「やーどーもどーも。じゃ、今日はこの辺で。明日が最後なんで、お願いしまーす!」
足早に片づけて駅のホームで電車を待つ。
放課後のタイミングの電車は満員率が高い。なぜなら帰宅ラッシュだからだ。
とはいえ、帰宅ラッシュになるには一本早い電車に乗る予定なのでぎゅうぎゅうになる予定もない。
そろそろ朝の6~8時と夕方5~7時ぐらいまでの電車を+5両できないか?押しつぶされて死んでしまうが。
まぁ事務所の過保護な大人の人に電話すれば車ぐらい回してもらえるのだが、駅前でそれをやる勇気はない。
あくまで俺はさすらいのギタリストなのだから。
まぁ、それはさておき。
「見にきてたなら言ってよ、初音」
いつの間にか隣に立っていた初華...初音に目を向ける。
身バレの観点からあえて本名で呼んでいるが、彼女の抵抗はだいぶ無いようだ。
「気を遣わせたらいやだったから。上手だね」
「やめろやめろ、親みたいなこと言うな」
くすぐったくて目を背けると、「ふふっ」と笑って続けた。
「だって事実だから。もともと上手だったのにもっと上手になっちゃったら、私勝てないよ」
「...俺が勝ったとて、ムジカのフロントは初音しかいないよ」
そのタイミングで電車が来た。
しかし、予想に反してそこそこみちみちだ。
「うげ、混み混みじゃん...」
「でも、これ乗らないと間に合わないね」
「乗るしかねえな...初音。手離すなよ」
そういって、手を握りながら満員電車に飲まれる。
「え?ちょ、ちょっと!?」
驚く声を無視し、ドア横のスペースに初音を押し込み、それを覆うように立つ。
「祥じゃなくてごめんな」
「な、何言ってるの...」
こういう役回りはきっと似合うだろうが、それはそれでいい的になってしまうだろう。
俺がシールダーにならなければならない。
「こんなに近いと嫌だろ。まして、元記憶喪失だし」
「ううん。嫌じゃないし...関係ないよ。碧くんは碧くんだもん」
「...ありがと」
事務所の最寄までは大体10分。
耐えてもらうしかないか。
「碧くん...もっと楽な姿勢にしなくていいの?」
「俺は別にこれでも...うおっ!?」
結構なカーブで電車が揺れ、その弾みで初華に近づいてしまう。
「悪い、平気か?」
「う、うん。大丈夫...」
初華の顔が赤い。
この状況では離れることも難しい。
「ごめん、我慢してくれ」
「...嫌じゃないから、大丈夫」
「...ありがとう」
...毎回思うけど、ムジカのメンバーってなんでこんなに顔がいいんだろう。
しかもみんな優しい、俺勘違いしちゃうんだけど。
「...っ」
「初音?」
「あ、その...ごめん。碧くんの、顔が、かっこよくて」
「...あんまこういうとこでそういうこと言うなよ」
シンプル恥ずか死しそうです。
あとアイドルやってる人間に顔いいって言われるとときめいちゃうからやめてほしいんだよね。
「あ、着いたよ」
「お、おう...降りるか」
乗車時と同様に手を引いて降りる。
と、俺の携帯が震える。
「ん、祥か...もしもし?」
『繋がりましたわ!今どこにいらっしゃるの!?』
「え、今最寄り駅だけど...?」
ふと壁面の電車案内電子盤を見た。正確には、その横についてる時計を。
――17:00。
「...何時集合だったっけ」
「...四時半?」
初音の回答を聞いた祥子が、電話口でもわかるようなため息をついた。
『...一旦無事だとは伝えておきますわ』
「...ありがと。急ぐよ」
『ゆっくり早くお願いいたしますわ』
「反対語って知ってる?」
この後事務所でめちゃくちゃ謝りまわった。
こういう平和回もあっていいかなって
いつも平和?それはそう
率直に言って
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おもろい
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おもろくない