コッコはハイラルにて最強
女神はハイリア様の天啓を受け、ゼルダ姫と剣士リンクと共にカカリコ村を目指し台地を発った俺達。平原や切り立った双子山の道を抜け、とにかく東の方向へと進みに進む。
その道中、体力オバケのリンクと幽霊体なので体力と言う概念の存在しない姫に俺が着いて行けない事態が発生したので休息を取る事となり……。
「どうだリンク!これが俺の成果のツルギカブトだッ!」
"負けるか!なんかピカピカしてるカブトムシ!"
「ゼルダ姫!判定を!」
『ふむ…』
折角なので虫取りに興じていた。近くに森林があったので行くと何と言う事だろうかカブト、クワガタが沢山の昆虫パラダイスだったのである。そこで息抜きを兼ねてリンクと俺のどちらが大きい虫をゲット出来るか競っているのであった。
と言う訳で審査員のゼルダ姫、どちらのサイズが大きいのでしょうか!結果発表をお願いします!
『……僅差ですが、ビルダーのツルギカブトが大きいです!』
「ッシャァ!オラァァァ!退魔の勇者敗れたりィ!」
"再判定を要求する!格好良さではコッチの方が勝ってるから!"
「はい負け惜しみ〜〜!金一色よりも蒼と黄土色の組み合わせの方が渋カッコいいです〜〜!」
と言う訳で俺の勝ち!なんで負けたか明日まで考えて来てください(煽り)
『ちなみにですが、リンクが捕まえたこのガンバリカブトを煎じて煮詰めれば持久力を倍増させる効果をもたらす薬品にできるんですよ』
「ごめん姫様。勝利の余韻に浸ってる中でカブトムシを原材料としたクスリの話はやめてくれません?」
姫様なのに思考と話の切り出し方がマッドに近いんよ。この感じだと姫様って友達少なそうだなぁ…なんてなガハハ。
……あの姫様どうして露骨に顔を背けるんですか?そんな図星突かれたような反応をしたような仕草を…あっ(察し)ふーん?
『さてと…では休憩は終わりにしてカカリコ村へいきましょうか!』
「えーーッ!?もう行くんですか!?まだ5分しか休憩してないんですけど!」
『何を言ってるんですビルダー。民の為にも一刻も早く厄災討伐をしなければいけません!そんな弱音を吐いてる場合ではないんですよ!』
「いやでもなぁ…もう疲れちゃって、全然動けなくてェ...」
使命に忠実な姫様だが半ば私怨が混ざってるのではないか?と考える。いやホントさっきのは謝るんで勘弁してください。こっちはマジで疲れてるんですよ、もう少し休ませてくださいよ。
そう思っているとリンクがこちらに向かって話しかけて来る。
"カカリコ村ってどっち方向?"
急にどうしたのだろうと思いながらポーチより『方位磁針』を取り出しシーカーストーンのマップと見比べる。
『ビルダー、貴方が持っているそれは…?』
「シーカーストーンです」
『いえ、そっちではない方です』
「あぁ、こっちは方位磁針ですよ。俺の村の離れにある研究所からくすねて来…じゃなくて貰ったもの」
『待ってください。今くすねてと言いました?盗んだんですか!?それによく見るとそれシーカー族由来の紋章が刻まれているではないですか!何をしてるんですかビルダー貴方は!』
だってコレずっと放置されてた物ですし…使わないならビルダーである自分が有効活用したほうがよっぽど有用じゃありません?(横暴)
…と、シーカーストーンと照らし合わせるとここから東北東の位置にカカリコ村があると分かった。だがそれが一体どうしたんだろう?
そう思っているとリンクは大木を剣で切り倒し、ビタロックで丸太の動きを止めた後に剣による連撃を叩き込んだ。
そしてこちらに視線を投げかけ次のような言葉を投げかけて来た。
"どうぞ"
「何がどうぞ!?」
え、なに?乗れと?この丸太に乗れと!?いやなんで!?自分の経験上から絶対にロクな事が起きないだろコレ!
俺は絶対に嫌だよ?リンク1人で乗りなよと伝えると"1人じゃなくて皆で行かないと意味が無い?"と返答して来る。うるせぇ!屁理屈こねるなァ!
『落ち着いてください。それなら全員で丸太に乗れば…』
「死ぬわ!幽霊と蛮族のお前等は平気だろうけど一般人と変わらない俺はフツーに着地時点で死ぬわ!」
やいのやいのと騒いでいるとビタロックの制限時間が迎えたのか上空へと丸太が飛んで行く。
…もの凄い勢いで飛んで行ったな、あんなのに掴まって行ったら確実に死ぬな(確信)
「あぁ、もう!分かった。分かったよ!連れてくよ!どうせ後戻りは出来ないんだ!お前を!お前達を!カカリコ村まで連れてってやるよ!」
"止まるんじゃねぇぞ"
でも止まったらビタロックと丸太のコンボで飛ばされる事になるんでしょ?止まりたくても止まれないんだよこっちは(半ギレ)
そう言いながら草木が生い茂る丘を越える。身体中が疲労で埋め尽くされていく中、ゼルダ姫が声を上げた。
『2人とも!カカリコ村が見えてきましたよ!』
切り立った崖に囲まれる形で作られたとされる集落。自分達の旅の節目となるであろう目的地を前にして俺達は疲労を忘れたかのように駆け出した。
遂に到着したぞカカリコ村!村に入ったら疲れを取る為にも休ませて貰うからな!
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
「そこの怪しい者共止まれ!」
「休めると思ったのに何事!?」
カカリコ村にやっと到着したのも束の間、急に白髪を携えた数人が自分達の前に立ちはだかって来たのである。この独特な衣装に白髪と言う特徴から察するにシーカー族だろうか?
しかしいきなり怪しい者呼ばわりとは失礼ではなかろうか。こちらは厄災討伐を女神様から受けたビルダーぞ?隣に並ぶは姫様と勇者ぞ?
「貴様何者だ!もし村に仇なす者だと言うなら…!」
「待ってください。我々のどこが怪しいと言うのですか?これでも自分は清廉潔白を自負せしビルダー。女神ハイリア様より啓示を受ける程の人物なんですよ」
『ビルダー、そこまで行くと却って怪しく見えますよ』
「姫様は黙っててください……それでは教えていただきましょう、自分達のどこが怪しいんですか!」
「逆に聞くがそこにいる裸の男は怪しくないと申すか?」
「そう言えばそうだったッ!」
チクショウ忘れてた!見慣れた所為か、リンクがここに来るまでずっと裸だったの完全に忘れてたァ!と言うかお前はお前でなんでずっと裸でいるんだよ!服を着る努力をしろよ!服を着る気概を見せろよ!
すると門番のシーカー族が自分に向けて言葉を投げかけて来る。
「その持っているハンマーはなんだ!」
「ビルダーの必需品です」
「なんで頭にカブトムシ乗せているんだ!」
「さっきそこで捕まえて来ました」
「お前の傍に漂う人魂のような物はなんだ!」
「既に滅んだ国の姫様です」
「貴様怪しいな!?」
「反論できない!」
よく考えてみればこの中で俺が1番怪しいな!?リンクより悪目立ちしてるやんけェ!ちょっと姫様離れててくださいよ!これじゃ俺、完全に不審人物扱いじゃないですか!
『えっ、私が悪いんですか!?それよりもここまで旅人を警戒するのは異常です!もしかしたら村の中で何かあったのかもしれません、その影響で私達を入れないようにしているのかも…?』
確かに姫様の言う通り、ここまで露骨に警戒心をバリバリ示している所を見るとそう考えるのが自然だろう。門番の人にカカリコ村で何かあったのか尋ねてみる。すると冷静になったのか自分の質問に答え始めた。
「…実は先ほど族長の屋敷に襲撃が起きたのだ」
『襲撃!?』
「そんな事があったんですか!被害の方は大丈夫なんですか!?」
「うむ、幸い怪我人はいなくて済んだのだが…空から丸太が落ちて来たのでな、いきなりの事態で村は混乱していたのだ」
「へぇ、空から丸太が……え?」
『はい?』
「旅のお方。先程は怪しいからと言って疑って申し訳なかった」
その言葉を聞き、全身からドッと大量の冷や汗が流れ落ちる。あの、丸太って……あれ?ちょっと聞き覚えあると言うか、空から落ちて来た事に対して覚えがあると言うか。
それリンクがビタロックで飛ばしたヤツでは?不味いぞ…こんな事実知られたら只事では済まない。なのでここは事実隠蔽という名の沈黙を貫く事で乗り切る事にしよう。
"あ、それ自分がやりました"
『「リンクゥ!!」』
即座に答えてるんじゃないよお前!それこの後どうなるか分かって言ってるのか!?いや答えなくていい、分からないんだろ!分からないから言ったんだろ!
自分がそう言っている合間に、村の守衛達は一気に自分達を囲み腰に携えていた剣を抜き始めた。
「やはり貴様らが襲撃犯かッ!おのれ賊め!ここで成敗してくれる!」
「違うんですアレは事故なんです!あと俺は悪く無いです!」
『何を1人だけ助かろうとしているんですか!』
ゼルダ姫の小言を他所に守衛の方々に土下座を行い許しを乞う。俺ァは知ってるんだ、どんな時代でも誠意を込めた謝罪をすれば解決するという事を!ほらリンクお前も弁明しろ!今すぐ俺のように
自分がそう告げると彼は背負った剣に手を掛け呟いた。
"ここで抜かねば無作法というもの…"
武器を抜こうとしてんじゃねぇよ蛮族お前!勇者の誉れはどこに置いて来た!台地か!?台地に置いて来たのかお前!?互いに臨戦態勢が整いつつあるこの状況、一体どうすれば良いかのか悩みに悩む。
ゼルダ姫は幽霊体で戦力外、リンクに至っては蛮族なので論外。頭の上のツルギカブトに関して…いや待て、何故に自分はカブトムシもカウントしているんだ(困惑)
それにカブトムシを一体どう使おうと言うのだろうか?その渋さと格好良さの威光を利用する…いやいや虫に勇者レベルの凄みがあるとは思えないんだが。
……ん?
ふと自分の脳内に湧き出した閃き、それに賭けて自分はリンクの腰に備え付けられていたシーカーストーンを手に取り、守衛達に向けて啖呵を切る。
『ビルダー、貴方は一体何を…!?』
「控えッ!控え控えェーーッ!このシーカーストーンが目に入らぬかァ!」
その自信が積まれた言葉と共にシーカーストーンを見せると、目の前の人達は明らかな動揺を見せる。
「それはシーカーストーン!?」
「馬鹿な、一体どこでそれを…!」
「まさか盗んだのか!?」
「だとするなら貴様等は何者なのだ?」
揺さぶられる心に畳み掛けるよう、リンクを前に押し出し告げる。
「この方をどなたと心得るッ!あの大厄災にて陥った生死の狭間より100年と言う時を掛けて這い上がりし生ける伝説。退魔の剣に選ばれし、勇者リンクであらせられるぞ!」
"どうもこんにちは勇者です"
そんな彼の登場に更なる衝撃を受けたのだろう。戦意が削がれている事が分かる。このまま懐柔すると言うのも有りだが念には念を入れる為に、満更でもなさそうな様子を見せるリンクを横目にしつつゼルダ姫の方に手を向けて声を上げる。
「そしてこちらに漂う霊魂的なサムシングこそ今は亡きハイラル王国の姫君、ゼルダ姫であらせられる!」
『霊魂的なサムシング!?』
先程気づいた事だが門番の方はゼルダ姫の姿や声こそ認識こそしてなかったものの、何かがそこに居ると言う事を知覚していた。つまりシーカー族にはある程度の霊力を有している事になるのだろう。これはそんな人達(の祖先)がかつて仕えていた姫様とその従者の知名度とコネを利用した作戦である。
『何と言いますか…こそばゆい気持ちになりますね』
「そうと分かれば貴方達の言う族長の元へ案内してもらおうか!」
そうしてシーカー族の人達に村へ案内してもらう自分達。門をくぐった先には古風な雰囲気を感じさせる建築物が各所に点在し、正に隠れ里と言うべき集落があった。訪れた場所にそれぞれの想いを馳せなが、とある一軒家へと招き入れられる。
そうして自分達が気付いた頃には……。
「しばらくの間、大人しくしてもらおう」
牢獄の中に閉じ込められていたのだった。
……いやなんでェ!?
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
「俺は無実だァーーーーッ!俺は女神を自称する魔神と勇者の皮を被った蛮族に担がされただけなんです!悪いのはコイツだけなので俺だけは出してください!お願いします前科持ちにはなりたくない!」
『女神ハイリア様…この人が選ばれしビルダーとの事ですが、人選を間違えているのではと思ってしまいます……』
何故こうなってしまったのか。自分は初めて来た場所への高揚感、ゼルダ姫(幽霊)は懐かしの場所へ来た事に対する歓喜と100年前の記憶がぶり返してのグチャグチャな心境。そんな各々が内なる心情に浸っていた為、牢獄にぶち込まれた事に気付かなかったと言うアホみたいな奇跡が起こったと推測する。
リンク?彼はそもそも何も考えずに牢屋へ嬉々として入ったとの事。
ふむ、やはりコイツ馬鹿では???
クソッこんなアホと同じ所に居られるか!俺は1人だけでも脱出するぞ!
そう思い至ると自分は行動を開始する。身包みは勘弁してもらったが持ち物は全て没収されてしまった。その為今自分が使えるのは素手のみ。純粋な己の力という事になる。
「まずは木製で出来た檻を殴り壊す!」
自分の手を痛めて終わった。
「天井窓を割ってガラス回収と同時に脱出!」
そもそも天井まで届かない。
「なんの!脱出経路は地下にあるッ!地面剥き出しの建造物に閉じ込めた事を後悔するがいい!」
掘り初めて数分、疲労でギブアップする事となった。
「もういい!寝る!」
結論から言って全て無駄だという事を理解したのだった。へっ、まぁまぁやるじゃないかここら辺で勘弁してやろう、そう吐き捨て自分は体力回復の為に寝転がるのだった。
するとそんな自分に姫が声を掛けて来る。
『ビルダー…貴方は何がしたかったのですか?』
「ちゃうんすよ姫様。自分はやれるだけの事をやっただけであって遊んでた訳じゃないんですよ」
そのように弁明しているとゼルダ姫は溜息を吐く。この様子から察するにどうしてこんなヤツがビルダーなのかと疑問に思っているのだろう。しかしその疑問のみに焦点を当てればソレは自分も同じ考えだ。
このゼルダ姫だが本当に100年前は無才の姫と言われていたのか?正直なところ、遺物や動植物系統の学問に長けてる上に、薬学まで精通してるお前のどこが才能無いと言うのだ。女神様お墨付きの頭脳明晰な癖して光パゥァーなんぞ持ちよってからに…俺に対する嫌味かお前!(半ギレ)
拗ねている自分だったが、ふとリンクが言葉を発する。
"大丈夫。こんな事もあろうかとある物を隠し持って来た"
『なんですってリンク!?』
「でかした!それでこそハイラルの勇者!…で、何を持って来たんだ?そしてどこにあるんだ?」
そう問いかけると彼は己がパンツに手を突っ込むと中から2匹のカブトムシを取り出した。
"ツルギカブトとガンバリカブト。これでしばらくは暇潰しができる"
「娯楽目的で虫を持ち込んでるんじゃねぇよ!」
『と言いますかリンク貴方、下着の中に虫を入れていたのですか!?』
"とても痛かった"
『「おバカ!!」』
くそう!少しでも期待した自分が馬鹿だった!思った以上に役に立たないぞこの蛮族!こうなったら貴女の力を見せる時ですゼルダ姫!
『私ですか!?』
驚愕する姫に自分は伝える。現在、肉体の無いゼルダ姫ならば物質をすり抜けられる状態にあると推測。つまり牢屋から脱出し外の様子を見る事が出来る筈なのだ。
物に触れられないので鍵をこっそり持って来ると言う該当はできない…が、何もできないよりはマシな筈だ。
「と言うわけでゼルダ姫ゴーッ!」
『わ、分かりました!行きます!』
そう勝鬨に近しい声を張り上げ檻に向かって駆け出す姫。そのまますり抜け……る事なく、顔面を牢に打ち付ける結果となった。
『ッ〜〜〜〜ッ!?』
「なんで!?なんで幽霊が物質に干渉してるの!?」
『そ、そう言えば…』
その場で痛みに悶える姫(幽霊)がふと呟き始める。彼女が厄災を抑える役割を女神ハイリアと代わる時、女神本人より幽霊体では彼等の手助けするのに不都合という事で
ほうほう成る程…。
「ロクな事しねぇなあの女神様よォ!(ガチギレ)」
『女神様を悪く言わないでください!』
「うるせぇ!こんな事になるなら悪く言いたくもなるわ!おいリンクお前も何か言ってやれ!」
"行け!ガンバリカブトの必殺技ローリングスローッ!ツルギカブトを吹っ飛ばせ!"
「こっち無視して遊んでるんじゃないよ!」
シーカーストーンで何が起きてるか分かってるだろ!お前、姫様が檻に顔面をぶつけた時に笑い吹いたの知ってるんだからな!それとツルギカブト頑張れ!カウンターで形成逆転するんだ!
そんな事をしていると、足音が1つ近付いて来ているとリンクが告げる。一体誰だろう?と思っていると自分達を捕まえた守衛の1人がやって来た。
「何やら騒がしいが、頭は冷やされたか?」
「違うんです俺は悪くないんです。俺は善良な市民で女神様に使命を与えられたビルダーなんです。なので処罰だけは勘弁してくださいお願いします!蛮族と幽霊はどうなっていいので自分だけは何卒…!」
「何を言ってるか分かりませんが、落ち着いてくだされ。私は貴方達を裁きに来た訳ではありませぬ」
土下座していた自分を諭すようにそう言って来た守衛の人、ドゥランさんによると族長であるインパよりここから出すよう命じられて来たのだと言う。そんな彼の発言にゼルダ姫は驚愕した様子を見せるが何やら気になる事でもあったのだろうか?
それはそれとしてここから出れるのならば好都合。族長のインパさんに感謝の意を示しながら自分達は牢屋より出て……あの、ドゥランさん?何故に自分が出ようとするのを止めるんですか?
「申し訳ありませぬ。インパ様より
『インパ!?』
「なんで俺だけブチ込まれたままなんだよ!」
危険性としては
そもそもの話、どうして自分だけ出られないんですか!自分に何の落ち度があると言うんだ!
「貴方の場合、ビルダーと称して女神様の神託を受けたと言う戯言を吐いている上にゼルダ様の幻覚(暫定)がお見えになっておりますので……つまり不審人物に何ら変わりないのでこのまま檻の中に…」
「居てもらうってかチクショウ!反論できない!」
い、嫌だ!このまま不審人物のレッテルを貼られたくない!助けてリンクに姫様!貴方達の力で何とかしてくださいよォーーーッ!
『いやビルダー、貴方は先程"蛮族"と"幽霊"はどうなっていいので自分だけは何卒…と言っておりましたよね。流石に都合が良くありませんか?』
「……その、いや…はい。誠に申し訳ございません」
"せめてもの情けでカブトムシ置いていくから獄中生活頑張って"
そうリンクが言いながら2匹のカブトムシを置き、ゼルダ姫と共に牢獄の外へと出る。いや、ちょっと待って!そいつを自由にするのだけはヤバいって!考え直せ今でも遅く無いから本当に!その蛮族を自由にするなァァ!
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
リンクとゼルダ姫が解放されてから数分。自分はガンバリカブトvsツルギカブトの真剣勝負を眺めていた。ガチガチと互いの角と矜持をぶつけ合う様は何度見ても飽きないものだ。こいつ等がいるおかげで退屈せずに済む。
『……既に諦めが入っていませんかビルダー貴方』
「うおっ!?姫さん、いつの間に!?」
振り返るとそこには呆れた様子のゼルダ姫が立っていた。あれ?リンクと一緒にインパの元へ行ったのでは?あの様子から察するに姫様の知り合いなんでしょう?
『確かにそうかもしれません…ですが貴方は厄災討伐の要心配でしたのでこうして様子を見に来たのですよ』
「懐かしの知人に会うよりも俺を優先した…って事?」
そう問いかけると彼女は「はい」と肯定の返事をした。リンクへの信頼度が凄まじいと感じると同時に彼を1人にして大丈夫だろうかと心配になってしまう。
それにしても使命に忠実な姫様だ、ありがとうございます!
「まぁそれはそれとして、俺よりもインパって人に会って来た方がいいんじゃないんですかね?」
『ですが貴方は今後の旅で重要な存在。無碍にはできません』
正直なところ、自分を心配してくれるのはとてもありがたい。だが女神様の使命に忠実だとしても姫様の知人…いや本人かどうかは不明だが。折角の感動の再会を無碍にしてしまうのは良くないと思う。
姫様がどう思ってるのかは分からないけど課せられた責務でガチガチに縛られるのは如何なものか。そう伝えると「ですが…」と納得の言ってない様子を見せる。
「いや気持ちは分かるよ?俺だってビルダーとしての仕事をやんなきゃだし。でもそれはそれとして幽霊としてのセカンドライフ楽しまなきゃイカンでしょ。リンク見習ってどうぞ」
『み、見習って…ですか?』
せや、アイツなんか責務を放って毎日をエンジョイしてるんだぞ。と言うかこっちは貴女の父親に
『そ、それは…うん?ちょっと待ってください。お父様が何ですって?』
「あっ、やべ……何でも無いです」
『何でもなくは無いでしょう!会ったのですか!?お父様と会ったのですか!?いつ、どこで、どうやって!?』
すみませんプライベートな情報につき守秘義務で教えられません!本当に勘弁してください!頭を斧でカチ割られたくないんですよこっちは!そんな事をしていると、ふと鼻にツンとした臭いが入って来る。焦げたような香りだろうか?ゼルダ姫も異変を感じたのかキョロキョロと周囲を見渡す。
何か燃やしているのだろうか?それとも火事でも起きたりしたのか?しかしそれならば守衛の人達が黙っている筈も無いだろう。そう考えるとリンクに被害が及んでいないか心配になってしまう……おいちょっと待て。
「姫様、一応聞きますがリンクはドゥランさんと一緒にインパさん?と言う人の所へ行ったんですよね」
『へ?いや…ドゥラン様ならば途中で寄る所があると言いリンクとは別行動をしていましたが』
「つまり…今、リンクは誰の監視も無く好き放題やりたい放題って事?」
『…い、いやビルダー。確かにリンクは少し頭が弱くなってしまいましたが彼は退魔の勇者。そんな人様に迷惑を掛ける事をする筈が……』
ゼルダ姫がそう呟いた直後、外から伝わってくる村人達の悲鳴と守衛達の慌てふためく声に加えてドカン!と言う炸裂音。そして牢屋の中でも伝わる焦げ臭さがより一層強くなると同時に鶏の甲高い喚声が強く響いた。
外で起きている出来事に俺達は思わず顔面が蒼白になって行く。
「おい…おい姫様、一応聞いとくけどこの騒ぎの元凶って…」
『いや、そんなまさか…彼に限ってそんな……』
「ビルダー殿ォォ!」
すると慌てた様子のドゥランさんが声を張り上げながら自分の元へやって来る。何事かと冷や汗を掻きながら尋ねると彼は息を整えた後に言葉を紡ぎ始めた。
「お、落ち着いて聞いてくだされ。実はリンク殿が村人達に悪質な体当たりを仕掛けた後に、松明片手に草木に放火し始め、爆弾で村の各所を攻撃。そして挙句の果てには家畜のコッコに手を出して返り討ちに合いました!」
見ない間に何をしているんだあの蛮族はァ!そしてコッコに返り討ちにされたって何が起きたァ!?
『主人公』
女神ハイリアによって選ばれしビルダー。女神の天啓を受ける、幽霊状態のゼルダ姫が見えると言う点から不審者扱いをされた。
『リンク』
ビルダーとゼルダの目が無い事を良い事にカカリコ村にて好き勝手する。しかし勇者の天敵とも言える悪魔の鳥によって満身創痍に追い込まれた。
『ゼルダ姫』
課された使命を果たそうと頑張る姫様。100年ぶりに会うインパよりもビルダーの方を優先してしまった事に少し負い目を感じたり父親と会ってた事に驚いていたが、その後のリンクのやらかしで全てが吹っ飛んだ。
『ドゥラン』
カカリコ村の守衛及び族長の屋敷の門番を務めるシーカー族。の腕に長けておりその身のこなしは正に忍びの如し。2人の娘と奥さんが居る。
『コッコ』
恐らくハイラル最強の生物。攻撃されると分身殺法で反撃をして来る。
何なのだこの生き物は!?
蛮族を1人にした結果がコレだよ(遠い目)
こんな事が起きないように女神様はビルダーと姫様を派遣したんですね(ただし現実は非情である)