とある劇団役者OBの証言───。
「いやぁ、僕は今回の報道を心の底から祝福するよ」
「彼は僕の恩人でね、昔何かと拗らせていた僕を救ってくれたんだ」
「でもまさか、自分以上の狂人がいるとは思いもしなかったよ」
「今の彼の命は重すぎて、もはや誰も奪う事ができない」
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B小町結成から三年
うちの商材どもを木っ端役者として劇に出す事になった。
アイドルとしてはまだまだ吹けば飛ぶようなミジンコレベルなのでこういう雑多な仕事もやらないと首が回らないのだ。
勿論、デメリットというかリスクも大きい。
普段、建前の一つも理解できないような愚鈍な人間ばっか相手にしているアイドルはこういう比較的まともかつ演技が上手い人間がいるような現場に行くとギャップでコロッと恋に堕ちる。
まぁ、別に誰が誰とズッコンバッコンしてようがどーでも良いのだが、彼女らには世のガチ恋キモオタ共に夢を届ける崇高(笑)な使命がある。
アイドルはトイレに行かない、を地で行く彼らにとってアイドルの交際の情報はまさに脳を破壊する程の力があるのだ。
そしたらまぁ、起爆スイッチONでなにもかもアボンである。
爆薬の量は人気になればなるほど増えて危険性を増す。
今のB小町はある一人以外は誰が爆発してもまぁ大丈夫なレベルでしかないし、その一人はただの爆弾ではなく核爆弾なので単純に突っついて起爆するような代物ではない。
まぁ、俺はクソみたいな女運だったから異性関係のトラブルは大体対応可能だ。
まぁ、ガキンチョ共はガキンチョなりに恋愛ごっこを楽しむといい。
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「デキちゃった⭐︎」
そう思ってた時期が俺にもありました。
「マジ?」
「大マジ」
こんのゴミ女め、倫理観というか貞操概念と言うものを母の子宮に忘れてきたのか?
「あっ、相手はナ「カミキヒカルだろ」へ?」
「あんのデラックス厨二病男め、よくもうちの商材をコブ付きにしてくれたな」
「それよりも、何で相手が分かったの?」
「いや、俺や君と同じクズの匂いがしたからな。知ってるか、クズとクズは惹かれ合うんだ」
「じゃあ…そこまで分かってて、何で私達を止めなかったの」
「いや、まさか14歳の奴とヤるとは思わんかったからな。俺、精通17歳だったし。妊娠とか普通に思考の外だわ」
「おっそ!というかマネージャーさんってもしかして童貞?」
「…ノーコメントで」
女関係のトラブルは多かったが多すぎて逆に機会を失ったのだ。
と言うかあの密度でヤバい女に絡まれて体が綺麗なままなのは一周回って意味不明である。
「ぷっ、あんなに偉そうにしてるのに、チェリーとか、くくっ」
「15歳で妊娠したテメェよか100兆倍マシだからな。でどうする」
「産みたい」
「タコかテメェは、そっちじゃねえよ。いやそっちも問題だけどさ。相手の男の事だよ。ガチで好きなのか?」
「いや?純粋に利害の一致だよ」
「嘘つけ、ホントはちょっと好きだろ」
「…」
アイはここで初めて焦りの表情を見せた。
「大方、お前の歪んだ愛への思想を語ったらいい感じに共感してくれて、これは性欲による行為じゃないから、とか自分に言い聞かせてやっちゃったんだろ」
「まぁお前がどんな目的でどんな尖った恋愛をしようとどーでもいいが産みたいんだったら金の話だ」
「今のお前に子供を独り立ちさせるレベルの資金、教養、覚悟があるかもう一回よく考えてから物を言うんだな」
「じゃあ俺はカミキヒカルをけちょんけちょんにしてくる」
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「おい、そこのyoutubeの検索履歴が全部屠殺動画で埋まってそうな奴、ちょっとツラ貸せや」
一人になるタイミングを見計らってそう声をかける。
相手も同じクズ、この一言で全てを察する事が出来たようで大人しく着いてくる。
予約しておいた完全個室のレストランに奴を連れ込み、俺は議題を話し始めた。
「まず、お前がうちの商材を孕ませた件については後で請求書を送るとして、お前それ以外にもなんかあんだろ」
「いや、僕と星野さんは純粋な愛で結ばれた仲なんで「あーはいはい、そーゆーのいいから」…」
「やっぱり、同格相手には効きませんね」
「莫迦かお前。俺の方が格上に決まってんだろ。クズの年季が違うんだよ」
「確かに僕の命はまだ重たくない。色んな人の人生をその調子でボコボコにしてきただろう貴方に勝てないのは必然ですね」
「そういうこった。まぁ、お前が女で何がしたいかなんて俺は心底興味ないし好きにすれば良い。だが星野アイからは手を引いてもらおう、アレは俺の財布だ」
「貴方には命がそう見えているんですね。確かにお金もまた命の重みの一つ。僕は生まれて初めて価値観を共有出来る人に出会いました」
「そうかい、俺もお前の事だんだん分かってきたぞ。てめえ罪悪感フェチだろ、罪の認識からしか性的興奮を感じられないとかそんな所か」
「…」
「その感じ図星だな。そうしてお前はそんな自分の性癖を持て余して頭の中で壮大なストーリーを作り上げた。内容はどーでもいいが、やりたい事は自分の行動の正当化や神聖化と言った所か」
「衝動の理由付けの為に…僕は…」
「まぁ、生まれ持った性癖とその衝動の強さに関してはご愁傷様としか言えないがな。俺も性癖終わってるからその気持ちはよく分かる」
「だが同情で金は動かん、お前一体全体何人孕ませた。その慰謝料と養育費だけでテメェの逸物は一生EDになるだろうよ」
「」
「でだ、借金漬けの生活が嫌なら俺の指示に従って貰おう。あっ、俺を殺そうとしても無駄だぞ。俺も何かと恨まれてる口でね。対策は万全だ」
「まぁ、その変な厨二病から早く目覚めて我慢という事を覚えるんだな。性欲に身を任せたら一瞬で財布の中身は空っぽだ」
「じゃあ、具体的な内容だが───」
こうしてシリアルキラー予備軍は畜生守銭奴によって打ち倒された。
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何も、通じなかった。
私達が高揚感に身を任せて建てた計画は内容に興味すら持たれないまま破綻させられちゃって
カミキ君もマネージャーにとっちめられて真人間に更生させられちゃった。
残ったのは自分勝手に身籠もって、愛想を尽かされたバカな女のみ。
もしかしたら私はただ彼に振り向いて欲しかっただけなのかもしれない。
でも、もう全てが遅い。
また、私は捨てられちゃうのかなぁ、と悲しんでみても今回は完全に自業自得なので悲しむ気力すら湧いて来ない。
ただひたすらに、誰か助けて、と心が悲鳴を上げ続けていた。
いや、もうい「おい、クズアイドル、この書類に名前書いとけ」
へ?…えっ、婚姻届!?
「言っとくが拒否権はないぞ。テメェの自業自得だ」
相手は…マネージャー!?
「えっと、私はアイドル辞めさせられるんじゃ…」
「は?今お前が抜けてみろ、B小町は一瞬で地底アイドルに逆戻りだ。俺もまだ大して稼いでないから収入なくなると終わるし」
「でも無理矢理子供を堕ろさせたりしたら、お前にリークされて俺たちは社会的に詰む。で、壱護と一晩中話し合った結果、お前は俺と結婚する事になった。まぁこれは子供の戸籍の為だな。生まれたらすぐ離婚する」
「これに関しては自爆覚悟で訴えても知らんからな。こっちはお前を守る為にやった事だ、バレてもそんなに痛くない。だがお前の人生は速攻で詰むだろうよ。いや俺が詰ませる」
「まぁ、そう言うこった。でもまさか童貞なのに結婚して子供まで出来るとはなぁ。やっぱり俺の女運は史上最低みたいだ」
ああ…やっぱりこの人は逃しちゃいけない
「えっと、じゃあ式はいつ上げる?」
「寝言は寝て言え、核弾頭アイドル」
絶対に離婚なんかしてあげないって心に誓いながら私はマネージャーに抱きついた。