[クリスside]
スライムスーツを纏った僕の姿にオルバとモブ兵が怖気ずいていた
「な、き、ききき、貴様は何者だ!?」
「通りすがりの…って、うっうん!じゃなくて…我が名はゴースト、陰に潜み魂を狩り取る者」
いけないいけない、さっきのワード聞いて一瞬とある破壊者のセリフ言いかけちゃったよ
一先ずノリで誤魔化したけど
「どういうことだ。何が起こっているんだ!?」
状況が飲み込めず困惑しているな。その慌てふためきようはとても愉快だ
「冥途のみやげに教えてあげるよ。あんたらが連れ去ったのは姉さまじゃなくて僕だったのさ」
「何だと!?」
「最初からあんたらからいろいろと聞き出すために姉さまの振りをしていたんだよ。ちなみに本物の姉さまは今頃家でみんなに保護されてる頃だろうね」
「ぐぅ、お、おのれ図ったな!?」
してやったりな顔を浮かべる僕を見てオルバはさらに悔しそうにしている
「さぁどうする?そこで失禁してるやつから聞いてると思うけど今頃僕の仲間たちがあんたの部下たちを始末している頃だからもう逃げ場なんてないと思うけど?」
「…舐めるなよ小僧、私が何の策も持たぬ無能だと思ったら大間違いだ!ふん!!」
ピカァアアン!!!
直後、オルバが懐から閃光玉を床に叩きつけた
衝撃を与えられた閃光玉が破裂し、強烈な光が牢内を包み込んだ
眩しいな~
「…おや?」
光が収まるとオルバの姿はどこにもなかった
「目が~!!目がぁあああ!?」
でもモブ兵は置いてかれたためにしっかりと閃光玉を食らっていた
「まったく、逃げ足早いな?」ジャキン!
スライムソードで檻を斬って僕は牢から出る
「痛いよ!?目が焼けるように痛いよ~!!??」
「…うるさいな~?」
僕は未だ痛みに悶絶しながらキャンキャン叫ぶモブ兵を哀れなものを見るかのように見ていた
まぁ、オルバを取り逃がしてしまったのは残念だけど別に問題はないしね
それよりも僕は目の前にいるモブ兵をじっと見ていた
モブではあるけどこれも一応教団の一員、何か知っている事があるかもしれないしこのまま殺すのももったいない
…よし、捕獲しよう
考えをまとめた僕は即行動に移る
「うぅ~…っ?――っ!?」
ようやく視力が回復し始めたみたいだけどもう遅いんだなこれが
「ふふふふっ」
「や、やめろ、いえ、やめてください。命だけは…命だけは」ガクガク
生まれたての小鹿のようにがくがく震えてるね
「安心しなよ。君は殺さないで上げる」
僕がそういうとモブ兵はホッと安堵した様子を見せる
だけどそんなモブ兵が自分がへたり込んでいる床の感触が変になっていくことに気づき
床のほうに視線を向ける
「な、なんだこれは!?」
驚くのも無理はない、いつの間にか床が黒い何かに覆われていたんだからね
しかもそれがまるで底なし沼かのようにモブ兵の身体が沈み始めている
「ひ、ひぃっ!?た、助けて!約束が違うじゃないですか!?」
自分が沈んでいると知って恐怖に引きつった顔をしながら必死に僕の足にしがみついてくる
「慌てないでよ別に死ぬわけじゃないからさ、これはただのゲート。スライムを使ったさしずめスライムゲートとでもいったところかな。これから君は僕の作り上げた亜空間に落ちるのさ」
僕は身をかがませながら身体の半分が沈みかけているモブ兵に説明する
説明を聞いた瞬間、モブ兵は絶望に染まった顔を浮かべる
「さぁ、亜空間へいってらっしゃ~い♪」
「い、いやだぁぁぁぁぁaaaaa――――」ゴボボボ
叫びを上げるもついに全身沈んでしまったモブ兵の声はそこで途切れてしまうのだった
「…さ~て、じゃあアルファたちの元に合流しようかな」
モブ兵を収納した後、僕を探しに来ているであろうアルファたちに合流するため彼女たちの元に向かうのだった
――それからしばらくしてのこと――
無駄にだだっ広い館内を駆け回り、アルファたちを探していると僕の探知魔法が反応した
「あっちだな」
僕は察知した魔力を導にその方へとかけていった
やがて広い場所にたどり着いた
「おっ、あれは」
向こうのほうに7つの影、間違いない
人影を確認するとともに僕はそっちのほうへと向かった
「やぁみんな、来てくれたんだね」
「ゴースト」
「「「「「「ゴースト様!」」」」」」
僕に気づいた瞬間、皆が安堵した様子を見せていた
「無事につけたようだね」
「えぇ、この子のおかげで」
アルファがそう言った瞬間、例のものが僕の肩に飛び乗ってきた
「ゴースト、説明をいいかしら?その生物はいったい?」
「これは僕が開発したスライムを媒体に作り上げたもの「
質問をするアルファたちに僕は肩に乗っている生き物の名を告げる
「従来のスライムとは異なり、指示を与えればそれに応じ、且つ独自の思考や判断で行動することができる。ただし一度擬態したらもうそれ以外に擬態できなくなっちゃうけどね」
「そう、なるほど」
僕の説明に皆も感心していた
「でもゴースト様が無事でなによ……り?」
「ん?」
なんか僕に気づいたガンマが声をかけようとして詰まったように言葉を止める
するとガンマがいそいそと僕の前に歩み寄る
「ど、どうしたのガンマ?」
「ゴースト様、失礼します」
そう言うとガンマが僕のフードを取った
「「「「「「っ!?」」」」」」
次の瞬間、ガンマだけじゃなく他のみんなも同じように目を見開いて僕を見た
「ど、どうしたのみんな?」
「…ゴースト様、その髪はどうなされたんですか?」
髪?…あぁ、そう言えば切ってたの忘れてた
「あ~ごめん、ちょっと分けあって切れちゃったんだ」
僕がそう説明した瞬間だった
「「「っ!?」」」ガタッ
「えぇっ!?」
いきなりベータとガンマ、イプシロンが膝から崩れ落ちた
「ど、どうしたの!?」
「どうしたのですって?…これが平常でいられるものですか!」
「ゴースト様の姉君様に負けず劣らずの綺麗な髪の毛がまさかこんなことになるだなんて!?」
「損失よ!世界の損失!?」
そ、そんなに言うほどなのかな!?
元々僕が髪の毛伸ばしてたのだってこの日のために用意してただけだから別にそこまで痛手ではないんだけど…
「…ゴースト様!」
「えっ?あっはい?」
「あなた様の髪を切った不届き者はいったい誰ですかお教えください!」
すごい勢いでガンマが言い寄ってくる
彼女につられるようにベータとイプシロンも詰め寄ってきてる
「えっ、えっと~……お、オルバ子爵かな~?」アセアセ
「「「…あの男かぁぁぁぁぁぁ!!」」」
「っ!?」
次の瞬間、僕の話を聞いた3人がものすごい勢いで憤慨していた
「アルファ様、今すぐあの男の行方を探しましょう!」
「まだ近くには行っていないはずです!」
「絶対に探し出してゴースト様の美しい髪を台無しにさせた責任を取らせましょう!!」
3人の怒りの矛先が完全にオルバに向く
「(これ自分で切ったって言ったら大変なことになっていたに違いない。すみませんねオルバ子爵…まぁ僕を痛めつけてくれたわけだしこれでおあいこってことで許してちょ)」
僕は心の中で今頃逃走した先でシドに遭遇して瞬殺されているであろうオルバに冤罪をかけてしまったことに今更ながら謝罪したのだった