アクアちゃん曇らせ   作:ヤンデレ好き

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感想・評価ありがとうございます。
今回はルビーちゃん視点での地獄の宮崎旅行編となります。
ルビーちゃん視点だと地獄と言うよりは天国だけど。

楽しい旅行でしたね・・・



side:ルビー③

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「登録者100万人は遠いなぁ」

「ねーっ」

「もっと私を褒めてぇ!?」

 

 

12月も半ばに入りかけの頃。

私たち新生B小町は事務所でダラダラ──ではなく、これまでの成果や今後の活動内容についてのミーティングを行っていた。

 

 

 

新生B小町のファーストライブが終わって四か月と少々が過ぎた。

配信業も順調で、ライブハウスで何度か小さなライブをやったりしていた私たちだけど、最近は各々個別に仕事をすることも少なくなかった。

 

私は雑誌撮影の仕事、MEMちょは他の人気ユーチューバーとのコラボやネットCMのナレーション、先輩はお姉ちゃんと一緒に舞台で絶賛活躍中だ。

 

ミヤコさん曰く、MEMちょは『今ガチ』での立ち回りも評価されているらしく、遠くない内にネット番組を中心に出演が増えるかもしれないらしい。先輩はこのまま順調に舞台が終わり、有馬かな個人の評価が高まれば役者としての仕事が増える可能性大、とのこと。

 

・・・なんか私だけ仕事少なくない?と思ったけど、元々の知名度やキャリアを考えれば当たり前らしい。

確かに、このメンバーの中では私だけアイドルになる前はガチの一般人なんだよね。でも、いきなり演技やれとかテレビに出ろとか言われてもうまく出来る自信なんてないし、地道に経験を積むのは正道ではあるんだろう、とひとまず納得はしている。

 

 

 

さて、そんなこんなで仕事はこなしているわけだけど、やっぱりまだまだ新人アイドル。財政状況が芳しくないということで、MEMちょ主導でいくつかの打開策を実行することになった。

 

「ルームツアー動画を撮ります!」

「「ルームツアー動画!?」」

 

まず一つ目がルームツアー動画。

先輩は渋ったけど、部屋の私物が全て経費で落ちる、というMEMちょの言葉を聞いてからは即手のひら返し。早速先輩の部屋で撮影をすることになった。

 

 

「はーい♡こちらChi●eの新作バッグになりまーす♡10万位しましたー♡」

 

「こっちはゲーム配信とかすると思って買ったけど、ぜんぜん使ってない水冷ゲーミングPC♡30万くらいかなぁ!」

 

「椅子はハーマン●ラーのアーロンチェアで・・・・・・」

 

 

「結構高い買い物してるねぇ・・・」

「先輩ってお金かかるタイプなんだね・・・」

 

私とMEMちょが先輩のお金の使いっぷりにドン引きしつつも、特にこれと言ったハプニングもなく撮影は滞りなく終了した。

一般人卒業したての私には理解出来ない世界だったけど、これから売れて行くなら身の回りの物にも気を配る必要があるのかなぁ。全然想像つかないや。

 

 

 

 

 

「ママのポスター、剥がした方がいいのかなぁ」

「急にどうしたの?」

「あのね───」

 

ルームツアー動画を撮った日の夜。

夕食もお風呂も終えて寝るだけとなった私は、お姉ちゃんの部屋のベッドでゴロゴロしながら漫画を読んでいた。

読んでいる漫画はもちろん『東京ブレイド』。今まで何度も読んでいる漫画だけど、舞台化している部分が何となく気になってちょこちょこと読んでいた。

 

漫画の話は置いておこう。

 

・・・私がママの子供だって秘密は、墓まで持っていくつもりだ。私の部屋にはママのポスターやグッズがたくさんあるけど、今後私の部屋でルームツアー動画を撮ったりするなら、私とママの関係を疑われるようなものは片付けた方がいいのかもしれない。

 

だけど、私の心の真ん中にはいつもママがいる。

それを隠していいのだろうか。アイドルとして正しいのは・・・娘として正しいのは、どっちなんだろう。

 

「そうだねぇ・・・」

 

お姉ちゃんに問いかけつつも、ゴローせんせならなんて言うかな、なんて考える。

せんせならきっと・・・

 

「ルビーの好きな様にすればいいよ」

『さりなちゃんの好きな様にすればいいと思うよ』

 

・・・またこれだ。

記憶にあるせんせとお姉ちゃんの姿が重なって、妙な戸惑いを感じてしまう自分がいた。

言葉に詰まる私を横目に、お姉ちゃんは椅子をくるりとこちらに向けて語りだした。

 

「母さんはきっと、いつかどこかのタイミングで私たちのことを世間にバラすつもりだったと思うよ。もしもあの事件がなくて、何事もなくドーム公演が終わっていたら・・・世間からの注目が高まる程、私たちを隠し通すのは難しくなる」

「・・・バラされるより先に、こっちからバラしちゃうってこと?」

「そうだね。その方がダメージは少ないだろうし・・・そしてそれは今も同じ。これからルビーたちが有名になっていけば、過去を探ってくる人間も出て来るだろうしね」

 

そっか・・・私たちがママの子供だって事実を墓まで隠し通せる確証なんてない。だったら、誰かに暴かれる前にこっちのタイミングで公表するのも一つの手ってことか。

 

「隠すんだったら徹底的に隠さないといけないけど・・・ルビーはそれでいいの?学校の友達にも、先輩やMEMちょにも、母さんとのこと隠したままアイドル続けて行くの?」

 

それは・・・ちょっと嫌だな。

ただでさえ転生してることとか隠してるのに、その上さらに嘘を重ね続けるなんて。それに、前世ではお母さんに捨てられないために嘘ばっかりついていたから、今世では出来るだけ正直に生きていたい。

 

綺麗に、真っすぐ。

そしてママみたいなアイドルになって、ゴローせんせに今の私を見てもらいたい。

 

「ま、今すぐ決める必要はないと思うよ。ミヤコさんにも相談しないといけないし、よく考えてからでいいと思う。私はルビーの判断に任せるから」

「・・・うん。ちょっと考えてみる」

「それがいいよ。ほら、おいで」

 

そう言いながらベッドに移って来たので、私はすかさずお腹に顔を埋めてギュッとする。

こうすると小さい頃を思い出して安心する。さすがに人前では恥ずかしくて出来ないから、二人きりの時限定の貴重な癒しだ。

 

「フフッ、ルビーはいつまでたっても甘えん坊だねぇ。よしよし」

 

チラリとお姉ちゃんの顔を見上げて考える。

 

・・・最近のお姉ちゃんは変わった。

以前よりも笑うことが増えて、笑顔も柔らかくなったと思う。学校でも、中学の時とは違ってクラスメートと一緒にいる所を見かけるようになった。妹の私としては、その分学校で接する機会が減ってしまったことが少し寂しい。

 

 

性格が変わったことについては、お姉ちゃんは役者としての仕事が楽しいからって言ってたし私もそれには一応納得してる。私だってアイドルになれてからは毎日楽しいし、好きなことをした結果、それが性格に影響するってことはよくわかる。

私がアイドルで、お姉ちゃんが役者になることはママの最期の願いでもあったし、今の状況は良いものだと思ってはいるんだけど。

 

 

明るくなったお姉ちゃんは、何だか凄く・・・ママに似ていて。

お姉ちゃんの中に、せんせとママの面影を見てしまう自分がいる。

 

・・・気のせい、だよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぐぐぐぐ」

「こらルビー、時間ないって言ってるでしょう?」

「だ、だってぇ・・・」

 

私はミヤコさんに引きずられながら、遠ざかっていく黒川あかねとお姉ちゃんの姿を唸りながら見つめていた。

 

 

 

 

ルームツアー動画の撮影から時間は飛んで、私たち苺プロダクションの面々+一人は宮崎の地にやって来ていた。

 

再びMEMちょ提案であるユーチューブテコ入れプラン、PV撮影とオリジナル楽曲作成をすることになったからだ。

 

PV撮影に関してはMEMちょの人脈を頼って、『東京ブレイド』の公演期間が終わった頃に先輩たちの慰安も兼ねて宮崎まで行くことになった。

宮崎・・・前世の私が産まれ育って、死んだ場所。正直複雑な気持ちはあるけど、初めての皆で行く旅行だ。前世のことはあまり考えないようにして、出来るだけ楽しんで撮影もこなせたらいいなと思う。

 

楽曲作成については以前からミヤコさんが依頼してたんだけど、待ちきれない私は必死に駄々こねて作曲家のヒムラさんに催促しまくることにした。

それが功を奏したのかはわからないけど、宮崎旅行の直前には新曲が完成。しかも今回PV撮影でお世話になるMEMちょの友達──アネモネさんが新曲のPVも一緒に撮ってくれることになったので、今回の撮影はより一層気合を入れなければいけない。

 

 

───と、ここまでは良かったんだけど、追加でやって来たメンバーが問題だった。

 

「黒川あかねです。ルビーちゃんと会うのは初めてだね。これからよろしくお願いします」

「星野ルビーです・・・!」

「出たわね・・・!」

「あの・・・なんで二人とも構えてるのかな?」

 

私は先輩と一緒にファイティングポーズを取りながら目の前にいる女を見る。

ママとは違うけど、綺麗な艶のある長い黒髪に、整いながらも大人びた顔立ちの少女・・・というよりは女性。私より背も高くて、プロポーションもその辺のモデルよりハイレベルだ。

 

・・・くっ、まさかお姉ちゃんが黒川あかねを連れて来るなんて!

この人部外者じゃん!なんで連れて来ちゃうかなぁ・・・いや、まぁわかるよ?恋人だもんね。お姉ちゃんにとっては身内だもんね。

 

でもさぁ!私はまだ認めてないんだよ!

旅行だからってお姉ちゃんとイチャイチャ出来ると思わないことだね!

 

 

 

 

 

とか思ってたのに、高千穂に着いてからはお姉ちゃんと黒川・・・さんは私たちとは別行動になってしまった。私たちはスケジュールが詰まっているので撮影が終わるまでは観光何てしてる時間がないけど、お姉ちゃんたちは純粋に慰安目的で来てるから初日から観光して回るらしい。

 

時間がない私たちの代わりにお土産とか買っておいてくれるのはありがたいけど、これからイチャイチャ楽しみながら過ごす二人の姿を想像すると・・・こう、胸のあたりが物凄いモヤモヤする。

・・・ここまでの道中で、黒川さんが良い人なのはよくわかったんだけどね。気配り上手な所はMEMちょに通じるものがあるし、私たちの配信を観ているらしくて一杯褒めてくれるし。べ、別に懐柔されてるわけじゃないから!

 

 

お姉ちゃんは私のお姉ちゃんなのにー!実際に黒川さんと一緒な所見るとショックが大きすぎる!

はぁ・・・こんなんで撮影うまくいくのかなぁ。

むくれていると、大きく膨らませた私のほっぺをMEMちょがツンツンして来た。

 

「もうっ、ルビーはいつまでむくれてるのかなぁ~?え、何この肌触り、すっごいモチモチしてる・・・若いっていいなぁ」

「気持ちはわからないでもないけどね。私も一応は慰安込みだけど、今回のスケジュールだとゆっくりしてる時間はあまりなさそうだし、あいつらがちょっと羨ましいわ・・・」

 

実は今回のMV撮影、元々は『スターT』だけのはずだったんだけどアネモネさんのご厚意で新曲の方も追加で撮影してもらえることになったのだ。

それはとてもありがたいことなんだけど、この追加の撮影が入ったことで私たちの自由な時間が削りに削れてしまった。本来なら割合的には撮影と慰安で半々だったはずなのに。

 

「(くっそー、仕方ない。夜になったら旅館でいっぱい甘えちゃうもんね。黒川あかねの好きにはさせないんだから!)」

 

 

 

 

 

「はーい、未成年組は宿戻ってー。MEMは成年してるから居残りねー、18歳だもんねー?」

「はぁい、私は18歳以上ですぅ」

 

私たちの撮影は順調に進み、時刻はあっという間に夜の22時になった。

食事中も撮影されてちょっと戸惑ったけど、雑誌の撮影で慣れていたおかげか、不自然にならない程度にカメラ映りを意識した振る舞いをすることが出来たと思う。

映像Dのアネモネさんはもちろん、カメラマンなどの撮影スタッフの人たちは皆優しくて場の雰囲気が良かったおかげでもあるんだろう。先輩の推測だとかなりお金がかかっているみたいだし、そのおかげで質の良いスタッフや機材を揃えることが出来たんじゃないかと言ってた。

 

ミヤコさんには感謝してもしきれないよ・・・これからたくさん稼いで、私たちに使ったお金が無駄じゃなかったって所を見せないとね。

 

「有馬さん、ルビーのことお願いしてもいいかしら?」

「任せてください、どっか行かないようしっかり監視しときますから」

 

私はペットかなにか?

ミヤコさんと先輩の会話にちょっとした不満を覚えつつ、私は先輩と一緒にスタジオを出た。私が外気の寒さで少しだけ体を震わせると、先輩が不思議そうな顔で呟いた。

 

「それにしてもあいつら、結局撮影には一度も顔見せなかったわね。黒川あかねはともかく、アクアならてっきり見に来ると思ったのに」

 

そうなんだよ!お姉ちゃんはこんな時間まで黒川あかねと二人っきりで何をしているんだろうか。

ま、まさか、旅行だからって羽目を外して・・・えええ、えっちなこととか・・・

 

「うぅ・・・楽しい旅行のはずだったのに、どうしてこんなことに」

「いい機会じゃない。あんたもそろそろ姉離れしたらいいのよ。あんたが自立するようになれば、あいつも多少は安心して・・・あ、カラス」

「ふぇ?」

 

先輩の視線を追いかけると、そこには一羽のカラスがいた。地面に足を着け、こちらをジッと見つめている。

何となく近づいてみたけど逃げる様子がないし、間近で見ると意外と可愛い。は~荒んだ心が癒されるぅ。

 

「かわいー!」

「ちょっと、危ないわよ」

 

後ろから先輩が声をかけて来たので、首だけ振り向いて私は最近得た雑学を披露する。

 

「知ってる?鳥目って言って、鳥は夜だと全然目が見えないんだよ!」

「は?まーたおバカなこと言って・・・鳥目なのはニワトリくらいよ。カラスは夜でも見えてるはず・・・」

 

えっ、そうなの!?あーもう!これだからネットは信用ならないんだよ。私みたいな純粋な女の子を騙すなんて・・・

と、私が考えていた時、手に持っていた宿の鍵がカラスに取られてしまった。

 

「あー!このクソカラス!!焼き鳥にしてやる!」

「ちょっ、待ちなさいってばー!どこ行くのよー!?」

 

私は怒りのままに、鍵を盗ったカラスを追いかけて走り出した。

 

「くっそー、挑発してるなぁー!絶対捕まえてやる!」

 

スマホのライトで足元を照らしながら、不安定な山道を進んでいく。

カァカァと鳴きながら飛んでいくカラスは、思ったよりも低い所をゆっくり飛んでいるので何とか見失わずにすんでいた。

 

「諦めなさいよ、てか暗いし、私この辺の道わかんないわよ!?帰れなくなったらどうすんのよ!」

「大丈夫!この辺なら多少は土地勘あるし!」

「はぁ・・・?」

 

し、しまった!土地勘があるのは前世の話だった!

今世では文字通り生まれたての頃にいただけ、過ごしたのも病院だけですぐに東京に行ったし・・・ご、誤魔化さなきゃ!

 

「あっいや!生まれがこの辺でさ!車で結構通ったりしたから!」

「ふぅん?てっきり東京生まれの東京育ちだと思ってたけど、ちょっと意外ね」

 

訝しむ先輩を何とか誤魔化して、私たちはカラスが飛んで行った方角に向けて歩みを進めた。

もう姿は見えず、鳴き声しか聞こえない。正直諦めかけてるけど、ここまで来たら行ける所まで行ってみようと思う。

 

 

 

 

 

「先輩って、いつまでアイドルやるつもりなの?」

 

歩きながら、私は以前から気になっていたことを先輩に問いかける。

本当は前から聞こうと思ってたんだけど、今まで中々機会が見つからなかった。あと、聞くのがちょっと怖かったって言うのもある。

 

先輩は私の唐突な質問に訝し気な表情をしながら、足元から視線を逸らさず聞き返して来た。

 

「なにいきなり」

「ほら、元々先輩ってアイドルやる気なかったじゃない?役者に復帰するまでの手段っていうか、あくまで本業は演技する人だし・・・ちょっと気になってて」

 

『東京ブレイド』の公演は終わったけど、あれ以降先輩には役者関係の仕事は来ていない。でも、私がミヤコさんからチラリと聞いた話では、恐らくもう少しすれば役者関係の仕事が徐々に増えるんじゃないか、っていう話だった。

 

「そうねぇ・・・正直なところ、役者には戻るつもりではあるわよ。その気持ちは今も変わってない」

「そっか・・・」

「でも、アイドルの仕事も楽しいわよ。少なくとも今すぐ辞めようとは思ってない。アイドルは今しか出来ないしね・・・行けるとこまで行って、引退したら本格的に役者に戻ろうとは思ってるわ」

 

先輩の答えを聞いて少し安心した。

初めて会った時があんなだったから先輩との関係は少しぎこちない所もあったけど、一緒にアイドルとして活動する中で先輩が得難い人材だってことが嫌でも理解できた。

 

可愛くて、歌って踊れて演技も出来る。おまけに業界での経験も豊富で才能に奢らない努力家。ママから受け継いだ容姿に胡坐をかいていた私にとっては、目指すべき一つの手本と言える人だったから。

 

「逆にさ、あんたは役者に興味ないわけ?アクアは『うちの妹は女優としても天才だから』とか言ってたけど」

「実は・・・ちょっとあるだけど、まずはアイドル一本やり切ってからって思ってる」

「へぇ、ならひとまずは私と同じか・・・どうする?私が演技教えてやろっか?」

「え~いいの~?未来の天才女優に塩を送っちゃって」

「上等よ。超える壁はいくらあってもいい・・・あんたも、アクアも黒川あかねも、いつか私が頂点に立つための踏み台にしてやるんだから」

 

そう話す先輩は、再会した頃の鬱屈とした雰囲気がなくなって覇気に満ち溢れているように見えた。

『東京ブレイド』の舞台を観た時もそうだったけど、これが先輩の、『有馬かな』の本当の姿なんだろう。正直ちょっと尊敬してしまう。

 

けど、私だって負けないんだから。

もっともっと有名になって、ドームライブだってやって、いつかママのように誰もが知るようなアイドルになって、そして───

 

『よく頑張ったな。ずっと応援してたぞ』

 

「せんせ・・・・・・」

 

再会したせんせに、いっぱい撫で撫でしてもらったり、抱き着いちゃったりして・・・そしてそのまませんせと・・・えへへ♪

 

「先輩ってさ、年の差っていくつまでイケる人?」

「と、年の差?なんなのよ急に・・・芸能人って年の差婚も多いし、でも私は出来れば同年代がいいけど」

「30年差って駄目かな」

「30!?」

 

私が死んだ時はせんせは20代だったし、あれから20年は経ってるから・・・今だと40歳以上は確実。もうすぐ50歳になるかもしれない。

今の私とは30年以上の差だ。せんせはどんな姿になってるんだろう。ダンディなおじさまになってたり?

ま、どんな姿でもせんせはせんせだし!私は受け入れるけどね!

 

「急になんの話よ。年上で好きな人でもいるの?」

「うん」

「マジ?あんたって年上趣味だったのね・・・ちなみにどんな人?」

「すっごく優しい人!」

 

前世の記憶を思い出す。

いつも病室で、苦しい思いをした記憶ばかりだけど、せんせと一緒の時だけはそうじゃなかった。

天童寺さりなの、唯一の幸福な記憶。

 

「私がずーっと一人だった時に側にいてくれて、いつも励ましてくれて・・・」

「せんせが居なかったら、頑張って生きようだなんて思わなかった」

「アイドルになろうなんて思わなかった」

「私に、生きる意味をくれた人」

 

「そう・・・私は恋愛なんてしたことないから、その感覚はちょっとわからないけど」

「ふふん、恋愛においては私の方が先輩だね!」

「すぐ調子のるんだから・・・でもその人って今はどこにいるの?私は会ったことないわよね?」

「・・・今は何処に居るか分からないんだ。突然職場からも消えて、消息不明になっちゃったんだって。どうせ大方女性トラブルでトンズラこいただけだと思うけど!」

「えぇ・・・」

 

せんせは思わせぶりなんだよ!入院中に他の看護婦さんからもチラチラ話は聞いてたんだからね!お姉ちゃんもせんせは学生時代からわりと女遊びしてたって言ってたし、これはもう間違いないよ!

 

「30歳も年上なんでしょ?今頃とっくに結婚して家庭築いてるんじゃないの?」

「・・・そんなはずないもん!私が16歳になったら結婚してくれるって言ってたもん!」

「いやいや、それ絶対適当にあしらわれただけでしょ。本気で言ってたらロリコンってことよ、そのせんせとやらは」

「ロリコンでもいいの!相手が私なら!」

 

『せんせ好き!結婚して!』

『残念だったな。16歳になったら真面目に考えてやるよ』

 

せんせは確かにそう言ってた。16歳になったら考えてやるよって。

せんせが私に嘘つくはずない。再会して、事情を話せばきっと私の想いに応えてくれる。

 

「もう一度会いたいよ・・・」

 

 

 

 

 

「祠の裏に空間が・・・・・・ここを巣にしてるんだ!追い詰めたぞ!」

 

カラスを追いかけて、ついに私たちは何かありそうな場所にたどり着いた。祠の裏を覗き込むと、そこには人が何人か入れそうなくらいの空間が広がっている。

 

真ん中辺りには、恐らく作りかけの巣なのだろう、木の枝やハンガーのようなものの塊があった。その近くには私が盗られた鍵も落ちている。巣の材料の一部にするつもりだったのだろうか。

 

「なにここ、なんか薄気味悪いとこね。やだ、鳥肌立ってきちゃった・・・どうルビー?見つかった?」

「今取ってくるからちょっと待ってて!」

「早くしなさいよねー」

 

私は鍵を取ろうとゆっくり中に入った。

傍にいるカラスに気をつけつつ、ゆっくりと鍵に手を伸ばして拾い上げる。カラスは静かに私を見つめたまま微動だにしない。

 

「(さっきは可愛いって思ったけど、こうしてみると何だかちょっと怖いな・・・)」

 

カラスが高い知能を持っているのは知っているけど、それにしても私を見つめる瞳からはこちらを観察するような意思を感じる。場所や雰囲気も相まって物凄く不気味だった。

 

「ルビー?まだなの───!?きゃああ!」

「っ先輩!?」

 

後ろから声をかけて来た先輩が、途中で悲鳴を上げたので私は慌てて後ろを振り向く。

 

「ああああアクア!?び、びっくりしたぁ!脅かさないでよ!」

「あ、お姉ちゃん!」

「・・・」

 

そこには、祠の傍に立つお姉ちゃんがいた。暗いせいか、表情がよく見えない。

私は巣があった空間から外に出て、お姉ちゃんと先輩に鍵を見せた。

 

「何してたの?」

「ルビーがカラスに宿の鍵盗られたのよ」

「・・・カラス?」

「そうそう!でもよかったよ。妙にゆっくり飛んでたから何とか追いつけたし、鍵も見つかったし」

 

・・・あれ、そういえばカラスって夜行性だったっけ?山の中とはいえ、人がいる建物の近くにこの時間に降りて来ることってあるのかな。

その時、お姉ちゃんが考え込んでいる私の手を取って歩き始めた。

 

「ほら、二人とも帰ろ。野生の動物とかいるかもしれないし、この辺は暗いと足元見えなくて危ないんだから」

「私は帰り道わかんないから、あんたたちが先導してちょうだい。ルビー!また鍵落としたりするんじゃないわよ!」

「しないってば!」

 

私は先輩に応えながらお姉ちゃんの片腕に抱き着く。

私もさっきの場所の雰囲気に影響を受けたのか、少しだけ鳥肌が立っていて寒気を感じていた。

 

「そういえば、あんた今までどこにいたのよ。黒川あかねは一緒じゃないの?」

「あぁ・・・ちょっとトラブルがあって。あかねは先に旅館に戻って休んでるよ」

「え、何かあったの?」

 

私も気になってお姉ちゃんに問いかける。

もう22時を過ぎてるし、こんな時間にトラブルがあったって・・・お姉ちゃんは何ともなさそうだし、そんな大変なことじゃないだろうけど。

 

「・・・死体を見つけたんだよ」

「し、死体・・・?」

「そ、動物の死体を見つけちゃってね。結構グロかったから、あかねは気分悪くなっちゃったみたい」

 

なんだ動物か・・・それならこの辺には野生の動物もそれなりにいるだろうし、死体があってもおかしくないか。

私が一人納得していると、後ろから先輩が声をかけて来た。

 

「ふーん。あいつってグロ系苦手だったのね・・・あんたは平気なの?」

「私は大丈夫。でも12月でも活動してる動物はまだいるんだから、二人とも不用意に山に入っちゃ駄目だよ?怪我するかもしれないし・・・アイドルも役者も体が資本なんだから」

「原因はあんたの妹なんだけどね」

「うっ・・・ごめんなさい」

 

いや、今回は本当に私が悪いや。可愛いからって野生の動物には不用意に近づいちゃ駄目だね。

 

 

それからしばらくは無言で歩き続けた。

この辺は明かりが全然ないから、先輩は足元を照らしながら私たちについて来るのでいっぱいいっぱいみたいだ。逆にお姉ちゃんは片腕に私が抱き着いているのに、慣れてるようにすいすいと進んでいく。

 

すると、途中でお姉ちゃんが私の耳元に口を寄せてそっと囁いてきた。

 

「ルビー」

「?」

「先輩が寝たら、部屋を抜け出して来て・・・話したいことがあるの」

 

先輩が寝た後って夜中になっちゃうだろうけど、そんな時間に話したいこと?

わざわざこんな言い方をするってことは、二人きりじゃないと駄目なやつかな。

 

「うん、わかった」

「じゃあ、一階のロビーで・・・待ってるね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー・・・だれぇ?」

「あ、先輩起こしちゃった?」

 

 

起こさないように静かに着替えたつもりだったけど、気付いた先輩が起きてしまった。

目を閉じたまま、顔だけ私に向けて小さな声で話しかけて来た。

 

「るびー?どしたの・・・トイレ?」

「ちょっと散歩。先輩は寝てていいよ、すぐに戻るから」

「遠くまで行くんじゃないわよ~」

「はーい、って寝ちゃったか」

 

再び寝息を立て始めた先輩を今度こそ起こさないように、静かに部屋を出た私は旅館の外へと歩みを進めた。

 

 

 

 

 

木で作られた柵を前にして、私は足を止めて景色を眺めた。

まだ太陽が昇り切っていない早朝の景色。病院から見ていた景色とは少し違うけど、私にとっては前世から見慣れ過ぎて新鮮味のないもの。けれど今は、この景色がとても輝いて素晴らしいものに見えた。

 

「やった・・・やった・・・!」

 

私は封筒を胸に大事に抱きしめ、大きな幸福に浸っていた。

昨日の夜はほとんど眠れなかったけど、体調はまったく問題ない。それどころか、今までで一番調子が良いかもしれない。今ならなんだって出来そうだ。

 

 

・・・昨日の夜、私はお姉ちゃんからある物を貰った。

飾り気のない封筒に、これまたシンプルな白い手紙。新生B小町のルビー・・・すなわち私宛に届いたファンレター。

何も知らない人から見れば何の変哲もない手紙にしか見えないだろうけど、今の私にとってはこの手紙は何よりも大事な宝物だ。

 

 

名前や住所こそ書いてなかったけど、読み進める内に抱いた文体や字への既視感と、文中に記されたいくつかの単語。

お姉ちゃんの言う事も考慮すれば、この手紙を書いた人が誰かは容易に想像がついた。

 

「せんせ、見つけてくれてたんだ!」

 

そう、このファンレターはゴローせんせが書いたもの。

せんせの名前こそなかったけど、宮崎の病院で働いていたことや、前世の私・・・天童寺さりなと思しき少女のことも書いてあった。

字体や文にも見覚えがあったし、せんせと関りがあったお姉ちゃんも肯定してくれている。だったら間違いない。

 

『実は今日、あかねと一緒に雨宮君の実家に行ってきたんだ。もう誰も住んでいない空き家になっていたけど、中には雨宮君が書いたメモや書類も残っていてね。そこでようやく確信が持てたんだよ』

 

「・・・っ!」

 

嬉しい・・・嬉しい!せんせが私を見ていてくれたなんて!

せんせが失踪したと知った時、女性関係のトラブルだろうなんて思ったけど、本当は違う可能性も考えたんだ。

もしかしたらせんせの身に何かあって、それこそ命に関わるような事故や事件に巻き込まれて、怪我をしたり、最悪・・・死んじゃったんじゃないかって。

 

今まで心の片隅に燻っていた不安の種。

その不安は、昨日をもって私の中から完全に消え去った。

 

せんせは今も生きていて、しかも私の初ライブを観に来てくれていたんだ!

JIFのライブ以外はB小町のチャンネルでの動画や配信のことしか書いてなかったから、ライブハウスでの小規模なライブは見てきていないんだろう。東京にはいない可能性が高い。住所も書いてないから今すぐ会いに行くのは難しいけど、生きてさえいれば会えるチャンスはいくらでもある。

 

地方でライブをすることだってあるし、もっと人気になって大きなイベントに呼ばれるようになれば、そこにせんせも来て会えるかもしれない。

 

それまでは動画配信に集中した方が・・・いや、とりあえずは今日のPV撮影を全力で頑張ろう。せんせに今の私をもっとたくさん見てもらうんだ!

 

 

私が喜びと気合で体を震わせていると、どこかからカァ、とカラスの鳴き声が聞こえた。

昨日のこともあったので気になって隣を向くと、そこには一人の小さな女の子がいた。

切りそろえられた綺麗な金髪に、お人形さんのように整った顔をした小学生くらいの子。でも私が受けた第一印象は、何だか不気味な子だな・・・というものだった。

 

「こんにちは」

「こ、こんにちは?」

 

とりあえず挨拶されたから返したけど、この子はどこから来たんだろう?

ていうかさっきまで私しかいなかったはずだけど・・・こんな早朝に一人でいるのもちょっと変だ。どこかに保護者がいるのだろうか。

 

「お姉ちゃん、とても嬉しそうだね。何か良いことでもあったのかな?」

 

私がチラリと周囲を見渡していると、薄っすらと笑みを浮かべた少女が話しかけて来た。

こんな子供にもわかるくらい、さっきの私は幸せオーラを纏っていたみたいだ。ちょっと恥ずかしさを感じて照れてしまう。

 

「あはは、まぁね」

「どんなことがあったの?私に教えてよ」

 

下から覗き込むように上目遣いで見つめて来る少女。

可愛いんだけど、その瞳が何だかとても恐ろしいもの・・・まるで、昨夜のカラスの視線と同じものを感じてしまい、私は子供にビビっている自分を誤魔化すように早口で訳を話した。

 

「・・・私の初恋の人がいるんだけどね、その人から手紙が届いたの。その人は今まで行方知れずだったから、生きてるってわかって凄く嬉しいし、また会えるかもって思ったらどんどん嬉しくなっちゃって」

「ふーん」

 

少女は口元にニヤニヤとした笑みを浮かべながら私の話を聞いている。

な、なんかすっごい馬鹿にされてる感じがする。え、初対面だよね?こんな小さい子に小ばかにされる謂れはないんですけど。

 

「えっ・・・と、君はどこから来たのかな?この辺の───」

「───ルビー!」

「あっ、お姉ちゃん!」

 

私が少女に保護者がいないか聞こうとすると、旅館の方からお姉ちゃんが呼びかけて来た。

お姉ちゃんは慌てた様子で走って来る。何かあったのかな?

 

「どうしたの?そんなに急いで」

「いや、別に・・・ルビーは何してたの?散歩?」

「ちょっとだけね。あ、そうだ!この子が・・・・・・あれ?」

 

私がちょっと失礼な女の子のことを紹介しようと振り向くと、そこには一羽のカラスが首を傾げながらこちらを見上げているだけだった。

 

「この子って・・・カラスのこと?昨日あんな目にあったのにまた不用意に近づいて・・・!」

「ち、違うんだよ!あれ!?さっきまでここにいたのに!」

 

お姉ちゃんから怒りの気配を感じたので、私は慌てて周囲を見渡す。けれど、どこを見てもこの場には私とお姉ちゃん、そして一羽のカラスしかいない。

 

えっ、なに!?幻覚でも見てたの?それとも妖怪の仕業!?こ、怖い!もしかして昨日の祠の場所って入っちゃいけない系の場所だった!?天罰なの!?

 

「ささささっきね、ここに女の子が・・・」

「女の子?」

「う、うん。小学生くらいの、金髪で、お人形さんみたいな」

「・・・」

 

私は説明しつつもお姉ちゃんに抱き着いて震えていた。

ほんとに怖いんだけど、このカラスも何なの・・・そ、そういえば高千穂には神社がたくさんあるし、どこかでお祓いとか受けた方がいいかな?それかもう一度祠に行ってお供えするとか・・・

 

「はぁ・・・」

 

震える私をよそに、お姉ちゃんが溜息を吐くと、カラスはまるで馬鹿にしたように一声鳴いて羽ばたいていった。

 

「ルビー、昨日眠れなかったんじゃない?寝不足で変な夢でも見たんだよ」

「そ、そうかな」

「もう少し時間あるし、出発ギリギリまでもう一度寝たらいいよ。ほら、戻ろう」

「うん・・・」

 

 

 

 

 

その後、私はお姉ちゃんに連れられて旅館に戻ってもう一度寝なおした。

起きてからはMVの外ロケのために慌てて準備していたから、今朝の出来事は記憶のどこかに飛んで行ってしまった。

 

・・・うん、あれから何も起きてないし、お姉ちゃんも心配することないって言ってくれた。

余計なこと考えないで、今は全力で撮影に挑もう。ゴローせんせが私を見てくれてるってわかった以上、今まで以上に気合を入れて頑張らないと!

 

私は撮影中、終始せんせのことを考えていたせいか、意識せずとも顔が笑顔になってしまってニヤニヤが止まらなかった。

皆は褒めてくれたし、アネモネさんもOKにしてくれたから結果オーライということにしておこう。

 

 

 

 

 

「へー、ここが芸能の・・・」

「そう、荒立神社」

 

今日は宮崎旅行最終日。

私たちは全員で荒立神社に来ていた。この神社には芸能の神様である・・・あめのうずら?とかいう神様が祀られているんだって。日本の神様って名前が覚えづらいよね。もうちょっとわかりやすい名前にしてほしいよ。

 

「折角だからお願い事していこぅ」

 

MEMちょの声掛けに皆集まり、横並びになってお願い事をする。

私の願い事はもちろん・・・

 

「(B小町が今よりもっと人気になりますように!早くゴローせんせに会えますように!お姉ちゃんが役者としてもっと活躍出来ますように!えぇと・・・あとは───)」

 

叶ってほしいことがありすぎて、いっぱいお願い事をしてしまった。

ちょっと欲張りすぎたかな。でも、どれも叶ってほしいという思いは本当だし、神様だって私の真摯なお願いをきっと聞いてくれるはず!

 

 

 

と、こんな感じで私の宮崎旅行は終わった。

ちょっと不気味と言うか、不思議なことはあったけど。

 

撮影はうまくいって、僅かな時間とはいえ観光も楽しむことが出来た。さすがに10年以上も経っているから昔とは違った所もあったし、そもそも元気だったころの私は随分と幼かったから、今と比べれば活動範囲がとても狭かった。おかげで、新鮮な気持ちで各所を見て回ることが出来てよかった。

 

 

よーし!帰ったらやることがたくさんあるぞー!

 

この前に先輩と話した通り、これまでのレッスンに加えて演技の勉強をしてみようと思う。先輩はアイドル活動を通して役者として成長したらしいし、逆に演技について学べばアイドル活動にも活かせるかもしれないと思ったんだよね。

本当はお姉ちゃんに教えてもらいたいけど、これから役者として忙しくなるであろうお姉ちゃんの邪魔はしたくない。先輩は逆にしばらくアイドル活動に集中するみたいだから、私とは一緒に行動する機会が多いから合間合間に時間はとれるはず。

 

それとMEMちょからも学ぶものがある。

MEMちょのトーク力というか、場の流れを素早く把握してうまい立ち回りをするあの動き。

私もそれなりに口は回る方だと言う自負はあるけど、正直MEMちょには全く及ばない。たぶん人生経験の差ってやつだろう。前世を合わせれば私の方が年上だけど、さりなだった頃の私は病院の一室という狭い世界の中でしか生きていなかったから、年齢相応の経験が積めていない。

これは直接教えてもらうよりは、一緒に仕事をする中で見て覚えようと思う。

 

そして・・・大本命のゴローせんせのこと。

ライブや握手会では今までより一層ファンをよく見ておかないと。いつせんせが来ていてもおかしくないからね。

会えたらなんて言おう。何から話そう。

さすがに今の姿で『さりなだよっ』って言っても信じて貰えないだろうし、時間を貰ってじっくり話をした方がいいかな。そうだっ、お姉ちゃんにも協力して貰えばスムーズにいくだろうし、帰ったらお願いしてみよう。

 

 

「♪」

「・・・何か良いことでもあったの?外ロケの時から随分とご機嫌みたいだけど」

「え?そう見える?」

「見える。ただでさえ頭お花畑に見えるのに、今はもっと酷い。誰がどう見ても『あ、こいつアホだな』ってわかるくらい緩々な顔してるわ」

 

空港に向かう車の中で、私が新曲を鼻歌で歌っていると隣の先輩がいつもの辛辣なツッコミをして来た。

いつもなら私も言い返す所だけど、先輩の推察通り今の私は超ご機嫌!いわゆる無敵モードになっているのだ。

 

「ねえ先輩・・・私が年上の素敵な男性と結婚したら、その時は式で友人代表スピーチをする権利を先輩にあげるね」

「え、なに?マジで頭大丈夫?てか結婚て・・・アイドルはどうすんのよ。あんたが始めたことなのに、自分が最初に一抜けするつもり?」

「ふっ、今は昔とは違うからね。結婚してもアイドルを続けることは可能なはず・・・はぁ、ウェディングドレスを着た私とタキシード姿のせんせ・・・こんなにお似合いな夫婦いないでしょ?」

「・・・これは本格的に駄目そうね。帰ったら病院に行くように社長に伝えておかないと・・・もちろん頭の病院に」

 

 

遠い目をしながらぶつぶつと呟きだした先輩を放置して、私はこれからの未来に想いを馳せた。

 

「(これからもっと活躍して、いつか必ずママの代わりにドームに立つ。せんせだって応援してくれてるんだから・・・うん、絶対出来る!私なら・・・私たちならきっと・・・!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何も知らされず、不幸だった過去にも縛られず、ただ前だけを見て真っすぐ綺麗に生きていく、か。妹の方は幸せな未来へ向かって突き進んでいくんだろうね」

 

「・・・でもね、その未来にはあなたの大切な人の姿はないかもしれないよ?」

 

「それでもあなたは、笑って生きていけるのかな」

 

 

 

 

 

 

 

 




・星野瑠美衣
 大好きなせんせからファンレターを貰ってとっても幸せな女の子。
まだ完全に覚醒したわけじゃないけど、これから重曹ちゃんや公称18歳から色々学んでそのうちスーパーアイドルルビーちゃんになる。完全に光属性です。

アクアちゃんの変化には気づいてるけど、概ねポジティブに捉えているので危機感はないし、せんせから貰ったファンレターの件で頭がいっぱいなので深く考えることはないかも。

これからも光のロードを爆走するルビーちゃんを見守っていてください。


次回はあかねちゃん視点の地獄の宮崎旅行編になります。
きっと恋人同士でキャッキャしながら観光して楽しんでたんだろうなぁ。

え、ホラー体験?まさかそんなはず・・・


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