この素晴らしい世界に盗賊を!   作:ハウンド・ドッグ

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 今回は三人称視点です。
 どうぞ、ごゆるりと!


この盗賊に先輩を!

「貯まったポイントでスキルを習得出来るんだよな?」

 

 ジャイアントトード討伐の翌日。カズマ達はギルド内の酒場で遅めの昼食を取っていた。アクアは宴会芸スキルで客を賑わせ、めぐみんはカズマの隣で一心不乱に定食を食らっていた。ハルトはまだ来ていない。

 

「まずは誰かにスキルの使い方を教えてもらうのです。すると、カードに項目が現れるので、ポイントを使ってそれを選べば習得完了なのです」

 

 そう。初期職業たる冒険者は誰かにスキルを教えてもらう必要があるのである。

 

「……つまり、めぐみんに教えてもらえば俺でも爆裂魔法が使えるようになるってことか」

 

「その通りです!!」

 

「うおっ!?」

 

 カズマの一言に食いつくめぐみん。

 

「その通りですよカズマ! 爆裂魔法を覚えたいなら幾らでも教えてあげましょう! というか、それ以外に覚える価値のあるスキルなんてありますか? いいえ、ありませんとも。さあ! 私と一緒に爆裂道を歩もうじゃないですか!!」

 

(顔が近い……!)

 

 カズマはめぐみんの肩を掴んで自分から離す。

 

「ちょ……落ち、落ち着けロリっ子! つーか、今3ポイントしか無いんだが……?」

 

「ロ……ロリっ子……!?」

 

「……あれ?」

 

 めぐみんはその目元に影を落とし、モソモソとソーセージを食べる。

 

「ふ……この我がロリっ子……」

 

 カズマの一言が凄まじいダメージを生んだのか、しょんぼりと項垂れるめぐみん。カズマは若干気不味そうに溜息を吐く。

 

「おっはろー…………」

 

 大きなあくびをしながらハルトが酒場に入ってきた。カズマは片手を上げてそれに返答。めぐみんも会釈で返した。

 

「遅かったな」

 

「あー……カエルに食われたせいで嫌に疲れてなー……さっき起きたばっかり。……俺、これお願いしまーす」

 

「かしこまりましたー!!」

 

 カズマの問いにゲンナリとした様子で返し、通りがかった店員に野菜スティックを注文する。

 

「あ、そうだ。ハルト、お前盗賊だろ? 何か使えそうなスキルとか無いか?」

 

「あーそっか。カズマって冒険者だったね。スキルの殆どが習得可能っていう。そう……だなぁ。俺もまだ盗賊になってから日が浅いしなぁ……教えるの自信無いなぁ…………」

 

「そうか……」

 

 と、その時。

 

「────探したぞ」

 

 カズマはその声を聞いて振り返る。

 

(しまったぁぁ!?)

 

「昨日の呑み過ぎたとか言ってすぐに帰ってしまったが……」

 

「お、お気遣い無く……!」

 

(カズマがすぐ帰った……? ってことは仮病使って戻って来たのか)

 

 ハルトはこの女騎士が昨日カズマが言っていた危ないクルセイダーなのだ、と勘付いた。あの後、一度帰ったふりをしてクルセイダーを撒いた後、戻って来て項垂れていたのだろう、と思い返しながら。

 

(やんわり断ったつもりだったのに……! 俺の意図が全然伝わってねぇ……!)

 

 カズマは狼狽を隠しながらそのクルセイダーの話を聞く。

 

「ならば、昨日の話の続きをさせてもらおう。私を貴方のパーティーに入れ──」

 

「お断りします」

 

「んっ……くぅ……!! 即断、だとっ……!!」

 

 身を捩り、頬を赤らめるクルセイダー。その様子を見ていたカズマとハルトはドン引きする。

 

「あはは! ダメだよダクネス! そんな強引に迫っちゃさ」

 

 そのクルセイダー──ダクネスの肩をぽんぽんと叩きながら明るい雰囲気の銀髪の少女が笑いかける。

 

「ええと……貴方は……?」

 

「あたしはクリス。見ての通り盗賊だよ! この子とは友達かな」

 

「おー……ってことは盗賊の先輩かぁ。俺、ハルトっていいます。盗賊やってます」

 

「俺はカズマっていいます! よろしくお願いします!」

 

 まともそうな人で良かった、と二人は内心で安堵した。

 

「君! 見た所、役に立つスキルが欲しいみたいだね! 盗賊系のスキルなんてどうかな? 習得にかかるポイントも少ないし、お得だよ。何かと便利だしね。……っと、そっちの君は盗賊だよね? スキル、教えてやらなかったの?」

 

「ああ、その……盗賊になってからまだ日が浅くて……こういうのは、ベテランに任せた方が良いんじゃないかな、と。ってことなので、ここはクリスさんに頼みたいです」

 

「そういうことね! オーケー、いいよ! さて、カズマくん! 今ならクリムゾンビア一杯でいいよ?」

 

 安いな、とカズマは驚く。

 

「お願いします! すみませーん! こっちの人にキンキンに冷えたクリムゾン一つ!!」

 

──このすば!(クリス)──

 

 カズマとハルトはクリスとダクネスに連れられ、人気の無い場所に来ていた。カズマはクリスに盗賊スキルを教えてもらう為に、そしてハルトはカズマの付き添いと同時に見学の為であった。

 

「じゃあ、まずは〈敵感知〉と〈潜伏〉をいってみようか。〈罠解除〉とかはこんな街中に罠なんて無いからまた今度ね。えっと……ダクネス、ちょっと向こう向いてて?」

 

「……わかった」

 

 ダクネスはクリスに言われた通りに反対側を向く。クリスはそれを確認すると少し離れた場所にある樽の中に入り、ひょこりと上半身を出す。そして、ダクネスの頭にぽいっと石を投げつけ樽の中に身を隠した。

 

「…………」

 

 石をぶつけられたダクネスは無言のまま、一つしかない樽へとスタスタと歩み寄っていく。

 

「敵感知……敵感知……。ダクネスの怒ってる気配をビリビリ感じるよ! ねぇダクネス!? わかってると思うけど、これはスキルを教える為に仕方無く……って、ああああああああああ!? やめてえええええええええええええ!!」

 

 クリスは隠れていた樽ごと横に倒され、ゴロゴロと転がされた。

 

「…………愉悦」

 

「…………今、愉悦って言ったか?」

 

「言ってない」

 

「言ったろ」

 

「言ってない」

 

 無いったら無いのだ、とハルトは言い張るのであった。カズマは思う。コイツ、実はアクアやめぐみん、ダクネスに負けないくらいヤバい奴なんじゃないか、と。

 

「と、まあ……盗賊系のスキルには〈敵感知〉とか〈潜伏〉とか色々あるけど、特にあたしのイチオシはこれ」

 

 クリスは転がされて酔っているのかフラつきながらも説明していく。

 

「いくよ、よく見てて。───スティール!」

 

 クリスが手を前に突き出し叫ぶと同時に、その手の隙間から光が漏れ出す。光が収まった後、手を開くと小さな物が乗っていた。

 

「あ、俺の財布!」

 

「これが、窃盗スキルの〈スティール〉。対象の持ち物を何でも一つ、ランダムで奪い取るスキルだよ。成功確率はステータスの幸運値に依存するよ。強敵と相対した時に相手の武器を奪ったり、隠しているお宝だけ掻っ攫って逃げたりと、使い勝手の良いスキルさ」

 

「へぇ〜……」

 

「なるほどぉ……ってことは幸運平均の俺にとっては死にスキルじゃないですかやだー……」

 

 スキルポイント無駄遣いしたかもな、と乾いた笑みを浮かべながら項垂れるハルト。クリスはその様子を見て、面白そうにイタズラっぽくクスクスと笑いながらカズマに財布を返そうとするが、その手をピタリと止めた。

 

「……ねぇ。あたしと勝負しない?」

 

「……へ?」

 

 突然の提案にカズマは間抜けた声を出す。

 

「君も盗賊スキルを覚えてこの財布を取り返してみなよ。冒険者、なんでしょ? だったら、危ない橋も渡らなきゃ」

 

 ハルトはその言葉を聞き、これは面白いものが見られそうだな、とわくわくした目を二人に向ける。

 

(高い授業料ってワケか。でも、こういった、荒くれた冒険者同士のやり取りみたいで憧れる!)

 

 やっと冒険者らしいイベントが来た、とカズマは興奮する。

 カズマは己の冒険者カードを確認すると、クリスに教えてもらったスキルが習得可能スキル欄に表示されていた。それぞれ1ポイント。合計3ポイント分が消費され、残りスキルポイントが0になる。

 

「早速覚えたぞ。そして、その勝負乗った! 何盗られても泣くんじゃねーぞ!」

 

「いいぞやったれカズマ」

 

「いいね! ノリのいい人って好きだよ! さあ、何が盗れるかな?」

 

 右手を突き出すカズマにクリスは不敵に笑う。

 敢闘賞は財布。当たりは魔法が掛かったマジックダガー。マジックダガーに関しては四十万エリスは下らない一品だそうだ。

 そして……残念賞は石。ダクネスにぶつける為に拾っておいた、その辺に落ちていた石だ。クリスは石を得意気に見せつける。

 

「ああっ!? きったねぇ!! そんなのありかよ!!」

 

「そうすれば確かに対策になるなー」

 

 ハルトは呑気なことを呟いているが、全く以てその通りだ、とカズマは歯噛みする。ゴミアイテムを多く持っていればそれだけ大事なアイテムが盗られる確率を下げられるのだから。

 

「これは授業料だよ。どんなスキルも万能じゃない。こういった感じでどんなスキルにだって対抗策はあるもんなんだよ。一つ勉強になったね! さあ、いってみよう!」

 

 ここは異世界。弱肉強食の世界ならば、騙される甘ちゃんが悪いのである。だが、勝負の分が悪くなったものの、残念賞に当たるとはまだ決まっていない。

 

「よし、やってやる! 俺は昔から運だけは良いんだ! ───スティール!!」

 

 カズマが突き出した右手が光り、その手に確かな感触が。カズマはその手をゆっくりと広げた。

 

(…………ありゃりゃ)

 

 握られた物にハルトは目をぱちくりとさせる。

 それは一枚の白い布切れだった。

 それが何であるかを認識すると、カズマはこう叫んだ。

 

「ヒャッハァァァ!! 当たりも当たり、大当たりだぁぁぁぁ!!」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!! ぱ、ぱんつ返してぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「カズマ、セクハラですぜ」

 

 クリスはスカートの裾を抑えながら絶叫した。ハルトはその涙目のクリスとゲスい笑みを浮かべながらクリスのぱんつを振り回すカズマをケラケラと笑いながら眺めていた。

 

──このすば!(カズマ・クリス・ハルト・ダクネス)──

 

「あっ! ちょっとカズマにハルト! やっと戻ってきたわね……って、その人どうしたの?」

 

 宴会芸を披露し、一丁前に一流芸人のようなことを言っていたアクアは戻ってきた四人、特に涙目のクリスに興味を抱いた。

 カズマが説明するよりも早くにダクネスは口を開く。

 

「うむ。クリスはカズマにぱんつを剥がれた上に有り金毟られて落ち込んでいるだけだ」

 

「おいあんた何口走ってんだ!」

 

「事実でしょ?」

 

「待て、おい待て! 間違ってないけど」

 

「認めたねぇ」

 

「オイ待て。ほんと待て。ハルトお前はちょっと黙れ誤解が……!!」

 

「公の場でいきなりぱんつ脱がされたからっていつまでもめそめそしててもしょうが無いね! よしダクネス。あたし、悪いけど臨時で稼ぎのいいダンジョン探索に参加してくるよ! 下着を人質にされて有り金失っちゃったしね!」

 

 カズマはあの時、『自分のぱんつの値段は自分で決めろ』と中々にゲスいことを告げた為にクリスは有り金全てを支払うハメになっていたのである。

 

「あ、そだクリスさん。今度、戦い方とか教えて下さいよ」

 

「いいよ! まあ、時間が有る時だけど、厳しくいくよ?」

 

「…………御手柔らかにオネシャス」

 

 にしし、と笑うクリスにハルトは若干ビビりながら応えた。

 

「おい待てよ。なんか既にアクアとめぐみん以外の女性冒険者達の目まで冷たいものになってるからホント待って」

 

「このくらいの逆襲はさせてね? それじゃあ、ちょっと稼いでくるから適当に遊んでいてねダクネス!」

 

 じゃあねー、と去っていくクリスをハルトは手を振って見送った。

 その頃のカズマは狼狽しながら必死で誤解を解こうとしていたそうな。

 




 ハルト君が人をイジったりおちょくったりしている時、絵面がリヨ化してます。
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