迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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命が光る人形
あまりにも最近はまった作品がわかりやすすぎる


60:A pupa quae lucet in vita

ギター初心者だったのに、ムジカの曲についていけてる自分に驚いている。

いや、記憶自体はすべて帰ってきたわけじゃないし、あの夢?虚数空間?で得たギターの記憶だよりになっているが、それでも。

体は覚えている。心が、ムジカの曲を知っている。

ここまでやれればトンボの死後反応と言い訳もつくまい。

ルイナスが俺だったという確信を得られなければ、あの虚数空間にルイナスがいた理由もつかない。

他人の夢に侵入できるような秘密結社のエージェントではないのだし。

 

「...ふぅ」

 

黒のバースデイ、天球、Crucifixとやってきて、新曲のSophie。

スティックを置いたアモーリスが、驚愕の声を上げた。

 

「すっご...さっき一曲やってぜぇはぁしてたのに」

「思い通りに体が動けば苦じゃないよ。何曲だってやれる」

 

少し盛った。体は確かに限界が近い。

ゲームで言うなら、赤ゲージの体力を安い回復薬で黄色に戻しているだけの状態。

はったりもいいところだ。

 

「でも...あっ、ううん、何でもない」

「問題ないよドロリス。ルイナスとやってるみたいだったって言いたいんだろ」

「...うん。その、後ろの音聞いて、安心してた」

「それはよかった。でも、違うんだろ?」

「ルクシスの音、よかった」

 

ツインギターに褒められて、少し心地がいい。

新たに名を得て、少し気が緩んで、別の意味で締まったのかもしれない。

 

「やはり自己嫌悪によるスランプだったようですわね。体が覚えているなら、あとは自分自身が弾きたいと思うだけ。最もそれは、ここに来た時に、すでに克服していたようですが」

「...比べちゃったんだよね、ルイナスと俺を」

 

ルイナスの記憶があった俺は、控えめに言って天才だったんだと思う。

こんなプロ集団に紛れて、あらゆるフレーズを引くんだから、きっとメンタルも強かったはずだ。

対して、今の俺は?

ルクシスという名を得て、覚えてる感覚のままギターを弾く。

いうなれば、過去の遺物だ。

早々に脱却しなければいけない。

 

「なぜ比べる必要が?」

「...一応、ルクシスとしちゃ新参者なんだけど」

「えぇ。ですが、もうライブができるほどの力はありますよ?」

「あくまでルイナスが抜けた穴を埋められるぐらい、ってことだろ。それ以上になりたいんだよ、俺は」

 

無茶ではある。しかし無謀ではない。

人間の動きを最適化するだけだ。別に恐れることはない。

その時、空気が少し和らいだ。

 

「...碧」

「ん?」

「...いい顔になりましたわね」

「そう?」

「力強い目ですわ」

 

過去からの脱却、そして未来への貢献。

名に恥じぬ働きをしなければならない。

俺はムジカの光になるのだ。

 

 


 

『なら悪いけど、俺は光を探せない。――俺は、光を知らない。』

「必ずその先に光はある...か。お前がなっちまうとはなぁ」

 

奪ってきた記憶を再生しながら、一人呟く人形...その思念体。

かつての宿主は自分の名(ルイナス)を捨て、(ルクシス)を名乗った。

やれることは、もうない。

 

「ようやく体を全部返してやれるな。悪いことしたなぁ...」

 

ブロック領域にあった記憶は、ルイナスの存在を消すようにして保管した。

血統による病は、自分が引き受けることにした。

血も涙もない人形であるなら、コストぐらいは踏み倒せるだろうと。

後は一瞬だけ体のコントロールを奪って、その辺の人形にとり憑けば、これでおさらばできる。

原理的には不可能ではない、物理的に可能かはいったん置いておく。

 

「あ、そうだ」

 

ブロック領域に書置き(記憶)を1つ残して、彼は宿主の体から出て行った。

 

 




早いもんで60話ですって
いつも読んでくださりありがとうございます。
評価や感想、お気に入り登録など励みになっております。
あと40話とかその辺からおいてるアンケート、意外とおもろいに入っててうれしい限りです。

特に何かする予定もないです、キリがよかったんでちょっと畏まった挨拶でもしとこうと思った次第です。
これからもゆるりと続くと思います。ぬるい目で読んでくださいませ。

率直に言って

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