Fate/ワカメ じゃ ないと!〜幻の慎二ルート書いて見たかった〜   作:FGOキッズ

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気色の悪い夢(前)

「ごめんなさい───にい───さ──・・・・」

目覚めのチャイムと共に瞼を開ける。

──夢を、見た。

 

酷く気色の悪い、忘れ難い悪夢だった。

夢のはずだと言うのに、その感触は未だに手に残る。夢では見なかったこの先の顛末を、俺は、まだ、覚えている。

「キモいんだよ…」

そう吐き捨てる他ないのは、それはより強く妹のことを妬むようになったからか。はたまた、僅かに残る俺の善性が、罪の意識に働きかけているのか。それとも、

「コレが原因か」

寝台の隣に置かれた書物に目を向ける。

分厚い書物の名は「偽臣の書」

マスター権限を他人に譲渡するために使われるものだ。魔術回路(・・・・)がないものに、マスター権を譲渡するためのものであり、真っ当な魔術師であれば不要なもの。そう、彼は魔術師どころか“魔術回路のないただの人間“でしかない。今は聖杯戦争の最中で、仮初とはいえ彼はライダーのマスター。そして、ライダーの本来のマスターは彼の妹「間桐桜」なのである。

「まさか、ライダーを通して桜の記憶が…」

だからどうだと言うのだ。今更それを見せられて、どう変わるという。どう変わればいいという。何を求めているのだ。

胸の中は黒く渦巻いた感情が畝り始める。それの正体は掴めないまま、彼、「間桐慎二」は身支度を整える。制服に着替え、食事をとり、高校に向かうために靴を履く。

家を出る直前に、妖怪爺が気味の悪い笑みをこぼしていた。

 

いつもの顔だというのに今日は殊更気色悪く見える。

(クソジジイ…)

「いってきまーす」

そして、いつもの日常が開始された。

 

 

高校までの道すがらを何一つ思うことなく歩いていく。何も考えたくない。だから何も考えないのだと自分に言い聞かせながら道を歩む。

そして眼前の先にある男が映りこんだ。特徴的な錆びついた銅色の赤髪、思いのほかがっしりとした体躯の青年「衛宮士郎」がいた。

「おい、えみ────」

しかし、その隣には紫髪の少女が同じ歩幅で歩いている事に遅れて気づく。

「────桜」

ライダー本来のマスターが、そこにいた。

「────」

そうして、歩みを止めた。

 

何故やめたのかわからない。

何故こうしてのかわからない。

何故いつも見る光景ごときに、今日こんなにも意識を乱されているのかわからない。

「チッ」

舌打ちをして、ついには引き返すことを選択する。

これもよくあることだ。授業をサボること自体あるのだ。そんな不思議なことじゃない。たかだか一日でないだけで致命傷を負うなんて事、バカではない自分には存在しない。

結果、間桐慎二の長い一日が本当の意味で幕開けたのだ。

 

◇◇

家に帰っても、人の気配はない。

妹は当然として、祖父、そしてサーヴァントであるライダーも。

今この家にいるのは自分一人だった。

「……」

久しぶりの一人は気持ちの悪い時間この上なかった。

自室のベッドで意味もなく天井を見上げてひと眠り。

僅か10分の経過。

机に座り、おそらく今日やるであろう教科書のページを開き自習開始。

僅か15分で終了。

引き出しに隠してあった液体を弄って可能性に縋る。

僅か5分でギブアップ。

何も進まないまま、ただ30分の時間を浪費することに成功した。

今頃学校ではあいつらは朝のホームルームでもしているのだろうか。

「はぁ…今更」

何をしろと。

何をすればよいと。

考えたくないテーマを考えなくちゃならないなんてくそったれもいいところである。

「ライダー」

返事はない。

「ライダー」

変化はない。

「ライダー!」

数秒前と今に違いは一切存在しない。

 

やはり、今日はとことん吐き気のする日である。

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