竹内みき編は、書いてて楽しかったけど後で読み返すと、もうちょっと話を膨らませば良かったかなぁ、と反省点がちらほら。
今回は、少し話を膨らませてみました。といってもほとんどさくらの内省ですが...。
「は~ぁ、やっちまった....」
鈴木とゲーセンで勝負した日の夜、山田さくらは落ち込んでいた。
格闘ゲームで鈴木に勝って、実力を認めさせてやった。ゲームが終わって、一緒に飯食うかって、何食べたいって聞かれて「ラーメン」と答えて鈴木は笑ってた、「さくららしいや」って。そこまでは楽しいひと時だった。
歯車が狂いだしたのは、あの女が現れてからだ、石川順、鈴木の中学時代からの友人であり、鈴木がゲームにハマったきっかけとなった女だ。彼女は女の私から見ても可愛くてやや大人っぽい雰囲気がある。にしても鈴木にあんなにベタベタくっつかなくてもいいだろうに、それに鈴木も鈴木だ、あんなにベタつかれてまんざらでもなさそうな顔して...
でも、一番ダメなのは私だ。鈴木とのデートだと意識しすぎて服を決められず、結局制服で行ってしまった、「鈴木に会うためだけに服を選ぶのが面倒だった」と心にもないことを鈴木に浴びせてしまった。デートであって欲しかった、でも「ゲームで勝負しただけ」そう強がって途中で出てきてしまった。
世間ではツンデレという言葉があり、ツンデレキャラは人気だ。しかし、そんなのはアニメやゲームの中での話で、視聴者や読者はツンデレキャラの想いを知っているからこそ、言動とのギャップに可愛さを見出すのだ。しかし、鈴木は私の想いなんて分からない、さぞかし嫌な女に見えたことだろう...やっちまったなぁ...やっぱりデートなんてガラじゃなかったんだよ。
あー、明日はどんな顔して鈴木に会えばいいんだよ...
月曜日の放課後、結局鈴木とはまともに話せないまま放課後になってしまった...
「山田さん...」
校舎から正門へと向かうさくらを佐藤が呼び止める。
「転校生!」
「順から聞いたんだけど、昨日鈴木くんとデートしたんだって?」
「転校生、あの娘と知り合いなの?」
「順とは前の学校で一緒だったんだ。良いやつなんだけど...邪魔をしてしまったって反省していたよ..」
「別に...鈴木とは対戦するのが目的だっただけだし、デートとかそんなんじゃないから」
「鈴木くん、もったいないな」「山田さんみたいなかわいい娘をふるなんて」
「...やっぱり振られたのかな、私...」
「順が言ってた。さくらちゃんは多分鈴木くんのことが好きだって。」「だからカマかけてみたけど鈴木くんの態度がそっけなくて、それでさくらちゃん怒って帰っちゃったって。」
「.....」
「引き止めて欲しかったんでしょ?」
「...はは、私になんて興味あるはずないよね...」「って、なんで転校生にこんな話してんだろ?、私」
「山田さん...今日は僕と」
そう言いかけた佐藤に被せるようにして
「あのっ、折角話しかけてくれたのに、何か変な話しちゃってゴメン。これは自分で解決しなきゃいけない問題だよな。」
「いや、あの、僕と...」
「うん、少しモヤモヤが晴れた気がする。ありがとう、転校生...えっと、名前は...」
「佐藤...裕一」
「佐藤な、佐藤。ありがと、佐藤」
そう言い残すと、いつもの明るさを取り戻したさくらは走って正門を出ていった。
「...山田さん、僕の家に...来ない?...」
言いかけていたことをようやく吐き出す佐藤。だが、さくらの耳には入らない。
佐藤の目鼻がもう少しハッキリしていれば、違った展開があったのかも知れない。だが、結果的に鈴木くんの呪縛から一人の少女を救い出したのだ。ハーレムの野望には近づけなかったが、山田さんに名前を覚えてもらえたのだ、今日はそれを一つの成果としようじゃないか。
この日の夜、さくらは一人考え事をしていた。昨日のデートの途中で現れた石川順のこと、鈴木のこと、そして、今日の佐藤との会話。
鈴木はゲーム友達で、今でもライバル関係にある。だが、前回負けた時にプリクラで撮影した時に「かわいい」って言われて以降、どうにも気になってモヤモヤしていた。そこにみきちゃんが「デートだ」って言ったのを聞いて、ますますモヤモヤするようになった。一方で、自分はそんなガラじゃないって思っている。でも、鈴木のゲームのきっかけが石川順だと知って、鈴木が中学の時、毎日のように石川順と一緒にゲーセンで遊んでたと知って、何か、嫉妬というか悔しさというかそんな感情が沸き起こってきた。ラーメン屋で、鈴木の横の席に迷わず座った石川順に、やたらにスキンシップを取る石川順に、同じような感情を抱いた。鈴木は、石川順のことをどう思っているのだろう、そんな考えも浮かんだ。もうワケわかんない状態で、思わず心にもないことを口走ってしまい、直後に後悔した。心にもない行動に出てしまった...
佐藤は言っていた、自分を振るなんて、鈴木はもったいないことをした、と。あのとき、「振られたのかな?」と過剰な反応をしてしまったけど、振られる以前に私は鈴木のことが好きだったのか? 付き合いたいって思っていたのか?
「好き...なのかな? 一緒にいると楽しいけど...それだけじゃダメなのかな?」
確かに、鈴木の横に石川順がいるのを見るのはいい気がしなかった、が、あのポジションに自分を置きたいか?、と問われるとそれも違う気がする。なんというか、鈴木には誰のものにもなって欲しくない、みきちゃんや川上さんと仲良くするのはいい、時々ゲームで楽しく対戦できればいい、でも、鈴木が誰かのものになるのは見たくない。それが、今の私の望み。
「なぁんだ、別に振られてなかったんだ。それに、振られていたとしても、別に...」
そして、今日の佐藤との会話を思い出してわかったこと。石川順は別に鈴木と付き合ってるわけじゃない、単なる友達。そうでなければ、放課後に私と何度もゲームの対戦に付き合ってくれたりはしない。それに、鈴木にカマかけたり、そんな話を佐藤にしたりはしないはず。あそこで偶然、佐藤が話しかけてくれなければ、そのことに気づけずいつまでもモヤモヤしていたはず。サンキュ、佐藤。
なんとなくスッキリとした気分になり、そのまま眠りに落ちた。
その夜、さくらは妙な夢を見た。学校帰りに声をかけてきたイケメン君。今日の佐藤と同じような問答の後、どういうわけかそのイケメンの住むマンションに行くことになり、そこでさくらはその男に初めてを奪われる...
「んっはぁ はぁ はぁ はぁ.... 夢か... しかしなんつー夢を...」
夢の中とはいえ、初対面の相手の家に上がり込んでしかもあんな事... いつもの自分からは信じられないが....それにしても、あのイケメン。なぜだか分からないが佐藤の面影が少しあったような気がした...って、なんかスッキリしない夢だな。
せっかくスッキリしたはずなのに、変な夢のせいで微妙な気分のまま登校。そんな休み時間、自分の席でぼーっとしているとみきちゃんが川上さんの作ったキーホルダーを見せにきた。
「これはきれいだね、手作りか...いいね」
と、そのとき
「さくらちゃん...」
背後から呼ぶ声がしたので振り向くとそこには佐藤がいた。
「佐藤...」「つか、馴れ馴れしく下の名前で呼ぶな!」
「ああ、ゴメン。じゃ、山田さん。僕の名前覚えてくれたんだね。昨日は、『転校生』だったのに。」
「ああ、昨日は佐藤と話をしたら色々と考えがまとまったし、感謝してる。佐藤、ありがとな。」
「役に立てたのなら良かった。で、今日は僕と遊ばない?」
「なんでそうなる? 遊ばないよ。っていうか、アンタ、クラスの女子にそんな事言って回ってるの?」
「そんなことはないよ、山田さんだからだよ。」
「なんだかなー。」
そんな会話の後、話題は川上さんのキーホルダーの話題に移った。
昼食時、鈴木が話しかけてきた
「さっき佐藤と話しをしていたみたいだけど、いつの間に佐藤と仲良くなったの?」
「仲良くなった、っていうか、昨日ちょっと話をしただけだよ。まあ、そのおかげで昨日のモヤモヤした気分がだいぶ吹っ飛んだんで感謝はしてるんだけどね。」
「そういや、昨日のさくらは機嫌悪かったもんな。」
誰のせいだよ! そう思わないでもないさくらであった。
一方佐藤は。
先週はみきちゃん、今週はさくらちゃんとお話ができた。これで彼女達と少しずつ仲良くなれば、僕の夢にもいつかは手が届く。次は誰に話しかけようかな?
そんな事を考えながら、弁当をほおばるのだった。