マリナ・イスマイールが東方不敗の弟子になりました   作:ソロモンは燃えている

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続編の投稿です。
カシオスと同じ、短編を重ねていく方式を採用しました。


アザディスタン侵攻作戦

 

 

 

 世界はソレスタルビーイングの戦争根絶宣言とその保有するガンダムの性能にショックを受けていた。

 だが、更なるショックが世界を襲う。

 

 マリナ皇女によるマスード・ラフマティーの救出と凱旋、ラフマティーを拉致したテロリストの捕縛。

 その様子は、テレビを通してアザディスタンの国民達の多くが見ていた。

 それだけなら、皇女の人間離れした身体能力と戦闘力に驚きはすれど、世界は恐れなどしなかっただろう。

 所詮は一個人の武勇伝に過ぎないのだから。

 

 それは、皇女と彼女に師匠と呼ばれた老人との再会の後に起きた。

 王宮の広場にソレスタルビーイングのガンダムが降り立ったのだ。

 そして、ガンダムから出てきたパイロットがその場でマリナ・イスマイールに弟子入りを志願した。

 

 マリナは、自分はまだ未熟な修行中の身だと言って固辞したが、そのパイロットは「俺は、ガンダムになりたいんだ!」と訳のわからないことを叫び、食い下がってくる。

 その様子を見ていたマリナの師匠、東方不敗は、ガンダムのパイロット、刹那が何か事情を抱えているのだと見抜いていた。

 彼が所属する組織ソレスタルビーイングが戦争根絶に向けて武力介入を行っていることも知っている。

 だが、東方不敗の目から見ても刹那から邪悪な気配は感じられなかった。

 

 若者が道を誤らないように導くのも先達の務めか

 

「小僧よ、お主の熱意は分かった。

 ワシもしばらくこの国に滞在するつもりじゃ。

 その間でよければ修行をつけてやろう」

 

「本当か?!」

 

 マリナに弟子入りを志願していた刹那だが、相手がマリナの師匠ならば望むところだった。

 

「師匠!

 よろしいのですか?」

 

 マリナも驚いていた。

 彼女は知っているのだ。

 この老人は、自らが認めた者にしか教えを授けないことを。

 力を私利私欲のために使う者に与えてしまえば、世界の脅威を生み出してしまう。

 それ程に彼の力は大き過ぎるからだ。

 

 その懸念に対する答えも明確であった。

 

「むろん、お主の心根が流派東方不敗に相応しくないと判断すれば容赦なく破門する。

 良いな?」

 

「当然だ。

 その時は、俺がガンダムに相応しくない世界の歪みだったと言うことだろう。

 だが、俺はガンダムになってみせる!」

 

「うむ、その粋やよし!」

 

 こうして、刹那はマリナの弟弟子になった。

 

 だが、世界はそうは受け取らなかった。

 世界が恐れながらもその力を欲していたガンダムをアザディスタン王国が手に入れてしまった。

 そう認識したのだ。

 太陽光発電に乗り遅れた貧困国に過ぎないアザディスタンが自分達を超える力を得た。

 そんな事を許せるほど世界は成熟していなかった。

 AEU、人類革新連盟、ユニオンの3大国が、どうにかアザディスタンの手に落ちたガンダムを奪取できないかと策謀を進めていく。

 その裏では、マリナ皇女が見せた力を面白くないと思う新人類を自称する者達の姿があった。

 

「ふん、あんな品性のない暴力など新人類に相応しくない。

 僕らこそが人類を導く、イオリア・シュヘンベルグが予見したイノベイターだ」

 

 彼らイノベイターの働きかけによって、世界の流れはアザディスタンへの武力行使へと向かう。

 

 

 アザディスタン王国

 王宮・執務室

 

「刹那とガンダムを?」

 

「はい、姫様。

 AEU、人革連、ユニオンが我が国に対しテロリストであるガンダムのパイロットと証拠品としてガンダムの引き渡しを要求してきました」

 

「それは、三国共同でですか?」

 

「いえ、それぞれのルートで要求が届いています。

 どこに引き渡しても角が立ちますし、アザディスタンは引き渡した国の傘下に入ったと見なされるでしょう」

 

「どちらにしても争いに巻き込まれそうですね。

 まあ、元から引き渡す気はありませんが」

 

「姫様、あのような男を庇われるのですか!?」

 

「刹那は、私の弟弟子です。

 それに・・・彼は、クルジスの出身なのです」

 

「姫様・・・」

 

 クルジス共和国は、アザディスタンによって併合されている。

 クルジス人とアザディスタン人の融和は上手くいっておらず、今も互いに敵視し合っている。

 マリナ皇女も日々、心を砕いているがそう簡単に解決するようなものでもない。

 ここでクルジス出身の少年を売り飛ばすようなまねをすればクルジス系の人々からの信頼は地に落ちるだろう。

 

「クルジスのために我が国を危険に晒すのですか?」

 

「そんなつもりはありません。

 ですが、刹那を追放したとして、3大国が我が国とソレスタルビーイングが関係ないと見なしてくれるかしら?」

 

「・・・我が国の主張など受け入れず、難癖をつけて武力行使へと発展する可能性が高いです。

 ガンダムのパイロットが居ても、居なくても戦争の根絶を掲げるソレスタルビーイングが介入してくるでしょうし・・・結局、ソレスタルビーイングのせいではないですか!」

 

「落ち着いて、シーリン。

 大丈夫、国は私が守ってみせます」

 

「そんな簡単に言わないでください!

 姫様の実力は知っています。

 ですが、たった一人で何が出来ると言うのですか!」

 

 戦争になれば、マリナ一人に守れるものなど限られてくる。

 国を一つ丸ごと守ることなど不可能だ。

 

「シーリン、私を信じてください」

 

 アザディスタンを守ってみせる。

 そんな強い意志を湛えた瞳が向けられる。

 姫様はズルい。

 そんな瞳で、そんな事を言われたら、信じるしかないじゃない。

 

「分かりました、信じます。

 ですが、出来る限り平和的に終わるように交渉に努めますからね。

 腕っ節でどうにかしようと出てきて、相手を脅したりしないでください」

 

「当たり前ではないですか。

 あなたは私を何だと思ってるんですか!」

 

「怪力、脳筋皇女」

 

「ひどい!」

 

 

 

 そんな微笑ましいやり取りがあってから数週間。

 交渉は平行線をたどり、ついに決裂した。

 3大国は、裏で手を結び戦力を集め、同時多発的に多方向からアザディスタンへの侵攻を開始した。

 

 彼らの主目的は、ガンダムとそのパイロットだ。

 警戒すべきは、アザディスタンにいるガンダムと武力介入してくるであろうソレスタルビーイングのみ。

 マリナ皇女がラフマティー救出の際に生身でモビルスーツをスクラップにしたと言う未確認情報も入っていたが、誰も本気にしなかった。

 格闘技を修めて、テロリストを制圧できる程度には強いようだが、所詮は人間。

 仮に情報が本当だったとしても、皇女の身体は一つだ。

 多方向からの同時侵攻に対処など出来ない。

 誰もマリナを警戒などしていなかった。

 

 

 アザディスタンに向けて多数のモビルスーツが侵攻を開始。

 その報告が王宮のマリナの下へ届けられた。

 そこに東方不敗の下で修行をしていた刹那が駆けつけた。

 

「侵攻が始まったらしいな。

 奴らの狙いは俺とガンダムだ。

 俺がガンダムで出る!」

 

「待て、小僧。

 今のお主が戦えば死人が出る。

 マリナよ、ちょうどいい相手じゃ。

 出来るな?」

 

「任せてください、師匠。

 元よりアザディスタンは、私が守ります!」

 

「無茶だ!

 敵は多方向から攻めて来ているんだ、手が足りないはず。

 ソレスタルビーイングにとっても見過ごせない」

 

「落ち着け、小僧!

 お主が本当に戦争根絶などと言う夢物語を目指すなら、マリナの戦いを目に焼き付けておくのだ」

 

 刹那の中に迷いが生まれる。

 流派東方不敗は、とんでもない武術だ。

 修行をつけてもらっている自分が一番よく分かっている。

 それでも、この状況をどうにか出来るのか?

 師匠も姉弟子であるマリナの顔にも不安などかけらもない。

 ならば見せてもらおう。

 俺が目指すガンダムの高みを。

 

 

 マリナが王宮の広場に出る。

 そこには、侵攻の情報を聞きつけたメディアの記者達が詰めかけていた。

 今回は、彼らの相手をしている時間はない。

 記者達に笑顔で手を振るだけで対応を終わらせ、集中する。

 大地や大気に満ちる自然エネルギーを取り込み、自らの気へと変換していく。

 これが流派東方不敗の基本にして極意。

 膨大な自然エネルギーを扱えるからこそモビルスーツすら圧倒することが出来るのだ。

 

 手をかざしたマリナの周りに、その膨大なエネルギーによって梵字が浮かび上がる。

 

「はあああぁぁぁーーー!

 十二王方牌大車併!!!」

 

 マリナが技名を叫ぶと同時に梵字から小さなマリナが出てきた。

 その数、十二。

 十二体の小さなマリナと本体であるマリナは、すぐに各地へと散っていく。

 彼女達が、多方向から侵攻してきた侵略者を相手に防衛戦を展開するのだった。

 

 

 

 多目的MS輸送艦『プトレマイオス』

 

「なんですって!

 3大国の連合軍がアザディスタンに侵攻!?」

 

「はい、ヴェーダの予測では、彼らの狙いは刹那とエクシアです」

 

「そんなの、誰にでも分かるわよ!

 他のガンダムマイスター達も向かわせて。

 戦術プランも送るわ」

 

 ソレスタルビーイングも動き出していた。

 ガンダムマイスター達が到着した戦場では・・・

 

 

「私のこの手が光って唸る!

 みんなを守れと気高く叫ぶ!

 爆熱、プリンセス・フィンガー!!!」

 

「ぐわああぁぁぁ!!」

 

「超級覇王電影弾!」

 

「うぎゃぁぁぁ!!!」

 

「王家・索命陰霊拳!!」

 

「ぎょえええぇぇぇえ!!!!」

 

 

「俺達は、何を見せられているんだ?」

 

 武力介入のためにアザディスタンに到着したロックオン・ストラトスの前に広がっていた戦場は、ソレスタルビーイングとして戦ってきた戦場とは、いや、それ以前に経験したどの戦場とも違うものだった。

 これまで経験してきた戦場は、狂気と悲劇に満ちた凄惨なものだった。

 まちがっても、小さい女の子に兵器が蹂躙されるコメディチックなものじゃない。

 しかも、派手に爆散しているのにコックピットだけは無傷で残っている。

 つまり、この戦場でまだ一人の死者も出ていないのだ。

 そんな事は、ガンダムですら出来ないはずなのに。

 

 

「そんな、これでは、まるで皇女が新人類のようではないか。

 それでは、俺達は何のために存在しているんだ?」

 

 ティエリア・アーデが自身の存在意義に疑問を感じている。

 

 

「ははっ、最高じゃねぇか。

 なあ、アレルヤ。

 人間は、ここまで強くなれるんだな。

 必死こいて俺達を改造していた科学者が馬鹿みたいじゃないか!」

 

「そうだね、ハレルヤ。

 人は、人のままで、より良い存在に変わっていけるんだ。

 超兵なんて必要なかった。

 彼女の存在こそ、あの科学者達が間違っている証だ」

 

 アレルヤ・ハプティズムがその光景に救いを見出していた。

 

 

 結局、ソレスタルビーイングが介入するまでもなく軍事侵攻は阻止された。

 それも両軍に一人の死者も出さずにだ。

 世界は、この奇跡に驚愕した。

 そして、こうも思ったのだ。

 

 マリナ皇女って、ガンダムよりヤバくね?

 

 

 

 マリナの戦いを見届けた刹那は、感動に打ち震えていた。

 やはり、俺は間違ってなかった。

 流派東方不敗こそがガンダムだ!

 

 そんな刹那に東方不敗が諭すように教える。

 

「マリナは、かつて自分の無力さに涙していた。

 だが、誰かを傷付けることも厭うていた。

 だから、敵すらも傷付ける事なく守るための力を求めたのだ」

 

 東方不敗の言葉に刹那は自分が間違っていた事を悟った。

 流派東方不敗が強いからではない、マリナの心こそがガンダムなのだと。

 戦争を無くすために戦う。

 そんな矛盾した存在である自分達もまた世界の歪みなのではないか?

 そんな悩みも抱えていた。

 

 強くなってみせる。

 力だけじゃない、心もマリナのように。

 世界の歪みを正すために、俺自身を変革するんだ!

 

 その後、刹那は今まで以上に修行に打ち込んだ。

 その姿を東方不敗が優しい瞳で見守っていた。

 

 

 

 この戦争の裏で蠢く者達もいた。

 

 アリー・アル・サーシェスは、収監されていた刑務所から侵攻騒ぎに乗じて脱獄していた。

 サーシェスの脱獄を手引きした者に案内された先である人物と出会う。

 

「ようこそ、アリー・アル・サーシェス。

 僕の名は、リボンズ・アルマーク。

 よろしくね」

 

「あんたが俺の脱獄を手助けしてくれたのか?」

 

「ええ、僕は貴方の能力を買っています。

 このまま腐らせるには惜しい」

 

「そうかい、俺は戦争が出来ればいいだけ・・」

 

「マリナ・イスマイール」

 

「!てめぇ、あの女とやる気か?」

 

「彼女は、僕にとって看過できない脅威だ。

 排除するのを手伝ってほしい。

 君にとっても屈辱を晴らすいい機会になりますよ」

 

「あの女が普通じゃないってのは理解しているみたいだな。

 なら、分かるだろ。

 普通の機体じゃ相手にならない。

 ガンダムがあったって勝てるかどうか」

 

「特別な機体を用意しています。

 あれなら彼女を蹂躙する事だって可能でしょう」

 

「ほう」

 

「もちろん、リスクはありますよ。

 宇宙で偶然発見したある物を組み込んでいるんです。

 自己増殖、自己再生、自己進化を可能とする金属細胞、DG《デビルガンダム》細胞をね」

 

「説明だけでやべぇてのは分かる。

 そんなもんを使えって言うのか?」

 

「君には、確たる信念も目標もない。

 まるで戦う事が目的のようだ。

 そんな君にとって、マリナ皇女は決して相容れない存在だ。

 リスクを背負って彼女に打ち勝つか?

 尻尾を巻いて戦場から逃げるか?

 どちらを選ぶかは君の自由さ」

 

「・・・いいぜ、乗ってやる。

 手段があるのに戦場から離れるなんてごめんだからな。

 DG細胞搭載機か、使いこなしてやろうじゃねぇか」

 

「期待してますよ」

 

 この世界に混入したのは、東方不敗だけではなかった。

 最も危険な物が、最も危険な勢力に渡ってしまった。

 その日、世界に新たな歪みが生まれた。

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