[クリスside]
アレクシアを助けるために動き出した我らシャドウガーデンは陰に紛れて街に繰り出していた
今頃シャドウは下水道を通ってアレクシアの元に向かっているだろう
さて、その間に僕はというと
【「グアァァァァアアアアア!!」】
「きゃぁぁぁあああ!!」
「うわぁあああああ!!」
高台から見下ろす先には街中で暴れ狂う者…あれはオルバの娘であるミリアの為れの果ての姿
人外となってただひたすらに暴れていた
「(…父親といい彼女といい、ディアブロス教団にいいように利用された被害者なんだよな?)」
憐れみを抱きながら僕はミリアの様子を見ていた
見れば衛兵たちと交戦している様子であり、その中にはアレクシアの姉である「アイリス」の姿もあった
「ふん!」
【「グァァッツ!?」】
「化け物が!」
アイリスの一刀がミリアを襲った
「(おいおい、仮にも被害者の少女相手に化け物って酷いと思うがな?)」
…まぁ、傍観してみてるだけなら所詮は彼女たちと何も変わらない
「(さて…行こう)」
観察を辞めた僕は行動に出るべく高台から身を投げた
[アイリスside]
私は衛兵たちと共に目の前の怪物と交戦をしていた
「はあぁぁぁああ!!」
【「ガァァァァアアア!?」】
何度も何度も私は剣を振るい、その度に傷ついていくも怪物は一向に倒れる気配がなかった
「しぶとい!こんな奴を相手にしている暇はないというのに!」
速くアレクシアの捜索に動きたいのに目の前のこいつが邪魔をする
さっさと倒してアレクシアの元に行くのよ!
そう思いを込めて私が剣を構えた時だった
「っ!?」
次の瞬間、私の視界に入ってくるものがあった
黒いローブに身を包んだ男らしき後ろ姿が目の前に現れた
「何者だ!」
私は咄嗟に目の前の男に問いただす
「…可哀そうに」
「っ?」
「こんなにも身を傷つけられ、痛かったね、苦しかったね」
「な、何をしているの?」
男は怪物に優しく語りかけているようだった
【「ウ、ウアァアアアアアア!!」】
だけど怪物が咆哮を上げて男に殴りかかった
「…っ!!」バシィィィン!!
【「ッツ!?」】
「なっ!?」
私は目を疑った。目の前の男が怪物の拳を軽く払うようにして弾き飛ばしたのだから
【「ウゥゥ!?」】
「安心して…今助けてあげるよ」
そう男が囁いた時だった
ギュィィイイイイン!!
「こ、これは!?」
辺り全体が強力な魔力に包まれ始めた
「み、みんなこの場から逃げなさい!!」
危険を感じた私は皆に逃げるように促し、その言葉を聞いた者たちが一斉に逃げていく
1人残った私は困惑しつつもこの状況に目を向けていた
するとその直後、男が身構えたと思ったらその体からこの魔力に匹敵する程の魔力があふれ出始める
「アイ・アム・プロテクション!」
男がそう告げた瞬間、地面を突き破るように膨大な魔力があふれていく
まずいと私が思ったその時だった
ギュィィイイイイン!!
刹那、男を中心に透明な魔力の壁があふれ出ようとしている魔力の周囲に広がっていく
そして次の瞬間だった
ボォォォオオオオオオオオオオン!!!
下から発生した光が当たり全体を包んだと同時に凄まじい衝撃が発生した
私もたまらず目を瞑ってしまった
やがて視界が回復したことで私が恐る恐る目を開いた
「…えっ?」
思わず私は目を疑った
あれだけの爆発が発生したにもかかわらず街は崩壊しておらず、何もなかったかのようだった
「ど、どういうこと?」
困惑している私を他所に男は先ほどの続きと言わんばかりに怪物のほうを見ていた
すると男は再び魔力を湧き上がらせ始めた
「カース・ブレイクofキュア」
男がそうつぶやいた瞬間、怪物を魔法陣が囲んだ
ゴォォオオオオオオオオ!!
【「グアァァァァアアアアア!?」】
陣から物凄い魔力が発生し、光柱を生み出した
私は何が起こったのか困惑していると柱の中に浮かんでいた怪物がみるみるうちに少女の姿へと変わっていく
そして光柱が消えるや少女は力なくその場に倒れこんだ
想像を絶する光景に私が困惑していると男が少女を抱きかかえると煙の中に向かって歩みだす
「ま、待て!」
咄嗟に私は男に声をかけるとその足をぴたりと止めた
「き、貴様は…貴様は何者だ!?」
「…我が名はゴースト。陰の住人にして悪しき者を狩るもの」
「ゴースト…だと?」
霊の名を関する男は私にそう名乗った
名を告げ終えるとゴーストは再び歩みだす
「待てと言っている!怪しい奴を逃がすと思うか!?」
「…黙れ」ギロッ!
「っ!?」ビクッ!
その時、奴ににらまれた瞬間、私は動けなくなった
よくわからないまま奴のフードで隠れているであろう眼から眼光が光っていた
奴の目を見た私は体に震えを感じ、息も荒くなっていった
「無駄な詮索はよせ、お前たちはただ舞台を見て満足していればいいのだ。我ら「シャドウガーデン」の邪魔をするというのなら…命の保証はない」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
私に宣告する男のプレッシャーは凄まじく、正直立っていることも辛かった
男はそんな私に気づいてか早々に煙の向こうへと消えていった
「…シャドウガーデン」
いったい何者なのだろうか…
考えにふける私を他所に沈黙と静けさと雨音がこの場を包んでいた
「いや、今はそんなことどうでもいい、早くアレクシアの元に!」
足早に私はこの場を後にし、妹を探しに向かった
[アレクシアside]
私は1人、半壊した下水道を歩いていた
「(いったい何なのあの男は?)」
一歩一歩進みながら私は先ほどの光景を思い返していた
突然私たちの前に現れたシャドウという男は私を圧倒したゼノンを軽く蹴散らし、最後には消滅させてしまった
あの強さの根幹をなしているのは私がかつて憧れ、捨て去ろうとした「凡人の剣」だった
シャドウが振るう凡人の剣はとても力強く、そして美しかった
それは私の心に再び希望の灯を灯した
もう一度、私はこの
誓いも改に下水道を歩いていた時だった
「っ?」
不意に足音が聞こえてきた
だけどこれは人の足音じゃない
聞き耳を立てていると足音が間地か魔で近づいていた
警戒のために剣を構える
「キュイ!」
「シ、シア!?」
だけど現れたのはなんとシアだった
「えっ?どうして、なんであなたがここに…シア!」
家にいるはずのシアがいることに驚いたものの、その姿を見た瞬間思わず私はこの子の元にかけていく
「キュイ!」
シアも私の胸に飛び込んできた
「シア、こんなところであなたに会えたなんて嬉しいわ」
「キュイ~」
愛らしい声を上げながらシアも体を使って私の頬をスリスリしてくれた
「…ッ?」
「どうしたのシア?」
「……キュイ」
するとシアが私を再度見つめてきたけどその顔はどこか別れを惜しむかのような悲し気な顔をしていた
なぜそんな顔を浮かべているのか分からずにいた時だった
「キュイ!」
「あっ、シア!?」
次の瞬間、シアが私の手から離れ、瓦礫を伝って穴の方へと昇る
よく見ると穴の上に人影があった
「だ、誰!」
私はすかさず剣を構える
けれど陰はその場から動こうとはしなかった
「キュイ!」
その時、私の手元から離れたシアが陰の手に乗った
「あなた何者よ。その子をシアを返して!」
シアを取り戻そうと私は男に返還を要求する
「…否、これは我が眷属、もとよりそなたの者に在らず、この物の役目はそなたを脅威から守ること、脅威が去った以上、役目は終わった。故にその申し出は断る」
「何ですって!?」
返すように言った私に男はシアが私を守るために送り込んだことを告げる
「あんた何者よ。もしかしてあのシャドウとかいうやつの仲間なの!」
格好といい言動といい、シャドウに通じるものがあると私は読んだ
「いかにも、我が名はゴースト。シャドウと双璧を成す者だ」
「ゴースト…ですって?」
シャドウと双璧ってことはこいつもあいつと同じくらいの強さってことだ
仮に戦っても私じゃ瞬殺されてしまうのが落ちだった
「…っ、これ以上の発言は不要、我は行かせてもらう」
「ま、待ちなさい!シアを返して!」
去ろうとするゴーストを必死に呼び止めようとするも奴は瞬時にその場から消えていった…シアを連れて
「…そんな、シア」ガクッ
私はその場に崩れ落ちた
シアを連れてかれたことがショックだった
であって間もないにもかかわらず私の中でシアは大切な存在になっていた
だからこそ突然の別れに私は気が滅入ってしまった
その場に崩れ落ちた私が絶句していた時だった
「アレクシア!アレクシア!!」
「ね、姉さま!?」
どこからともなく現れたアイリス姉さまに私は抱きしめられた
「無事でよかった本当に」
ギュッと私を抱きしめる姉さまからは安心の感情が見て取れた
私のことを心底心配してくれていたんだと思うと心がほっこりした
「ありがとうアイリス姉さま」
「…当然よ。私たちは姉妹なんだから」
姉さまを抱き返しながら私はお礼を言う
「でも姉さま、どうしてここに?」
「それがここに来る途中になんか妙な小さい竜みたいなのに出くわして、なんだか私を誘っている気がしたからついてきたらここにきてあなたを見つけたのよ…ってアレクシア?」
アイリス姉さまからの話を聞いた瞬間、私はハッとなった
そして全てを悟ったように私は穴の向こうに見える夜空を見上げた
「(ありがとうシア)」
心の中で私はシアにお礼を述べた
あの子は何から何まで私にとってかけがえのない友達なのだと再確認したのだった