俺と祥子が二卵性の生き別れ、ということが判明しても、特に距離感は変わらず、むしろこれまでより近づいたように感じる。
兄妹という事実がフィルターを1枚突破したのだろうか。
で、そんなある日。
「碧。わたくしと付き合ってくださいまし」
「...一応確認。それはどこかに、ではなく、カレカノとして?」
「えぇ。兄妹でも付き合うまでは問題ないはずですわ」
「...多分、がっかりするよ。それでもいいなら、いいよ」
というわけで交際がスタートしたわけですが、まぁ幼馴染’sの目線が痛い痛い。
私の祥(ちゃん)を取られたみたいな顔してずっと見られるの、普通に怖い。
やめてよね、国が本気になりさえすれば兄弟婚より同性婚のほうが先にできるんだから!
まぁ別に結婚する気もないしできないんだけど。
というか異性兄弟だとむっちゃ喧嘩するってマ?俺都市伝説だと思ってるんだけど。
「むぅ...」
「せめて声出さずに見てよ」
「私の祥ちゃん...」
「だからさ」
今日はずっとこんな調子で祥子と付き合えってのか、冗談ではない!
とはいえ今日はただの自主練の日なのでデートとかではない。
そして練習が始まればそんな気配は微塵も感じなくなる。
さすがプロだ。
「...いったん、休憩にいたしましょうか」
でも休憩になったとたんに祥子の周りを幼馴染’sが囲う。
俺は俺で離れた場所で座って水飲んでるから関係ないけど。
「初華、睦。もう少し離れていただけない?」
「...碧はけだもの。目を離したら、祥が食べられちゃう」
「あのなぁ」
「節度ある付き合いって、祥ちゃんも言ってた」
「あのなぁ」
「碧はそんなことしませんわ。いえ、まぁ...されても...嫌では」
「あのなぁ」
3人に言いたいことはあったけど、俺はスルースキルにポイント振ってるんで、こんなちょっとやそっとのことでは動じないんだな。
「碧、目を離した隙に襲ってくる。けだもの」
「あのさぁ」
「こ、高校生の内から、そういうのは、ちょっと早いんじゃ、ないかな...?」
「あのさぁ」
「碧はそういうことしないといったでしょう?されても嫌ではないですが」
「あのさぁ」
無理だよ?
いくらスルースキルをパッシブ装備してたってこれは無理だよ?
危うく俺の声質がレグルレグナス...間違えたレグルスになるとこだったよ?てかなってたよ?
「なぁ初華、睦。俺はお前らに何をした?俺はそんな言われるようなことをしたのか?」
「祥(ちゃん)を奪った」
「...ごめんなさい」
もう耐えられなかったので普通に謝ろうそうしよう。
だってもうメンタル持たないもん。
「俺ごときがな、そうだよな...途中加入しといてな、おこがましいよな...はは」
「あの、違うんだ碧くん。そんなつもりじゃ」
「碧、違う。責めたかったわけじゃ」
「はぁ...いい加減になさい、あなたたち」
祥子が声とともにこちらに来て、俺の頬に手を添える。
「私のお兄様が、なんて顔してますの?」
「...いや、事実だと思ったから」
「だとしても、そんな顔していい理由にはなりませんわ。ほら、こっちを」
添えられた手に少し力が入る。
従ってそっちを向けば、祥子と視線が交わる。
「碧の目、綺麗ですわね」
「...祥子も、綺れ――っ」
言い終わるかどうかのうちに、口を塞がれる。
後頭部に手が添えられていて、息が続かない。
花呼吸をすればいいみたい話は聞いたが、咄嗟のことではうまく吸えない。
祥子の背中をタップすれば、ようやく口が離れてくれた。
「...少しやりすぎましたわね」
「祥、大胆」
「祥ちゃん、いつの間にそんな」
「相手を堕とすためならば、どんな手段も厭わないんですのよ」
てへっ☆と笑う彼女を見て思った。
絶対怒らせないようにしようって。
碧「睦はなんでそんなに俺をけだもの扱いするの?」
睦「だって、私がもう無理って言っても、『ごめん睦、でも睦のせいだから』って何度も」
碧「やってねえよ!!」