貞操逆転世界でも陰の実力者になりたくて! 作:あああ
僕は15歳になり、王都にあるミドガル魔剣士学園に入学した。大陸最高峰の魔剣士学園で、国内はもちろん国外からも将来有望な魔剣士たちが集うという。 ちなみに『あなたはなぜこの学園へ?』というアンケートを100人にとったところ、一位は男漁りだったらしい。コイツらほんとに将来有望か?
言い忘れていたが、この学園には一学年あたり15人ほどの男子がいるらしい。(唐突な情報開示)
まあそんなこんなで、できるだけ目立たないように男のモブ友を盾にしながら、二ヶ月ほど過ごす。その間、主人公格っぽいキャラに目星をつけた。
その中の1人。
アレクシア・ミドガル王女。一番の大物は彼女だった。
ミドガル王女とか、名前聞いただけでチンパンジーでも大物ってわかるぐらい大物だ。
ちなみに彼女の上にはアイリス・ミドガル王女というさらに有名な超大物がいるらしいが、残念ながら学園をすでに卒業している。
せっかく学園に来たので、それにちなんだモブイベントでもしようかなと考える僕。しかし待って欲しい。ここは貞操逆転世界なのだ。もし何も考えずに定番のモブイベント『罰ゲームで女子に告白』なんてしようものなら、とんでもないことになるのは確実である。
どうやらそのことは、僕のモブ友ヒョロとジャガもわかっていたらしい。罰ゲームの内容も『アレクシア王女に話しかける』で済んだ。やっぱり、最後に信用できるのは男の友情よ!
とは言ったものの、適当に教室で話しかけるというわけにはいかない。目立つこと間違いなしだからである。よって、あまり目立たない場所を選んで話しかけることにする。
また、話しかけ方も考えなければいけない。この世界における一般的な……そう、できるだけ緊張している感じを出さなければいけないのだ。
というわけで僕の昨夜の研究成果を見よ!
「ア、ア、ア……アレクシアおうにょ」
ア、ア、アでスタッカートを刻み……でビブラート、アレクシアの音程は上下に揺れ、おうにょで迫真の活舌を披露。 そして──。
「あら。こんな人気のない場所で、話しかけてくるなんて告白かしら。返事はもちろんOKよ」
…………。即死トラップじゃねえか!!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おかしいだろ!?」
「おかしいな」
「おかしいですね」
翌日の昼、僕は食堂で2人のモブ友に昨日の流れを話した。結果3人の見解は一致、どう考えてもおかしい。
「はっきり言って、お前に落ち度はない。こんな事になるなんて、俺の目を持ってしても見抜けなかった」
そう言うのはヒョロ。ガリ男爵家の次男坊で、外見は長細くておしゃれに気を使っているがセンスは悪い。たった今、目の方も悪いことが判明した。
「まあでも王女と付き合ってるなら、他の女子からの攻撃は止むんですから、そう悪いもんではないですよ」
そう言うのはジャガ。イモ男爵家の次男で、外見は小さくごつい、野球部に一人はいるイモっぽいやつ。ちなみにコイツも、目が悪いことが判明した。どいつもこいつも節穴のやつしかいない。
「いや実際いいもんじゃないよ。ていうか全然攻撃止んでないし、そもそも住む世界違うわけだし」
周囲を見渡すと、食堂の人間がそれとなく僕を見てヒソヒソ話していた。
『ほら、あれが……』
『男性の方からいくなんて……』
『私の方も第二夫人という形で……』
『ち○ぽ……』
とか。
『こっちからいくなんて……』
『彼は犠牲になったんだ……』
『俺たちのために……』
『”漢”を見たぜ……』
とか。後誰だ途中のやつ。食事の場だぞ。
「しかしこういう結果になったのであれば、罰ゲームのことは隠さなければなりませんね」
とジャガが言う。
「だね。バレたら面倒なことになりそうだ。だから頼むよ、特にヒョロ」
「俺? 俺は漏らさねーよ?」
「もちろん自分も漏らしませんよ」
「マジ頼むからな」
僕は溜息を吐いて、日替わり定食980ゼニー貧乏貴族コースに手を付ける。
早く食べて居心地の悪い食堂から出よう。
と、その時。
僕の向かいの席に、日替わり定食100000ゼニー超金持ち貴族コースが、メイドたちによって手際よく並べられた。
そして。
「この席、いいかしら?」
アレクシア王女の登場。
ああ、知ってたよ。だから早く食べようとしたのに。
ちなみにヒョロとジャガはいつの間にか消えている。こういう危機察知能力だけは、無駄に高められているらしい。貞操逆転世界だから。こういう時にボケッとしてると、一気に種馬コースなのだ。
ちなみに僕は一応付き合っているので、逃げることは許されない。
「座ればいいと思うよ」
僕の答えを待つアレクシア王女に言った。
「では」
と彼女は席に着く。
「超金持ち貴族コースってやたら量多いよね」
とりあえず食べ物の話題をふる。
「いつも食べきれないの……そうだ。せっかくだからあなたにもあげるわ。まずはこれ」
と言ってうなぎを差し出してくるアレクシア。
「次は牡蠣を」
「ん?」
「次はレバニラを」
「んん?? なんか精のつく食べ物ばっかじゃない?」
「次はアボカドを」
「…………………………」
これ超金持ち貴族コースじゃねえ! 『これで気になるあの子もイチコロ! 一発ワンナイトコース』だ!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「広いな……」
王都ブシン流1部の教室に入ってまず言わずにはいられなかった。 ちなみに普段は、他の男子もそうしているように、5部と6部あたりをうろちょろしている。
ここで学園における男子の授業について説明しておこう。基本的に体を動かす授業は好きにして良い、となっている。参加も不参加も自由だ。ついでに言うと、参加する部も自由である。そして見学も自由。
……。いやここ魔剣士学園よ? それ意味ある?
いやわかるよ? 男は貴重だしね。怪我させるわけには、いかないってのはわかる。
でもさあ……なんかこう……もっとこう……なんかなかった? どうにもならなかったん?
まあそうは言っても、僕にできることはないので諦めて見学する。普通の男子は見学だからだ。モブになり切るためにはしょうがないのだ。
しばらくして、
「あら。せっかくならちょっとやらない?」
とアレクシアが登場。
当然僕は男子なのでそれを拒否する……といきたいところだが、体を動かしたかったのは事実なので、その提案に乗ることにする。
1部は強い人ばかりなので、彼女たちを恐れて他の男子が寄ってこない。よって、全女子からの視線が僕に集中する。僕は好奇心1割、性欲9割の視線を無視して、軽い動的ストレッチを行った。
「面白いわね」
と、僕の動きを真似るアレクシア。
そうこうしているうちに授業が始まる。僕の紹介とかはない。男子の移動は自由だしね。
「君は王都ブシン流が好きかい?」
そして稽古をやっていると金髪イケメンの顧問──名前は確かゼノン・グリフィ先生に話しかけられる。男なのに結構すごい地位にまで上り詰めている人だ。「この人もワンチャン主人公か?」と疑った事があるので覚えていた。
「何を話していたの?」
彼と王都ブシン流について話終えると、アレクシアが聞いてくる。
「王都ブシン流について」
「ふぅん。次はマスだから組みましょうか」
「実力違いすぎない?」
「大丈夫よ」
てな感じで木剣を構え打ち合……なんか鍔迫り合いが多いな。
あ! おいやめろ! 股間に手を伸ばすな!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「つまり、アレクシアとゼノン先生は婚約者で、僕はその当て馬ってことだろ」
僕は放課後の校舎裏でアレクシアと対峙した。
「婚約者じゃないわ、婚約者候補よ」
澄ました顔で彼女は言う。
「どっちでもいいよ」
「よくないわ、まだ決まってもいないのに強引に話を進めてきて困っていたのよ」
「それこそどうでもいい。というかせっかく向こうから来てくれてるんだ。むしろ喜ぶべきじゃないの?」
「私にだって選ぶ権利はあるわよ。」
「どこが嫌なのさ。客観的に見て結婚相手としてはかなり優良物件じゃない? イケメンで剣術指南役で、地位も名誉も金もあって公私を弁えたいい人に見えるよ。実際女子からの人気も高いし……やばいくらい」
僕の言葉を彼女は鼻で笑った。
「そこよ、私が嫌なのは。欠点がなさすぎるの。きっと大嘘つきか頭がおかしいかのどちらかだわ」
「ちなみに僕は?」
「欠点だらけで大好きよ。ディ○ドとしてなら、ちょうど良いんじゃないかしら」
「ひどい扱いだな」
それを聞いた彼女はニヤリと笑う。
「それはお互い様じゃない? 罰ゲームで話しかけてきたシド・カゲノー君……ひどいわ、乙女の純情を弄ぶなんて」
「……なにか証拠でもあるのかな?」
そう、証拠だ。
彼女がどれだけ疑おうとも、あの2人が裏切らない限り証拠は……。
「ジャガ君だったかしら。私が話しかけたら、顔を真っ赤にしてペラペラと聞いていないことまで全部喋ってくれたわ。いい友達ね」
僕は頭の中でジャガをボコボコにしてマッシュポテトにする事で精神の衛生を保とうとする。が、普段盾になってもらっている恩もあって、土下座で勘弁しといてやることにした 。(伏線)
「いや待てよ……そもそも罰ゲームは、話しかけるだけだったはずだ。それをアレクシアが勝手に告白と受け取ったんじゃないか」
「ごちゃごちゃうるさいわね……これを受け取りなさい」
アレクシアはそう言って懐から金貨をバラまいた。 1枚10万ゼニー、それが少なくとも10枚はある。
「へぇ、僕が金でなびく男に見える?」
僕は地べたに這いつくばって金貨を1枚1枚丁寧に拾いながら言った。
「見えるわね」
「その通りだ」
11枚、12枚、13枚……あ、まだ1枚あるぞ!
最後の1枚に手を伸ばした僕の目の前で、アレクシアのローファーがその金貨を踏みつけた。
僕はアレクシアを見上げようとしたが、すんでの所でとどまる。プリーツスカートの中身が見えそうだったからだ。深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのを忘れてはいけない。
「それにね……いくらあなたが男だからといって、王家にたてついたら大変よ? 平民の男がどんな目に合うか……体験してみたい?」
「喜んで彼氏役をやらせていただきます!」
僕は満面の笑みで答えた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「少しいいかな」
なんだかんだで、アレクシアと恋人ごっこをやり始めて2週間。久しぶりにヒョロジャガコンビと一緒に昼ごはんを食べていると、ゼノン先生が話しかけてくる。
「はいどうぞ!」
「どうぞです!」
そう言って置物になる2人。
「僕になにか?」
少しだけ警戒しながら僕。
「ああ。もう聞いているかもしれないが、アレクシア王女が昨日から寮に戻っていない」
もちろん初耳である。けどきっと男探しに出かけたんだろう。彼女はそういう生き物だ。
「なんやかんやで君に容疑がかかっている。騎士団に協力してくれるね?」
食堂の入口には、完全武装で殺気立った騎士団の皆様。
僕は悟った。
これあかんやつだ。 てかなんやかんや、ってなんやねん。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕はその後、留置場的な所に入れられていた。どうやら騎士団の皆さんは、男の僕に
しかしそこで機転を聞かせる僕。貞操逆転世界によくいる、男の権利をめっちゃ主張するモブを演じることで、なんとか事なきを得た。
なんやかんやで5日ほど耐え、解放される。
「おら、さっさと行け。クソッ! せっかく良い思いできるって聞いて来たのに……」
乱暴に背中を押されて建物から追い立てられ、後から僕の荷物が投げ捨てられた。
下着姿の僕は、急いで荷物から服を着て靴を履く。 そのままでいると、すぐに痴女に襲われるからだ。
僕は一通り支度を終えると大きく息を吐いて歩き出す。
大通りを行き交う人の流れが、
もう一度息を吐いて後ろに注意を向ける。
「尾行は二人か……」
実際アレクシアは見つかっていないのだ。僕の容疑も晴れていないだろう。
「後で……」
そんなことを考えていると、前からやってきた人物にそう声をかけられる。きっとアルファだ。
その後やっぱり性的な目を向けられながら、寮に戻るのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その夜、僕は敵のアジトに向かっていた。
あの後? いつも通りアルファに襲われて対処したし、いつも通りベータが読む自作の官能小説を聞き流したよ。全くもっていつも通りだ。
はあ……。
まあそんなことは置いておこう。僕はこれからようやく陰の実力者プレイができそうで、ワクワクしているのだ。
苦節15年。ようやくだ。ようやくできる。
今までは、やれ変態の対処やら、やれシャドウガーデンメンバーの対処やらろくな事がなかった。
うおお! 敵アジト潰すぞオラ!
こちらが! ディボロス教団フェンリル派(?)の王都支部雑魚トッピングです!
うっひょ〜〜〜〜!
拠点侵入時、初の陰の実力者プレイにテンションが上がって、大声を出したらシャドウガーデンメンバーからの誠意で! 追加の雑魚をサービスしてもらいました!
僕の気分次第でこの拠点アトミックすることだって出来るんだぞってことで、いただきま〜す! まずは雑魚戦から!
コラ〜〜〜〜!
これでもかってくらい大量のモブ雑魚の中には、変態が入っており、怒りのあまり先走りアトミックを解放してしまいました〜!
すっかり教団側も立場をわきまえ、誠意の追加モブを貰った所で! お次に圧倒的存在感のボス(ゼノン先生)と!
切り結ぶ〜! 殺すぞ〜!
ワシワシとした剣筋の中には、お前ほんとに王都ブシン流の講師か? ってくらい稚拙な剣技が混じっており、流石の僕も王都を吹っ飛ばしてしまいました〜!
ちなみにヒョロとジャガが土下座している様子は、是非サブチャンネルをご覧ください!(伏線回収)
はっ! 久しぶりの陰の実力者プレイで、テンションが上がりすぎたかもしれない。変な口調になってたかも……まあええか!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「裏のありそうな事件だけど、表面上は解決ということになったわ。でも姉様は専門の調査部隊を立ち上げる準備をしているし、私も協力するつもりだからまだこれからね」
僕はアレクシアに校舎裏へと呼び出されていた。
「じゃあ僕たちもこれで終わりということで」
なんとか別れようとする僕。
「お家取り潰し……されたくないわよねえ」
「僕にどうしろと」
「あなたはポチよ。じゃあどうすればいいか、わかるわよねえ」
いやわからないけど。
「バター犬よ。なめなさい」
「………………」
この後めちゃくちゃアトミックした。
なかなかの超大作になってしまった。
後今回はちょっと世界観をわかりやすくするために、上品になってしまった感は否めないです。
次からはまたメチャクチャになるかもしれん。