迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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豊川祥子HBDVer2025ではないです


26.5:迷走する人形

『これが、俺たちが求めていた、光...?』

 

ルイナスは、光に手を伸ばす。

瞬間、何かに弾かれたように、ルイナスは吹き飛ばされてしまう。

そして。

 

『がっ...ぁ...』

 

右腕が外れてしまった。

元には戻らない。

ルイナスのパーツはどれも年代物のそれ。

同じパーツなど、世界中を探し回っても見つからない。

 

『ひけな、ぎたー...まって...』

 

ルイナスの口から、弱音が零れる。

それもそのはず。

ギターが弾けない人形である以上、ルイナスは存在価値がないのだから。

 

『いやだ、いやだ...』

 

腕を拾う。

しかし、くっつくはずもない。

接続部分は白化し、経年劣化によるひずみも見える。

仮にくっついたとして、もう二度と腕は動かない。

 

『おれは、まだ...いやだ、もっと』

 

そんな声も届かない。

月が作るぼんやりとした光に焼かれ、ルイナスの腕だったものは灰と化していく。

そして、やがてルイナス自身も月光によって焼かれていく。

最後まで、嫌だ、いやだと呟きながら、灰になっていく。

およそ1秒後、そこには、灰しか残らなかった。

 

 

「――っ」

 

碧の自室で目が覚めた。

人形は夢を見ない。

造られた生命である以上、そこに本当の意味で命は存在せず、記憶の整理も必要ない。

では、今の光景は?

間違いなく、()の恐れる光景だ。

借り物の体、祥子に言わせるなら「元の持ち主の記憶」の類、になるのだろう。

そういう部分に引っ張られることは多々ある、とは持論だが。

まぁ、人形風情が持論を語るのもおかしいか。

 

「いつ捨てられても、おかしくない、か」

 

捨てられる。

それは、人形にとっての死。

愛されないこと、忘れられることも同義。

等しく死であるそれは、人形であれば恐れるべきこと。

つまり、(ルイナス)が恐れるべきこと。

 

こうして考えて見ると。

(ルイナス)()も、どっちが主人格だろうが。

()()()()()()()()()()()()()って、そう思うんだ。

 

自分の意志がはっきりとある、それだけでだいぶ厄介な部類だと自覚している。

人形の自立行動は呪物のそれと大差ないからな。

 

「まぁ、気にしてもしょうがないか」

 

今は、ムジカの安定化を図らねば。

そうしなければ、体を返せない。

俺は別に、世界を支配しようってわけじゃないんだ。

壊れて行くのを見るのが嫌なだけで。

 

「ギターの練習、しないと」

 

モーティスパートの暗譜を最優先に。

 

「記憶の共有もできりゃあな」

 

ないものねだりをしてもしょうがないのは分かっている。

俺ができることを、しなければ。

 




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