今更ですが、この話は救いがあるようでないような終わりになる予定です。
バッドエンドが嫌な人は読まない方がいいと思います。
一応ここまでは原作沿い?になってます。たぶん。
「この雑っぷり・・・本当に鏑木Pはドラマの出来には興味がないんですね」
「それは予算も時間もないから・・・って、そんだけ撮影自体に力を入れてないってことでもあるか。あんたの言うとおりね」
『今日あま』の撮影日当日。俺と有馬はロケ地の廃倉庫のスタジオに来ていた。
今日は雨が酷く、天井からは複数の個所で雨漏りが起きていて、それが逆に雰囲気作りに一役買っている。まぁ、撮影スタッフは大変だろうが。
しかし事前に聞いていたとはいえ本当にひどい。ロケ地が1日しか確保出来ないせいであらゆる工程をすっ飛ばして、あるいは一纏めにして撮影しなければならない。
しかも、主演のモデルである鳴嶋メルトはスケジュールが詰まっているそうで、彼の予定に合わせてなるべく素早く撮影を終えなければならない。
監督の超低予算映画だってこれほど酷いものではなかったのに・・・
「よう、かなちゃん。今日雨ヤバない?撮影延期にして欲しかったわ」
有馬と話している所にやってきたのは、青野カナタ役の主演、『鳴嶋メルト』だった。
確かに有馬の言う通り、線も細いし綺麗な女顔をしている。売れっ子モデルというのは間違いなさそうだ。
「ちょっと雨漏りしてる所あるみたいだけど、平気よ」
「湿気あるとさー、髪広がるんだよねー。なんかココ、ジメジメしてて不快だし」
「あははは・・・・・・」
いつもの口の悪さはどこへやら。有馬は機嫌が良くなさそうな鳴嶋メルトを気遣うように、当たり障りのない会話で流している。
「紹介するね。こっちは今日のストーカー役の・・・」
有馬に自己紹介を促された。鳴嶋メルトは先ほどから興味深そうに俺の顔を見つめている。
ルビーと顔のパーツがほとんど同じである俺は、自分で言うのもなんだが顔は良いからな。男装した女であることは現場全員が知っているし、こういう目で見られることは想定していた。
「・・・どうも、アクアです。行きましょう先輩」
「うぇ!?ち、ちょっと!?」
「・・・は?」
俺は不貞腐れたような顔で雑に挨拶すると、有馬を連れてその場を離れた。
悪いが俺が今回最優先すべきは鏑木Pとのコネ作りだからな。時間もないし急がないと。
「先輩、鏑木Pはどこですか?早く挨拶したいんですけど」
「いや、それどころじゃないでしょ!仮にも主演に対してあの態度は──」
「やあ、かなちゃん・・・そっちが例の?」
「っ、鏑木さん・・・」
有馬は先ほどの俺の態度に腹を立てているようだ。説教が始まるかと思ったが、その前に一人の男性が俺たちに声をかけて来た。
・・・この人が鏑木勝也か。見た目はどこにでもいる中年男性と言った感じだが、これで業界に広い人脈を持つ敏腕プロデューサーっていうんだから侮れない。
「はじめまして、苺プロ所属のアクアと申します。急な申し込みを受け入れていただいてありがとうございます。本日はよろしくお願いします」
「君が・・・・・・ああ、こちらこそよろしくね」
出来るだけ丁寧にハキハキと・・・少し離れた所で俺を睨んでいる鳴嶋メルトにも聞こえるように挨拶をする。
鏑木Pは素っ気ない感じで俺の挨拶に応じると、そのままドラマの監督の方へと去っていった。
「・・・あんた、さっきとは随分態度が違うじゃない。何考えてんの?」
察しがいいな・・・さっきの俺の態度がわざとだったことに気づいたのか。
自分の考察には自信があったが、念のため有馬にも確認の意味を込めて質問する。
「鳴嶋メルトは私のこと、どう思ってますかね?」
「は?どうってそりゃ、失礼な奴だと思ってるでしょ。ぽっと出の新顔の癖にあんな態度とったんだから」
「私と同意見で嬉しいです・・・そろそろリハみたいですね。行きましょうか」
「あっちょっと!?」
準備のためにストーカー役の服装に着替えながら、俺は有馬の様子を横目に観察する。
さっきのことが気にはなるんだろうが、今は完全に切り替えてすっかり仕事モードって感じだ。この分なら問題はないだろう。
「(ったく、何なんだあの女・・・顔は良かったけど態度が糞じゃねぇか。名前も聞いたことねぇし…ふざけやがって)」
「いい感じだったじゃない。今からでも役者やればいいのに」
リハが終わってから、嬉しそうな感じの有馬が話しかけて来た。
先ほどの件を問い詰められると思ったが、この感じなら大丈夫そうだな。
「先輩ほどじゃありませんよ。大根役者に合わせてあれだけ棒演技出来るなんて、さすがです」
「・・・それ褒めてる?」
「褒めてますよ。上手に演技するよりよっぽど大変ですから・・・向こうはこっちと合わせようなんて欠片も考えてないし。先輩はやっぱりすごいです」
「そ、そう」
有馬は僅かに頬を赤らめて照れている様子だったが、咳ばらいをすると俺の演技について話し始めた。
「あ、あんたこそ、出演時間は短いとはいえたった1日でこれだけ出来るんだったら大したもんよ」
「・・・そうですか」
「でも私は負けてるつもりないからっ・・・ラ、ライバルとしてはあんたの実力が昔より上がってるのは嬉しいし?いや、私だってこれからもっとうまくなるけどね!」
・・・そうか。有馬は俺をライバルだと思っていたのか。
当時、有馬と共演した時の俺の演技がこいつとってはそれだけ衝撃的なものだった、ということだろうな。
世辞ではなさそうなのはわかるが、ここは控え目な態度で行くか。
「なんか気を遣わせちゃってすみません」
「別にお世辞とかじゃないわよ!本心よ本心・・・それに、今のあたしは座長だからね。他の演者に気を遣うくらいするわよ」
僅かに憂いを帯びた表情で、有馬は子役時代からどう過ごしてきたかを語り始めた。
こいつも中々キツイ子供時代を過ごしてきたようだ。
売れなくなったのは本人の性格にも問題がある、というのは間違いないが、周りの大人の方が責任の比重は重いはずだ。
けど、子役時代の有馬は使われるだけ使われて、旬が過ぎたらあっさり捨てられた。誰にも手を差し伸べられず、家族にすら見放され・・・それでもこいつは諦めずに今まで稽古を続けて来た。強い精神力の持ち主だ。
「本当に今まで辛かったけど、続けて来て良かったって思った!」
ルビーのためとはいえ、鏑木Pとコネを結ぶために俺はこいつを利用している。
心の底から嬉しそうに笑顔を見せる有馬を見て、俺の心は罪悪感に満たされていた。
「あんたとはもっと大きな作品で勝負したいって思ってたけど・・・まだこの業界に残ってくれて、もう一度あんたに会えた。それだけで十分よ」
「・・・先輩」
「なに?」
俺は心を乱そうとする罪悪感を出来るだけ表に出さないよう、平静を取り繕いつつ有馬に背を向けた。
「私、今回の仕事は結構緊張してるんですよ」
「え?そうは見えないけど・・・」
撮影の再開を告げるスタッフの声を聞きながら、俺は背後にいる有馬に向けて言葉を残した。
「何かあったら、フォローお願いしますね」
さて、俺の今回の目的を改めて確認しよう。
俺の目的は鏑木Pとコネを作ること。それも出来るだけ友好的な状態で、だ。
鏑木Pはドラマの出来には興味がないが、逆を言えば最終回のワンシーンくらい、好き勝手しても許容してくれる可能性がある。
むしろ、それが原因で良い意味で今回のドラマ・・・ひいては出演するモデルたちの知名度が上がるなら歓迎だろう。
そして、そういう流れを作ったのが俺だとわかればある程度は興味を持ってくれる…はずだ。
カギになるのは・・・鳴嶋メルトか。
今の有馬は突出しないよう周囲のレベルに合わせることを最優先とする。俺一人が本気で演技をしたとしても、鳴嶋メルトが大根役者のままでは有馬の演技も中途半端なものになってしまう。
だったら、鳴嶋メルトが俺たちに合わせればいい。
無論、今すぐ演技のレベルを上げることは出来ない。しかし、演技において重要な要素…そのうちの1点だけなら何とかなる。
それさえ出来れば、他の不足している要素は俺や撮影スタッフが全力でフォローする…そうすれば、有馬が本気を出さざるを得ない状況にすることが出来るだろう。
・・・そのためにあんな態度で挨拶したんだからな。
「ほっといてよ!勝手についてきて!」
「オマエノカンガエソウナコトダ!」
・・・今日撮影するシーンは、今日あまの原作中でも屈指の名シーン。
ヒーローと悪役であるストーカーの対決、そして愛を知らない少女が初めて誰かに守られて涙を流す。原作ファンの多くが泣いたと言われている。
早速本番の撮影が始まり、今はヒロイン役の有馬とヒーロー役の鳴嶋メルトが演技をしているのだが…
「バカナノ?」
「でも・・・!」
「ヒトリニサセネーヨ!」
「(これはひどい・・・)」
リハの時にわかってはいたが、本番でこの演技をやられるのは共演する人間としてはキツイ。相手をしている有馬はもっと苦しいだろうな。
有馬は必死に呼吸を合わせようとしているが、鳴嶋メルトはひどい棒読みで、ただ台本通りにセリフを言っているだけだ。
有馬のセリフに被ったりはしていないし、台本の内容も覚えている。立ち位置も一応間違ってはいないし、素人にしては上等と見るべきだろうが…
天候や撮影スタッフのおかげで場の雰囲気は出来ているが、鳴嶋メルトの演技によってそれらが全てぶち壊しにされている。
まぁ仕方ない。ここからが本番だからな。
『ぴちゃ・・・ぴちゃ・・・』
「っ!」
有馬が俺の方を振り向く。
俺はわざと水たまりの上を歩いて二人の方へと向かっていく。
勢いよく踏んではいけない。一歩一歩を踏みしめるように、水音も出来るだけ粘ついた、低い音が鳴るように。
「この女はお前が思ってるような人間じゃない・・・・・・・・・」
台本通りにセリフを続けつつ、鳴嶋メルトの様子を伺う。
・・・やっぱりな。こいつは俺に対して嫌悪感を抱いている。
初対面の挨拶から態度が悪かったし、今もリハの動きを無視してわざと水たまりの上を歩いた。
こいつからしたら、態度も悪ければ本番で好き勝手動く身勝手女…といったところか。
俺はゆっくりと鳴嶋メルトの傍に行き、そっと耳に顔を近づけて、訝し気な顔をする鳴嶋メルトに言い放った。
「・・・やっぱり大したことない」
「!?」
「勘違い男・・・モデルなんてしちゃって、恥ずかしいやつ」
「っ!んだとてめぇ!」
こいつが女相手でも簡単に手をあげるような奴なら、もうちょっと楽が出来たんだがな。
久しぶりだが・・・やるしかないよな。
「懐かしいね・・・まるで昔のかなちゃんに戻ったみたいだ・・・これは絶対にいいシーンになるよ」
俺は監督が話している声を聞いて、今回の撮影が何とかうまくいったことを確信して安堵していた。
俺がやったことはそんなに複雑なことじゃない。ただ、鳴嶋メルトから狙った感情を引き出して、それを演技に利用した。それだけのことだ。
鳴嶋メルト。
今年から高校生の15歳。ソニックステージ所属のモデル。
性格は極めて一般的な年相応の少年、少々流されやすい所はあるが、気質は善人寄り。
モデルになったのも、他のバイトより金が簡単に貰えるからという俗な理由。
役者としては今回が初めての出演で、稽古した時間よりも実際に出演している期間の方が長い。本人はそれなりに真面目な所もあるが、撮影スケジュールもモデルとしてのスケジュールも詰まっていてろくに稽古できる時間がとれない。
これでは役者として成長できないのも当然だ。
これらの情報は、座長として世話をしていた有馬に聞いたものと、監督の下で役者をしていた際に築いた人脈を使って集めた情報を整理したものだ。
以上の情報を踏まえたうえで、俺一人の行動で鳴嶋メルトに及第点と言える演技をさせる方法は一つ。
ストーカー役である俺に対しての悪感情を抱かせ、それを本番で刺激することで演技に感情を乗せる。
技術や経験が足りてなくても、感情が乗った勢いのある動きが出来ればそれなりに観れるものにはなるはずだ。
とはいえ、やり過ぎてはいけないし、『今日あま』の原作の流れを極力壊さないようコントロールする必要があった。
まぁ、思っていた以上に鳴嶋メルトも迫真の演技をしてくれたし、撮影スタッフのフォローも素晴らしかった。
有馬の演技も想定以上・・・かつてのアイとは似て非なるカリスマ性、誰もが思わず振り向きたくなるような、太陽のようなオーラ。やはり有馬は本物の天才なんだろうな。
「わ、悪い!当たっちまった・・・大丈夫か?」
慌てた様子の鳴嶋メルトが駆け寄ってきたので、俺は口元を抑えていたハンカチをしまい下ろした髪で口元の傷を隠した。
・・・ちなみにこの傷は雰囲気づくりのために俺が自分でつけたものだ。拳はかすった程度だが、その瞬間に下唇を僅かに噛んで血を出した。
「かすっただけですよ。血は唇をかんでわざと出したんです・・・こちらこそ、今日は失礼な態度をとってすみませんでした」
「えっ・・・あぁ、いや俺は・・・」
「勢いがあって、感情が乗った素晴らしい演技でした・・・また共演出来たらいいですね」
そっちに謝られても困るんだよな。こうなるように仕向けたのは俺だし…まぁ、良いシーンにはなったし、鳴嶋メルトの知名度も上がるだろう。これでチャラにしてほしい。
「(あいつの演技・・・やっぱり間違いないわ。一瞬だったけど、さっきのあいつの雰囲気は・・・そう!昔見たアイと同じ・・・視界に映れば目線を向けずにはいられない独特のオーラ。あれを最初からやられてたら主役の私が喰われてた・・・どうやったらあんなことが出来るの?)」
「(・・・ダメだな。このままじゃ帰れない・・・)」
『今日あま』の撮影終了後、俺は一人で自宅の近くにある公園を目指してゆっくりと歩いていた。
本当は撮影スタッフの一人が有馬のついでに俺を自宅まで送ってくれるはずだったのだが・・・
『撮影の時からもしかしてって思たけど、あんたもしかして具合悪いの?』
『・・・え?』
『ほら、自分の顔見なさい』
送迎中の車の中で、有馬がバッグから取り出した手鏡の中には青白い俺の顔が映っていた。
『顔色悪いでしょ・・・現場に来た時はこうじゃなかったし、こんなメイクしてなかったから。途中で気分悪くなったんじゃない?』
『・・・あぁ、昨日徹夜したからですね』
『は?あんた寝てないの!?』
・・・有馬には、久しぶりの役者としての仕事だから徹夜して台本読み込んだとか、緊張して眠れなかった、とかそれっぽい理由を説明した。
「(懐かしいな)」
公園にたどり着いた俺は、ベンチに座りながら目を瞑る。
この公園は自宅から歩いて10分程度の距離にある。小さい頃はミヤコと俺たち姉妹で何度か遊びに来たことがあった。
時刻はもうすぐ夕方、さすがにこの時間帯になると人はほとんどいない。2人のお年寄りと、数人の小学生と思しき少年少女が遊んでいるが、もう間もなく帰るだろう。
俺は目を瞑ったまま、出来るだけ体を休めるように深呼吸を繰り返す。
・・・体調が悪くなった原因はわかっている。
久しぶりに役者として演技をしたせいか、自覚はなかったが気合を入れすぎてしまったこと。そして、今回俺が演じたのが、過去の事件を想起させるストーカー役だったせいだ。
服装から小物であるナイフまで、姿見で確認した自分の姿があいつの・・・『リョースケ』を思い起こさせるものだった。
『星野アクア』は過去の悲劇をすでに乗り越えているはずだが、体の方が勝手に反応してしまったらしい。まぁ、少し休めば元に戻るだろう。
「(・・・ん?)」
そうして休んでいると、いつの間にか傍に人の気配があることに気づいた。
決して油断していたわけではないが、まだギリギリ明るいし公園内には監視カメラもある。少ないとはいえ人気もあるから多少気が緩むのは仕方ない・・・と、自分に言い訳をした。
「あの?」
話しかけて来た…たぶん俺に対してだよな。
声の低さからして男、声音から攻撃的な意思は感じられない。
「・・・なんでしょうか?」
俺は目を開き、返答しながら男を観察する。
年齢は・・・二十代半ばくらいだろうか。身長は180cmあるかどうか。綺麗な金髪をオールバックにしている。細い目に縁なしの眼鏡、服装はパーカーにジーンズと非常にラフなものだ。
「いや、その・・・何だか具合悪そうに見えて。大丈夫ですか?」
「・・・」
糸目で少し分かりづらいが、声音や仕草からしてこちらを心配しているらしいことがわかる。今はまだ男装を続けているし、ナンパなどの可能性は低いと判断した
「実は寝不足で・・・でも、もうだいぶ良くなりましたから」
「そうだったんですか、それは良かった・・・・・・あの、あなたって…」
「はい?」
「役者のアクアさん・・・ですよね?」
「っ!」
・・・俺の名を知っているのはまだいい。しかし役者としての俺を知っているのは妙だ。
役者をやめてもう3年になるし、出演した作品もどれも有名とは言い難いもの。この男のことも俺の記憶にはない…過去に共演した俳優や撮影スタッフでもなさそうだ。
俺はいつでも逃げられるよう、腰を僅かに浮かせて警戒した視線を男に向けた。
すると空気を察したのか、慌てた様子の男が弁明するかのように話し出した。
「あっ、すみません!怪しい者じゃないんです!実はボク、五反田監督の作品はよく見てるんですよ!それであなたのことも知ってて…すごく可愛いし、演技もうまいし、とんでもない子役が入って来たなぁって思って、ぶっちゃけあなたのファンなんです!でも最近は五反田監督の作品に出てこなくなったし、もしかしたら役者辞めちゃったのかなぁと思って、そしたら偶々あなたを見かけて、もしかしたらと思って───」
・・・俺は早口でしゃべり続ける男の話を聞きがながら、心の中で警戒レベルを少し下げた。
この男の語ることが本当だという確証はないが、話している様子、というか雰囲気がとある人物と似ているような気がしたのだ。
「(さりなちゃんも・・・アイのことを語るときはこんな感じだったな)」
個人差はあるだろうが、好きなものを語る時にこうなってしまうのに年齢や性別は関係ないのかもしれない。
俺は男の話をしばらく聞いていたが、そろそろ暗くなりそうだしいい加減止めないといけない。
というか、過去の俺の演技や外見についてこれだけ熱意をもって語られるのは少し恥ずかしい。
「───の作品も良かったですよね!ボクとしてはアクアさんの方が主役に合いそうだと思ったんですけど、ていうか今って男装されてますよね!?もしかして何かの作品に出られて…」
「…すいません、そろそろいいですか?」
「えっ、あっ、ごめんなさい!つい興奮しちゃって・・・」
「いえ、まさか私も自分のような役者崩れにファンがいたなんて・・・驚きました。でもごめんなさい。そろそろ家に帰らないと・・・もう暗くなりますし」
「あぁ・・・もうこんな時間か。す、すいません・・・」
先ほどの勢いはどこへやら、男は見てるこっちが申し訳なるくらい腰を低くして謝っている。
「お会いできて嬉しかったです・・・あ、あの最後に一つ聞いていいですか?」
「えぇ、どうぞ」
「・・・アクアさんは役者、辞めちゃったんですか?」
不安そうな顔で聞いてくる男に対して、俺はどう返そうか少し迷った。
苺プロに役者としての籍は残っているとはいえ、もう活動はほとんどしていない。しかし、俺のファンだというこの男性にストレートに事実を言うのも少し気の毒に思われた。
「・・・今は、役者としての仕事は少し休んでるんです。学業に専念したくて・・・一応、今日だけ復帰しましたけど」
「そう・・・ですか。ちなみにどんな作品に?」
「今日はあまくちで、っていうネット局のドラマです。ご存じですか?」
「いえ・・・ですが、家に帰ったら早速観てます!今日は会えて本当に嬉しかったです・・・それじゃ、またいつか!」
「あっ、私は最終話だけ・・・に・・・しか・・・」
行ってしまった・・・
公園を走り去っていく男性を見送りながら、俺は不思議な気持ちになっていた。
何だか安心するというか・・・声がいいのだろうか?ほとんど一方的に話を聞かされていたのに、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。それに雰囲気も柔らかくて、優しい人柄が滲み出ているようだった。
俺は先ほどの男性のことを考えながらも、公園のトイレの鏡を使って顔色を確認する。
問題なさそうだったので、仕事が無事終わったことをミヤコに報告するべく自宅へと足を向けた。
「(よし、これなら大丈夫だな。さっきの人のことは・・・ま、もう会うこともないだろうし、気にしないでおこう。悪い人じゃなさそうだったしな)」
「この作品は有馬さんの演技に支えられていたと思います・・・ありがとうございました」
「先生・・・」
『今日あま』の撮影から一週間後。俺と有馬は打ち上げパーティーに参加していた。
有馬が『今日あま』の原作者、吉祥寺頼子さんと話し始めたのを機に俺は離れた位置に移動しながら、ドラマの評判について思い返していた。
結論から言えば、『今日あま』のドラマは総合的には低評価よりの評判で落ち着いた。
最終回のクオリティだけは良かったものの、それまでの5話分の低評価を覆すには至らなかったのだ。
しかし、途中でリタイアせずに視聴を続けていたコアな原作ファンや、役者のファンからは熱烈な賞賛を貰うことに成功した。
成功したとは口が裂けても言えないが、原作者の吉祥寺頼子さんは喜んでくれているようだ。
・・・ネット上での有馬の評価も多少は良くなっている。利用させてもらった分、少しでも有馬に益があるなら良いことだ。
「やぁやぁアクアちゃん、最終回評判だったよ」
「!」
軽い口調で話しかけて来た男の姿を見て、俺は気を引き締めた。
鏑木勝也・・・本当は撮影終了後に話をしたかったのだが、鳴嶋メルトの雑誌撮影に同行するとのことで、すぐにいなくなってしまったのだ。
「鏑木さん・・・今回は、勝手なことをしてすみませんでした。言い訳のつもりはありませんが、役者としての仕事は久しぶりで緊張してしまって──」
「緊張ねぇ・・・ま、いいさ。スタッフは編集に苦労したみたいだけど、吉祥寺先生も満足してくれたし、かなちゃんの才能が枯れていないことがわかったのは収穫さ。何より・・・」
鏑木Pは興味津々と言った感情を隠そうともせず、顔をずいっ、と俺の方に近づけて来た。
「君のような才能を見つけることも出来たしね」
「・・・ありがとうございます」
「君、苺プロの子だっけ。アイ君が所属していた」
「はい、一応、苺プロダクションに役者として所属しています」
どうしてアイの名前が・・・
いや待て、落ち着け。アイが苺プロに所属していたのは業界なら誰でも知っているんだ。別におかしなことではない。
「君、アイ君と似た顔つきをしてるよね。特にその目・・・よく似ているよ」
「そう・・・でしょうか」
「ああ、彼女の顔は間近でよく見ていたからね。間違いないよ」
・・・まさかこんな所でアイとの繋がりを見つけることになるとはな。
話を聞くにこの男、まだ俺たち姉妹を妊娠する前のアイと仕事上の関係があったらしい。
「仕事以外にも、色々お世話してあげたもんだよ。それこそ、事務所に内緒で男の子と会う時とか良いお店紹介したり──」
「すみません。故人のゴシップには興味がないもので・・・」
「ははは、それもそうか。もう十年以上前のことだもんね、若い子には興味ないか」
・・・アイの話には興味があるが、俺が優先すべきは鏑木Pとコネを持つことだ。
ここからどうにかルビーの話題に繋げていって、妹の将来性をアピールしなければならない。幸い、若いタレントの世話を焼きたがりな鏑木Pの性質を考えると勝算は高いはずだ。
「・・・さてと、そろそろ本題に入ろうか」
「本題、ですか?」
「そう。今回の件はかなちゃんからの要請ではあったけど、君の頼みを受けたかなちゃんが僕に出演を打診してきた・・・つまりは君の願いを僕が聞いてあげた形になるわけだ」
・・・そう来たか。ようするに、貸しがあるんだからそれを返せ、と言いたいのだろう。
仕方ない。犯罪になるようなこと、ルビーや苺プロの評判を下げるようなこと以外なら何でもしよう。
「えぇ、そうなります。私としては、何らかの方法で今回の恩を返せたら、と思っていますが・・・」
「わかっているなら話は早い」
鏑木Pは俺の目を見据え、片手でこちらを指さしながら言い放った。
「恋愛リアリティショーに興味はある?」
「こちら、友達になったみなみちゃんですっ」
「寿みなみいいますー。よろしゅーお願いします」
今日はついに陽東高校の入学式。
俺にとっては2回目、ルビーにとっては初めての高校生活初日が始まったわけだ。
と言っても普通の高校と違いはないし、特に俺は一般科だから殊更特別なイベントが起こるようなこともない。普通に式も終わって、クラスメートの自己紹介、説明ばかりのホームルームくらいだ。
ルビーは早速友達作りに成功したらしく、わざわざ貴重な休み時間に連れて来て紹介してくれた。
正直不安だったのだが、寿さんはいい娘そうだし一安心である。
「姉のアクアです。今後とも妹をよろしくお願いします」
「・・・なんか、お姉さんっていうよりお母さん目線の言葉やね」
まぁ、精神的な年齢差を考慮するなら親子くらいは離れてるからな・・・
いたたまれなくなったのか、わずかに頬を赤くしたルビーが慌てて俺に質問して来た。
「お、お姉ちゃんはどうなの?友達できた?」
「んー・・・まぁまぁ?」
「疑問形なのはなんでなん?」
一般科は芸能科と違って中高一貫だから、俺のような外部から入学した生徒は中々友達作りが大変なのだ。俺と同じ立場の生徒は他にもいるが、各クラスに散らばっているせいで同じ境遇の者同士で親交を深めるのも難しい。
「話し相手は何人か出来たけど、友達って感じではないかな。ま、気長にやってくよ」
俺の心配なんかしないで、ルビーには自分のことだけを考えていてほしい。ルビーにとっては初めての高校生活、しかも芸能科は一般科とは勝手が違うはずだし、中学の頃のようにはいかないだろう。
その後しばらくの間、二人から芸能科の様子について話を聞くことが出来た。
俺が見た限りでは1年生にテレビ等で見た顔はほとんどいなかったように見えたが、どうやら少なからず有名なタレントも入学していたらしい。
不知火フリル・・・俺たちの世代では今最も名の知れているマルチタレントだ。
マルチタレントとは文字通り多様なジャンルの仕事をこなせるタレントのこと。一つの分野で優れた才能を持つだけでなく、幅広い仕事に対応可能できる器用さが求められる。
不知火フリルは優れた容姿と演技の才能、歌唱力も高くてダンスも踊れる、まさに万能の天才と言える。
「私の今最推しなんだよ!ドラマも毎週必ず観てるんだから!」
「ふーん・・・そういえばそうだったね」
「あれ、アクアさん不知火フリルに興味あらへんの?」
興味はある。
将来的にアイドルデビューしたルビーの障害になりえる存在だし、逆にうまく取り入るか利用することが出来れば良いな、と思っていたから。でも・・・
「私の最推しはルビーだから」
「そ、それとこれとは別だよ・・・嬉しいけど・・・」
「(シスコンや・・・)あっ、不知火さんおるよ!」
なるほど、あれが不知火フリルか。テレビで見るのと実物で見るのではやはり違うな。
よく手入れされているであろう艶のある緑がかった黒髪。スラっとしながらも出るとこ出たその辺の木っ端モデルが裸足で逃げ出すスタイル。顔は無表情ながらもそれが逆に神秘的な雰囲気を醸し出している。
だがやはりルビーの方が可愛いな。
・・・一応挨拶はしておくか。
「こんにちは、不知火さん」
「?」
声に反応してこちらを振り向いた不知火フリルを観察する。
・・・感情が読みづらい見事な無表情だが、何となく興味深そうに俺を見ている・・・気がする。
「私の妹が不知火さんと同じクラスだから。仲良くしてくれるとありがたいです」
「・・・あなた知ってる。星野アクアさんでしょ?『今日あま』にも出てた」
「よく知ってるね。あまり話題にはならなかったと思うけど」
『今日あま』の原作ファンだったりするのだろうか?
裏方の人間だったら演出の勉強になる作品といえるかもしれないが、一線級の俳優からすれば見る価値無しと断じられてもおかしくないものだったはずだが。
俺が考え事をしていると、不知火フリルは少し・・・微笑んだ?ような顔でぽつりと呟いた。
「・・・まだ役者続けてたんだ」
「?」
「あっ、そちらの方はミドジャンの表紙で見たことあります・・・みなみさんでしたっけ?」
「はい!寿みなみいいます!わー!生の不知火さんに会えるなんて──」
寿さんと不知火フリ・・・不知火さんでいいか。興奮した様子の寿さんの話に不知火さんと一緒に相槌を打ちながら、俺は少し離れた場所でショックを受けたような表情で立ちすくんでいるルビーに視線を向けた。
・・・反応がクラスメートに対するそれじゃなくて、完全にファンなんだよなぁ。同じクラスなんだから、仕事は別としてプライベートでは出来れば仲良くしてほしい。
俺はルビーの腕を強引に引っ張りながら、不知火さんの前まで連れて来た。
「ちょっ、ちょっとお姉ちゃ・・・!」
「不知火さん、紹介するね。この子は私の妹のルビー。同じクラスだから仲良くしてあげて」
「妹さん・・・何をしている方ですか?」
「私は・・・え、えっとぉ・・・その・・・」
すっかり緊張しているみたいだな。
仕方ない。ここは俺が代わりに話すしかないな。
「ルビーは苺プロダクション所属のアイドルなんです。可愛くて運動神経抜群でダンスもうまくてとっても可愛い天才だから不知火さんに負けないくらいの大人気アイドルになる間違いない。メンバー集めが終わったらすぐにデビューするし高校在学中に余裕で武道館ライブまで行ける。でも将来的にはドームライブを目標にしていて───」
俺は緊張して話せないルビーに代わって最低限の紹介を話し続けた。
休み時間が短すぎる・・・今度時間がある時に改めてアピールさせてもらいたいものだ。
「(シスコンなのね)」
「(やっぱりシスコンや)」
「(うわぁぁぁぁああああ!!お姉ちゃんやめてぇぇ!)」
「ねぇねぇ!みなみちゃんをうちに誘ってみるのはどうかな?可愛いし胸おっきいし・・・」
「却下」
「なんでー!?」
高校初日も終わり、俺たちは事務員が帰ってミヤコ一人になっている事務所に集まり、ゆっくりとした時間を過ごしていた。
「よその事務所の子でしょ。駄目」
「み、みなみちゃんの事務所と交渉して移籍してもらうとか・・・」
「それも無理じゃないかな」
俺は読んでいた雑誌から顔を上げ、未だに希望を捨てきれないルビーに残酷な事実を伝えることにした。
「寿さんの所属事務所はギリギリ中堅って感じだけど、勢いはあるし、所属モデルの中でも寿さんは事務所からかなり推されてる。若手のトップエースってポジションじゃないかな」
「なら、事務所が手放すはずないわね。無理に交渉して揉め事なんて起きたら今のうちじゃ潰れかねないし、フリーの子から探すしかないわ」
「うぅ・・・駄目かぁ・・・」
・・・事実を言っただけとはいえ、ルビーが悲しんでいる。これはいけない。
俺はルビーを悲しみから救うべく、最近になって見つけたメンバー候補の話を二人にしてみることにした。
「・・・一応、学校で候補は一人見つけたんだけど。可愛いけどフリーで仕事もなくて、今すぐにでも連絡がとれる子」
「は?そんな子いつの間に・・・1年生は今の時点じゃ全員事務所に所属しているし、もしかして2年生か3年生?」
「ま、まさか・・・」
ルビーは察したのだろう。何とも言えない複雑な顔をしている。
喜んでいいのかわからないんだろうな・・・現時点では相性が悪そうに見えるし。
「来てやったわよ!地面に顔がめり込むくらい感謝しなさい!」
「うわぁ…」
「呼び出しておいてその反応はなによ!」
というわけで翌日の学校の放課後。
俺とルビーはとある人物を学校近くの公園に呼び出していた・・・まぁ有馬なんだが。
そう、学校で見つけたメンバー候補とは有馬かなのことだ。
2年生に進級する少し前にフリーになっており、顔もその辺のモデルやアイドルより可愛く、役者らしく体力づくりを長年続けている。
ついでに、何年か前には役者以外の仕事にも色々手を出しており地味に歌唱力も高い。
メンバーに誘うにはこれ以上ない逸材と言えるが・・・問題はルビーとの相性か。
今も、何とかルビーの背中を押して有馬を説得させているがいまいち反応が悪い。
とはいえ、ルビーの熱意は伝わったはずだし、今の有馬の心は揺れ動いている状態だ。あと一押し・・・
「・・・お願いします。妹とアイドルやってくれませんか」
「な、なによ急に!?」
「お姉ちゃん・・・?」
俺は頭を下げてお願いした。
有馬は一見意思が強いように見えるし、それは実際間違っていない。しかし、売れなくなってからの影響なのか、自分に自信が持てないでいる。
ゆえにここは褒めて褒めて褒め倒す。これしかない・・・!
「ルビーは絶対にアイドルとして大成します・・・でも、並び立てる人間がいないんです。苺プロでもめぼしい人材を探していますけど、今のところ成果はありません。それどころか、現役で活躍してるアイドルの中にだって、ルビーと並んで遜色ない人間はそうはいない!」
「それがなによ・・・?」
俺は顔を上げ、困惑している有馬の目を真っすぐ見据えた。
・・・すまない有馬。俺はお前をとことん利用させてもらう。
「先輩しかいないんですよ。ルビーに匹敵する魅力を持った人は!」
「み、魅力!?」
「そうです!先輩ならきっとアイドルとして大活躍できます!そうすれば今より知名度も上がって、役者としての仕事も増えるはずです!」
「そ、そんなこと言われても・・・アイドルで売れなかったら役者としても終わるし・・・」
まだ駄目か・・・
俺はチラリとルビーに視線を送る。すると、ハッとしたルビーがすかさず援護を開始する。
「ロ・・・有馬先輩なら売れるよ!私は長年アイドル追って来たからわかる!絶対に売れるよ間違いない保証する!」
「い、いやその・・・」
「ルビーの言う通りね!それに先輩は役者として私の憧れでもあるんです!同じ事務所に所属してくれるなら、私は一生先輩についていきます!」
「あ、憧れ・・・私が憧れ・・・」
「「先輩!!」」
「あ、ああ、あっ───」
・・・よし、良い感じに頭が真っ白になってるな。このまま勢いに任せて苺プロまで連れて行こう。
俺はルビーと連携して有馬の両脇をガッチリと固め、事務所へと足を向けた。
「苺プロへようこそ、歓迎します」
「・・・」
「ねぇこれ大丈夫?あんたたちヤバい薬とか使ってないわよね?」
事務所との契約書に判を押した有馬だが、呆然自失といった様子で虚空を見つめている。
そんな有馬を見てさすがにマズイと判断したのか、ミヤコが訝し気な表情で俺とルビーに聞いてきた。
「薬なんてそんな・・・ちょっと褒めただけだし・・・」
「ロリ先輩がチョロいだけだから・・・私たち悪くないから・・・」
ただ、道中で常に耳元で有馬を褒め続けただけだ。
ルビーと俺の連携は完璧だった。途中まで顔を真っ赤にして照れていた有馬は、気づけば今のような状態になってしまった。
「・・・・・・・・・」
「おーいロリせんぱ~い・・・お、おーい!」
「・・・・・・・・・」
「先輩が壊れちゃった・・・」
ソファーの上でぽけーっとしている有馬の顔の前で、ルビーが手を振りながら声をかけている。
・・・そのうち正気に戻るだろう。ま、正気に戻ったところですでに契約は交わされているわけだが。
「後は二人に任せた・・・先に休むね」
「大丈夫?慣れない仕事で疲れてるんじゃない?」
「そうかも・・・でも結構楽しいし、たぶん大丈夫だよ」
俺は事務所を後にしながら、鏑木Pに依頼された仕事について再度考えていた。
「(恋愛リアリティショーね・・・出来れば何事もなく終わってほしいが・・・)」
「会えてよかった・・・本当に」
日にちを少し巻き戻し、アクアが『今日あま』のドラマに出演した日のこと。
アクアがいた公園から離れた男は、楽し気な雰囲気を隠そうともせずに意気揚々と住宅街を歩いていた。
「妹の方もいいけど、役者を再開したなら姉の方も悪くないかもね」
独り言を呟きながら歩いていた男だが、ふと足を止めて近くに停めてある車に乗り込んだ。
「おかえりなさい・・・事務所でよろしいですか?」
「ああ、頼むよ」
「かしこまりました」
走り出した車の中で、男は眼鏡を外して髪をくしゃりとかき混ぜる。
「二人とも素晴らしい才能を持ってる。あと数年もすれば彼女を超えるかもしれないな」
「・・・楽しそうですね」
「楽しいとも。今まで何人も才能ある人を見て来たけど、やはりボクと彼女の子は別格さ」
「では、いつ頃にされますか?」
「そうだね・・・」
男は少し考え、楽し気な笑顔で運転手に応えた。
「あと数年・・・彼女たちが高校を卒業する頃か、あるいは少し前がベストかな。それまでは、彼女たちの成長をじっくりと楽しませてもらうとするよ」
「さようですか」
波打つ金色の髪、自信に満ち溢れた整った顔。
「才能がピークに達した時が一番いいんだ。彼女たちなら、きっとアイの時と同じ・・・あるいはそれを超える喜びをボクに与えてくれる。そう確信しているんだ」
愉快でたまらないという風に、男は口元を歪ませ、漆黒の星を宿した双眸で窓の外を眺めていた。
「本当に楽しみだよ」
・星野愛久愛海
何かと心にダメージを受けているか弱い生き物。
普段は原作アクアと同じく片目白星状態。精神的負荷が一定値に達すると両目白星状態になり、全盛期のアイに匹敵する『嘘を真実だと思わせる』カリスマ性を発揮する。
原理としては、精神的負荷が増加して心も体も不調になる→周囲に悟らせないよう本能的に全力で演じる(火事場の馬鹿力)。つまりは全力で虚勢を張ってる状態。
この状態から戻れなくなったら手遅れのサイン。
今回はストーカー役を演じた際に僅かな時間だけ発動した。メルト君はビビった結果迫真の演技をしたし、有馬は対抗して無意識に全力を出すことが出来た。
・カミキヒカル
娘が気になってフライングで登場した黒幕さん。独自設定マシマシ。
本作では生まれついての邪悪。DIOと吉良吉影とディアボロとヒソカを混ぜてコネコネしたような奴。お労しい過去とかは特にない。
優れた知性とカリスマ性を持ち、人の心の隙間に入りこんで洗脳する人心掌握に長けた人物。
相手の心が不安定であればあるほど容易く傀儡に出来てしまう。
趣味は価値ある女性を貶めること。趣味というか性癖。
価値には才能だけでなく富や名声、地位も含まれている。
基本的には自らの手を汚さず、他人を利用しているが、特に気に入った女性は自らの手で直接コロコロしちゃう。これが唯一無二の隙。
今のところアクアちゃんが勝てるような相手ではない。というか戦いにならない。
恋愛リアリティショーからは色々と原作とは違う点が出て来ると思うので、そういうのが苦手な人はごめんなさい。
特にキャラごとのポジションが変わります。