『ありがとう、ございました...!』
高松の声を合図に、ギターを置き、糸が切れた人形のようにその場に座る。
疲れ3割、緊張4割、その他3割。
後ろに下がる時間はない、このまま出続ける。
とはいえ暑いのでローブは脱いで隅のほうに置く、あとはスタッフさんに任せよう。
と、スポットライトが俺を照らす。
元々仮面で顔は見えづらくなってるが、一応目を閉じておく。
『...壊れてる?』
ルイナスの近くでしゃがみ込み、顔を覗き込むモーティス。
ルイナスの仮面を優しく外すと、ルイナスの顔が少しだけ歪む。
『いや、反応はある。寝てるだけだろう』
『ふーん。おーい新入り、起きた方がいいよ』
ティモリスの冷静な分析を受け、アモーリスが声をかける。
その声で目を開け、ルイナスがゆっくりと立ち上がる。
『...お前たちは?』
『死の騎士、モーティス』
『恐れの騎士、ティモリスだ』
『愛の騎士アモーリス、お前は?』
『...破滅の騎士、ルイナス...そうか、ここがパラディースス...』
あたりを見渡し、納得した表情をするルイナス。
『ルイナスにも、忘却したいものが?』
『この思い...忘れたいという、この気持ちを』
忘れたいという思いを忘れたい、などという矛盾。
それを叶えられうるのが、忘却の女神だという噂。
そんな最中、
『...来た』
モーティスが口を開いた。
モーティスの目線の先には、剣を持った女神:オブリビオニス。
それを理解した瞬間に、体が勝手に片膝立ちになり、跪く。
モーティス、ティモリス、アモーリスも同様だ。
『忘却の女神』
ティモリスが呟いたと同時に、アコレード*1を行うオブリビオニス。
同じことをアモーリスとモーティスに行うと、視線の先にいるルイナスに気づいて1歩踏み出し――止まった。
『放浪の騎士、破滅のルイナス。なぜここに?』
『どうもこうもない。あなたの騎士に、剣に...いや、盾になりに来たんだ』
『――それは、本心ですか?』
『...なぜ疑う?口から出るのは虚実でしかないからか?』
『そこではなく、なぜ
ルイナスの盾になる、という発言に、オブリビオニスは疑問を抱く。
ルイナスは、至極当然、といった顔で答える。
『最後の一人になっても、たとえ、この命尽きようとも。ここを...貴女を、護り通すためですよ』
『――いいでしょう。貴方にも、忘却の加護を』
『ありがたき幸せ』
ルイナスにもアコレードを行う――寸前で、「待って!!」という声が通る。
『はぁ、はぁ...ぼ、ボクも、あなたの、騎士に...剣に...!!』
そういって跪く、ベージュ髪の騎士。
それを見たオブリビオニスは、騎士のほうへ歩き、目の前で足を止める。
『何度、繰り返すのです』
『...え?』
『何度忘却させようと、ドロリス。貴女は必ずここへやってくる』
『ボク、は...ここに来たのは、初めてで...』
忘却の
そんなドロリスを、ルイナスが
『な、なに...?』
『加護は...ちゃんとかかってんだ。じゃ、アンタはそういうのに強いのか、あるいは』
ルイナスの指がドロリスの額に当たる。
『一生忘れられない経験をしたか、されたか...だな』
『ボクは、ただ...会いたくて』
『会いたいだけじゃここに来れないはずだ。少なくともそんな理由では来れない。――それが本当だとして、会いたいだけで女神の騎士にしてもらえるとでも?』
ルイナスは自分の
『ドロリス、自分が有用だってこと、示して見せろ。我らが女神のお眼鏡に叶うかは、それ次第だ』
『...わかった』
ドロリスが椅子の上の
それに続くように騎士たちが定位置につくと、舞台は暗転し、オブリビオニスにスポットライトが当たる。
『たとえ世界が忘れようと、神であるわたくしは忘れない。この黄昏の楽園に、君臨し続ける!』
肺に溜まった空気を吐き出し、熱が篭る会場の空気と入れ替える。
うまく演れてただろうか、顔は強張ってなかっただろうか。
様々な不安が心を覆う。
「大丈夫。かっこよかったよ」
背中合わせなのをいいことに、初華が耳元で囁く。
「...ありがと」
背中合わせで助かった。
今、自分の顔、誰にも見られてほしくない。
多分、むちゃくちゃ顔赤い。
だけど。
――楽しい。
やっぱり、ムジカが。
楽しい。
Q:どうして演奏パート書かないんですか?
A:書けない。楽器わからない。俺は雰囲気でバンドリを見ている。