迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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22:重荷

事務所の練習スタジオ。

 

「っ...ぐ...」

 

リードにはリードの、サイドにはサイドのむずかしさがある。

今、身をもって実感している。

譜面を頭に叩き込んだからと言って、腕や手がその通りに動くはずもなく。

どうしたって、実力差は生まれてしまう。

俺の付け焼刃は、睦の研ぎ澄まされたギターによって折られる運命にある。

 

「...いつも、こんなことしてたのかよ」

「睦ちゃん、すごいギター上手だから。碧くん、本当に大丈夫?」

「ありがと初華。でも俺がやんないといけないことだから」

 

初華から差し出された未開封のペットボトルを受け取って、首元に当てる。

興奮した体の熱をあらかた吸い取らせたところで、ボトルの中身を1/3ほど呷る。

 

「リードとは違うな...ギターって難しいんだな」

「とはいえ、2曲ほどは完璧に演奏できていました。及第点では?」

「ありがとう。でも受けた穴を埋めるって、穴以上に埋めないと見かけでバレるんだぜ」

 

この時ばかりは、7弦ギターが2人である構成に感謝した。

7から6,6から7に戻すのは二度とやりたくないからだ。

 

「それに、プロなんだからうまいのなんか当然だろ?俺だけ素人感丸出しだと場が冷める」

「真面目ですね」

「...いやでも真面目にならないといけないんだよ」

 

豊川に相談した件は、きちんとメンバーに伝わったようだ。

睦の代わりを俺が務める事にも、異論はなかったようだ。

 

「あおこ、ういこの後ろにいた時より余裕がないね」

「フロントで演奏するんだから当たり前なんだけどな...とはいえ、ドラムも目立たない訳じゃないか」

「なになに?にゃむのこと褒めてる?」

「...一応は。話題性作りだけでやってたかと思えば、滅茶苦茶うまくて驚いてるんですよ。練習法教えてくれませんか?」

「そんなに褒められると照れちゃうなぁ~。えっとねぇ~」

 

曰く、時間を決めてその時は全力でやるそうだ。

動画の書き出しとか、そういう時間を使ってやるらしい。

隙間時間の活用、試してみていいかもしれない。

 

「...みんな、真面目なんだな」

「当然ですわ」

「そうだな、疑って悪かったよ」

「...別に、そんな意味では言ってませんわ」

 

通る声でビシッと言われるのは嫌いだ、昔から。

疚しいことなんてないのに怒られた気分になる、昔からそうだ。

 

「...さて、続きを始めましょう。碧さん、準備は?」

「...いつでも。なんでも」

「では、『KiLLKiSS』」

 

ギターリフだったかギターソロだったか、ともかく睦のギターがイントロで目立つ曲だ。

 

でも、今の俺なら問題なく弾ける。

家に帰ってから家を出る時間まで防音室に籠って弾いてたんだ。

 

「...碧くん!?」

 

視界が暗転した。

何かすごい音がした。

しばらくした後に、背中に痛みを感じた。

なんだ?何が起こってる?

なんの音だ?どうして背中が痛い?

 

そのまま目を閉じ、再び開けたら。

 

 

 

――知らない天井だった。

 

 

 

 

 




文字通り命の灯を掲げて演奏してますからね、碧くんは
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