迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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17.5:呼び名

ずっと、俺が存在する意味を考えている。

あらゆる時間、あらゆる場所で、俺がいる意味を。

何を必要とされているのか、何ができて、何が求められて。

その時、俺はそれに応えられるのか。

ずっと、ずっと。

 

「...碧」

 

永遠に。

俺が、(ルイナス)である意味とは。

 

「碧」

「...あれ、若葉...?」

 

顔を上げると、心配のような、そんな表情の若葉。

生憎と表情は読めないが、そんな気がする。

そういえば、ここは事務所のロビーだったか。

 

「碧、ここで寝るのはダメ」

「違うよ、ちょっと考え事」

「...何を?」

「...俺の存在意義?」

 

以外と食いついてくれるようで、ソファの横のスペースを叩き、座るように促す。

若葉は少し離れて座って、俺の言葉を待っているようだ。

 

「顔バレたじゃん、そうなったら俺ってどうなんのかなって」

「...でも、やることは一緒」

「そうは言ってもさ。ガールズバンド時代に殴りこんどいて、男がいるってのも」

 

そこまで言うと若葉の表情が少し歪んだ。

 

「...ごめん」

「何で謝るのさ」

「...私の、せい」

「違うよ。若葉のせいじゃない」

 

本当に、誰のせいでもない。

きっかけは海鈴であれ、引き入れてくれたのは豊川であれ、若葉であれ。

俺は、自分の意志でAveMujicaに入ることを決めたんだ。

強いて言うなら、俺のせい。

 

「実際AveMujicaはめちゃくちゃ楽しいし、引き留めてくれたことには感謝すらしてるよ」

「...ほんと?」

「本当だよ、そんな心配そうな顔しないで」

 

無意識的に頭に手を伸ばそうとして、寸でのところで引っ込めた。

そういう関係じゃない。

 

「...なんで、やめちゃったの」

「...嫌だろ、普通に」

「私は、今のより、「若葉」って呼ばれる方が、嫌」

「あぁ...そっか」

 

モーティスの仮面が一番顔を覆う面積が多いのは、少なからずそういう目線から少しでも遠ざけるため、という意図もあるはずだ。

豊川のことはよくわからないが、それくらいならしそうだ。

 

「...じゃあ、睦って呼ぶけど」

「うん。その方がいい」

「じゃ、改めてよろしく、睦」

 

握手のつもりで手を差し出すと、その手は睦の頭へ。

 

「...え?」

「なでて」

「いやなんでだよ」

「さっき、止められたから」

 

こんな強情なんだ、この子。

普段がおとなしいだけで、心には熱いものを宿してるのかもしれない。

人は外見に囚われるべきではない。

改めてそう思った。

 

「碧の手、あったかい」

「それは良かった、恥ずかしいからやめていい?」

「...私は恥ずかしくない」

「俺が恥ずかしいんだよ」

 

どうして顔が割れる前より仲良くなったんだろう。

本来ならお近づきになれないレベルの人間と、肩を並べて音楽をしている。

本当に運がいいんだと思う。

いつまで、俺はこのままでいられるんだろう。

 

 

 

 

 

 




むっちゃんかわいいね
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