Fate/ワカメ じゃ ないと!〜幻の慎二ルート書いて見たかった〜 作:FGOキッズ
「ごめんなさい───にい───さ──・・・・」
目覚めのチャイムと共に瞼を開ける。
──夢を、見た。
酷く気色の悪い、忘れ難い悪夢だった。
夢のはずだと言うのに、その感触は未だに手に残る。夢では見なかったこの先の顛末を、俺は、まだ、覚えている。
「キモいんだよ…」
そう吐き捨てる他ないのは、それはより強く妹のことを妬むようになったからか。はたまた、僅かに残る俺の善性が、罪の意識に働きかけているのか。それとも、
「コレが原因か」
寝台の隣に置かれた書物に目を向ける。
分厚い書物の名は「偽臣の書」
マスター権限を他人に譲渡するために使われるものだ。
「まさか、ライダーを通して桜の記憶が…」
だからどうだと言うのだ。今更それを見せられて、どう変わるという。どう変わればいいという。何を求めているのだ。
胸の中は黒く渦巻いた感情が畝り始める。それの正体は掴めないまま、彼、「間桐慎二」は身支度を整える。制服に着替え、食事をとり、高校に向かうために靴を履く。
家を出る直前に、妖怪爺が気味の悪い笑みをこぼしていた。
いつもの顔だというのに今日は殊更気色悪く見える。
(クソジジイ…)
「いってきまーす」
そして、いつもの日常が開始された。
高校までの道すがらを何一つ思うことなく歩いていく。何も考えたくない。だから何も考えないのだと自分に言い聞かせながら道を歩む。
そして眼前の先にある男が映りこんだ。特徴的な錆びついた銅色の赤髪、思いのほかがっしりとした体躯の青年「衛宮士郎」がいた。
「おい、えみ────」
しかし、その隣には紫髪の少女が同じ歩幅で歩いている事に遅れて気づく。
「────桜」
ライダー本来のマスターが、そこにいた。
「────」
そうして、歩みを止めた。
何故やめたのかわからない。
何故こうしてのかわからない。
何故いつも見る光景ごときに、今日こんなにも意識を乱されているのかわからない。
「チッ」
舌打ちをして、ついには引き返すことを選択する。
これもよくあることだ。授業をサボること自体あるのだ。そんな不思議なことじゃない。たかだか一日でないだけで致命傷を負うなんて事、バカではない自分には存在しない。
結果、間桐慎二の長い一日が本当の意味で幕開けたのだ。
◇◇
家に帰っても、人の気配はない。
妹は当然として、祖父、そしてサーヴァントであるライダーも。
今この家にいるのは自分一人だった。
「……」
久しぶりの一人は気持ちの悪い時間この上なかった。
自室のベッドで意味もなく天井を見上げてひと眠り。
僅か10分の経過。
机に座り、おそらく今日やるであろう教科書のページを開き自習開始。
僅か15分で終了。
引き出しに隠してあった液体を弄って可能性に縋る。
僅か5分でギブアップ。
何も進まないまま、ただ30分の時間を浪費することに成功した。
今頃学校ではあいつらは朝のホームルームでもしているのだろうか。
「はぁ…今更」
何をしろと。
何をすればよいと。
考えたくないテーマを考えなくちゃならないなんてくそったれもいいところである。
「ライダー」
返事はない。
「ライダー」
変化はない。
「ライダー!」
数秒前と今に違いは一切存在しない。
やはり、今日はとことん吐き気のする日である。