ファンタジー学園ゲームに転生したので金魚のフンになります 作:テムテムLvMAX
学園でのテストを乗り越えた僕達は土産を買い漁ってから帰路についた。
まだあのワイバーンは見ていない、いつ来るのかとヒヤヒヤするのでいっそこちらから探し出して討伐してやろうかとも考えた。まぁ無理なんですが。
だってあいつ強いもん‼
よって遭遇してから考えようと思う。
それよりも僕達はアルカ王立学園に入学するチケットを手に入れた、これからの学園生活を夢見て頬が緩むのが普通の感性だろうね、でも僕はこの世界の成り行きを知っているので余裕ぶっこいて死にたくありません。
なので救世主になり得る主人公様の金魚のフンになろうとしたわけですよ。
その計画の第一歩が刻一刻と近付いてくると、不安や心配を考えては消して考えては消しての繰り返しで、本当に主人公が居るのか? そもそも魔界王イビルも復活するのだろうか?
僕はここで何者になればいいんだ?
そんな弱気な気持ちはある、でもそれ以上に本当に主人公が居て魔界王イビルも復活するんだったら取越苦労になっても何かしなきゃと思う。
構えると大体良くないことが起きるから準備だけしっかり整えたらあとは自然体にして待てばいいのかな。
矢面に立つ主人公の背を支える、それがこの世界で生きる僕の役目じゃないかと最近思う。
結局は金魚のフンってことだ。
◆
「エリンさん! 行きましょう」
「はい! レッツゴーです!」
「全くいつまでも子供は子供じゃの……程々にせいよー」
入学式! あぁ素晴らしいな! この時を待ち侘びたぞ!
僕も転生前の世界の記憶は薄れてきたがどちゃくそやり込んだ『アシタナイト』の内容は隅から隅まで記憶している。
このイベントだけは逃さない逃せないと、個人的に重要視しているものが『入学式』である。
入学式って別にゲームなら導入の部分でどのヒロインルートにも関わらないイベントだが、主人公と僕にしてみれば大事なイベントだ。
主人公は故郷の村を離れ、親戚筋のツテで学園へノーマルクラスで入学する。今まで聞いたことも見たこともない学園の景色に戸惑いつつも主人公は学園の入学式に出席し生徒会長であるメルディエル・コーンズウェルから新入生代表として意気込みをコメントするように求められ、ここはプレイヤーによって選ぶ選択肢は変わるがその後の流れは同じで意気込みを気に入ったメルディエル先輩が主人公を特別訓練生に、つまりはメルディエル先輩の弟子にすると宣言し会場は大荒れ、入学式は波乱の幕引きとなる。
ゲームと同じなら主人公はメルディエル先輩に目をつけられた人間ということだ。
今まで主人公主人公と言って来たが正確な容姿は知らないしましてや性別なんてゲームならどちらも選べた、よって主人公を特定するのは至難なのだがメルディエル先輩が選ぶという一点だけは確実に分かっている。
「ワシは待っておるから二人で行ってこい」
コウテン様はカフェで待機、テストのときにも思ったけど竜族は目立つ筈なのに誰も反応していないのは気配の消し方が上手い証だ。やっぱ凄えや。
クーネさんと二人で入学式会場へ向かうと受付の為に長い列が出来ているので若干待ち時間が発生。面倒くせーこの列ふっ飛ばそうぜ(頭爆裂)
「あの、貴方もノーマルクラス? だったりする?」
「え~と……どこでしたっけエリンさん?」
「あ! ノーマルクラスです」
うっそぉ! ここで来るとは思ってなかったぁ!
衝撃的過ぎて頭が止まった、僕の目の前にいるこの少女は『シドリー・ベルケンス』主人公の幼馴染だ。例に漏れずヒロイン。
冒険者一家ベルケンス家に生まれた才女で幼少から主人公と知り合い、一度は引っ越して離れたが学園で再会することになる。
サイドテールのよく似合う桃色の髪の女の子、プレイヤー界隈では婬ピとか言われる可哀想な子、風評被害です。実際はムッツリだから。
「あぁ良かった、同じクラスの子がいて気が楽になったよ」
「それはこちらも同じです、お名前はなんですか?」
「シドリー・ベルケンス、そっちはエリン・サーディブル君だよね? 今人気沸騰中の魔術屋エリン、有名だよ。
で、貴方がクーネ・キングガードさん、だったよね?」
「あれぇ? 名前教えましたっけ? 私」
「新入生の名前くらい学園に張り出されるけど?
まぁ同じクラスなんだし敬語は無しにして友達になろーよ」
「ハイです! よろしくですぅ! シドリーちゃん!」
シドリーの提案にノリノリのクーネさん、同年代の同性の友達が少なかった事もあってかなりテンション高めになっている。かわいい。
「入学式って何するんだろうねクーちゃん」
「クーちゃん! はいクーちゃんはきっと偉い人が長いお話をすると思うのです!」
「程々にしないと変な目で見られてますよ、クーネさん」
「はっ!?」
クーネさんいちいちリアクションが面白いな、あれこんな感情表現豊かだったっけ? 初対面の印象から結構変わったなぁ。
このあともクーネさんとシドリーの女子トークは続き、あっという間に受付まで来てしまった。楽しい時間は早く過ぎるとはよく言ったものだね。