9話10話見たら書けなくなって困った
「ねぇ、碧」
「ん?」
「ここ、教えて」
「...睦の方がうまいでしょ」
事務所のスタジオで、睦にギターを教える俺。
...なんでだ?
「碧に教えてもらうやり方、疲れない」
「...気のせいじゃない?」
「そんなことない」
ちょっとむっとしたか?
...表情が変わるようになったな。
そこは進歩かな。
「...付き合ってんの?」
「ん?」
「距離感近すぎない?」
嫌悪感を丸出しにしたにゃむの顔を見て、少しだけ笑ってしまう。
「ちょっと、人の顔見て笑わないでほしいんだけど?」
「悪かったよ。あまりにも嫌な顔してたから面白くて」
「だってそんな近かったらそうも思うでしょ、男女の友情なんて漫画でもないよ」
「にゃむ、そんな事言わないで」
むくれた睦が言う。
...まぁ、実際好かれてる理由は分からないんだが。
「無自覚は嫌われるよ、あおこ」
「ほんとに思い当たる節がないんだよ。生き方が罪だって言うなら死んでやるけど」
冗談めかしたつもりだったが、睦の腕が俺の腕に絡んできた。
「...ダメ」
「分かってるよ、冗談だって」
「そんなこと、嘘でも言わないで」
「ごめんな、睦」
腕を解いて頭を撫でてやれば、嬉しそうにギターを弾く。
「やっぱ付き合ってるでしょ」
「立場とかあるだろ」
「私、碧とならいい」
「軽く言うもんじゃない」
実際、可愛いとか綺麗だとは思うことはあっても、付き合うかと言われれば、首を縦に振らないだろう。
俺にその覚悟がないからだ。
「...というかあおこ、また雰囲気変わった?変わったというか、戻った?みたいな」
「...演技志望だったね。わかるか」
にゃむは少し目を見開いて、「まーね」と言って、続けた。
「むーこのあんなの魅せられちゃったら、ね」
「...私のせい?」
「むーこのせい。じゃなくて、今はあおこの話!」
「...睦と似たようなもん。もう一人の俺って言ってもいい」
俺とルイナスの関係について、要所をまとめて話す。
途中から入ってきた他の3人も、最初から聞いてた2人も、誰も途中で口を挟まなかった。
「...って感じ。質問は?」
「では、一つ」
「ん、祥子」
「...睦とモーティスのようなものでは、ないのですか?」
人格変化と軽く括ってしまったため、少し勘違いが起きている。
睦に話してもいい?と聞けば、首肯が返ってくる。
「そこの二人に関しては睦の在り方に起因する。睦の中の何重、何百の"役"の内、家の中で過ごす睦の"役"にギターが触れた。それで、他の"役"すべてを食いつぶし、今の睦がいる。って認識かな。モーティスは、今の睦の話し相手。対して俺のは、ただの人格変化。ムジカの時に無意識にやってるやつが出てきちゃっただけだから、まぁ、って感じ」
長々と説明してしまったが、祥子含め他4人は理解してくれたようだ。
「睦、その。モーティスは」
「...まだ、居る。でも、もう大丈夫」
「...では、ルイナスは」
「寝てるよ。豪快にいびきまで掻いてな」
茶化して答えれば、そうですの、と胸を撫でおろす祥子。
その後ろで、小さく「良かった」と呟いた初華を見逃すほど、難聴系主人公している俺じゃない。
「何が、よかったって?」
「え?あ...その、ムジカ、なくならなくて良かったって。まだ、ツアー中だし。新曲も発表あるしさ」
「...ずっと思ってたけど、初華ってさ。ポーカーうまそうって言われない?」
「え?」
何を言ってるんだと言いたげな視線。
逆の立場なら、そう言ってる。
「...ポーカーフェイスって言うか。なんかさ、気のせいにも思えなくなってきたんだよね」
「な、にを...?」
「ずっと、何隠してんの?」
「え...っと」
「隠し事、なしにしようって言ったよな」
俺が言ったわけじゃないけど、と付け加えながら、心の内を探る。
人を見る目は、そこそこある方だと自負している。
「私は...その」
「話しにくいなにかなら、別にいいけど」
「え」
「その代わり、後で聞く。秘密があっていいことなんて、潜入工作でしかない」
全部を解消して、ツアーを回り切り、新曲を発表して。
――その後は?
決まっている。
人生を預けたのだ。逃げるわけにはいかない。
初音!?誰よその女!!