空を照らす月明かりが差し込む夜の街
街灯の明かりが灯る街を人々が行きかう
一見平和に思えるそんな街で今、一つの騒動が起こっていた
「はぁ…はぁ…はぁ…っ!?」
人気のない路地裏にて男が必死の形相で何かから逃げようとしていた
しかし運悪く男がたどり着いた先は行き止まりだった
さらにはその際にバランスを崩してしまったのか壁の前に倒れこんでしまった
するとその時、男の背後から歩み寄る何者かの足音が聞こえる
「……っ」
そして足音の主が男の前に姿を見せる
怯える男に対して剣を突きつけたのは顔をフードで隠した謎の人物だった
「…我らはシャドウガーデン」
「た、助けて!?」
「我らはシャドウガーデン……――っ!!」
シュィン!ザシュン!!
必死の命乞いも虚しく、シャドウガーデンの名を語るそのフードの人物が剣を振りおろし、その場は飛び散る鮮血によって赤く染まるのだった
――それから次の日――
[クリスside]
アレクシア王女誘拐事件やら死体のない殺人事件やらの出来事が起こってから早数週間が経過した
今僕はミツゴシ商会にて定例会議を行っていた
この場にはゼータとイータを除く七陰が揃っている
まぁ、2人は今現時点も任務やら研究で忙しいからね
「さて、今日の議題に関してはある程度話し終えたかな?…誰かほかにあげておかないといけない報告はある?」
あらかた会議にあげる報告も出尽くしたところで僕が七陰たちに尋ねる
「はいクリス様。最後に私の方からよろしいでしょうか?」
「うんいいよ。話して」
ベータがここで挙手をしてきたので僕はそれを許可する
「最後にですが喫緊の問題がございます。先日から街中で噂になっている件についてです」
「…これのことね?」
するとアルファが一枚の紙を僕らに見せる
アルファかざしたのは「横暴なる貴族 怠惰な市民 我々の怒りを知れ シャドウガーデンが死の裁きを」と記され、血が染みついている一枚の紙だった
「我らの名を語る愚か者共がうまく痕跡を偽装しているようです」
「実に腹立たしい限りです。ですが我々の目から逃れるなど不可能です」
皆の空気が張りつめている
当然だ。シャドウガーデンの名を語る輩が現れたわけだからね
正直僕もあまり面白いとは思わないね
「クリス様、この不逞な輩どもをどういたしましょう?」
「みんなの怒りは最もだ。我々の名を語る者共がいることなど由々しきことだ」
「では?」
「次に奴らが動きを見せようものなら、それが奴らの命日となろうね」
不敵な笑みを浮かべてみると皆も僕と同じように笑みをこぼしていた
――それから少しして――
会議を終えた後、僕はガンマと共に茶会を楽しんでいた
アルファたちはというと会議後にそれぞれの役割のために動いてくれている
「…うふふ」
「どうしたのガンマ、そんなに嬉しそうな顔して?」
「あぁ、いえ…こうしてクリス様と2人きりでお茶を楽しめてることが何より幸せでして」
「大袈裟だよ」
嬉しいこと言ってくれるけどちょっとこそばゆいね
「そのようなことはございません!クリス様と2人きりのお茶会ほど神聖で思考なる一時はございませんわ!」
「う、うん…あ、ありがとう」
だからこそばゆいって
そんなことを思いながら再び紅茶を啜った時
僕は不意に時計を見る
時刻は夕方に差し掛かっていた
…そうだ。今日のこの時間って言えば
「ガンマごめん。ちょっといいかな?」
「なんでしょうか?」
「多分こっちに兄さまが連れと一緒にくると思うから来たらここに通してあげて」
今頃ヒョロとジャガに誘われてここに向かっている頃だろうからね
「まぁ、シャドウ様がこちらに向かってらっしゃるのですか!?」
「うん。お願いできるかな?」
「もちろんですわ。今すぐニューたちに情報を回しておきますね」
「ありがとう」
シドが来ると僕から聞いてガンマは急いで従業員として働いているナンバーズたちにこの情報を伝達に動くのだった
[シドside]
アレクシアとの一件からしばらくが経過した
ヒョロとジャガにそのことを質問攻めにされて別れたきりだと答えたら若干呆れられてしまった
するとヒョロがこいつなりに慰めようとしてるのか「いい店を紹介する」ってことで押しに負けていくことになった
そうして僕は2人と一緒にこの「ミツゴシ商会」に来たわけなんだけど
列の最後尾に並んでいると唐突に話しかけてきた従業員に扮したニューに連れられて僕はミツゴシ商会の特別部屋に案内された
扉が開くとそこにはナンバーズたちが僕に頭を下げて待っていた
「ご来店お待ちしておりました」
前方のほうから聞き馴染んだ声がしたので見るとそこには奥の中心に設置された玉座の横で立つガンマの姿があった
「ガンマ。君がここにいるってことはここは君の店なわけか」
「はい。これも主様方の英知の一部を微力ながら再現させてもらったものでございます」
確か昔、僕とクリスが影の英知ってことで前世の知識を適当に教えたことがあったな
ガンマは頭はいい、その点は七陰の中でもトップクラスだ
…なんだけど
「へぶっ!?」
あっ、こけた
という感じで運動神経は壊滅的なのがたまに傷な子だ
「ど、どうぞこちらに」
鼻から血を流しながらにガンマが僕を玉座に案内させる
僕は盛大に玉座の間に足を組んで座した
「(しかしこれ、悪くないね。まさに一国の王って感じがしてさ)」
ちなみに階段から転げ落ちたガンマはナンバーズたちに介護されていた
「ところでなんで僕が来ることが分かったの?」
「あぁ、それはですね」
「僕が教えたんだよ」
「っ?」
その時、玉座の後ろから声が聞こえたと思ったらそこからひょこっとクリスが顔を出してきた
「クリス…なんだ。クリスはここの経営者がガンマだって知ってたんだ」
「まぁね。だってここは僕たちの王都での活動拠点出もあるわけだし」
「ふ~ん」
クリスってば僕よりシャドウガーデンの内情に詳しいような?
「時にシャドウ様。貴方様来訪された理由は分かっています。ゴースト様同様に例の事件についてですね」
…えっ?
「あっ、あぁ…」
例の事件?例の事件ってなに?
「兄さまも知ってるでしょ。僕らの名を語る不届き者が近ごろ悪さをしていることをね」
「も、もちろんさ…我らの名を語るやつらのことだろ。存じているさ」
すみません、まったく知りませんでした
ここ最近、僕の知らぬところで何が起こってんのさ?
冷静を装いながらも僕は内心焦りを抱いていたのだった