迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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26:苦悩

リードもサイドも、基本的はあまり奏でる音は変わらないと知ったのは、碧の中からドロリスとモーティスのギターを聞いて分かったことだった。

とはいえ、やることはサイドの方が多い。

リズムギターとも呼ばれることがあるのは知識として知っていた。

とはいえ。

 

「...まだ、届かない」

 

睦の音とは、程遠い。

文字通り血反吐を吐きながら覚えたものであるのだろう、代用品であることを思い知らされる。

 

――これか、お前が抱えてた不安は。

 

所詮代わりでしかないのだから、興味なんて微塵もないって。

お前は、そう思ってたのか。

自分に語りかけても、いまだに返事はない。

でも、「なくてはならないギター」だから、頑張ってきた。

そうだよな、俺は知ってる。

お前が、どれだけ傷つきながらギターをやってたことも。

 

趣味なんて言葉で誤魔化して。

勝てないと知りながら。

代用品であることを一生懸命にこなして。

人の言葉を素直に受け取れないお前だから。

 

「傷つき続けるわけだよな、そんな性格なら」

 

言葉の裏を常に思考し、深読みして傷つく。

救えない性格だ。

人間なら、普通なのかもしれないが。

 

「おっはよーございまーす」

 

スタジオ一番乗り。

 

「あ、あおこだ!おはよー」

 

じゃなかったみたいだ。

 

「おはよう、にゃむ。調子どう?」

「まぁぼちぼち?というか、なんか雰囲気変わった?」

「そう?気のせいじゃない?」

「女の勘は当たるんだぞ?」

 

以外と侮れない。

計画表が雑だっただけで、この子もなかなかやり手だ。

まぁ、結果睦がああなったわけだが。

 

「なかなか怖いこと言うね」

「もしかして、彼女でもできた?」

「できないよ。バンド内恋愛禁止だろ?」

「そうなの?」

 

俺の後方に声をかけたにゃむは、どうやら丁度入ってくる祥子に問いかけたようだった。

 

「...恋愛はご勝手に。私の管轄外ですわ」

「じゃなくてー、バンド内恋愛ってありなの?」

「演奏と活動に支障がなければ、お好きに」

「だってさ、あおこ」

「嫌だよ、皆可愛いけどそういう感じじゃないだろ、今の雰囲気」

 

ちょっと苦言を呈したつもりだったが、にゃむと祥子にはすごく驚いた顔で俺を見てる。

なんかおかしいこと...あ、碧なら言わないこと言ったわ。

 

「可愛い...?」

「疑問符そこなの?顔の良い人集めたから当然っていうとこじゃないの?」

「それは、そうなんですが...まさか、碧さんの口から可愛いなんて言葉が出るとは思っておらず」

「あおこが外見褒めるの聞いたことない。本当に別人みたい」

 

まずい。

このままじゃまずい。

かろうじてギターは弾ける。

がしかし、まだモーティスのパートは暗譜してない。

碧ができることは俺もできる。だからこそ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

モーティスパートの暗譜が完全にできてない俺が、今ここでギターを弾いても。

 

「あおこ?顔真っ青だよ?大丈夫?」

「ぁ...ごめ」

「もしかしてまだ体調悪いとか?休んでた方がいいよ」

「...でも」

「また倒れられても困りますので。それに」

 

祥子が近づいてくる。

反射的に目を閉じる。

 

「...そんなに怯えなくても。まだ次のライブまでは2週間あります。そこまでに、睦の場所を完璧にしていただければ、とやかくは言いませんわ」

 

赦された。

まだ、居ていいらしい。

部屋の隅っこにあるパイプ椅子を一つ借りて、腰を落とす。

 

どうしたんだ、俺。

何を恐れてる?

いや、分かってる。

()()()()()()()だ。

人形にとって捨てられるとは。

 

――紛れもなく、"死"なのだから。

 

 




人格が変わったとて、何でもできるわけじゃないんだなぁ
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