ゼルダの伝説の小説が増えて来た(気がする)この頃。本日も元気に投稿いたします
カカリコ村でのリンクを元凶とした騒動は意外にも被害者は(リンク本人を除いて)1人もおらず、コイツに首輪を着けて監視する役割を担う為に自分も牢屋から解放される事となった。ちなみにハンマーは勿論のこと全ての持ち物を返してもらった。
いやぁ結果としてリンクが暴れてくれて良かった…いや良くないよ。と言うか何で暴れてたんだよコイツは、水を得た魚かっつーの。
"変なヤツが居たから…"
「現状でお前が1番変なヤツだと理解しろ」
リンクに装着させた鉄製の首輪を引っ張りながら族長のインパさんがいると言う屋敷へと向かう。オラッ、早く来るんだよ!これからは自分がご主人様だからな!あと拾い食いするの禁止だから。
『かつての英傑をこのような扱いにするなんて…!?』
「そんな英傑が馬鹿な事をやらかさない為の措置です…いやもう遅いですけども」
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こうして屋敷へ向かって来た自分達。掃除をしていたシーカー族の少女に族長について尋ねようとしたその瞬間、ゼルダ姫が彼女に向かって詰め寄る。
『インパ!?もしや本当にインパなのですか!?あの時と変わらない姿で…!ううっ、インパァ…!』
「ひぇぇっ!ゆっ、ゆゆゆ幽霊がぁ!?あと私インパではなくパーヤなのですが……!?」
どうした事であろうか、先程まで規律を重んじる己に厳しいそうな様子が嘘のように顔をぐしゃぐしゃに崩し泣き出してしまう。使命を優先すると言っていたのに、ここまで号泣するとは情緒が不安定過ぎて心配になってしまう。
そんな幽霊に怯えるインパ(暫定)にリンクは落ち着かせる名目で話しかける。
"まぁ落ち着きましょう姫様。どうもこんにちは、はじめまして。勇者のリンクです"
「ひやぁぁぁぁッ!?次は裸の男の人ぉぉぉぉぉ!?」
"安心してください、履いてますよ"
しかしリンクの美貌と変態的な恰好にその少女は両手で己が視界を塞ぐ事となる。しかし目を閉じれば幽霊が語りかけ、耳を閉じると変態が視界に収まる。
一切の悪意が無い行動により少女が次第に追い詰められていく光景は異様そのものだ。
『インパ!もしや自力で若返り…いやリンクと同じく100年も眠っていたのですか!?』
"あ、リンゴ食べます?"
「落ち着けや!」
2人をハンマーで(無理矢理)落ち着かせる。後頭部を殴られ悶絶する2人を放って彼女に言葉を投げ掛ける。どうやら彼女の名前はパーヤと言い、族長であるインパの孫娘であるそうな。ゼルダ姫が間違える程に族長とパーヤちゃんは似ていると言う事になるのだろう。
「も、申し訳ありませんビルダー様…助けていただいて…パ、パーヤはその…若い殿方との接し方が、よく分からなくて……あの、その…」
お礼を言ってくれた彼女に屋敷内を案内してもらう事となる自分達。いやぁパーヤちゃんってば、とても良い子だなぁ…はぁーーーーッ!この人可愛いな!?結婚したい(願望) 結婚しよ(真顔)
明日辺りに自分とパーヤちゃんが恋人と言う設定が生えて来たりしないかなぁと妄想していると彼女の祖母兼、族長の居る部屋へ到着する。
「…久しいのうリ…いや待て!?何なのだその格好は!?」
眼前にいる族長が驚くのも無理はない。今やリンクの姿は裸+鉄の首輪と奴隷ファッションで身を固めている。誰だってそんな反応になるだろう。
「本当に…姫様なのですね」
『インパ…!?』
「こうやって歳を重ねてしまいましたが…長生きするものですね」
部屋の奥で鎮座する老婆とゼルダ姫は言葉を重ねる。彼女が先程パーヤちゃんに言っていた事を推測するに、本来ならばインパさんは姫様と変わらない年代だったのだろう。
100年と言う時は残酷なもので、眼前に広がる光景は歪なように見える。
『私…インパに色々言いたい事、謝りたい事が…』
「そうですね。私も積もる話が山程ございます…リンクよ、お主も良く頑張ってくれたのう」
そう言って来るインパに対してリンクは頭の中を疑問符で埋め尽くされたかのように首を傾げる。この様子から察するに族長とリンクは100年前、ゼルダ姫と同様に知り合いだったのだろう。
自分は回生の祠による回復とそれに伴う記憶と霊力の喪失と知能低下を伝える。
「ううむ、ビルダーと言ったか。俄には信じ難い事じゃのう…しかし現にリンクは我の事を存ぜぬ顔をしておる。しかし知能が低いと言うのは何とも言えぬのう…」
「いやいや、コイツめちゃくちゃ頭おかしいですよ。なぁリンク今ここで岩塩齧れる?」
"今食べてるところ"
ガリガリと岩塩に歯を立てているリンク。流石は住民への悪質な体当たり、村への放火や爆弾騒ぎを起こした奴だ。面構えが違う(確信)
「ね?お婆ちゃん。頭おかしいでしょう?」
「しかしこやつは100年前から元気にロース岩をバリバリ食べておったぞ」
この異常性は従来なものなのかよ!何なんだよコイツは!じゃあ何ですか?人様に向けて松明を振り回したり、爆弾投げたり、弓矢で射ったり、裸になって村の中駆けたり、パンツの中に虫を入れたりしてたんですか!よくそんなのを姫様御付きの騎士に仕立て上げましたね!?頭でも沸いてるんですかハイラル王家は。
「いや、それは知らんぞ!?そもそもリンクがそんな事する筈なかろう!なぁリンク!」
"ビルダー、パンツの中にチュチュゼリーを入れると滅茶苦茶気持ちいい事知ってた?"
「リンク?お前何言ってんのリンク!?」
『どうして彼がこんな事に…』
「聞けば村の騒ぎも此奴が原因との事……これは前途多難で先が思いやられる…少し待っておれ。パーヤ、部屋からアレを取って来てはくれまいか?」
祖母の言葉に対して頷くと階段を上がり、彼女は一枚の図を手にやって来た。パーヤはこちらに目を合わせず(男性2人と幽霊がいる為仕方なし)手にした一枚の絵をこちらへと向ける。
「こ、こちらになります」
そこには驚くべきものが写っていた。絵と言うには精密すぎる情報、草木や空の色合いもまるで本物。外の景色をそのまま切り取ったかのような絵がそこにはあった。
「うおッ!?な、何だこの精細な絵は!?まるでその空間を切り取ったかのようじゃないか!」
『インパ、もしやこれはウツシエですか!?』
「左様です姫様。これはプルアがシーカーストーン内にあった記録から出力し実際に絵として現像させた…らしいです」
これが古代シーカー族が残した技術の一つだと言うのか。シーカーストーン越しに覗いた景色を写し取る事が可能と言う事実に思わず感心の声を漏らす。
『…ここはもしや』
「姫様は覚えておられるようですな…どうじゃリンク、このウツシエを見て何か思い出さぬか?」
鮮明な式典場が現像されているウツシエ。刻まれる印からしてハイラル王家のものだろうか?年季を感じさせつつも美しい白亜の装飾に何処か心奪われそうになってしまう。それ程までに立派な建造物を見てリンクは己が脳裏に閉じ込めていた記憶を解き放つ───!
"…………?"
…訳でもなく、ただ絵を前に首を傾げていた。
あれぇ?おかしいぞ。ここは100年前の記憶を思い出す流れでは?何故にウツシエを見ても何コレって顔してるの?
「なんと!?まさか
『それ程までにリンクの記憶の欠落は酷いと言うのですか…!』
"よく分かりませんが、すみません"
2人の様子から思わずリンクも謝罪の言葉を使ってしまう始末。なんとかして彼の記憶を呼び覚ます事はできないだろうか?と自分は思慮に耽る。ううむ、どうすれば良いのだろうか…?
「…いっその事、叩く?リンクの頭を強めに叩けば良い感じに思い出すのでは?」
"その手があったか!"
「ええい、やめぬか!下手をすると更に記憶が無くなってしまうわ!これ以上こやつが馬鹿になっても良いのかお主は!」
「でも考え様によってはリンクは既に馬鹿の最底辺なのでこれ以上馬鹿になる事はありませんよ?」
『酷い言い草ですね!?』
だって事実だし…と思ったがインパ婆ちゃんの言う事も一理ある。これ以上馬鹿になったら蛮族度合いが増加してしまう可能性もあるので、叩く方法は却下としよう。
"叩かないの?"
「叩かないよ」
"そんなぁ…"
「なんで名残惜しそうにしておるのだお主は…!」
「すみません、今のリンクってこんなヤツなんですよ」
その一言にゼルダ姫が空を仰ぐ。この様子から察するに100年前のリンクとのギャップ、落差を感じているのだろうか?大厄災前のリンクがどんな人物か気になってしまう。
しかし記憶が戻らないのは仕方ないとし、インパさんはハイラル各地で起きている異変について語る。100年前に乗っ取られた神獣が各地で暴れているとの事。それを鎮め、ガノンより解放する事が厄災討伐の道のりとなるのだと。
それに加えてハテノ村に居る研究者のプルアの元に行く事でリンクの能力と知能を戻す術が分かるかもしれないと告げる。
ううむ、やる事が…やる事が多い!
「と言うかそれをやるんですか…俺達が!?インパ婆ちゃん、ここに居るのは馬鹿と幽霊と神に選ばれたビルダーなんですよ!もう少し手心を加えてくれませんか?」
「儂から加えられる手心など有りはせんぞ」
『と言うかこの人、サラッと自分だけ立場を上にして来たのですが…まぁそれは後にしましょう』
そうゼルダ姫が言うとインパさんと改めて向き合う。神妙な顔付きは改めて彼女が王家の1人であると示す様に力強いものを感じる。
『インパ、我々が屋敷に被害を出してしまい、村に余計な混乱と恐怖を与えてしまった事を謝ります。申し訳ありませんでした』
「姫様、急に何を仰いますか!アレは事故であって姫様は悪くありませぬ!」
"その通り、自分達は悪くありません!"
堂々と言うな少しは悪びれろ!…すみません続きをどうぞ。
リンクを肘打ちで黙らせるとゼルダ姫に続きの言葉を催促する。自分の発言に頷き、彼女は語り始める。
丸太が落ちて来たのは事故ではあるが自分達の責任には違いない。しかしそれ以上に気になる事があるとゼルダ姫は言う。
『村の人達はどの人も混乱していたのは分かりました…が、それ以上に
「…そこを見抜くとは、流石は姫様」
するとインパさんは語り始める。丸太事件により村人達の警戒心は剥き出しになっている。しかしそれはあくまでとある事情が下地となり、自分達がキッカケで火が付いてしまったのだ…その結果が自分達が牢屋送りである。
そしてその下地が一体何なのか?それは至極簡単かつ自然の気紛れで起きる珍しくないものであった。
『農作物の不作…成る程、それで皆が疲れた様子を見せているのですね』
「左様です。今や狩猟により何とか食糧を賄えていますが、このままでは備蓄が底を突くのも時間の問題なのです」
「えっ、いや…いやいや。そうはならなく無いですか?」
待ってくれと自分は横槍を入れた。そもそもそんな簡単に備蓄が底を突くものなのか?それ以前に不作だとしても事前にある程度は収穫できている筈だ。それならば食べる物に困る事は無いと伝えたのだが、インパさんは首を横に振る。
「駄目なのだ。現状作物は
「はぁ!?できてない…って!?」
『そんな!?』
思わずそんな反応を示してしまう俺達。1つも収穫できてないなんてあり得るのだろうか?少なくともここ一帯で何かしらの災害が起きた等を聞いた事が無い。少なくとも天災による影響が作物に及んだとは考え難い。だとすると野菜・植物に病気が発生したのだろうか?
…いや、今はそんな事を考えても仕方ないだろう。
「収穫できてないのは分かりました…でもですよ?備蓄が簡単に底を突く訳がないじゃないですか。小さな集落だとしても冬を越す為に食糧を溜め込んでいる。インパ婆ちゃん程の人ならそれくらいはしているでしょう?」
「それは───」
何かを呟こうとした瞬間、それを待ったを掛けるように外より声が轟く。
「敵襲ゥーーッ!敵襲ゥゥーーーーッ!」
カカリコ村に起きている事態。未だにハッキリとしない不鮮明な状況。だがそれは毒水の如く、ジワジワと村人達を苦しめていた。
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「武器が足りないぞ!」「負傷用の薬はどうした!」「敵が多すぎる!」
ボコブリン、チュチュ、モリブリンの集団がカカリコ村へと迫り来る。魔物には高い知能は無い為、統率の取れた行動を見せる事はない。だが眼前に広がる光景は一体どう言う事であろうか?結束こそ取れて居ないものの、第一陣・第二陣と魔物が部隊を組んで襲来して来る。
その影響か守衛達の装備や道具等がどんどん消耗していく。
明らかに異様な光景に思わず、尻込みしてしまう。だがそんな事をしている暇はない。隣にいる2人も同じ気持ちなのだろう、とあるものを用意し自分達は即座に動く。
「どけどけェーーーッ!勇者一行のお通りだ!(魔物を除く)死にたくない奴等は道を空けろッ!」
ガラガラと音を響かせながら
「お主ら何奴!」
「拙僧等、厄災討伐メンバーのビルダーとその他達。義によってシーカー族の方々に助太刀致す!」
『行きますよリンク、ビルダー!ビタロックを発動します!』
ピキン、シーカーストーンの力によって黄金の光に包まれた荷車。そこにリンクが搭乗し、俺は後方より押し出す形でハンマーを叩き付ける。
「リンク、タイミングが大事だからな!絶対に遊ぼうとするなよ!」
"了解(サムズアップ)"
不安だなぁと感じつつもビタロックの制限時間に到達し、多数の爆弾を積んだ荷車はハンマーの力を受けて、魔物達の方向へと突き進む。接触と同時に後方よりシーカーストーンを持つゼルダ姫が、画面に触れて操作を行う。
『バクダン、連鎖起動!』
直後ドドドドッ!と積まれた爆弾が順に爆ぜていく。一斉にではなく、一つ一つが異なるのタイミングで魔物達へと広範囲に的確にダメージを与えていく。しかしどれも決定打にならず魔物は起き上がる。隊列が乱れても尚、魔物達には村の者達を害する気持ちは変わらない。
だが、それまでだ。上空より爆風を利用し飛び上がった勇者が弓矢を手に狙いを定める。
"───射貫くッ!"
目に入った魔物を一体ずつ丁寧に頭を狙い矢を放つ。1体、2体、3体と爆弾によりダメージを負った相手にトドメを刺すのはリンクにとって楽な作業なのだろう。先程まで居た多勢の魔物達だったが、それが嘘のように全て倒すことに成功した。流石は古代シーカー族の技術と勇者の力だなと感心する。
それにしても姫様凄いな、さっきの大量の爆弾どうやって出したんだ!?シーカーストーンの機能にリモコンバクダンがあるのは知ってるけど大量に出せるなんて初耳なんだけど。
『シーカーストーンより出現させる力は量・質・効果をそれぞれ調整する事ができます。一つのパラメータを増加させるとそれに比例して他の能力が低下してしまいますが、それを工夫次第で大きく化ける事でしょう』
流石は姫様!と瞠目していると数人の守衛達がこちらへと駆け寄って来る。
「助太刀感謝致します!」
「ビルダー殿と申されましたか、もしや先程の戦術は全て貴方が考案されたものであるのですか!?」
羨望の籠った眼差しが俺に向けられる。実際の所はゼルダ姫が考えたものであって、自分とリンクはそれに協力しただけに過ぎない。
なので自分はこの場の空気を読み、その言葉を口にした。
「はい、全部俺が考えました!」
『私が考えたのですが!?』
いや、ちゃうんすよ。ちゃうんすよ姫様。もしも仮に実は幽霊の姫様がここに居て、作戦は全て彼女が考えましたー…って言ってみてください。絶対白い目で見られるじゃないですか。なのでここは敢えて俺の手柄って事にしておきましょうよ。
そう告げるとグヌヌと悔しそうな表情を浮かべる。いや、ごめんね?下手な事を言ってまた牢屋にぶち込まれるのだけは避けたいんですよ。下心は無いんですよ、ホント、いやマジで本当に。
そんな事をしていると第二陣の魔物達がこちらに向かって来る。一陣を退いたからなのかリンクを警戒しているようにも見える。
「くっ、まだあんなに居るか…!こちらの装備は不十分だと言うのに!」
「こんな事もあろうかと『石トゲこん棒』と『木の弓』、そして『矢』をあるだけ準備して来ました」
『いつの間に!?』
"でかした!"
おおっ!とシーカー族の方々が意気揚々とした表情を浮かべる。彼等が持つ『残心の小刀』と比べたら威力や耐久性も落ちるがそれ以上に安価な生産性と量がある。それにも関わらず恐れず掛かってくるボコブリン達に対して俺はニッと笑を浮かべる。
いいだろう、ここらで少し魔物達にビルダーの実力ってのを思い知らせてやろうじゃないか!
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「いやはや見事なお手前でした!その実力、やはり貴方は退魔の剣に選ばれし騎士。英傑リンク殿であらせられましたか!」
"照れる"
「そしてビルダー殿も我々シーカー族に力を貸していただき誠に感謝の意しかありませぬ!」
「いやいや良いんですよハハハ」
『でもビルダー貴方、ボコブリンの攻撃一発でダウンしてましたよね?』
「違う、互角だったから。痛み分けだったから」
『いや顔面に打撃受けて悶絶してたの私知ってますからね?』
いや、違う。違うんだよ姫様。あれはきっとボコブリンの中でもめちゃくちゃ強い個体なんだ間違いない。アレはボコブリンの中で最強と名高い金色ボコブリンなんだ。
『なにを言ってるんです。貴方が戦ったのは1番弱い個体ですよ?…そもそもの話、何故貴方が前線に出ているのですか。貴方程の身体能力では後方支援に徹するのが定石でしょう』
それって俺が強すぎるから後方に居ろって意味だよな?
『貴方が雑魚だからですよ』
「幽霊姫がよォ…!」
そもそも自分が前に出る羽目になったのはインパさんの力になりたいと言い出せないアンタが悪いんだろうが。自分が姫と言う責務を背負ってるから我儘で俺達を付き合わせてはいけないなんてヘタレた考えを持ってるのは見え見えなんだよ。そうやって気負い過ぎると眉間にシワ寄るぞ?眉毛太くなるぞ?…いや既に太いか。
『はぁ!?私のは太く無いです!標準的な太さですから!』
「いや太い」
『太くない』
「太えって!」
『だから太くないって言ってますでしょうが!』
「お前のは基準より太いんだよッ!」
次第に激しくなる口論、ドゥランさんには虚空に向かって何か呟き始めた俺に「何事か!?」と驚いた様子を見せるが、そんな事に気を向ける余裕はなくただゼルダ姫に向かって眉毛議論をぶつけるのに集中していた。
「ええい、2人共落ち着かぬか!太いか太くないかはさておき、ビルダーは思った以上にボコボコにされてしまったようじゃのう…」
ボコボコじゃないです、痛み分けです。確かに身体各所に包帯巻いてますがボコボコじゃないですよ?ボコブリンだけに(小声)……。
それはともかく屋敷に戻った俺達はインパさんに魔物達を退けた事を報告する。それを聞き安堵したような表情を浮かべるが、どこか複雑そうな様子も見て取れる。そう言えば敵襲の直前にも何か言いかけていた筈だがそれと関係しているのだろうか?
「どう思いますか姫様?」
『はい、私の眉毛は太くないです』
「いやその話は終わりにしましょう?それじゃあリンクはどう思……あれ?リンク?」
先程から異様な程に静寂に包まれているリンク。何故か彼はずっとこちらを凝視しており、今までの言動と比較して何かおかしいと感じる事が出来た。一体どうしたのだろうと思っているとリンクは苦しそうな面持ちで呟く。
"なんだか……思い出しそう"
『「「えっ」」』
頭を抱えるリンクが捻り出した言葉に自分は勿論のこと、インパさんとゼルダ姫もが声を漏らす。思い出しそう…って、100年前の記憶が?
いやちょっと待って?まさか俺のボロボロ具合を見て思い出そうとしてる…?ウツシエじゃなく、俺の醜態で!?
「いや、なんでだよ!もうちょっと別の出来事で思い出せよ!なんでそんなアホな光景で思い出すんだよ!」
『リンク、私は!?私の事はどうなんですか!?』
"ごめん、ちょっと黙ってて"
『「あっ、はい」』
しばらくしてリンクは破れるのように大きく眼を瞠る。脳裏に過去の出来事が再生され始めたのか、虚空を見つめて数分が経過する。俺達だけでなくドゥランさんやコッソリと覗いているパーヤちゃんまでもが心配し始める。
このまま元に戻らなかったらどうしようと考えていたその時、彼は現実に引き戻された。
"……ッ、思い…出したッ!"
「リ、リンク?思い出したと言ってるけど、大丈夫か?」
リンクにそう呼び掛けると彼はふとインパ婆ちゃんの方に視線を向ける。すると唸りながら目頭を抑え始めたではないか。何事かと思っていると彼は再び族長の方に視線をやり次のような言葉を口にだす。
"100年経つとこうも人って変わるんだなぁ…"
いや何を思い出したんだよお前ェ!
『インパ』
100年前はハイラルの執務補佐官を務めていた。ゼルダ姫とは主従及び友人としての関係性を持っていた。ゼルダ姫と感動の再開した直後、変態と化していたリンクや無礼なビルダーを見てそれまでの罪悪感や葛藤が全て吹っ飛ぶ事に。
『パーヤ』
族長であるインパの孫娘であり100年前のインパと瓜二つ。幽霊の女性にかつての友人と勘違いされ、裸の男性に詰め寄られると言った悲惨な目に遭ってしまう。
ブレワイプレイヤーの中では裸の状態で話しかけて反応を見る者が多かったのではなかろうか?
変な形で記憶が蘇るリンク。今回どんな思い出が想起されたのかは話のテンポ重視の為にワザと省く事となりました。
リンクがどんなエピソードを思い出したのかは、その内番外編として投稿するかもしれません。