迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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どうにかハピエンに着地させる、かつ本編のギスギス感を少しでもマイルドにしたいがために始めたこの小説も28+α、早いね


28:向かうは平和

「モーティス。ちょっといい?」

「なぁに?」

「...祥子が、睦と話したいって」

「...嫌。祥子ちゃん、また睦ちゃんに意地悪言うから」

 

だよなぁ、そんな気はした。

自惚れてたわけではないが、ある程度の言うことなら聞いてくれると思ってた。

なら、これはライン越えなんだろうさ。

やり方は違えど、モーティスは睦を守ろうとしている。

仕方ない、切れるカードは切らねば。

持ってて嬉しいコレクションじゃないからな。

 

「CRYCHICの奴らが、真相に気付いた」

「え?」

「絡まった糸が解けた、って言えばわかるか?」

「えっと...?」

「ほとんどが解決して、祥子も睦の真意に気付いている。だから、認めてやってくれって話」

 

ギターが弾けない睦に違和感を覚えた立希にガン詰めされてあらゆることを吐いた俺の責任でもある。

いい方向に転ぶように、あえて吐いたんだけど。

 

「...祥子ちゃんに、何が分かるの」

「他人のことなんて、誰もわかりゃしないさ。でも、幼馴染だから、察してはいたんだろうよ」

 

でも、仕事量に、精神が耐えられなかった。

だから強く当たってしまった。

心の奥底では、理解していたんだろう。

睦は、こういう子だと。

 

「...だから、どうだいって話」

「...分かった。でも、一個約束して」

「何か?」

「碧くんに、会わせて」

 

そう来たか。

好感度が高いのは結構だが、こうも好かれてると嫉妬もする。人形なのにな。

 

「ちょっと待ってて」

 

意識の奥に潜る。

丁度良く起き上がる人影。

 

「ん、起きてたのか」

『今さっきだよ。解散してなくて良かった』

 

随分と落ち着いた顔をしている。

心なしか、少し痩せたか?

 

「させるわけないだろ、俺の居場所がなくなる」

『それはよかった。で、何の用?』

「...諸々が解決したから、それの報告と、一時交代」

 

驚いた顔をしてから、少し笑った。

 

『...意外と早かったな』

「もっと遅くても良かったんだけどな」

 

むっとした顔をする。

軽口のように聞こえたか?

 

「怒るなよ」

『...余計なことしてないだろうな』

「してねぇよ、なんだと思ってやがる」

 

まぁ入れ替わる前に結構いろいろ言った気がするし、その反応は妥当か。

 

『...終わったら』

「ん?」

『終わったら、消えるのか、お前』

「いーや?消えてやんないよ」

 

簡単には消えてやらない。

これからもムジカをやるなら、俺はいないといけない。

そうなるなら、これから交代するのは、ステージ上だけだ。

 

『そうか。少し安心だ』

「お?寂しいクチか?」

『...そんなところだ。じゃ、俺はいくよ』

 

寂しいやつ特有の笑い方をしてから、俺が来た方向に歩いていく碧。

 

『あ、最後に』

「ん?」

 

満面の笑みを浮かべて、碧が言った。

 

「居場所、守ってくれて、サンキュ」

 

それだけ言って、姿を消した。

 

『...もう壊れんなよ』

 

届かない声を発して、俺は眠った。

 

 

「...っ、ん...?」

 

随分と明るい。

ここは事務所か?

 

「っ!碧くん!!」

 

幼げな声が聞こえたと同時に体に衝撃が走る。

視線を下に動かすと、薄緑の髪色が見えた。

 

「...モーティス、かな」

「うん!おかえり!」

「...ただいま」

 

周りにキラキラが見えるぐらいの笑みを浮かべてそう言ったモーティスは、だんだんと顔を苦しそうにゆがめる。

 

「ごめんなさい。私のせいで、碧くん、壊れちゃった」

「...気にしてないよ。結果戻ってこれた」

「でも!私が、ギター、弾けたら、碧くんは」

「...全部解決しそうなんでしょ?なら、よかったよ」

「...え?」

 

ルイナスから聞いた話が正しいなら、豊川の心残りはもうないはずだと。

 

「あの、よかったって」

「諸々の問題を解決するのに、俺じゃ力不足だったってことだよ。まぁ、逆にそこまでしないと動いてくれなかった、っていうことでもあるんだけど」

 

俺ならそこまで深く行けなかった。

前のバンドの解散理由ぐらいしか突っ込めなかった。

人形である彼には、感謝しないといけない。

 

そんな事を考えていると、か弱い声で「やだ」と聞こえた。

 

「...モーティス?」

「ヤダヤダ!碧くんムジカやめちゃヤダ!」

「落ち着いてモーティス。辞めるなんて言ってないよ」

「でも今の顔、もう必要ないなって顔してた!!ダメ!絶対ダメ!!」

 

ほんとに子供なんだな。

そう思って、頭に手を置いて、撫でる。

 

「大丈夫だよ、モーティス。やめない」

「ほんと...?」

「ほんとだよ。第一、ここでやめちゃったら何のためにいざこざ解決してきたのさ」

 

少し笑いながら言えば、落ち着いてくれたようで。

頭から手をどけると、その手を掴まれる。

 

「モーティス?」

「もうちょっと、このまま。睦ちゃんに代わるから」

「...寂しくなったら、いつでもおいで。睦には許可とってね」

「...うん」

 

掴んでいる手の力が一瞬強くなったと思えば、ふっと力が抜けた。

そして、次に目を覚ました時には、もう。

 

「...睦?」

「...うん。ただいま、碧」

 

少しだけ強くなった、我らのギタリストが、そこにいた。

 




碧の設定が結果的に睦と違くなってちょっと安心()
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