ここで作ります(?)
事務所のロビー。
高松に再びの道案内中。
「燈ちゃん」
「ぁ、えと...」
覚えてなさそうな高松に助言する。
「三角初華、これから一緒にライブやるんだから、覚えなよ高松」
「...ぅん、えっと、なに...?」
「燈ちゃんって、どうやって歌詞書いてるの?」
「ぇ...っと、思った、ことを、書いてる...」
と、ノートを差し出す高松。
「ほぁ~...へぇ~...ふぁ~...」
「初華、溶けてる」
「...あっ!うん、すごかった...私とは違う、燈ちゃんが作る、世界...」
同じボーカル、求められる世界を創る者と、自分の世界を創る者の違い。
「初華ちゃん、も...書いてみたらいい、と思う」
「わ、私に、できるかな...?」
「空き部屋ならあるぞ」
部屋の鍵を差し出す。
「私には、そんな」
「祥子のメロディからくみ取って歌詞を書くのもすげえと思うぞ。俺にはできない」
「私も、すごい、と思う。その、詩は、伝わるから」
「詩は、伝わる」
初華は燈にノートを返すと、俺の手から鍵を奪っていき、その足で部屋に転がり込んでいった。
「大丈夫、かな」
「あいつなら、平気だよ」
高松はバンド練に行ったので、今は休憩中。
「あら、碧。初華を見ませんでした?」
「そこの部屋でインスピレーションをスマホにぶつけてる」
「...というと?」
「高松のノート見て、何かひらめいたんだってさ」
俺がそういうと、祥子がうんうんと頷いている。
「燈の歌詞は確かに素晴らしいものでしたわ。私も張り切って作曲したものです」
「だから
「もちろんセトリに入れますわ。その場合はMyGO!!!!!の皆様にももう1曲出していただかなければなりませんが...」
と、MyGO!!!!!専用のスタジオから誰かが出てくる。
「ん、長崎」
「そよ。お疲れ様ですわ」
「祥ちゃんに神崎さん、お疲れ様です」
ご丁寧に頭を下げる長崎。
前に一度見た時より、だいぶ鳴りを潜めているような...。
「碧でいい。それと、余所行きの仮面は早々に外した方がいいぞ」
「...碧くん、愛音ちゃんとそっくり」
「誉め言葉として受け取っとくよ」
バチバチしてるように見えたのか、祥子が止めに入る。
「その...お二人は、仲があまり...?」
「いや、そういうわけじゃない。お互い遠慮しないだけ」
「初対面で見抜かれたから隠すのも面倒なだけ」
「そう、ですの...よかったですわ」
...毒気が抜けるとは、このことだろうな。
「で、二人は何してるの?休憩中?」
「えぇ。といっても、すぐ作曲に...あっ、そうですわそよ!」
思い出したかのように、祥子が長崎の手を取る。
「な、なに...?」
「MyGO!!!!!として、演奏できる楽曲は5曲だけですか?」
「え、えっと...その、ないことは、ない、けど...」
「はっきり言いな、あるけど祥子に悪いのが1曲、恥ずかしくて思い出したくもないのが1曲って」
「何で知ってるの!?」
「そりゃライブ行ったからに決まってんだろ」
AveMujicaのトリガーとなったあのライブも、MyGO!!!!!のトリガーとなったあのライブもちゃんと観た。
「っ...そういうわけだから、祥ちゃん、もう一曲はあきらめて...」
「前はともかく後ろはできるだろ。忘れたっていうならライブ映像もあるぞ」
退路がなくなったと悟ったのか、長崎は大きなため息を一つ。
「幸せ逃げるぞ」
「誰のせいだと思ってるの?...とにかく、その件はみんなに聞いてみるから」
「えぇ、お願いいたしますわ」
じゃあねと手を振って戻る長崎を見送ると、ちょうどよく初華が出てくる。
「祥ちゃん!歌詞、できた!!」
「早っ」
「ほんとに早いですわね!?」
「燈ちゃんのノート読んで、どんどんアイデア湧いてきて...その、読んで、くれる?」
「えぇ、もちろんですわ」
初華のスマホを受け取り、読み進めていく祥子。
その顔がだんだん酸味を摂取したような顔になっていく。
「祥子?」
「祥ちゃん?」
「その、とても、気持ちが乗ってる詩ですわね」
「俺も見ていい?」
許可を取り、祥子の横からのぞき込む。
「...わお」
なるほど、こうなるのか。
わかってはいた。
「祥ちゃんは光」と言っていた初華...初音の心の内を曝せば、こうなると。
まさか、こんなにも直球だとは。
しかも、作詞者の独特の語彙で中途半端に美化されている。
祥子のあの顔も、わからなくはない。
「碧くんの意見も、参考にしたんだ」
「俺?」
「『ちゃんと伝えろ』って、言ってくれたから」
「...そうか。で、祥子、曲かけそう?」
「...やってやりますわ。わたくしは、AveMujicaのオブリビオニス、豊川祥子ですわ!!」
10話のImprisonedで泣くし、
12話の特殊ED:KiLLKiSSで鳥肌は立つし
13話の天球で涙が枯れる
あるあるだと思います