迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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4話がもうダメだ
壊しとかないと続かないとか言った俺をどうか殺してください


20:独走する人形

完全に壊れた。

無口で感情の起伏が少ない睦はもういない。

モーティスと呼んでも、間違いはないだろう。

 

「...おい、離れろ」

「えへへ、やだ」

「あのな...」

 

事務所の休憩スペース。

そのモーティスが、俺にくっついてる。

本当になんでだろう。

何かしたかな。

 

「なぁ、睦」

「なぁに?」

 

あまりことを大きくしたくないから、睦と呼んだけれど、問題なかったようだ。

 

「...俺、睦に好かれることしたか?」

 

直球に聞いてみて、出方を見る。

モーティスは「んー」と視線を俺から外した後、

 

「碧くんの全部が好き!」

 

と言った。

 

「...なんだ、それ」

「あれ?碧くん照れてる?」

「うるさいな、悪いか」

「んーん、照れてる碧くんも好きだよ?」

「うるさい」

 

調子が狂う。

なんでこんなこと言われなきゃいけないんだ。

好きって、なんだよ。

 

「えへへ、やっぱり碧くんといると楽しいね!」

 

この状況をどう受け取るのが正解なんだろうか。

睦であって、そうではないという違和感。

今まで接していた睦とは、明らかに違う睦。

モーティスと定義したが、それもあってるのかわからない。

 

「なぁ、睦」

「なぁに?」

「...ルイナスについて、どう思う?」

 

あえてステージネームを出して、様子をうかがう。

ステージネーム、つまり人形の設定は、本人以外は豊川の頭の中にしかないのだから。

 

「えっとねぇ...ずっと、怯えてるよね」

「怯えて...?」

「うん。せっかく世界を作ったのに、ずっと怯えてる」

 

怖くなった。

けれど、その先が気になった。

 

「どんな、風に?」

「『破滅を冠す俺が、いつかすべてを壊してしまうかも』って」

「...そっか」

 

ある意味では、俺も同じことに怯えているのかもしれない。

俺がいることで、Ave Mujicaの世界観が壊れてしまうのかもと。

...いや、壊れてはいる。すでに人形劇の体は壊れた。

後は、俺の演奏次第で、全てが。

 

「碧くん、そんな顔しちゃダメ」

「...どんな顔だよ」

「『俺がちゃんとしなきゃ』って顔」

「...よく、分かったな」

「分かるよ。だって、()()()()()()もん」

 

ずっと、見てた?

 

「睦ちゃんの中で、ずーっと見てた。みんなを気に掛けててくれてた。睦ちゃんにも」

「...それは、メンバーだし、当然というか」

「でも、ちゃんと気に掛けてた、上辺じゃなくて、心に寄り添って」

 

そうしないと、ダメな気がしたから。

 

「碧くん、やっぱり好き」

「...モーティス」

「なに?」

 

聞かなきゃ、いけないと思った。

 

「...睦は、どうしてる?」

「睦ちゃんは、今、寝てるの」

「寝てる...?」

「傷ついた心を癒すために、死んだように眠ってる」

 

死んだように眠る、か。

一応、睦としての人格はあるのだと安堵した。

 

「...モーティスは、どうしたいんだ」

「私は、睦ちゃんの願いを叶えるために来たの」

 

願い?と聞けば睦の面影を感じる顔で呟くモーティス。

 

「祥子ちゃんが壊れないようにって。でも、私は睦ちゃんを傷つけた祥子ちゃんが嫌い」

「...周りが見えてないんだ。自分勝手で」

「でも、睦ちゃんのお願いは叶えたいから。碧くんに、協力してほしいの」

「...できること、あるかな」

 

モーティスは俺の手を取って、あるよ!と満面の笑みを浮かべる。

 

「睦ちゃんの場所で、ギターを弾いてほしいの」

「...俺が?」

「私は、ギターが弾けないから。碧くんにお願いしたい」

 

正直、これを豊川がどう言うか。

バンドとしての体裁は保たれるが、睦の場所に俺がいる事へ、ゲストが何かしらの不満を抱く可能性がある。

 

「...豊川に、一回話してみる。それでいいか」

「...うん。しょうがないよね」

「悪いな。即決できなくて」

「ううん、そういうところも、好きだから」

 

好きって、本当に何なんだよ。

 

 

 




モーティス→→→→→→→碧のこの状況、激重展開を乗り切るにはこれしかないが
公式がこの激重展開があったからこそです!とかされた日には
これは二次創作だし...っていじけます。
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