<主人公side…>
人の人生とは一種の物語だ…
自分という「主人公」が紡ぐ壮大な物語…
歩んでいったことが自分には記憶を他者へは記録や思い出、伝承と
様々な形でページに書き記され、最後は命という幕を下ろすことで人生の物語は終わりを告げる
けれどそれが必ずしも全うできるという訳でもない、突然の不運によって
例えばそう……この「僕」のように…
「―――っぅ」
僕は今事故による生死の境に陥るという事態だった
今僕が感じているのは体中バキバキになっていることによる痛みや薄れゆく命の灯が消えかかっているという感覚だ
どうしてこんなことになったんだろう
僕は未だ鈍痛がする頭で思い返していた
そうだ。家に帰る途中、信号が青に変わって歩道を歩いている時に突然猛スピードを出していた車が現れてそれに撥ねられたんだった
ちなみに僕を撥ねた車ならとっくに逃げたみたい
「はぁ…はぁ……さい、あくだね」
今は夜も遅く一通りもあまりない、助けを呼ぼうにももう声もろくに出せない
よもやひき逃げにあって人生を終えることになってしまうなんてね。本当に不幸だ
「はぁ~…しん、じゃうんだね……ぼく」
死ぬのはもう仕方ないとして、悔いも未練もたらたらだ
本当なら今頃は家に帰って自室で今日買った「陰の実力者になりたくて」の漫画を読むはずだったんだけどな…
「せ、めて…読み終えてから……死にたかったな…」
その一言を呟いた瞬間、僕の意識は闇へと落ちた
こうして僕の
……はずだった
「…っ?」
何故か意識を取り戻した僕は困惑していた
見たところここは天国でも地獄でもなく、ましてや病室でもなかった
「はっはっはっは!クレアは弟を欲しがっていたがそれも一気に2人も生まれるとはな!きっと大いに喜ぶぞ!」
横からは嬉しそうな豪快な笑い声、そして僕に至っては抱きかかえられている感覚だ
見るとそこには狐目の女性が僕を抱きかかえていた
「でも、変ね?この子たち全然泣かないわ?」
「ん~?」
2人が不安そうな顔を浮かべる
…っていうかこの2人の顔、もしかして「陰の実力者になりたくて」略して「かげじつ」の主人公「シド・カゲノ―」の両親である「オトン・カゲノー」と「オカン・カゲノ―」じゃない?
さらに彼女が抱きかかえているもう一つの手にはもう一人の赤子がいた
「(まさか、いや間違いない。彼は「シド・カゲノ―」だ)」
顔や雰囲気からして確信できる
毒と一緒に抱きかかえられているのは「陰の実力者になりたくて」の主人公である「シド・カゲノ―」だった
「(とどのつまりここは「かげじつ」の世界であり、僕は何らかの形でこの世界に転生したってこと?)」
正直な話し頭の処理が追い付いていないが目の前の光景を見るにそう確信するしかなかった
おっといかん、これ以上黙ってると2人を不安にさせちゃう
「おぎゃー!おぎゃー!」
シドが鳴き声を発しだした
「お、おぎゃー!おぎゃー!」
僕も急ぎ鳴き声を上げた
「おぉ!元気な鳴き声だ!」
「気のせいだったみたいね」
ふぅ、なんとかなった
ほっと一息ついているとドアがバタンと開いた
「お父さん、お母さん!生まれたの?弟が生まれたの!」
僕たちの鳴き声に気づいてやってきたのはシドの姉である「クレア・カゲノ―」だった
「うわ~かわいい♪」
クレアは僕とシドに顔を見るなりとても嬉しそうな顔をする
いやいや、あなたのほうがかわいいって
とにもかくにも僕はどうしてかは定かではないけど
こうして僕は紆余曲折を経てかげじつの世界に転生したのだった
―――それから数年後―――
[カゲノー家 演習場]
僕がこの世界に転生してあっという間に時が経過した
ちなみにこの世界での僕はカゲノ―家の次男「クリス・カゲノ―」という名を与えられた
容姿はシドとクレアの容姿を兼ね備えた感じだ
具体的に10の体位で表すと割合はシド要素が3でクレアが7ってところかな?
…最初こそ本当に驚いたけど正直僕にとってはとても良好なことだった
一度死んでしまったとはいえ、そのおかげで大好きな「かげじつ」の世界に転生したんだ
これ以上幸せなことはない。おかげで僕の新たな
そんなこんなで僕の第二の
今、僕はカゲノ―家にある演習所にいる
目の前には巨大な大岩がある
ドゴォォォォォォン!!
大岩を眺めていると横からものすごい音が聞こえる
視線を向けると音の正体はクレアが岩を粉々に砕いている音だった
岩を砕くクレアに皆が拍手を送る
「クレア姉さま、お疲れ様でした。お見事ですね」
「クリス、ありがとう」
僕も一緒に拍手をしつつ、姉であるクレアに賞賛の声をかけた
クレア姉さまは一声かけると使用人からタオルを受け取って汗を拭っていた
ちなみにシドのほうは当然「モブA」を演じてるため相変わらず実力を隠している
「さぁクリス、お前もそろそろ打ち込んでみなさい」
「はい、父さま」
オトンからの呼びかけに答え、再び岩の前に立ち剣を構える
「はあっ!!」
声を張り上げながら僕は剣を勢いよく突き刺した
突き刺した剣が岩を貫いた
これだけならシドと何ら変わらない
でもここで僕は力を込める
「…ふっ!」
剣に魔力を流し込んだ瞬間
ボボォォォォォン!!
岩が内側から弾けた
「…ふぅ~」
僕が一呼吸終えると周りから拍手の音がする
オトンや兵たち、そして横からはシドが拍手してくれていた
「流石だねクリス」
「ありがとうございます。”シド兄さま”」
賞賛の言葉をくれたシドに僕はお礼を言う
今ので分かったとは思うけど僕は立場としては弟の立場だ
クレアを姉に、シドを兄にもつ弟、それが僕の立ち位置だ
この家族の中で僕はすくすくと成長していった
だけどその裏では……
[真夜中のとある路地裏]
時刻は人々が寝静まり、光が消えた闇夜の世界
そんな夜が支配する路地裏にてガラの悪い奴らが何か良からぬことをしようとしているようだった
「ひい、ふう、みい…ざっと数えて10数人ってところかな?ねぇシド兄さま?」
僕は男たちを指さし、数を数えると徐に声をかける
そこにはこの世界での万能アイテム「スライムスーツ」に身を包んだシドこと陰の実力者である「シャドウ」がいた
「うん、そうみたいだね?さてどうしようか?」
「だったらここは公平に半分ずつ相手にするのはどうかな?」
正直いうと兄さまだけで十分な奴らではあるけど、ぶっちゃけついてきてるからには僕だって楽しみたいしね
「そうだね…じゃあそろそろ行こうか。ねぇ「ゴースト」?」
「うん。一緒に行きましょう”シャドウ兄さま”」
互いをシャドウとゴーストと呼び合う僕らは互いに拳を軽くぶつけ合うと高台から一気に急降下すると輩の前に降り立つ
「な、なんだテメェら!どっから現れた!?」
「我が名はシャドウ、陰に潜み、陰を狩る狩る者」
「我が名はゴースト、闇の化身にして悪しき者を狩る者」
僕たちは互いの決め台詞を告げる
「ふざけんな!やっちまえ!!」
「「「「「おーーー!!」」」」」
1人の声に反応した他の奴らがぞろぞろと押し寄せる
「「ふふっ……っ!!」」バッ!
それを見て僕たちは互いの獲物たちへと突っ込むのだった