この素晴らしい世界に盗賊を!   作:ハウンド・ドッグ

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 前半はカズマ視点、後半はハルト視点です。
 どうぞ、ごゆるりと!


このどうしようもないパーティーに祝福を!

「うぇぇ……ぐすっ……生臭いよう……生臭いよう……」

 

「カエル嫌い……滅べばいいのに……」

 

 俺の後を粘液まみれになったアクアとハルトがついて来る。アクアはめそめそ泣いており、ハルトは虚ろな瞳で物騒なことを呟いていた。

 

「カエルの中って……臭いけど良い感じでぬくいんですね」

 

「知りたくもない。そんな知識」

 

 アクアやハルトと同じように粘液まみれになっているめぐみんは俺の背中におぶさっていた。現在魔力が枯渇している為、歩くこともままならないそうだ。

 

「爆裂魔法は緊急の時以外は禁止な。これからは他の魔法で頑張ってくれよ」

 

「使えません」

 

 即答だった。

 

「は?」

 

「私は爆裂魔法しか使えないんです。他には一切、魔法は使えません」

 

「…………マジか」

 

「…………マジです」

 

 四人を沈黙が包み込む。

 

「え……爆裂魔法が使えるなら他の魔法だって使えるでしょう? 私なんか、宴会芸スキルを習得してからアークプリーストの全魔法を習得したし」

 

「……宴会芸スキルって何なのさ……」

 

 ハルトの言う通りである。宴会芸スキルって何に使うんだ本当に。

 

「私は爆裂魔法をこよなく愛するアークウィザード。爆発系統の魔法が好きなんじゃないんです! 爆裂魔法だけが好きなのです!!」

 

「ぐえっ!?」

 

 めぐみんが俺の首に回した手に力が込められ、思わずカエルのような間抜けな声が出てしまった。

 

「勿論、他の魔法も覚えれば楽に冒険が出来るでしょう。……でと、ダメなのです!! 私は爆裂魔法しか愛せない!! 例え一日一発が限度でも、魔法を使った後に倒れるとしても!! それでも私は……爆裂魔法しか愛せない……!! だって私は……!!」

 

 めぐみんは天上に掲げた手を一気に振り下ろし、払う。

 

「爆裂魔法を使う為だけに、アークウィザードの道を選んだのですから!!」

 

「……素晴らしい! 素晴らしいわ! 非効率ながらもロマンを追い求める姿に私は感動したわ!!」

 

 ……マズい。この魔法使いはダメな系だ。よりによってアクアが同調しているのがその証拠だ。今だって互いにドヤ顔でサムズアップしてるし。

 俺はこの二回の戦いで、どうにもこの女神、ちっとも使えないんじゃないかと疑っている。ハルトは上手くやっていると思う。今はカエルに対する呪詛を漏らしながら蹲ってるけど。

 ……はっきり言って、これ以上の問題児は御免だ。

 

「……そっかぁぁ! 多分、茨の道だけど頑張れよ! ギルドに着いたら報酬は山分けで、機会があったらまたどこかで会おう……うぐっ!?」

 

 俺を掴むめぐみんの手に力が込められる。

 

「……我が望みは爆裂魔法を撃つことのみ。なんなら、無報酬でも良いと考えております。そう……アークウィザードの強力な力がぁ……今なら食費と雑費だけでぇ……! これはもう、長期契約を交わすしかないのではないだろうか……」

 

「……カエル嫌い」

 

「いやいやいや! その強力な力は俺達みたいな駆け出しの弱小パーティーには宝の持ち腐れだ!!」

 

「……カエル滅すべし」

 

「いえいえいえ! 弱小でも駆け出しでも大丈夫です! 私も上級職ですけど、レベル6ですから。ねえ、私の手を引き剥がそうとしないで欲しいです!」

 

「……カエル嫌い」

 

「いやいやいやいや!! 一日一発しか使えない魔法使いとか無いわー!!」

 

 くっ……コイツ。魔法使いのくせに意外な握力を……! あとハルトはいい加減立ち直ってくれ。

 

「おい放せぇぇ!! お前、他のパーティーでも捨てられたクチだろ!? 放せって!!」

 

「……カエル滅すべし」

 

「というか、ダンジョン潜った時には爆裂魔法なんて狭い中じゃ使えないし、いよいよ役立たずだろ!!」

 

「ちょっ!? やめてよ顔にかかってる!!」

 

 めぐみんが俺の背中で暴れているが為に飛び散ったカエルの粘液がアクアにかかるが、今それに構っている場合じゃない。

 

「もうどこのパーティーも拾ってくれないのです! 荷物持ちでも何でもします! お願いです! 私を捨てないで下さいぃぃ!!」

 

 俺の背中からめぐみんは一向に離れてくれず、大声で叫び続けるので粘液まみれでただでさえ衆目の視線を浴びているのに、これに更に奇異なものを見る視線が容赦無く突き刺さる。

 

「やだ……あの男、小さい子を捨てようとしている……」

 

 …………え?

 

「隣には粘液まみれの女の子と男の子も連れてるわよ……」

 

「あんな小さい子を弄んで捨てるなんて……とんだクズね!」

 

「見て! 皆ヌルヌルよ! 一体どんなプレイしたのよあの変態!」

 

「ち、ちがぁぁぁぁう!!」

 

「くぁwせdrftgyふじこlp……」

 

 三人の御婦人が俺達の様子を見てあらぬ誤解をしている。めぐみんはそれを聞くと、何やら怪しげな笑みを浮かべた。その様子を見て、俺は背筋が凍る程の恐怖を感じる。そして、めぐみんはこう叫んだ。

 

「どんなプレイでも大丈夫ですからぁ!! 先程のカエルを使ったヌルヌルプレイだって耐えてみせ」

 

「うわぁぁぁ!? よーしわかった! これからもよろしくなぁ!!」

 

 キャー、と叫ぶ女性達に色々と手遅れになっているような気がするが、これ以上の悪評を拡げない為にも俺は必死でめぐみんの口を塞ぐのであった。…………いい加減ハルトは立ち直ってくれ。

 

──このすばぁ!(四人で)──

 

 ザパァァー…………

 

 俺こと、沖田陽斗が異世界転生してから一ヶ月と少し。一悶着はあったものの、本日無事にパーティー加入を成し遂げた俺は皆でジャイアントトード狩りへと赴いた。

 俺とカズマ、アクア、めぐみんの四人で挑んだのはいいものの、結果はぐだぐだで散々たるものであった。アクアが食われ、めぐみんが食われ、最後は俺も食われた。

 ……というか、無闇に突っ込んでいくとかバカなのあの女神は!? ああそうか、駄女神だからか。一発しか放てないってどういうことよ!? ロマン砲かな……ってそうじゃなくて。

 討伐数は四匹。内訳はカズマが二匹、めぐみんが一匹、俺が一匹だ。アクア何もしてないじゃん。はぁー……つっかえ。

 街に戻って俺達ヌルヌル組はカエルの粘液をこうして洗い流す為に大衆浴場に駆け込んだ。……この為に浴場に来るのって久しぶりだわ本当に。

 

「はぁぁあ"あ"あ"…………」

 

 前途多難過ぎて溜息が出てしまう。

 アクアが食われ、引き摺り出す為にカエルの喉笛にダガーによる一撃──これは上手くいった。二週間で編み出した我流の戦闘(コンバット)スタイル、〈強襲(アサルト)〉も上手く出来た。

 因みに……〈強襲〉は守りを捨て、敏捷に身を任せて対象の懐に飛び込みダガーの間合いに持ち込んだ上で致命傷を与える戦闘スタイルだ。

 アクアを引き摺り出してカズマ達と合流した時には既にめぐみんが爆裂魔法の衝撃で目覚めたカエルに食われており、カズマがそのカエルを倒した直後、更にもう一匹のカエルが出現した。もう二人が戦闘不能となっていた。カエルとの距離は俺が近かった。

 ……仕方無く、仕方無く俺は囮になることを選んだ。あれ程カエルで嫌な思いをしたが、全滅を回避するにはこうする他無かった。後のことをカズマに任せカエルに俺は食われたのだが……はい。はっきり言ってトラウマになりました。精神の深淵を覗きかけました。カズマが助けてくれるのがあと少し遅かったら晴れて俺は変態の仲間入りを果たしておりました。

 思い出しただけでも身の毛がよくぁwせdrftgyふじこlp…………取り乱した。どうも精神が乱れると言語化不可能な言動をしてしまう。

 まあ、つまりだ。

 SAN値チェックに失敗して発狂するでもなく、変態にジョブチェンジするでもなく済んだのはカズマのおかげなのである。おかげ様々なのである。幸運値が突出して高いようなので、拝んでも損は無いと思う。今度、そこそこ高いメシでも奢ってやろう。

 今回のクエストの成功報酬は十万エリス。これに加えて爆裂魔法で跡形も無く吹っ飛んだ一匹を除く三匹分の買取金額を足して十一万五千エリス。四人で山分けすると一人二万八千ちょい。日本円にして二万八千円程度……死ぬ思いしたにも関わらず、割に合わない。確かに酒場でバイトしてた時の日給七千エリス、それも時給四百程度に比べたら高収入なんだろうけども。

 と、まあそんな風にこの先のことを憂慮しながら浴場を出て、脱水乾燥出来る洗濯魔導具に入れていた俺の服を取って着る。

 報酬の山分けをする為に、カズマがギルドの酒場で待ち合わせ場所に指定した席に来ると…………何故かカズマが項垂れていた。

 

「…………どったのカズマ」

 

「はいカズマです…………このパーティー、もうダメかもしれない…………」

 

 曰く、危ない目をしたクルセイダーが訪ねてきたらしい。

 

「…………苦労してんね」

 

「…………他人事みたいに言うなよ」

 

 前略。

 日本の父さん、母さん、まだ見ぬ下の弟妹へ。

 俺は転生したこの、どうしようもない異世界で今日もどうにか生きてます。魔王を倒す為に冒険者をすることになった、と聞いたらさぞ驚くことでしょう。ですが…………パーティーメンバーには恵まれていないようです。

 本当に、どうしてこうなった。

 




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