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とある女優の証言───。
【───有馬かなさんは役者でありながらタレントとしても非常に人気と評判ですが】
「いえ、私は役者としてもタレントとしてもまだまだです。毒舌キャラを突き通すことがどれだけ大変か、身に沁みて実感しています」
「毒舌キャラは一切弱いところを見せちゃダメなんです。そうすると唯の性格が悪い嫌な奴になっちゃうから」
「そういう意味だと、昔話題になった"彼"はまさしく天才です。いや漢字が違うかもだけど」
「でも負けているなんて思っていませんよ。天災だって喰われてしまえば墓場行きです。戦い方一つだと…」
「すいません、流石に下品すぎる喩えでしたね」
「私、昔から根が中途半端にクズなんですよ。そのせいで人がどんどん離れていって…。あっ、ここはカットでお願いします」
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俺は折角年齢が上がって話せる様になったのに中々知性を発揮出来ない日々にストレスを溜めていた。
というのもアイだけなら中学生程度の振る舞いをしても全く違和感を持たれないのだが、近くにいるクズの観察力が尋常じゃない。
箸の持ち方を知っている事から違和感を持たれた時は流石に終わったかと思ったな。まぁ、その後アイの箸の持ち方が狂っていた事に話が移って事なきを得たがこれ以来完全に年相応の行動を取らざるを得なくなった。
だってバレたら研究所に売り飛ばされそうじゃん、金の亡者だし。
そうして俺のストレスフルなオギャバブ生活が幕を開けた。
赤子という事を口実にえげつないボディタッチをしてくるさりなちゃん…いや今はルビーか、やアイの胸から一切授乳しない俺を病院に連れて行こうとするクズのせいで俺の大人としての尊厳は完膚なきまでに破壊されつくしていた。
挙句の果てにはアイとルビーと一緒に毎日お風呂に入るという魂が削れる様な習慣まである。
ルビーは毎日毎日
「一緒に天国を楽しもうよ、センセ…いや、お兄ちゃん♪」
とかいってお風呂の中で自分ごと俺をアイの身体に押し付けるし
アイはアイでちゃんと親として湯船に沈まない様に俺たちを抱きしめて愛情を注いでくるので変な性癖に目覚めてしまいそうになった。
じゃあクズと一緒に入れば良いじゃないかって?
それが奴は用心深くてなぁ、一日40分睡眠なので風呂に入るタイミングが全く読めず、赤子の生活と合う訳もないのだ。多分、アイに風呂に乱入されて頂かれる事を警戒しているのだろう。
因みに今更だがクズとアイは同棲している。というかクズの家に俺たち一家が勝手に居座り実効支配しているというのが現状だ。
いや、無駄に設備もいいし、日用品や食料品も厳選されたものが揃っていて居心地が良すぎるのだ。
蔵書もセンスが良いものが揃っているので、クズが居ない時は娯楽に困る事がない。
一方、家を不法占拠された側のクズはというと最初はこっそりトンズラかまそうとしていたが最終的に
「よく考えてたら何で俺の家から俺が逃げなきゃならんのだ」
という結論に達して意地でも逃げずに居座っている。
これでまだ童貞であることはおろかアイの裸すら見た事がないというのだから驚きの防御力だ。
少しその防御力を分けて欲しいと心の底から願った。
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そんな生活をしていたから、この事件が起きたのは必然と言えよう。
「あぁーやってらんねぇ。赤ちゃんも楽じゃねえわ」
それはアイの初出演ドラマのロケに同行した時に起こった。
「随分と荒んだ子供もいたもんだ。何だ?早熟ってやつか?」
五反田監督に精神年齢が高い状態を見られてしまったのだ。
くっ、クズとアイが居ない事を確認したからって気を緩めすぎた!
コイツ経路で知性がクズにバレたら多分俺の前世までバレちまう。もしそうなったら、アイのおっぱい吸った俺はただの性犯罪者だ。
「ごめんなさい、何でも致しますんでこの事はどうかあのクズ親父には内密にお願いします」
「へぇ、訳ありか。その理由を聞かせて貰っても?」
「…すいません、出来ません」
「良いだろう、益々気に入った。じゃあお前、俺が撮る映画に出ろ。…ああ大丈夫だ、あのクズには子役の才能があったとかそんな理由をいっておくからさ」
「分かりました、誠心誠意やらせて頂きます」
こうして俺は首の皮一枚で助かった。
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「ここはプロの現場なんだけど!遊びに来てるんだったら帰りなさい!」
あれから一年が経ちやっと、約束の撮影でクズの元を離れられたと思ったら撮影現場に普通のクズがいた。
因みに我が妹は、クズとアイについていっている為ここには居ない。
曰く
「今のママとクズマネージャーを私達が見張らない状態で二人きりにしたらママが何するか分からない。ママのアイドル生命の為にも私達が見張っておかないと…」
とのことらしい。別にあのクズはどんな事があっても回避出来ると思うんだがなぁ。アイツは七年間アイのアタックを回避し続けている実績もあるし。多分ホモか熟女好きのどっちかなんだろう。
それはさておき、問題は目の前のこの女だ。端的に言ってガキの癖に大人を手足のように使い、お礼の一つも言わないクソメスガキだった。
はぁ、まずはあのクズを見習って罵倒する言葉を一秒で四つ思いつけるようになってから出直してきて欲しい。
「えと…」
「私は有馬かな。今日の共演者よ」
…そうだ確かコイツは
「重曹を舐める天才子役?」
ここに居ない妹からそんな言葉を受信したので取り敢えず口に出してみる。
「十秒で泣ける天才子役!」
「冗談だよ。じゃあ今日はよろしくね」
「ふん。コネの子のアンタとよろしくする気はないわよ。どうせ演技もろくに出来ないんでしょう?」
あー、なんかもうコイツの相手するの面倒臭くなってきたな。
「知ってるわよ。アンタの事務所、魑魅魍魎蔓延る芸能界でも屈指の悪名を誇るあのマネージャーがいるのよね。どうせそいつの力でチョチョイと仕事を貰っただけなんでしょ」
「まて、アイツが何だって?」
「あんたそんな事も知らないの?業界じゃ有名な話よ。あんたら身内と一緒に居る時は基本的におちゃらけてるだけみたいだけど、ずっとそれじゃ仕事なんて貰える筈がないもの」
「人を操る巧みな話術、相手の裏の事情まで見抜く観察力と洞察力、そして人を人とも思わない冷徹さ。そして何より恐ろしいのはその目線らしいわ」
「ママが一回だけ、会う機会があったらしいの。勿論、格としてはコッチの方が断然上だから、すり寄る機会を与えてやろうっていう感じで話かけたらしいけど」
「その目を見ただけで自分の地位や箔が剥がされて対等な一人の人間として立ち会わされてしまうらしいわ」
「だからあのマネージャーと話せるのは自身が何かしらの才能を持った人物だけ、勿論かなは対等に話せると思うけどね」
…アイツ外からはそんな評価をされていたのか。
正直、初めて会った時からあの調子だったので全然気づかなかった。
いや、これは"持っている"側の傲慢なのかもしれない。斎藤社長も五反田監督もきっとそうだ。揺るぎない自我というか、人間として一本芯を通す事がアイツと関わる為の最低条件なのだ。
だから彼は良くも悪くも人を選ぶのだろう。
そう考えると奴の女難にも色々と説明がつく。
生まれつきの強すぎる警戒心からか奴は日常生活で何気なく出会った人間、それこそ店員や清掃員に至るまで奴はその目で見て心を読み人生を解体してしまうのだろう。
相手側からしたら正しく天災だ。突然自分の全てを覗かれてしまうのだ、狂ってしまう人もいるだろう。
でも奴としてはただ人を見ているだけなのだ。そりゃ理不尽にしか思えないよな。
そうして俺は孤独な友人に対する理解をまた一つ深めるのであった。
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その後、俺はアイ直伝の人を魅せる立ち回りとクズの人間観察法を駆使して撮影を乗り切った。しかしどうも上手く行きすぎたようでまた別の問題が発生してしまう。
「監督、撮り直して…」
「今のかな、あの子より全然ダメだった……!」
「やだ!もう一回!!お願いよ!」
共演した有馬を無名の俺が食ってしまったのだ。
有馬かなは幼すぎる頃から肯定を与えられ過ぎて人格が歪んでしまった女の子だ。
有馬を使って飯を食いたい大人の都合によって身に余る傲慢さと尊大な自尊心を勝手に植えつけられてしまっている。
きっとこの事は彼女の人生に深い影を落とす事になるだろう。
無論、哀れに思うし、できる事なら助けてやりたいとも思った。こんななりでも前世は医者なのだ。
だが、俺にはどうする事も出来ない、どうすれば良いか分からないのだ。
こうしている内にも刻一刻とチャンスの時間は減っていっている。
考えろ、考えろ、考え「なんだぁ、ガキの癖に一丁前に悩み事かぁ?」
聞き慣れた戯けた声が場に響いた。
なっ、何故ここに。
「お疲れ様、吾郎。ふふん、何でここにいるかって顔してるね?そりゃ、親として子供の活躍を見たいって思うのは当たり前の事だからね。マネージャーに無理いって来ちゃった。間に合わなかったけど」
「だまらっしゃい。俺のストーカーとカーチェイスさえしなければ間に合った筈なんだよ。何なんだよあの女のドラテク。軽トラで高級車と同じスピード出すなよ」
何だ、いつものか。…いや今はそれどころじゃない。
「親父!あの子がかわいそうだから助けてあげて!」
自分が発揮して不自然じゃない程度の知性で意思を伝える。
「え?やだ。何でタダでクソガキの相手なんかしなきゃならんのだ」
ダメだ、コイツクズだった。クソが。
「まーまー、クズマネージャー。次に撮る俺の映画でお前んとこのアイドルを使ってやるって条件ならどうだ。俺もあの子の将来が少し心配でね」
「えっ、めっちゃ破格じゃん。やるやる。約束は守れよ。で吾郎そのクソガキはどこにいる?」
「あの木の影で泣いてる子だよ」
「じゃあちょっくら行ってくるわ」
そう言い、有馬と話をしにいったクズ。
話は10分程度続き、その後帰ってきた有馬は…
「ハロー、コネの子、いやー色々スッキリしたわ。あっ、アンタ私の荷物持ちなさい。将来の大女優の荷物持ちになれるのよ?光栄に思いなさい」
さらにクズになっていた
あんの、クソ親父がぁぁぁぁぁ