迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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結末はいつだってそう


49:Semper idem est fīnis.

病院食ってマジで栄養だけしか補給できてない気がします。どうも碧です。

さて、入院から1週間たったんですが、いまだに体調は良くもなく悪くもなく。

3日に1回血は吐くし、原因不明の頭痛は走るし、外も自由に歩けないわでフラストレーションガン溜まりっすよ、えぇ。

一人だったらマジで病んでたかもしれないなぁ、ムジカのみんなに感謝しないと。

と、控えめにドアが開く。

 

「...お兄様」

「...一応、違うって言っとくぞ」

 

現れたのは睦。

断じて俺がお兄様って呼ばせてるわけじゃないのは、今ので読み取ってくれたと思う。

でも、なんかね。沁みる。

 

「じゃあ、お義兄さま?」

「変わってねえじゃん」

「兄じゃなくて、義兄」

「なおちげえだろ」

「碧がお婿さん」

「...それだと睦はお義兄さまって呼べなくね?」

 

言われてから少し考えたのち、はっとして口を両手で抑えた。かわいい。

 

「...呼べない。碧には孤児になってもらわないと」

「だったら俺が下になるんだよ。孤児って自分の年齢とか覚えてないだろ」

「碧、不謹慎」

「あなたがいったんですよ!?」

 

思わず大声になって咳き込んでしまった。いかんいかん。

血吐きすぎて若干喉痛いんだよね、つらい。

 

「大丈夫?」

「...まぁ平気。問題は、ない、かな」

 

咳き込んだ時の飛沫が布団について、それが若干赤い。

とうとう唾液まで血になり始めたか俺。

 

「ごめん、無理させて。碧の事お見舞いに来たのに」

「や、大丈夫。もう慣れだよ。それより、ムジカはどう?」

「祥、絶好調。この前、練習でキーボード逆弾きしてた」

「...あいつ器用だな」

 

饒舌に語ってくれる彼女は、ほんとはモーティスなのではないかとすら思える。

まぁでも、この目に映る情報は彼女を若葉睦だと判断しているので問題ない。

魂の知覚はできないが、外見としゃべり方からそいつがどう思ってるのかって当てるのは簡単だ。

後、モーティスならちゃんと許可取って出てくるはずだし。

 

「初華も、碧の所頑張るって、張り切ってる」

「...俺んとこはもともとなくてもよかったとこだからなぁ」

「パートはそう、だけど。いなくなったら、寂しい」

「...ありがとう」

 

必要とされているだけで、なんだか元気になれる気がする。

 

「睦は?」

「私は、寂しい。でも、碧のこと待ってるために、頑張る」

「ん、ありがとう」

「...撫でて」

 

さらさらの髪を崩さないようにやさしく撫でる。

 

「んふふ...」

「...よしよし」

 

息が荒くなるとこだけ除けば普通にずっと撫でていたくなるかわいさだ。

 


 

碧のお見舞いに来て、碧に撫でられて、気持ちよくなっちゃってる私がいる。

碧の手はあったかくて、優しくて、おっきい手で。

碧にはごめんって言われちゃったけど、いつか碧の病気が完治したら、もう一回告白する。

あわよくば、碧のやさしさを独り占めしたい、なんて。

 

ふと、頭の上の手が止まった。

 

「碧?」

「...ごめ――」

 

碧が謝るより先に、大きく咳き込んだ。

 

「――え」

 

以前から碧の咳に血が混じるのはわかってた。

けど。

 

「なに、これ」

 

多分、碧自身もびっくりしてる。

自分の手に収まらない量の血液を吐き出している、自分に。

 

「睦、ナースコールお願い」

「う、うん」

 

碧は冷静を装ってるけど、虚勢でしかないのはわかる。

 

――でももし、これがいつも通りなんだとしたら?

 

冷静なのはそのせい?いつも、こんなつらい思いしてるの...?

 

「碧、辛いなら誰かに」

「誰に相談しろって言うんだよ」

「え」

 

こんな冷たい声、初めて。

 

「こんだけ血吐いて、治んねえかもしれねえって言われて、めちゃくちゃ迷惑かけてるだろ」

「それ、は」

「いやいい。それは事実だ。こんな状態を辛いんです~って、誰に相談すんだよ」

 

無責任なこと、言えない。

私には、碧にそういうことを言う権利はない。

でも。

 

「あきらめちゃ、いやだ」

「は?」

「治らないかもしれない。もう、ムジカもできなくなるかもしれない。でも、私は、碧に諦めてほしくない。生きててほしい。ずっと、ずっと生きてて、欲しいから。碧には酷いことに聞こえるかも、しれないけど」

「...わかってんじゃん。それは呪いになるんだぞ」

「でも、私...碧がいない世界はいや。碧にはずっと、生きててほしい」

 

ずっと、酷い事を言ってる。

いつ死んでもおかしくないって、きっと碧はわかってる。

そんな人に生きててほしいなんて、烏滸がましいにもほどがある。

私は何もできないのに。

 

「...泣くなよ。俺が悪いみたいだろ」

「泣いたのは、碧のせい。責任取って」

「...血付いてるから拭えないんだけど」

「じゃあ舐めてもいい」

「いやだからさ」

 

せめて、わがままだけ言わせて。

叶わなくたっていいから、わがままを言わせて。

 

 

 




碧が病みにくくなったのも、睦が言い返せるようになったのも
お互いがお互いを支えあったからなんだなぁと
じゃあどうして睦√がIFなのかと言われれば...まぁ、はい。そういうことです。

率直に言って

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