あれは嘘だ
翌朝、何時もより早く起きた俺はキンジに朝飯を作ってやってから部屋を出る。また爆弾魔に巻き込まれるんなら一人で巻き込まれてくれ。俺はもう二度とゴメンだからな。
その日は一本早いバスに乗ると普段はこんなところで会わない顔が見れた。
「よう、不知火。お前この時間のバスなんだな。始めて知ったよ。」
「やぁ篠神君。今日はどうしたんだい、いつもより早い時間だけど?」
「うるせぇ、今日はそういう気分なんだよ。」
「そうかい。そういう時もあるよね。」
不知火はそのイケメンフェイスで表情を読み取らせない。まぁ、別に困ることは無いけど。
特に話すことが思いつかなかったので黙っておく。時たま会話があるくらいだ。なんかこいつとは居やすいんだよな。会話が無くても気まずくならないからかな。
「そういえば篠神君。神崎さんと模擬戦するんだって?」
「そうだけど・・・なんで知ってんだ?」
「とっくに
「二人揃って・・てことはキンジもか?」
「そうだけど、知らなかった?」
知るもなにも昨日は少し突っ込み過ぎたからな。あいつの事情を分かってるはずなのに。
「あぁ、昨日は少し忙しくてな。」
「そうかい。まぁ、手厚い歓迎は期待してていいと思うよ。」
「マジかよ、あの死ね死ね団に囲まれるのかよ。あいつ等の歓迎は荒っぽいから疲れるんだよな。」
「ふふふ、それだけ君たちに敬意を抱いてるんだよ。」
それもしょうがない話か。俺とキンジはココの入試で同じ部屋の受験生を軒並み二人で倒してしまった。それもサプライズで投入されてた教官まで二人で全員沈めてしまったのだ。これは伝説として代々強襲科で語り継がれてくらしい。
俺がぶすっとした顔をしていると不知火は謝ってきた。それ以降は静かに学校まで行けた。
「じゃあな不知火。俺は朝練してから教室いくわ。」
「今日の試合見に行くよ。」
「・・好きにしろ。」
俺は不知火と別れて一人、強襲科棟の地下射撃訓練場に足を運ぶ。
そこのブースの一つでホルスターから
「ふーん、いい腕ね。フルオートでその集弾率、ただ銃の性能ってだけじゃ無いわね。」
後ろから独特のアニメ声をかけられて振り返ったら、予想通りそこにいたのは
「何の用だ?敵情視察か?ご苦労なこった。」
「少し違うわ。朝練しに来たらアンタがいたの。偵察はついでよ。」
「そうかい。」
そう言ってアリアは俺の隣のブースに入ってゆく。アリアがレッグホルスターから引き抜いたのは二丁の黒色と白色のガバメントだった。
それを弾切れになるまで撃ち続ける。アリアの撃った弾はターゲットの頭と胸の中心に全弾命中していた。
「・・・向こうではどうか知らんが、ココでは人は殺せないぞ。」
「知ってるわよそんな事!狙ったところに弾が当たるようにする為よっ!」
「それならいいんだが。」
まぁ別に俺が捕まるわけでも無いしほっといてもいいか。
そう思いアリアのことを頭の中から忘れて射撃訓練に没頭する。30分ほど続けてホームルームクラスへと向かう。そこでは既にキンジの奴が武藤と不知火とで雑談をしていた。
「おう、何の話だ。」
「やぁ、篠神君。朝のバスぶりだね。」
「何の話ってお前、キンジが強襲科に戻るって話だよ。」
「・・・戻るんじゃ無い、自由履修だ。」
なるほど、キンジの奴のテンションが低いのは朝からこの話をされてるからか。どうせ今日の朝だけの事だ。気にするほどのことでも無いだろうに。
「そういえば篠神君も強襲科に来るんだよね。」
「マジか!英介は何しに行くんだ?」
「お前まであんなとこに何の用だ。」
不知火め。黙ってりゃいいのに余計なこと言いやがって。お前のせいで武藤とキンジが食いついてきたじゃないか。
「あぁ、ちょっとな。アリアと模擬戦と言う名の決闘をする為にな。」
「応援には行くよ。ひさびさに篠神君の本気が見れるかもしれないし。」
「武藤お前は来るな。」
武藤、俺もキンジと同じ事を言おうとしたぞ。お前が来ると一気にうるさくなるからな。
そのまましばらく4人で喋ってたら天ヶ原先生が教室に入ってきた。
「みなさーん、HR始めますよ。」
今日も平和な一日が始まった。
昼休みが終わって俺はキンジと共に強襲科の入り口前まで来ていた。
「またここに顔出す羽目になるとはな。」
「何回同じような事言えば気が済むんだ。 いい加減覚悟決めたらどうだ?」
そう言ってキンジの肩を叩く。これで覚悟が決まったのかキンジが強襲科の扉を開けて中に入ってゆく。そしてそれに俺も続いてく。
此処流の挨拶を受けてるキンジの後ろに立つ。コイツは何だかんだで強襲科の奴等からは一目置かれてるからな。理由は入試で教官をフルボッコにしたからだろう。俺は諜報科だからかあまり絡まれないし。
ふと上を見上げると二階からちっちゃい女の子と背の高い女の子が俺たちを見ていた。雰囲気に緩いところがあるから一年かな?真理がここに通えるようになったら関わりが出来るのかな?取り敢えず手でも振っとこ。
「・・お前、ロリコンかよ。」
そして、強襲科の奴等に揉みくちゃにされたキンジに見られてたらしい。
「お前ほどじゃ無いけどな。」
「うるせぇ!アレはイロイロとだな。」
「ナニをしてたんでしょうね。」
まぁ、大方予想はつくけどな。胸にダイブした時だろう。恐らくそう遠くないはずだ。まぁ、どうでもいいけど。
それよりも模擬戦までに体を動かさないとな。
「キンジ、CQCの相手してくんない?」
「何で俺なんだ、もっと別の奴に頼めよ。俺よりも腕のいい奴が沢山いるぞ。」
「ちょうど暇そうだし。あと後ろのプチ魔王がコッチ見てるから。」
「ならさっさとドームに行けよ!」
しょうがない。体を少し動かしたかったけど諦めてアリアとの決着を付けますか。そう思い、アリアを引き連れてドームの中へと入ってゆく。審判は騒ぎを聞きつけた蘭豹がやるらしい。
お互いに20m程離れて合図を待つ。結構な数のギャラリーが来ていて、その中にはキンジや不知火さらにはさっき見た小さな女の子がいた。必死に誰かを応援しているようなので読唇術で何を言ってるのか読み取ることにする。
あ・り・あ・せ・ん・ぱ・い・が・ん・ば・っ・て
アリア先輩頑張って、と読み取れたのでアリアに誰か聞いて見ることにする。
「アリア、あの茶髪の小さな子と知り合いか?」
「えぇ、アタシの戦妹よ。武偵ランクは低いけど見所のある子よ。」
「ふぅん。」
合図がまだ来ないので蘭豹を見てみると酒を仰いでた。そして、空になったのかもってる酒瓶をその辺に放り投げた。
「よし!ギャラリーもいい感じに集まったな。お前ら死ぬまで殺しあえ!」
そんな事をほざきながら空に向かってM500をぶっ放す。っておい、空に向かって撃ったら危ないだろ。
「行くぞ!」
「いつでもいいわよ。」
愛銃をホルスターから抜いてお互いに円を描くように走りながら撃つ。ただ、これは長くは続かなかった。お互いほぼ同時に立ち止まり銃を持っている腕を狙って発砲する。結果は二人とも銃を手放してしまった。ただ、アリアはまだ一丁残ってる。
弾が防弾制服の袖に当たったのを感じた瞬間に俺は腰からナイフを引き抜いて構える。
「降参しなさい。」
アリアが銃をこっちに向けたまま降参を促してくる。
「嫌なこった。」
「そう。ならベッドの上で後悔なさい!」
言い終わると同時に俺に向かって発砲する。銃弾は的確に俺の心臓を捉え、防弾制服の上からでも十分な痛みを与えるはずだった。
ーキンッ
澄んだ音とともに俺は銃弾を回避した。いや、正しくは銃弾を持っていたナイフで切った。
さすがのアリアもこれには驚いたようで身動ぎ一つせずに目を見開いてコッチを見ていた。
「あんた、一体なにしたの?」
「弾を切った。ただそれだけだ。」
「それは見たら推理できるわよ!」
「ふん、俺に銃はきかねぇ。銃なんか捨ててかかって来い!それとも、怖いのか?」
俺の挑発にアリアは銃をホルスターにしまい込み背中から二刀の小太刀を引き抜く。
それを見て俺は思惑通りになったのを内心で喜んだ。俺もあの技が完璧に出来るという訳でも無いからだ。人体の急所への弾ならほぼ確実に切り裂けるが、末端の方になればなるほど成功率は下がってく。もし、あのままアリアが俺の足なんかに狙いを定めて撃ち続けてたら俺が負けただろう。
理解し難い現実を前に思考が停止し、その時に挑発する事によって冷静な判断力を失ってしまう。そう、今のアリアのように。
そしてアリア、銃をしまったお前の負けだ。この距離でなら俺は今まで負け無しだ。
アリアと切り結びながらタイミングを計る。
「避けないでさっさと当たりなさい!」
イラついたのか上段からXの字を描くように大きく振りかぶってきた。ちょうど二つの線が重なる所を狙って技を放つ。
「三式刀剣術“神楽狩り”!」
基本は平突きと変わらない技だが、狙うのは相手の命では無く相手の武器。今使ってるのがナイフだからこの技しか使えないが家に置いてある名刀と呼ばれる刀を使えばもっと他の技が使えるんだが。まぁ、無い物ねだりをしても意味は無いだろう。
俺の放った技はアリアの小太刀を二本とも真ん中から叩き割り、首に当たる直前で止まる。
「勝負ありだな。負けを認めろ。」
「くっ、私の負けよっ!約束は守るわ。あんたをこれからは勧誘しないし奴隷とも呼ばないわ。」
アリアはそれだけ言ったら自分のガバメントを回収してさっさとドームから出てしまった。それを見届けてから俺も自分の銃とアリアの折られた小太刀を回収してからここを離れる。
「お疲れ様、篠神君。やっぱ君は今でもSランクだね。」
「どうだかな。今はEランクだが?」
「ふふ、そういえばそうだったね。」
まぁ、不知火の奴が何を言いたいのかは何となく分かるがな。それに乗ってやる必要はないな。
不知火と話してると次はキンジが寄って来た。
「よう、お疲れ。大金星だな。EランクがSランクに勝てるなんて。」
「お前もやろうと思えば・・・いや、すまん。失言だったな。」
「気にするな。それに・・どうせここから去るんだ。」
やっぱその意思は堅いか。お前ほど才能のある奴がここから去るなんてな。人生ままならないものだ。
俺は心にモヤモヤしたものを抱えたまま帰宅の時間までキンジと共に訓練に励んだ。
数か月ぶりの投稿
投げ出したりは…しないと思うよ
ネタが思いつかずに四苦八苦