「んで、来てもらったわけだけど」
「うん」
後日、初華を呼び出して詳細を聞くことにした。
曰く、みんなの前では話しにくく、かつツアーが終われば少しゆとりもできるだろうから、という理由で、今はツアー最終日の翌々日。
昨日は疲れをとるための完全オフ、今日は午前に少しミーティングを入れた後、オフということだったので、このタイミングで話してもらうことにした。
「...その、あのね」
「...どんな秘密抱えてようが、受け止めてやる」
「...ありがとう。その...私ね」
初華は横の椅子に置いてあるリュックから、写真立てを取り出した。
それをそのまま、こちらにスライドさせてくる。
「...これは?」
「私の小さい頃の写真。残ってるのは、それだけだったから」
元気にピースサインをするベージュ髪の子。
それとは反対に、カメラから目線を逸らし、怯えているようにも見える、ベージュ髪の子。
そして、その二人の肩を抱いて笑顔を浮かべる男性。
その横に寄り添い、柔らかい笑顔を浮かべる女性。
「初華の、小さい頃...その、どっちが、初華?」
「...こっち」
目線がずれている方を指さす初華。
納得はする。しかし、ならば。
「こっちの、元気な子は?」
「...
「え?」
初華はどっちか、という問いに、怯えてる方を指した。
ならば反対はと聞けば、初華ちゃんと答えた。
「...初華じゃ、ない?」
小さく頷く初華。
「なる、ほどね。ちょっと時間くれ」
つまり、今目の前にいるのは初華ではなく別人。
何らかの理由があって初華を名乗っている。
「えーっと...便宜上本物って呼ぶけど、本物の初華はどこに?」
「...多分、まだ島に。勝手に出てきちゃったから」
「...喧嘩別れ?」
そう聞けば、初華は微妙な角度で頷いた。
「...うん、まぁ、そんな感じ。長くなるし、きっと...ううん、絶対嫌な話だから、その」
「いいよ、受け止める」
「...ありがとう。優しいね」
「...そんなんじゃない。頼りにされたくて、そう演じてるだけ」
「それでも、すごい。私は、そうはできなかった」
そう言って、ぽつぽつと語り始める。
簡単にまとめる。
初華...目の前にいる彼女の本当の名前は「初音」であり、「初華」、及び母親は島にいる。
初音の父親は「豊川
初音と初華は異父姉妹であり、初華の父の死をきっかけにこちらに単身上京してきた。
そこで出会った純田まなとユニットを結成して、sumimiの活動をスタート。
このころからすでに、自身を「初華」と名乗っていたらしい。
「はー...なる、ほどねぇ...」
聞けば聞くほど混乱する話だ。
けれど、そこまでしてこちらに来た訳は。
「なぁ、全く関係ないけど聞くぞ」
「...なに?」
「祥子のこと、好きなの?」
「え!?え、っと、その...」
「別に好きでも何も言わないよ」
多様性...とはちょっとズレるんだろうけど、別に否定はしない。
愛の形はそれぞれだ、歪んでいようと、狂っていようと。
「その...さきちゃんは、初めて、私に希望をくれたから」
「希望?」
「生きる、希望。光を、くれたの。さきちゃんは、私の光」
「...そっか。だったら、ちゃんと伝えなきゃダメだな」
「え...?」
愛情は無意識化で動いてるのが一番怖かったりする。
行き過ぎると逆に気持ち悪がられたりする。
だから、明確にしておかなければいけない。
見える化って大事だしな。違うか。
「...全部、受け止めてもらおう」
「で、でも」
「祥子が言ったんだぞ、『あなたの人生、私にくださいませんか?』って」
「それ、が...?」
「ムジカの縛りでもあり、契約だ。祥子がほっぽり出さない限り、ムジカは続く」
それに。
「人生預けてるのに、隠し事はなしだろ?」
「...そう、だね。分かった。話すよ。でも」
「そばにいてやる、怖いことはないよ」
風除け、弾除け。
あらゆる事象を退ける盾に、俺はなるべきだ。
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ところで初華って存在してるんですかね