「...ここは」
目覚めると知らない天井。
予想通り、ここは病院のようだ。
「あっ、起きた?」
「...初華?」
「良かった、さきちゃん呼んでくるから、ちょっと待ってて」
ぱたぱたと病室から出て行く後ろ姿を視界の端に、今の現状を思考する。
今現在、神崎碧の体を使い、ルイナスとしてここにいる。
彼の想いを踏みにじるつもりは毛頭なく、むしろ俺もムジカのあれこれを円満に解決したいとすら願っている。
さて、どうしたもんか。
「起きましたのね、碧さん」
「...ごめん、心配かけた」
「いきなり倒れるんですもの、寝ていまして?」
「...昨日は、2時間ぐらい?」
曖昧に答える俺を見て、祥子は首を振る。
「私が言えた義理ではありませんが、ちゃんと睡眠は取らないといけませんわよ」
「善処するよ。現に今、時間を無駄にしてるわけだしな」
「とりあえず体の回復を最優先に、ですわ。過労ということですが、安静に、ですわよ」
「...ありがとう」
それでは、と祥子が初華を連れて病室を出て行った。
色々を解決する前に、こいつの体をちゃんと治してやらないといけない。
体を借りてる以上、変な傷はつけられない。
とはいえ、過労ってなんだよ、高校生が。
そんな事を考えていると、病院には似つかわしくない大きい声が聞こえた。
「碧くん!?大丈夫!?」
「...睦、静かにな」
幸い俺があてがわれている病室にはまだ誰もいない。
睦...モーティスは可愛らしく口を抑えた。
「あっ...大丈夫?倒れたって聞いて、心配で」
「俺は平気。ごめんな、代わるって言っときながらこの有様で」
「ううん。私もきっと同じようになっちゃうから。それに」
モーティスは胸の前に手を当てる。
「睦ちゃんが頑張ってるギター、私にはできない」
「...やろうと思えばできる、って聞こえるけど」
俺がそう聞くと、「正直ね」と言って、小さくしゃべり始める。
「...ムジカのライブを睦ちゃんの中から見てて、劇をやればいいなら、睦ちゃんを守れるならそれでって、出てきたんだ。でもね、ムジカはバンドだから。『音楽を奏でる運命共同体』って、祥子ちゃん言ってたから。私じゃダメなんだって」
「...体を返そうって気には?」
「それはダメ。今返したって、祥子ちゃんがまた睦ちゃんに強く当たるの分かり切ってるし」
頬を膨らませるモーティス。
こいつも、宿主のことをちゃんと考えているんだ。
一概に悪いとは、決めつけなくて正解だった。
「...モーティスは、祥子にどうなって欲しいの?」
「えっと...睦ちゃんに当たらないでほしい...?」
「まぁ、そうだよな...」
正直、今までの言い分ならそうとしか答えられない。
祥子が何もかもを握り、かつそれが俺らに明かされてないこの状況こそ、一番解決すべきなんじゃないか。
「...で、いつまで碧くんのふりしてるの?」
「...さすがにわかるか」
呟くと、ふふんとドヤ顔を決めるモーティス。
「碧くん、祥子なんて呼ばないし。それに、なんだか表情も柔らかい」
「...睦の中から、ずっと見てた?」
「ううん、好きな人の変化ぐらいすぐわかる」
好かれてるな、碧。
「そんなに威嚇しなくたって、俺は一時的なもんだよ。すぐに返すさ」
「じゃあ今すぐ」
「それは無理だな。決めてるんだよ」
「決めてる?」
「何もかもが、ちゃんと解決した後。ちゃんと返す」
俺がこいつに体を返すときは。
――こいつが、笑顔で音楽をやれるタイミングで。
モーティスも根本は睦を守るために出てきてるので、似たようなもんですね
とはいえ構想はあったんですよ...あの、本当です。プロットないですけど...はい