これはきなこ餅さんの執筆されている
大江戸騒動記~棟平屋の軌跡~を元にウマ娘を掛け合わせたクロスオーバー作品です

ウマ娘成分は薄いですが、割とすぐに判ると思います

1 / 1
これは きなこ餅さんの執筆されている
大江戸騒動記~棟平屋の軌跡~をベースに時代劇風に書いて見たものです。

……ツイッターできなこさんがウマ娘×大江戸騒動記誰か書かないかな、とか言ってたから悪乗りしてみたら捕まったんだ!俺は悪くぬぇ!!


物の怪?少女の騒動記-江戸-

江戸にて当代の将軍、吉宗様との会談を終えたご老公、故郷水戸への旅路の途中、頬被りをした花売りの少女とでくわす。

十かそこらだろうというあどけない少女に、でれでれと相好を崩す八兵衛、それを窘めつつ親はどうしたと尋ねる格さん。ハナと名乗った少女は、両親は水戸と江戸の境で小さな宿場を兼ねた飯場をしているという。

飯と聞いて目の色を変える八兵衛に苦笑しつつ、少女の両親の店に向かう事にした御一行。大人の足に難なくついてくる幼子の姿に、助格と弥七が訝し気な目を向ける。飯場につくと、なにやらガラの悪い男が何人かで、店の主に暴行を加えていた。「おっとう!」と悲鳴を上げるハナの声を聞くや、助さん格さんの二人が一息に飛び出してごろつき共を取り押さえる。

 なんの積りかと詰問する格の言葉に、ごろつきの一人が「ここには狐狸の類が済んでいる、俺達はそいつと両親を追い払えと村のものに雇われただけだ」と抗弁すると、ハナの表情が曇り、俯く。それを見た弥七は、どういう事だと疑問を抱く。

 

 ご老公一向に助けられたハナの両親は、日も暮れてきたし、先ほどのお礼もありますので、とご老公一行を一晩供する事にした。

すっかりと一向になつき、ご老公に「おじいちゃん」と甘えるハナ、ご老公も相好が崩れまんざらでもない様子。それをにこやかに眺めるお銀の様子に「そういう顔してると、まるで孫を見守る祖母……」などと言いかけ、睨みつけられて沈黙する八兵衛、その様子に腹を抱えて笑う助格の二人だが、やはり銀に睨みつけられ、慌てたようにそっぽを向く。

 一行が美味い飯に舌鼓を打ち、男衆が風呂から上がってこの先の道行きについて話し合いを始めたころ、銀が風呂で湯を浴びようと浴室に向かう。浴室には既に小さな影があり、ハナが先に入っているのだろうと判断した銀はご一緒しても……と声を掛けようとして、しかし声は出さずに物陰に潜む。ハナの頭から、耳のような影が伸び、尻の少し上からは、ぱさぱさと動く尻尾のような影が見えてしまったが故に。

 狐狸の類、狐憑き……昼間男達が言っていた言葉が銀の脳裏によぎり、そんなものがある訳がないがしかし、という葛藤が僅かに物音を立てさせた。

 慌てたように少女が湯に飛び込む音が響く、ここで隠れているのは寧ろ良くないと判断した銀は当初の予定通り「ご一緒してもいいかしら?」と入っていくことにする。果たしてそこには、耳と尻尾をピンと立てたハナがどうしよう……という表情で湯舟に潜り込んでいた。一瞬は警戒した銀だが、すぐにご隠居が懇意にしているとある大商人の事を思い出し、あれに比べればと落ち着きを取り戻す。まるで悪戯をとがめられた子供のようにしょげるハナの姿を見て、誰が人を化かす狐狸の類だと思えようか。

 

 手桶に湯を移し、飛沫をたてないようにかけ湯をした後、わき、肘、膝の裏、指間、鼠経など汚れやすい所を流した後、年上の余裕、という訳でもないが女同士という事で、特に身を隠すでもなく、湯につかる。ちらちらと銀を見るハナに微笑みかけると、銀は彼女の頭を撫でた。その感触に擽ったそうに笑う童女の姿に、銀も笑みがこぼれる。やはりだ、このような子が人を化かす狐狸の類であるはずがない、ならば……

「ねぇ、あの時に、少し悲しそうな顔をしていたわよね?聞かせて貰ってもいい?力になれるかもしれないわ」

 

 お銀に促され、ハナがぽつぽつと話を始めたその頃

 

 光圀と助、格の三人は周辺で情報を集めてきた弥七からの報告を受けていた。なんでも最近、耳と尻尾を持った、とても身体能力の高い少女が現れる事があり、ハナもその特徴を持っている。そして、そういった少女を集めて賭け競争を行わせているごろつきの一団がいるとの事だ。ハナの父親を襲っていたのもその一味で、嫌がらせの類も繰り返し行っている。

 そう言えば、と助が思い出したように口にする。確か棟平屋の大旦那も同じような特徴を持っている少女を集め、なにか催しを行っていた。最も、そちらの方はきらびやかな衣装を身にまとった少女たちの競争の結果で、その後行う歌舞の立ち位置を決める、程度のもので賭けはご法度だったが……関連する絵巻や、少女たちの似顔の入った掛物や湯呑などが恐ろしい勢いで売れているのだとか。

 一行は顔を見合わせる、棟平屋程の規模ではできないが、真似事で稼ごうとしているごろつきがそういった少女達を集めて他の事業に「流用」していると既に弥七が探りを入れている。

 明確な悪行に、光圀の表情は険しいものとなる。しかし動けない、集まった情報はあくまでも噂、実態が掴めない以上は動きようはない、果たしてどう裏をとったものかと考えあぐねている所に、風呂から銀が戻ってくる。ハナから聞いた事、自分と言う存在が両親にまで累を及ぼし、苦しめている事を悲しむ少女の話を聞いて、八兵衛が「ご隠居、どうにかなりませんか?」と問いかける。

うぅむ、と悩む光圀、そこに、夜の帳を引き裂く悲鳴が響き渡った。

 

 慌てて母屋へと走る御一行、おり悪く、丁度子供を抱えた男達が走り去る所であった。弥七がすぐさま追いかけ、残った面々はそこに倒れていたハナの両親を助け起こす。幸いにして命に別状はなく、浅い傷で済んでいた事は僥倖だったと言えるだろう。

 助けられたハナの両親は、ハナが生まれた時耳と尻尾を持っていた事にたいそう驚いた事、しかし、誰よりも良い娘として育ってくれた異に喜びを感じていた事、そして、近頃どこかのごろつき達がハナを執拗に狙って攫おうとしていた事を語る。

 銀からハナが、自分がいる事で両親を苦しめているのではと思っていた事を告げられ、泣き崩れる両親。あんなに小さな娘にそんな事を考えさせてしまうなどと、あまりにも情けないと嘆く。それを見ていた光圀は、ただ一言「ならば、ハナちゃんを助けに参りましょう」と言い切った。

 

 

 ハナが連れ去られた先には何人もの耳と尻尾を持つ娘たちが捕えられていた。誰もが簡単に逃げられないよう縛り付けられ、俯き、途方に暮れ、悲しみに囚われている。彼女らが囚われている建物の外には、一人の忍。ハナの安全を確認した後、足音の一つも立てずにすっとその場を離れ、次の目的地へと向かう。影の中を縫うように動くその影を、見張りのごろつき達が見とがめる事は出来なかった。

 ごろつき達の親玉と一緒にいるのは、意外な事に大店、六紋屋の主だ。彼らはいい気分で酒を飲み、上等な食事にありつきつつ、次の勝負事をいつにするか、と話をしている。その天井裏に、求めていた情報を得られてほくそ笑む忍が隠れているなどとは想像だにせずに。

 

 

 翌朝、出立の準備を整えた一行に弥七が合流する、何事かを光圀に耳打ちすると、光圀は満足した様にひとつ頷いた。

「ご両親、ハナちゃんの居場所が判りましたぞ」そういう老人の笑みは喜色に彩られ、その内に極々わずかな狂暴さを潜ませていた。

 

 一行がごろつき共の屯している場所にやってきたとき、騒ぎは既に起こっていた。初老の男と、その配下らしい精強な青年に誘導されて、大きな屋敷から何人ものうら若い娘たちが逃げ出していく。「ありゃあ、棟平屋の大旦那じゃないですか?」と呟く格の言葉に、光圀はほほぅ、と目を細める。どうやら江戸に名高い大商人は見逃す事が出来なかったようだ。ともなれば、と近くを見れば何人ものごろつきに刃を向けられながら、それすら何のことはないという表情をしつつ、眼力一つで相手の動きを留める貧乏旗本の三男坊らしき男もやはり存在していた。

 ならば問題はない、とハナの両親を庇いつつ一行は混乱の中へと躍り込む。途中で果敢にも追って来たごろつきの一人を飛び上がりざまに両足で蹴っ飛ばした少女を助け上げつつ、逃げ遅れは居ないか尋ねると、首魁とその取り巻きが、最近掴まって来た小さな子を連れて逃げ出したとの事、一行はそれを追って走る。

 

 追いついた先に居たのは、ごろつきの親玉と大店の主、そしてそれなりの数の取り巻き達。追って来た一行を見るや、取り巻き達が襲い掛かる。「助さん、格さん、懲らしめてやりなさい!」光圀の鋭い言葉に従い、二人の偉丈夫が立ち向かう。果たして実力の差は恐ろしく、取り巻き達は次々と地に伏せ、痛みに悶え、或いは気絶していた。このままでは逃げられない、そう思ったのだろう、ごろつきの首魁がハナの首に長ドスを突き付け、一行を脅す。しかし、脅し文句が全て口から吐き出される事は無かった。不意に飛んできた風車がハナを抑え込む腕に突き刺さり、その痛みに拘束が緩んだ一瞬、ハナが暴れに暴れて拘束から逃れたが故に。倒れたハナに突き刺そうと振り下ろした長ドスは突如目の前に現れた女の振るう小刀に弾かれる。人質を奪い返されたごろつき達は、それでもあきらめる事無く、一行に襲い掛かる。その間に逃げようとする商人、その視線の先に一人の男が黒装束の忍二人を引き連れて現れたのはその時だった。

 

「静まれ!」大勢が決した頃、鋭い声が響く。発したのは二人の偉丈夫。なおも抵抗しようとするごろつき共を叩きのめしながら、静まれ静まれと繰り返す。

「ここにおわすお方を何方と心得る!畏れ多くも先の副将軍、水戸光圀公にあらせられるぞ!!」取り出した印籠に描かれた三つ葉の葵を見て、ごろつき達と宿場の一家の顔色が変わる。

「皆のもの、御老公の御前である!頭が高い!」その場にいる一行以外の誰もが、地に膝を付け、頭を下げる。

「己が欲望と利益のために数多くの娘たちを捕え、あまつさえ穏やかに暮らす家族から一人娘を誘拐するその所業、断じて許す訳にはいかぬ、相応の罰が下されるものと知りなさい」眼光鋭く、威厳を決して損なわぬ声で、光圀はごろつき達にそう告げた。

 

 そして、どこかの三男坊という名の吉宗公に見つからないようにハナとその両親を連れ立って、宿場へと戻った光圀たちは、その翌朝、出発の準備を整えていた。

 

「ほんとうに、この度はなんとお礼を申したらいいか……」一家総出で見送りをする宿場の家族に、気にする事はありません、と光圀が笑いかけて見せる。その様は正しくただの好々爺であり、為政者としての気配は感じさせぬ者であった。

「これからも、一家助け合って、仲良く暮らすんですぞ」最後に礼をかわすと、水戸への路へと向き直り

「では皆さん、参りましょうか」

御老公一行は、再び水戸への道を歩き出すのであった。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。