迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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碧くんの話です


38:自己の発露

――力貸せよ。

 

『オレか?』

 

――合わせるなら、お前がいい。

 

『分かった。本当にいいのか?』

 

――任せた。

 


 

『というわけだ』

「えーと...つまりルイナスは、楽奈の真似をするためだけに呼ばれたってこと?」

『そ。「練習するなら音が近い方がいい」ってことだな』

「だからって本物みたいな音出されても困るんだけど」

 

それはそうだ。

オレだってそう思う。

 

「というか、そのために呼ばれたお前はどうなの?」

『まぁ...ムジカ以外で出番ないし。ちょうどギター弾きたかったし』

「おまえはそれでいいの...?」

 

立希の困惑もわかる。

と、立希以外のメンバーから疑惑の目が向いてることに気づく。

 

『...あれ、もしかしてMyGO!!!!!とははじめましてかな?』

 

碧とは3度目ましてぐらいだと思ってたんだけどな、そう思っていると。

 

「...もしかして、モーティスちゃんみたいな感じ?」

 

と声が上がった。

 

『近いね、そよ。モーティスよりは単純だよ。ただの二重人格だからね』

 

二重人格が単純かと言われればそうじゃないけど、少なくともモーティスの無限人格チェンジよりは単純だろう。

 

「あれ?そよりん照れてる?」

 

よく見れば、そよの顔が少し赤い。

 

「照れてない。愛音ちゃんうるさい」

『仲良しでいいことだ』

 

ムジカのビジネス感も好きだが、やはり今の方が好きだ。

そして、MyGO!!!!!は、それとは違う空気感。

 

『さて、オレはまだまだやれるけど、どうする?』

「まだやるよ、当然でしょ。次、これね」

『ん~...はいよ、OK』

 

スコアの記憶はこいつの得意技だ。

記憶の共有ができるようになって、だいぶ楽になった。

もっと、降ろす。

RiNGの野良猫、エキセンティックガール...

 

『――バンド、やろ』

「ぁ、うん...っ!」

 


 

MyGO!!!!!用スタジオから出たオレは、休憩スペースで精神世界に深く潜る。

特に意味もない、体を返すために。

 

『は~...楽しかった』

「...相変わらず、楽しそうに弾くな」

 

碧は寂しそうな顔をする。

 

『当然だろ。...お前は、楽しくないのか?』

「...分からないんだ。楽しいはずなんだ。みんなと一緒に、音楽をやれる。それは、とっても楽しいことのはず、なのに」

『心の穴が、埋まらない?』

 

そう聞くと、碧はゆっくりと頷く。

いつまでも代替品であるという認識が抜けきらない。

祥子にギターが不可欠だと言われた時、きっと嬉しかっただろう。

それでも、埋まらなかった。

いや。

オレが()()()()()()()、そう言っていいだろう。

碧の理想像がオレ、ムジカの時はオレが出てしまうから、差は広がっていく。

碧のギターを、演技を。

オレは軽々と超えてしまう。

仮面がはがれた時ですら、碧は壊れてオレが出ずっぱりだ。

 

――オレの、せい。

 

「難儀だなぁ、自分に悩むなんて」

『...すまない』

「いいんだよ。俺は気にしてない」

『でも、それじゃお前が』

「いいって。俺はイレギュラーなんだってば。泡沫の夢でも、幸せだよ」

 

空元気で笑うなよ。

自分なんだから、そう思ってることが嘘だってオレが一番知ってる。

それに、これが夢じゃないことは、オレが一番よく知ってる。

だから。

 

『お前、ちょっと寝てろ』

「いや、いいけどさ。何するんだよ」

『お前がどれだけ愛されてるか、わからせてやる』

 

予定変更だ。

 


 

『ただいま戻りましまし』

「サポートお疲れ様です。浮気じゃなくて安心しました」

『オレにはムジカしかねえのよ、浮気なんかするかって』

 

――違和感。

 

「...祥」

「...なんとなく、わかりますわ。碧であって、碧ではない」

 

祥子には伝わったようだ。

 

「碧、お疲れ様ですわ」

『さんくす、やっぱ人のバンドの曲って難しいなぁ』

 

白々しい演技。

...自分が言えたことではないのは、百も承知だ。

 

「...碧なら、難しい。ルイナスなら、簡単」

『...さすが、モーティス。もうバレちゃうか』

 

モーティスじゃないけど、とても痛い目線が突き刺さる。

と思えば、すぐに碧がいつも向けるやさしい目になった。

 

『...ま、いいよ。ついでなんだけどさ』

 

ルイナスはその場に正座して、一言。

 

コイツ()を褒めてやってくれないか』

「...え?」

 

頭まで下げて、さらに一言。

 

『何をしてもいいから、こいつがムジカに必要だって、わからせてやってくれ』

 

 

  




碧くんは自己肯定感カスです
そうしないとムジカメンバー食い散らかすので(??)
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