私の、せい」
「違うよ。若葉のせいじゃない」
本当に、誰のせいでもない。
きっかけは海鈴であれ、引き入れてくれたのは豊川であれ、若葉であれ。
俺は、自分の意志でAveMujicaに入ることを決めたんだ。
強いて言うなら、俺のせい。
「実際AveMujicaはめちゃくちゃ楽しいし、引き留めてくれたことには感謝すらしてるよ」
「...ほんと?」
「本当だよ、そんな心配そうな顔しないで」
無意識的に頭に手を伸ばそうとして、寸でのところで引っ込めた。
そういう関係じゃない。
「...なんで、やめちゃったの」
「...嫌だろ、普通に」
「私は、今のより、「若葉」って呼ばれる方が、嫌」
「あぁ...そっか」
モーティスの仮面が一番顔を覆う面積が多いのは、少なからずそういう目線から少しでも遠ざけるため、という意図もあるはずだ。
豊川のことはよくわからないが、それくらいならしそうだ。
「...じゃあ、睦って呼ぶけど」
「うん。その方がいい」
「じゃ、改めてよろしく、睦」
握手のつもりで手を差し出すと、その手は睦の頭へ。
「...え?」
「なでて」
「いやなんでだよ」
「さっき、止められたから」
こんな強情なんだ、この子。
普段がおとなしいだけで、心には熱いものを宿してるのかもしれない。
人は外見に囚われるべきではない。
改めてそう思った。
「碧の手、あったかい」
「それは良かった、恥ずかしいからやめていい?」
「...私は恥ずかしくない」
「俺が恥ずかしいんだよ」
どうして顔が割れる前より仲良くなったんだろう。
本来ならお近づきになれないレベルの人間と、肩を並べて音楽をしている。
本当に運がいいんだと思う。
いつまで、俺はこのままでいられるんだろう。
むっちゃんかわいいね