[カゲノ―家 朝]
「……ん…んん~!」
鳥のさえずりと窓から差し込むこもれびの光によって僕は目を覚ます
めざめたばかりでカチコチになっている体を僕は伸びしてほぐす
僕が目覚めてすぐのこと、ドアをノックする音が
「はい」
「失礼します。クリス様。おはようございます。お着替えのお召しものをお持ちいたしました」
部屋に入ってきたのはメイドさんで僕の着替えを持ってきてくれたのだ
そうして僕は着替えを終えて部屋の外に
しばらくすると前方に黒髪ロングヘアの後ろ姿が
「クレア姉さま。おはようございます」
「あらクリス、おはよう」
こちらに気づいて振り返ったのはクレアだった
クレアは僕が来るととても嬉しそうな顔をしながら僕の頭を撫でてくれた
「姉さまはこれから稽古ですか?」
「そう朝稽古にね。クリスもいく?」
「あっ、すみません。ぼくちょっとシド兄さまに御用があるので」
「…そう」
誘いを断るとクレアは残念そうな顔をしていた
ちょっと心苦しくはある
「で、では姉さま。また後で!」
「えぇ、わかったわ」
そうしてクレアと別れた僕は兄シドの元に
「シド兄さま、クリスです」コンコン
『あぁ、入っていいよ』
ドア越しから入室の許可を得た僕は中に入る
「おはようございます。シド兄さま」
「あぁ、おはようクリス」
窓の外を眺めていたシドが僕のほうを向く
「昨日はお疲れだったね」
「兄さまこそ。相変わらずお見事な活躍でしたよ」
互いに昨日の成果を称え合う
「クリス、僕は今夜も出るつもりだけどどうする?」
「もちろん、どこまでもお供しますよ」
「ふっ、お前ならそういうと思ったよ」
「えへへっ」
笑い合いながら拳を軽くぶつけ合った
シドとこんなにも良好な関係を築けて僕はとても嬉しかった
僕とシドがこのような関係になれたのは少し前のことだった
―――回想フェイズ―――
『『っ!?』』
きっかけはシドがスライムスーツを生み出す実験をしていたところに僕が居合わせたからだ
…まぁ、そうなるように動いたからね
突然現れた僕にシドはとても驚いた様子を見せていた
警戒心をむき出しにしてその目はシャドウとしての鋭い眼光だった
それに対して僕はあれやこれやと話術を駆使してシドを落ち着かせる
落ち着かせたところで僕は本来は知っているものの、あえて彼の口から何をしようとしているのかの経緯を問うた
薄々僕のことをただならぬ者と感じていたのかシドはしぶしぶ経緯を語り始めた
自分が陰の実力者となろうとしていることやいろいろ自分の思い描くことをしたいのだと
話しを終えたシドに対し僕がとった行動、それは敬意と賞賛だった
『素晴らしい、素晴らしいです兄さま!』
『そ、そうかい?』
『はい、兄さまならば陰の実力者になることなど容易いことでしょう』
純粋な尊敬と賞賛を送ったことでシドも気持ち的に嬉しそうだった
まぁ事実本心だしね
『…兄さま、僕に兄さまのお手伝いをさせてくれませんか?』
『えっ?』
『兄さまの元で一緒に兄さまのやりたいことを叶えていきたいんです!』
真っ直ぐに面と向かって僕はシドにお願いした
シドはまだ少し警戒心を抱きつつもこれを承諾してくれた
そうして僕はシドとともに暗躍していろんな悪しき奴らを襲撃した
行動を共にするうちにシドの心境にも変化が現れたのか少しずつ信頼を寄せてくれるようになった
故に今こうして僕はシドとともに良好な仲を築けているのだと信じている
―――回想終了―――
[シドside]
僕の名はシド・カゲノ―。転生者としてこの世界にやってきた
陰の実力者となるべく準備をしている中、あいつが僕の前に現れた
双子として生まれた僕の弟、クリス・カゲノ―だ
始め見た時から僕はクリスは自分と同じく他の奴らとは違う何かを感じていた
『ふっ…はぁっ!!』
演習場での訓練の時とかもそう、剣を突き立ててそこから魔力を流し込んで内側から破壊するという芸当を見せていたけど
あれ、明らかに加減していた
なぜなら僕がクリスの魔力を透視した際に僕以上の魔力量を秘めていた
その気になれば僕以上であると思われるほどかなりすごい魔力量を
さらには時おりどこか見透かしているかのような視線を向ける弟に僕は少し警戒していた
得体の知れない弟であるその存在に
でもそんな最中のことだった
『『っ!?』』
僕はクリスに研究しているところを見られてしまった
『に、兄さま。これはいったい?』
『く、クリス…』
誰にも見られないよう細心の注意を払っていたのに僕の感知を掻い潜ってここに来たクリスに僕は若干の恐怖を覚えた
もしこのことをばらそうというのならば最悪殺すことも考えてた
だが相手は得体の知れない存在、これまで見てきた者たちとは別格と言える者
相手にするのは避けるべきなのではと心がざわつきながらも僕は意を決しようとした
『兄さま、すごいです!!』
『…えっ?』
しかし返ってきたのは予想の斜め上を行く行動だった
クリスは無垢な少年のように僕の研究や僕がしようとしていることを賞賛した
そしてあろうことか僕の手伝いを買って出てきたのだ
何か裏がありそうだと思う僕だったが、クリスは真剣に噓偽りないような顔を浮かべて懇願してきた
僕はそんなクリスに根負けし、こいつの企みを探るためにもその頼みを承諾した
こうして僕とクリスの秘密の関係が始まった
最初の頃こそ僕はクリスの行動に警戒をしつつ監視を行っていた
だけどそんな考えを腐食するくらいクリスは僕に尽くしてくれた
研究のサポートをしてくれたり、僕が面倒ごとに困っている時はそれを引き受けてくれた
見返りを求めるわけでもなくクリスはただ純粋に僕と二人三脚を行っていった
何よりクリスは僕を心の底から尊敬しているようだった
そのせいか僕はクリスのことを純粋に可愛い弟としてみるようになっていった
無論警戒心が全て拭えたわけではない
しかしそれを差し引いてもクリスは僕にとっても兄弟として、相棒として頼れる存在となっていった
こうして僕たちはその後、完成させたスライムスーツを纏い本格的に行動を開始し始めた
僕は陰に潜み陰を狩る者、シャドウとして、クリスはそのバディであるゴーストとして陰の実力者となるべく動き出したのだった
[夜中 街の路地裏]
闇世に沈黙する夜の街に一凛の風が吹きすさぶ
「…さぁ、今宵も影の世界が訪れた」
風に靡くスライムスーツを纏った僕は高台から街を見下ろす
見下ろす先には今宵も蔓延る下賤な輩ども、僕はそんな奴らを獲物を見つけた獣のような眼差しで見る
「楽しそうだね兄さま」
「あぁ、そうさクリス、僕は今日も楽しいよ。今宵も存分に暴れると思うとね」
「ふふっ…同感」
クリスが共感したように笑みをこぼす
「さぁ、行こうか
「うん、行こう
互いに言葉を掛け合い、今宵も僕たちは陰を狩るべく舞い降りていった