ウマ娘総集編   作:社畜松本

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ウマ吸い(小)

この世において、生物が生きるために必要なものは何か。

水?食料?空気?…それはバカの回答だ。

真なるは、『目的』。

人は誰しも目的を持って生きていると言っても過言では無い。もちろん俺だってちゃんとした生きる目的がある。

『ウマ吸い』をするという、明瞭明白かつ単純明快な『生きる目的』がな。

ということで本日もまた、生きるために業を背負うとしよう。

 

 

〜〜〜〜〜

─────マヤノトップガン─────

まずは前菜と言ったところだろうか。そう、今頃だろうが、この俺には見境というものが存在しない。たとえ幼子だろうと、餌食になるのである。

 

 

「あっ、トレーナーちゃーん!!」

 

 

「うおっ」

 

 

俺の姿を見るに、一目散に飛びかかるマヤノ。

まるで仕事から帰ってきた飼い主を迎える小型犬のようだ。

 

 

「ったく、急に飛びついたら危ないだろう?」

 

 

「えへへ〜、ごめんなさぁ〜い」

 

 

そう言って、ギュっと抱きついてくる。これはこれは実に実に実に良い。子供的な可愛さと、その無邪気な明るさが実に素晴らしい。

 

 

「マヤノ、良ければトレーナー室に来ないか?外は暑いからさ」

 

 

「ほんとに!?行くいく〜!」

 

 

どれだけ背伸びをしようとも、まだまだまだまだ子供である。このような見え透いた誘いにも乗ってしまうなんて、なんてチョロいんだ…俺は心配になっちゃうよ。

 

 

 

 

トレーナー室にて。

マヤノはいつも通り俺のベッドに寝転がって雑誌を読む。それは流れるような一連の動作を経て行われる、いわゆるルーティンだった。

 

 

「マヤノ、ちょうどいいからマッサージをしてあげるよ。何せ俺は、『ゴッドハンド』と呼ばれるマッサージ特化型トレーナーしか持つことを許されない国家資格を持ってるからな」

 

 

「え、ほんとに!?マヤ、もっとオトナになっちゃう!?」

 

 

しめしめ、思った通り。やはり単純で扱いやすくて可愛くていい匂いのしそうなウマ娘だ。これで年頃の娘っ子の潤いのある肌に触れる…もとい、その芳醇な香りを吸収することが出来る。

 

 

「まずは頭皮マッサージをしようか」

 

 

そう言って俺はマヤノの頭に手を乗せ、ゆっくりとマッサージを始めた。

 

 

「ふぁ〜、頭が溶けちゃいそ〜」

 

 

俺の『ゴッドハンド』を喰らい、腑抜けた声を出すマヤノ。もし俺の指先に嗅覚があるならば、今頃天国のその先に旅立っているに違いない。

そして吸い込まれるように俺の鼻はマヤノの頭へと近づいていく。僅かに彼女の香りが鼻腔に入った瞬間、俺の理性は消し飛んだ。

 

 

「スゥゥゥゥゥゥーーーーーッ!!!!!」

 

 

「ひぁぁぁああああッ!?!?」

 

 

まるで花冠でも乗せているのかと錯覚するほどに、甘い花の香りが俺の脳まで襲い来る。それはまるで、オトナに見られたいけどあどけなさが抜けないような、微笑ましさを感じる香り。俺の頬も自然と緩むのを感じる。

そして、極めつけのもう一吸い。

 

 

「…ッ!!!」

 

 

瞬間、俺の脳は浮遊したような感覚に陥った。まるで鉄の翼を大きく広げ、自由に空を駆け回るかのような爽快感。空に煙の白い尾を引いて、軌道を描いていく。それはまるで空の王者にでもなったかのようだ。

 

 

「まるで一本の映画を見終わった後ようだ。壮大で広大…そしてロマンが溢れる空の旅…良い」

 

 

「もーっ!トレーナーちゃんのえっち!女の子にこんなことするなんてサイテーだよっ!」

 

 

「マヤノ、落ち着いて聞いてくれ。実はこの儀式を経ることでまたひとつ大人の道が───────」

 

 

「バカぁっ!」

 

 

俺の言葉が最後まで続くことは無かった。それは、マヤノの拳によって俺の意識が飛ばされたことによる。

ああ、素晴らしきウマ吸い…痛みさえも飛ばすことができるとは…

てかこれ刺さってるよな、天井に。

 

 

〜〜〜〜〜

─────ツインターボ─────

『ツインターボ』──────その躍動感と爆発力のある名を持つ彼女なら、俺の脳に与える快感もさぞかしインパクトあるものになるだろう─────────。

 

 

「うあ〜〜〜っ!走りたい走りたい走りたぁーーーい!!!」

 

 

まるで駄々をこねる子供のように、バタバタと暴れ回る。外は雨が降っており、とてもじゃないが走れる状態じゃない。

 

 

「最近トレーニング続きだったし、ちょうどいい休暇ができたじゃないか」

 

 

「えーーっ」

 

 

子供というのはどうしてこうも体力が有り余っているのだろうか…。残酷な世に放たれ疲れ果てている俺にも、その体力を分けて欲しいくらいだ。

 

 

「そうだ、いい機会だしゲームでもしようか」

 

 

「えっ、ゲーム!?なんのなんの!?」

 

 

ターボは、嬉しそうに笑顔を見せた。

子供を騙すなんて赤子の手をひねるよりもはるかに楽。

 

 

「目隠しをして物を触って、触れている物が何かを言い当てるゲームだ」

 

 

「面白そーっ!やるやる!」

 

 

「よし、じゃあ準備するから待ってて」

 

 

簡単すぎるッ!こんなに簡単すぎていいのか!?

快感を得るためには何かしらのリスクを犯さなければいけないと思っていたが…まるでボーナスタイムにでも突入したのかと思うくらい軽快に物事が進むッ!

 

 

「それじゃあ、目を閉じてくれ」

 

 

「うん!」

 

 

これで、この俺の行動を見るものは一人もいない。もはや俺だけの時間だぜ…ッ!!

 

 

「行くよ、ターボ」

 

 

「はーい」

 

 

俺はターボの前に立つと、彼女を思い切り抱きしめた。

子供のように小柄だが、感じられる体温は自分のものよりほんのり暖かい。

 

 

「ぬわぁ!と、トレーナー?」

 

 

素っ頓狂な声を上げるターボ。それでも抱き締め返してくるあたり、とてもとてもとても可愛らしい。

庇護欲を掻き立てられるような感覚…守護りたい、この笑顔。俺の胸はたちまちそんな気持ちで一杯になる。

それと同時に、俺の中のリミッターが外れた。

 

 

「ヒュォォォォーーーーーッ!!!タボボボボボボボーーーーーーーーーッ!!!!」

 

 

「うわぁぁぁーーっ!?!?」

 

 

俺は肺いっぱいにターボの香りを吸い込んだ。

髪の毛一本一本から香る清涼感ある匂い。甘過ぎないくらいのほど良さが、流れるように入ってくる。

趣向を変えて、嗅ぐ位置を変えてみよう。思わぬ発見があるかもしれない。

 

 

「ハァ゛ッ!!!」

 

 

瞬間、俺の脳内を満たした心地よい快楽。

ふつふつと燃え上がるように、体の内側から熱い何かが湧くのを感じる。空のエンジンタンクにエネルギーを注ぎ込まれ、己の中に再度、命のアクセルが掛かるこの感覚…

実にいい……

血液が全身に駆け巡り、心臓が鼓動を早める。いや、不整脈とかじゃないぞ。

 

 

「うりゃああーーッ!!」

 

 

悦に浸る俺の顎はターボの頭によってアッパーカットされ、俺の命の鼓動(エンジン)はまたバーストした。

 

 

「あっ……!?ト、トレーナー?大丈夫かぁ…?」

 

 

意識が飛んだ俺を、ターボがつんつんと指でつつく。

やめろ、俺は道端に落ちているゴミではないんだぞ。

 

 

「うーん…ま、いっか!」

 

 

そう言うと、ターボはトレーナー室から出て行ってしまった。

いや、全然良くないぞツインターボよ……

 

 

 

 

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