「...褒める?なぜ?」
祥子が当然ともいえる疑問を口にする。
『こいつの自己肯定感が低いのは知ってるだろ?頼むって』
「...碧は、どうしてるの」
『ちょっと寝てもらってるだけだよ。ちゃんと起こすから心配すんな、睦』
少しだけ微笑んだように見えたが、すぐに厳しい顔に戻る。
...バレたかな。
「で、あおこを褒め殺せって話?」
『まぁそんなとこだ。頼めるか?』
「まぁ、あおこっていいとこいっぱいあるよね。山手線ゲームでもする?」
にゃむの発言に、他4人がポカンとする。
「...え、みんな知らない?」
「初耳ですわ」
「私も」
「さきことむーこは知ってる!ういことうみこは知ってると思ってたんだけど!?」
にゃむの視線が初華と海鈴に向く。
「...私、島生まれだから」
「私も俗世には疎いので」
「バンドなんて俗世の塊でしょ!じゃなくて!!使い方間違ってるし!!」
ツッコミのいれすぎで肩で息をしている。
『...大変だな、お前も』
「あおこ~!!」
よしよしと頭を撫でながらダメそうか?と聞く。
「山手線ゲームじゃなくてもあおこを褒めることはできるし!まず顔が良い!つぎうみこ!」
「そうですね...覚えが早いです。三角さん」
「えっと...優しい、所?さ、祥ちゃん」
「メンバーをよく見ていらっしゃいます。私の目の届かないところまで、よく。睦」
「...碧は、偉い。ずっと、頑張ってる。好き」
...聞いてるのかな、
「よし二週目!すっごい器用!」
「頭の回転が速いですね」
「ギターもベースも上手だよ」
「なくては、ならない音」
「ずっとここにいて」
――聞いてるか、碧。
『...ダメか』
「碧、帰ってこないんですの?」
『や、多分響いてないだけだ...代わりであることはちゃんと否定したんだけどな』
聞いてることは分かってるんだ。
「...ルイナス」
『睦?』
睦がオレの手を握る。
「碧の所に、連れて行って」
『いや...できなかないけど...帰ってこれる保証は』
「モーティスがいた時は、きっと碧がこうした」
『...帰ってこないって判断したら、引っ張り上げるからな』
睦は一つ頷いて、オレの手を両手で握って目を閉じた。
『祥子。睦を借りるぞ』
「えぇ。碧と共に帰ってくることを望みます」
『オレは?』
「...あなたは、ムジカの時だけでいいですわ」
『手厳しい。じゃ、行ってくる』
握られた手を包むようにもう片方の手を添えて、目を閉じた。
「...随分と、まぁ」
笑ってしまう。
あいつに主導権をあげたんだから、あいつが好き勝手やればいいのに。
ムジカの音に必要なのはあいつの音だ。俺じゃない。
「...いつまで、いじけてるの」
「あ?睦?」
「あんまり遅いから、迎えに来た」
どいつもこいつも。
「...いいだろ、ムジカに必要なのはあいつだ。俺じゃない」
「碧がいないとダメ」
「何がダメなんだよ。仲良しこよしは神様の意思に反するだろ」
「...祥は、そんな事言ってない」
いい加減、いやになってきたな。
「碧、どうして」
「...いやになったんだよ。あいつの方がギターが上手くて、演技も上手くて」
「聞いてたでしょ、みんな碧を待ってる。碧は碧だけ」
「そこにいるのは
「そんなこといわないで」
...思ったより低い声出るんだな。
「...なんで睦が怒るんだ」
「碧が好きって、前にも言った」
「寝言は寝て言え、俺はそう言うのに興味はない」
「嘘、下手。碧は、嘘が顔に出る。ルイナスも一緒」
睦は俺の手を握る。
「碧、一緒に帰ろう」
「ルイナスに引っ張り上げてもらえ。俺はいかない」
「碧が一緒じゃなきゃいや、私も帰らない」
そのまま座り込んだ。
伊達に精神世界にいない訳じゃないってことか。
「...お前がいなきゃムジカのギターは半分いなくなるんだぞ」
「2/3。ルイナスがいる」
「俺、お前のそういうところ嫌い」
本心じゃない。けど前から思ってたことでもある。
「...私は、碧が好き。碧と一緒だから、ムジカもできる」
「訂正しな。ムジカに入ったきっかけはあの神さまの補佐だろ」
「それもある。けど、ムジカの時は、碧といられる」
「前から思ってたけど。第一俺が好きって何?お前にとっての一番は祥子じゃないの?」
「祥は、もちろん大事、大好き。でも、碧への気持ちとは、違う好き」
睦は目を細めて笑う。
「だから碧。戻ってきて。嫌になったら、私と逃げよう」
「馬鹿言うな。できるかよそんな事」
吐き捨てながら立ち上がる。
ある意味では、もう逃げられないのかもしれない。
「人生あげるって言っちゃったしなぁ」
「就職先は、私の隣」
「それは笑っていいやつか?」
「...分かりずらかった?」
「...睦のそれはボケなのかマジなのか分かんねえって話だよ」
待っててくれるんだったら、もう一度やってやろう。
まだやれることがあるなら。
「なぁ、無事に帰れると思うか?」
「無事には帰れる。その後は分からない」
睦の腕が絡む。
「一緒に怒られてあげる」
「...頼んだ」
「碧、好き」
「...その答えを出すのはもうちょっと後な」
「むぅ」
――次メンブレしたら沈めるからな。
そんな声が聞こえた。
怖いこと言うな、俺の半身は。
おかえり、お前が帰ってこないとわかれ道書けないんだよ(メタ)