アワーノーツのCBTに応募したはいいけど
ご応募ありがとうございますとかのメールが来ないのは不親切かも
コードを見る。指を置く。弦を弾く。
TAB譜を見る。調べる。弦を弾く。その繰り返し。
少なくとも記憶がなくなる前の俺は血反吐を吐くような思いでやっていたであろうことが、今の俺にはできない。
「指が痛くないってのも、よくないんだろうな...」
体は共通だから、指先はとっくに固まっている。
とても初心者の指じゃない。
体は覚えてるはずなのに、肝心の記憶がどうしたってないんだから、弾こうにも弾けない。
頭の中身だけとっかえたような、そんな感じ。
「お兄様、上がりましたわ」
「ん...じゃあ俺も風呂行くか...」
ギターを立てかけ、着替えをもって風呂に向かう。
もろもろの考え事ごと、お湯で流してしまおうね。
体を洗って、浴槽に体を沈める。
俺の体積分だけお湯が浴槽を超えていく。
肩までどころか口までどっぷり浸かって、ぷくぷくしながら考える。
今の俺の席が、ムジカに存在するのか。
ギターを演劇もできない俺が、果たしてムジカをやっていいのか。
そもそも。
俺という存在は、本当に必要だったのか。
このまま鼻まで沈めて息を吐いてしまえば、それだけで溺れて死ねる。
――いや、だめだ。
ここで死んだらあらゆる容疑が祥子にかかる。それだけはだめだ。
死ぬなら、だれにも見つからないようにひっそりとしなければならない。
そんな場所は知らないし、そもそも。
――そんなところに行ったとて、死ぬ勇気なんかないくせに。
心の中で、そう自分に問うた。
当たり前だ。死にたいと思って生きてる人間の、何割が自殺まで実行しただろうか。
しかも、見つからないような場所で、一人ひっそり、迷惑をかけまいと。
そんなのは一握りのはずだ。
肥大化した承認欲求、世界が悪いと他責を繰り返した果ての、世界に対する最大にして最初で最後の反抗。
何かをおかしいと思っていても、それをおかしいという勇気が起きないから。
あるいは、それを言っても変わらない、あるいは異端審問にかけられる。
それを恐れて、または命を以てどうにか対話が望める。
――人柱、あるいは証拠。
そんなのになる気はない。俺は俺として天寿を全うする。
「...まぁ、考えてもしゃあない」
できないなら、できるまでやるだけ。
席がないなら、席を作るだけ。
簡単なことだ。
顔を軽く叩いてから、風呂を出た。
「風呂出た~...あれ」
祥子がいない。一足先に寝たのだろうか。
「祥子...?」
呼びかけながら俺の寝室を開けると、俺のベッドの上で布団の塊が動いている。
聞こえていなかったのか、そこから顔が出てくる気配はない。
「祥子」
もう一度呼べば、布団の塊は一瞬動きを止め、続いて顔だけぴょこっと出てきた。
「あ、お風呂、上がったんですのね...」
「暑くない?何してんの?」
「...ちょっと、お兄様に包まれたくて...」
荒い息、紅潮する顔、布団に包まれ見えない下半身。
「...あぁ、うん...そういうの、本人がいないときにやんな?」
「誤解ですわよぶっ飛ばしますわ!!」
※誤解じゃないです
率直に言って
-
おもろい
-
おもろくない