追記:2/27 28につながる部分の追加
「ねぇ、神崎」
「ん?」
この声は...確か椎名立希とか言ったか、MyGO!!!!!のドラム、作曲担当。
「昼休み、一緒に来て」
「...いいけど、海鈴とは良いの?」
「...別に」
「一緒にご飯食べるなら俺は邪魔でしょ?」
「そうじゃない」
立希は俺の机に手を乗せ、顔を近づけて囁く。
「お前、神崎じゃないでしょ」
「何を証拠に?」
「証拠はない。けど、なんか違う」
俺がルイナスであることがバレた?
まぁ擬態は完璧ではないとはいえ、ムジカメンバーより先に?
「じゃ、何か証明する方法が?」
「ある。だからついて来てって言ってんの」
「了解」
なにかを掴んだ表情だった。
なにか、俺から碧らしくない何かを感じたのだろうか。
昼休み。
立希の指示で中庭で待つこと5分。
「りっきー、抹茶ラテ」
「あとでな。おまたせ、神崎」
立希が白髪の中等部生徒を連れてきた。
確か、要楽奈とか言ったか。MyGO!!!!!のリズムギター。
それが、証拠を持ってると?
「待ってないよ。で、楽奈がなんだって?」
「楽奈、神崎のこと見て」
「ん。みた」
「...どう思う?」
...楽奈が俺を見ている。
黄色と青の目で見定められている。
なにが見えているんだろうか。
「んー...碧だけど、碧じゃない」
「え?」
「...驚いた。わかるんだ」
「碧の中に、何かがいる。でも、それだけ」
見破られるとは思わなかった。
ニュータイプとでもいうのか?いわないか。
「だってさ、立希」
「だってさ、じゃない。どういうこと?」
「...今日、予定は?」
「...無いけど」
「じゃあ、放課後話そうか。話すと長くなるし」
後で詳しく話すことを約束し、昼飯を食べて教室に戻る。
同じ教室に戻るから微妙に気まずいけど。
ほら、海鈴にも初華にもなんか変な顔されてるし。
放課後、教室内の大方人が捌けた頃。
俺の机の前には立希、横に海鈴と初華がいた。
飲み物を買ってこようと席を外したら、囲まれてました。
「あれ、仕事は?」
「今日はオフなんだ」
「珍しく、サポートが入ってなかったので」
「で、どういうことなの、説明してほしいんだけど」
「はいはい。分かったから、一旦離れてくれる?」
かわいい子3人に囲まれたら流石にドキドキもするよね、人形とは言え。
「さて、と。まずは...俺の正体について、からかな?」
「早く教えて。お前、誰?」
「じゃあ、端的に。俺はルイナス。碧のもう一個の人格ってとこかな」
ちょっと芝居じみた感じで紹介してやれば、3人は驚く。
それはそうだ。
バレない自信はあった。
まぁ、バレたところで支障はない。
ギターは弾ける。演技もできる。
ムジカに必要な要素は全部そろってる、はず。
「...いや、海鈴も三角さんも知らなかったの?」
「初耳です」
「私も...あんまり練習来れないからその時にとか思って...」
まぁ、初華の練習来てない問題の以前から入れ替わってたし、今更ではあるが。
「...で、ルイナスはどうする気なの」
「何が?」
「碧のこと。そのままいる気?」
「いずれ返すよ。ムジカの問題が全部収まったら」
でも、返せなかったら?
碧が眠っている時間も限りがある。
そして寝ているからと言って全部の情報をシャットできてるわけじゃない。
もし、解散とかになったら?
その時、俺は?
「すみません、問題とは?」
海鈴の言葉で、一旦問題を棚上げする。
「この現状全部。第一に、モーティスが演奏できない。第二に、祥子の脳内にしか今後の展望がない。第三に、メンバーが話し合わない。大きく3つだ」
「さきちゃんの頭の中にしかないのは、ダメなの?」
「バンドっていうのは力を合わせるもんだ。目標がないままやる気か?」
「それは、そうだけど...」
碧の中から見ていても、初華は異質だ。
多少ズレていたとしても、祥子の味方をする性質がある。
まるで、祥子の意思が自分の意思かのように。
「...まぁ、おいおい考える。あらゆる対策はそれからだ」
身代わり人形としての役割は、きっちり果たす。
その果てが死であるのだとしても、俺はやってやるさ。
「ちょっと待って」
立希が俺を引き留める。
俺がルイナスであるということは全部話した、何が引っ掛かっているのだろう。
「モーティスって睦でしょ、なんでギター弾けないってなってるの」
「...色々あるんだ」
「なにそれ。睦にそこまでさせたの、祥子は」
「違うよ、さきちゃんは」
「初華、ストップ」
さきちゃんは悪くないって言えば、またこじれるから。
初華の顔の前に手を掲げ、止めさせる。
「...ほんとは、守秘義務があるんだけどさ」
そう前置きして、睦とモーティスについて、掻い摘んで話す。
「...そっか」
立希はそれだけ言って、視線を落とした。
「...睦が、バンド楽しくないって言ったことがあってさ」
「聞いたよ、CRYCHIC、だっけ」
「...その、それも」
「多分、本心だけどそうじゃない。間が悪い、ってやつだね」
難儀なものだ。
名家の娘というだけで、生きながらに注目され、プレッシャーによって圧されながら生きている。
「...祥子のこと、ちょっと調べたんだけどさ」
「うん」
「...これ」
おずおずと差し出されたスマホを見ると、「豊川グループ、168億の詐欺被害」と銘打たれたニュース記事が。
「あぁ、うん。そうだね。CRYCHICはそれが原因と言ってもいい」
「碧...ルイナスは、知ってるんだ」
「どっちでもいいよ。それに関しちゃ聞き出しただけ、計画が仲間に共有されてないの、不便だから」
知らない。
聞いたのは俺じゃないから。
でも、見てた。だから分かる。
「でも、これでCRYCHIC解散の真実もわかった訳で。協力してくれない?」
「は?」
今度は俺が、立希に付き合ってを言う番だ。
「睦を元に戻して、ムジカも立て直す」
人形の役目を全うして、それでお別れだ。
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