迷う心の在り処   作:ユイトアクエリア

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人形一年目


62:primo anno pupa

授業を受け、放課後は少しフライング気味に教室を出て、学校を後にする。

普段乗る電車より1本早いぐらいの時間に駅に着いて、抽象的なモニュメントの横で準備を始める。

 

路上でやるならアコギが映えると思って、アコギを持ってきた。

譜面は昨日覚えてきた。

ストラップをしっかりかけ、息を吐く。

 

「...~♪」

 

音を紡ぐ。

優しい音を。

誰も目に留まらずともいい。

これは俺の自己満足だから。

大衆の前で演奏する、その場数稼ぎのために、利用しているだけ。

だけど。

 

「...はぁ」

 

一曲やり終えると、疎らな拍手が聞こえてくる。

 

「...あはは、どうもどうも...」

 

どうも、俺は賛辞に弱いらしい。

 


 

帰り道、いつもは閑散としてる駅前が、今日は賑わっていた。

いつもは見向きもしないけど、今日は少し覗いてみようと思った。

別段どうということはない。家に帰っても暇だったし、今日はバンドの練習もないし。

 

「...神崎?」

 

賑わいの中心にいたのは、クラスメイトだった。

少し前に倒れたらしいと聞いて、今日は学校で久しぶりに見かけたけど、なんだか倒れる前より元気そうだった。

そして、神崎の手元にはアコースティックギター。

どうやら路上ライブ中だったらしい。

ちょうどいい、暇もつぶせるし、少し聞いていこう。

 

「じゃあ、2曲目。行きます」

 

そういって歌われた曲は、最近の流行のやつ。

アコギ仕様にちょっとスローテンポになってる。

でも、それよりも神崎の歌声。

優しいけど、芯がある歌。

感覚的には、三角さんのそれと同じような。

 

「...歌、うまいんじゃん」

 

もしかしたらボイトレとか受けてるのかな、なんて思いながら、演奏に耳を傾けた。

 


 

「やーどうもどうも。じゃあ、今日はこれで終わりなんで。風邪とかひかなきゃ2週間は来ますよ。それじゃ」

 

ぱっと荷物をまとめ、不満と期待の声と拍手を背中に受けながら駅に向かうと、目の前に見知った顔が立ちはだかった。

 

「それじゃ、じゃなくてさ。久しぶりに学校来たくせに、一言も話さすに帰るとか、何事かと思ったらこれ?」

「...久しぶり、()()

 

()()()()()()()()()()()呼ぶと、予想に反して彼女は血相を変えて睨んでいる。

 

「...っ、お前っ!」

「待て待て、そんな怖い顔すんなよ、せっかく美人さんなのに」

「...っ、お前、どういうつもり?」

「どういうって...場慣れだけど」

「はぁ?必要ないでしょ。何回ステージ立ってんのお前」

 

ここでようやく、彼女が俺をルイナスと勘違いしているのでは、ということを思い出した。

 

「立希。確認だ。お前は俺を誰だと思ってる?」

「誰って。ルイナスしかいないでしょ。神崎は普段そういうこと言わないから」

「...ま、だよなぁ。ちょっとだけややこしい話になるんだけどさ。聞いてくれよ」

「拒否権ないわけ?いいけど」

「いいんかい。んじゃ簡潔に――」

 

立希に事のあらましを話した。

俺がルクシスを名乗ることは伏せて。

 

「...あ、その...ごめん。私、その」

「いや、いいさ。しょうがないよ。でさ」

 

マスカレードの招待状を差し出す。

 

「来てくれよ」

「...予定がなければね」

 

そう言いつつ受け取ってくれるあたり、予定はないのだろう。

それを言うと何かやばそうだから黙ったけど。

 




人格消滅して記憶まで消えるのはどうなんだと記憶をそっと戻しておいたルイナス君ですが
全て神崎碧本人のセリフとして記憶されていたためにこんな勘違いを起こしています
誰も悪くないんだよ...(初期長崎)

率直に言って

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