『これが、俺たちが求めていた、光...?』
ルイナスは、光に手を伸ばす。
瞬間、何かに弾かれたように、ルイナスは吹き飛ばされてしまう。
そして。
『がっ...ぁ...』
右腕が外れてしまった。
元には戻らない。
ルイナスのパーツはどれも年代物のそれ。
同じパーツなど、世界中を探し回っても見つからない。
『ひけな、ぎたー...まって...』
ルイナスの口から、弱音が零れる。
それもそのはず。
ギターが弾けない人形である以上、ルイナスは存在価値がないのだから。
『いやだ、いやだ...』
腕を拾う。
しかし、くっつくはずもない。
接続部分は白化し、経年劣化によるひずみも見える。
仮にくっついたとして、もう二度と腕は動かない。
『おれは、まだ...いやだ、もっと』
そんな声も届かない。
月が作るぼんやりとした光に焼かれ、ルイナスの腕だったものは灰と化していく。
そして、やがてルイナス自身も月光によって焼かれていく。
最後まで、嫌だ、いやだと呟きながら、灰になっていく。
およそ1秒後、そこには、灰しか残らなかった。
「――っ」
碧の自室で目が覚めた。
人形は夢を見ない。
造られた生命である以上、そこに本当の意味で命は存在せず、記憶の整理も必要ない。
では、今の光景は?
間違いなく、
借り物の体、祥子に言わせるなら「元の持ち主の記憶」の類、になるのだろう。
そういう部分に引っ張られることは多々ある、とは持論だが。
まぁ、人形風情が持論を語るのもおかしいか。
「いつ捨てられても、おかしくない、か」
捨てられる。
それは、人形にとっての死。
愛されないこと、忘れられることも同義。
等しく死であるそれは、人形であれば恐れるべきこと。
つまり、
こうして考えて見ると。
自分の意志がはっきりとある、それだけでだいぶ厄介な部類だと自覚している。
人形の自立行動は呪物のそれと大差ないからな。
「まぁ、気にしてもしょうがないか」
今は、ムジカの安定化を図らねば。
そうしなければ、体を返せない。
俺は別に、世界を支配しようってわけじゃないんだ。
壊れて行くのを見るのが嫌なだけで。
「ギターの練習、しないと」
モーティスパートの暗譜を最優先に。
「記憶の共有もできりゃあな」
ないものねだりをしてもしょうがないのは分かっている。
俺ができることを、しなければ。
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