この物語は筆者が執筆練習のため、ランダムな要素で描いたオリジナルウマ娘の小説になります。
拙い文の上、同コンテンツにも詳しくないため、おかしいところがあるかも知れません。それでも大丈夫な方はどうぞお読みください。
「一緒に釣りへ行きませんか!」
「あ、ごめん、この後カラオケ行くから。…」
「ぁ、うん。ごめんね」
釣竿片手にそう話しかけては断られているのは、白い髪に青い水玉の耳飾りが特徴のウマ娘だった。
彼女の名前は「シルバークラン」、脅威的な速度と華麗なコーナリングを駆使してどんな強いウマ娘とのレースでも必ず2位を掠め取る有力ウマ娘だ。
そんな彼女だが、今まさに人生最大の危機に瀕していた…
友人が、できなかったのである。
「…だめだ。いや、頑張らなきゃ…当然じゃん私が悪いんだから」
いや…正確に言えばできなかったのではない。
失ってしまったのだ。
他ならぬ彼女のある特徴によって。
トレーナー曰く…彼女には厄介な悪癖があった。
それはレース終盤のわざとらしい減速である。
いや、正確には減速では無い。
スタミナ切れの逆噴射とも違うそれは、周りに合わせた安定した加速であり、周りと比べたらスパートが弱い。ただそれだけの事だった。
それだけの事が何故、悪癖とまで言われ広まってしまったのか、そのきっかけはとあるレースまで遡る。
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それが起きたのはとあるレース場だった。
メイクデビューから1勝、2勝。G3のレースにも幾つか勝利し、G1にも届き得る安定したタイムが叩き出せるようになった頃。
予行練習で挑んだG2での事だった。
バ場は生憎の重バ場。しかし気分は好調で、対抗バも恐るるに足りない。そんな勝利が確定したレースでの事だ。
「っ、今!」
仕掛けどころは完璧。コーナーでぐんぐん加速して、足運びも迷い無く。その一瞬で測れば自己ベストに匹敵する。
…そんな走りだった。
3バ、4バと追い込みをかけ、先頭で逃げウマと競り合うライバルの姿が見える。
速度の上では問題なし、このまま競り負けた逃げウマも差し切り。
さぁ、これからと息を入れ、そして…
…彼女は前に出れなかった。
(ウソ、なんで?)
先程まで何かに後押しされるかの様に加速を続けていたその脚は、1着の子と競り合いが始まるなり加速を止め、脚の回転数を緩やかに維持するに留まっていた。
そんな事をすれば当然。
彼女は2着。掲示板にはクビ差と言う結果だけが残り、困惑していた彼女はただぼんやりとその場に立つ事しかできなくなっていた。
そんな時だ、いきなり視界が揺れ、首元が苦しくなったのは。
いきなりの事に混乱しながら、首元を見ると細い綺麗な腕。
「何…を…」
それは1着を取った「ムカムカ」のものだった。かつてメイクデビューでは共に走り、共にとあるウマ娘に負けながらも見事3着にくらいついた少女。
その少女が襟首を掴み上げ憤怒の表情で叫んだのだ。「ふざけんじゃないわよ!!」と。
心の底から沸いて出たその気迫に周りは唖然。あわやケンカかと会場が騒ついたが、偶然にも会場に来ていたルドルフ会長によりその場は収められた。
ーーーー
そんなことがあっても彼女はめげなかった。
トレーナーと相談し、幾つかのレースに出走。
安定した走りで何度も2着を取り、良い賞金が望めると固定ファンもつく様になった。
ーーしかしそれが最大の間違いだったのだ。
ある日、彼女はトレーナーに聞かれた。
「どうして本気で走らないの?」と。
それは純粋な疑問であり、最終通告だった。
幾つかのレースのデータを持ち、丁寧に説明してくれた彼女によれば、「シルバークラン」と言うウマ娘は間違いなく、限界を引き出せるウマ娘だった。
特に強敵と当たった時の成長は素晴らしく、限界をはるかに超えたタイムで、第四コーナーから最終直線までを駆け抜けているらしい。当然、勝つことはできなかったが、結果は2着。どう考えても最高以上の結果を残せていた。
その上で今までの結果を見る。1着を取っているのは最初の頃に走ったレースだけ。ある時、ある段階から2着の文字が並び続け、ついにはG1である桜花賞ですら2着の文字が浮かんでいる。
「ぁ、えっと…私は、全力で…」
正直、気味が悪かった。まるで運命に決められたような2着。絶対に覆ることの無い結果がどうしようもない矛盾を生み出していた。
「そう…ごめんなさい、私では貴女の全力を引き出せないのね。」
そうして彼女はパートナーをも失ったのだ。
ーーーー
気づけばこの有り様だった。
クラスメイトはよそよそしく。トレーナーとは距離を感じ、たまにレースに出ては2着を取って、溝が深まる。
どうしようもなく晴れようの無い暗雲が、彼女の周りには立ち込めていた。
「…何でこうなったのかなぁ…」
手に持った釣糸に、これで首を絞めれば楽になれるか何て事が浮かんではポロポロと涙が流れ落ちる。
深く俯いた瞳に歪んだ水面が映り込み、目的地の滝壺にたどり着いたのだと遅れて気づく。
ゆっくりと脚が止まり…
「早まるな!!」
グンと後ろに引き込まれた。
流れる様に変わる景色、涙が空中に置いていかれ、見上げた視線に整った顔が映り込む。
「あ、あれ。ルナダイアリー、どうしたの?釣りは…行けないんでしょ?」
無理矢理にでも笑顔を浮かべる。
何かと気を使ってくれる金髪の彼女は「ルナダイアリー」。私の幼馴染で、友人関係が広く、何かと遊びの企画もしてくれるクラスのムードメーカーだ。
今日も先程のウマ娘達とカラオケに行ってるはずで、朝イチで釣りに誘ったところ断られた。
「違う、魚が苦手なだけだ、どうしてもってんなら、付き合うつもりだった!」
「嘘。」
「嘘じゃない!」
「嘘だよ!なら何で、カラオケなんか企画したのさ!私が先に声をかけたのに、後から私抜きでカラオケなんて!」
「それは…」
私の言葉に顔が曇る。あぁ、最低だ、そんな事言うつもりは無かったのに。
彼女ほど友人が多ければ、その日その場で日程が決まるわけじゃない。
きっと、もっと早くにカラオケ会は決まっていたに違いないのだ。
それでもこうして黙ってしまったのは、私を否定しないため。言葉を選んでくれてるだけだ。
「もう、いい。ほっといて、バカなことはしないから。」
そっぽを向き岩場に向かう。
ルナの方から着信の音が鳴り、曇ったままの彼女が「わかった…」と林の中に消えていく。
これで良いのだ、彼女には、彼女の友達が居て、いつまでもこんな私に時間を使うべきじゃない。
むしろ、あんな真剣に私を見てくれるなんてありがたいくらいだ。
そんなふうにぐるぐる考えていた私は泣き疲れたのかいつの間にか寝てしまっていた。
ーーーー
岩場のゴツゴツとは違う感触に穏やかに目が覚める。
サラサラとした感触が風に靡き、穏やかな気配がすぐ近くにあるのを肌で感じた。
「んん…るな…?」
「あーっと、ゴメンね?ルナちゃん、では無いかなあ」
赤い髪に褐色の肌、先刻校門前で釣りへ誘ったクラスメイト「ローランドステップ」がそこにいた。
「ローランドさん…?なんで?カラオケは?」
「あー、うん。実はさ。さっきの会話聞こえちゃって。一つ訂正しとかないと、って思ってね」
「訂正、ですか?」
「実は、今日のカラオケを企画したのは私なの。でも途中で予約した人数より少なくなっちゃって。それで無理言って参加してもらったの」
「…」
優しげな表情でこちらを伺う少女にどうしてか怒りが込み上げてくる。
この女さえいなければ私は大切な幼馴染にあんな理不尽をぶつけないで済んだのかと見当違いな怒りに心が支配される。
「でもちょうど良かったのかな、ねぇシルバーさん」
「ちょうど良かった。?」
ちょうどいい?ちょうどいいはずがあるか、お前さえ居なければきっとこんな事にはならなかったのに、お前さえ…
「せっかくだから、■■■■さんもカラオケ■■■?ルナちゃんもきっと…。え?」
「ふざけんな!」
視界が水飛沫に染まる。
目下の滝壺から水柱が打ち上がり、人間大の物が浮かび上がる。
冷め切らない頭がぼんやりとソレを見つめ、視界の端で金色の風が川へ飛び込んでいく。
ソレを認識した私は、ただ真っ青なまま森の中へ駆け出していた。
ーーーー
「けほ、ごめんね、ルナちゃん」
「バカ!今は息を整えろ!」
河原の石の上で濡れ弱った少女が倒れ伏す。
幸か不幸か、おしゃれを意識した厚着のおかげで擦り傷は少なく、水面に打ち付けられた衝撃も大きくはないらしい。
しかし安心はできない、あの高さから落ちたのだ、どこか痛めてる可能性は十分にある。
「いいの、それより、シルバーさんを…」
「ほっときなあんな奴!今はそれより!」
そんな少女の小さな手が私に重なる。冷えて冷たくなった華奢な手は力強く、真っ直ぐに私に意思を伝えてくる。
「ダメだよ、そんな事言っちゃ。大切な、幼馴染でしょ」
「でも、だってこんな」
「こんな事する子じゃない。でしょ?きっと、限界が来てるの」
「限界、?」
彼女の口から出た限界と言う言葉に、数ヶ月前のある出来事を思い出す。
アレは誰だったのかわからない。数多くいる友人の1人、決して弱く無く、眩い。そんな子が、あるレースを最後に姿を消した。
まるで最初からいなかった様に忽然と、ただ1人を除いて誰もが忘れ去り、置いてかれたその1人だけが もがき、彼女を探していた。
そんな出来事。
「うん、だから、今。あの子を止めないと、きっとどこかに行っちゃうよ…」
「…わかった。」
理屈も何も無い、しかし、ローランドの言葉には不思議な説得力があり、寮長に連絡をしながら森を駆ける。
どこにいる。きっとそれは…
ーーーー
いつかの日、幼馴染と話をした。
一緒に海を見に行こうと。
昔から魚が大好きだった少女は、正反対に魚が嫌いな少女と星を眺めながらそう言った。
二人は山奥にある養成所の出身で、そこからは満点の星空がよく見えたからだ。
だから魚嫌いはこう返したものだ、「海なんかより湖の方がいいよ波も無いし」と。
単に塩風を嫌っただけだ、なんなら行くつもりもない適当な言葉。
ソレに魚好きはこう返したのだ、「めいあん!それならお星様も見えるね!」
その時の少女は満面の笑みで、静かな夜に白く輝く一等星の様だった。
そんな他愛もない思い出の断片だ。
ーーーー
荒れ果てた森の中を突き進む、向かうのは星の見える高台でも、魚が泳ぐ海でもない。
ただ静かに、それでいて穏やかに時が流れる小さな湖。
水面に星が映り、小さな生き物達が生きる山の中のオアシスだ。
「クラン。」
息も絶え絶えな私の言葉に、ぼんやりと湖を眺めていた少女振り返る。
森の中で無くしたのか、釣り用のジャケットは既になく、彼女のお気に入りのワンピースが白装束の様に暗い水面に映り込む。
「ルナちゃん…?あははは、都合が良すぎるよ!誰?お化けか何か?ならさっさと私を殺してよ!」
錯乱した様に叫ぶ少女は、顔を塞ぎ濡れることも構わずに、その場に座り込む。
急に揺れた水面に星がかき消え、歪んだ月が湖に一つ浮かんでいた。
「殺したりなんかしない!できるわけないだろ!」
「なら、消えてよ!私は貴女にふさわしくないの!さっきだって自分の責任を人に押し付けて!わけのわからないまま、人を殺した!例え幻影でも、貴女を殺したくなんかないの!」
「大丈夫だ、お前は誰も殺してない!私だってお前に殺されたりしない!」
「いや!来ないで!やだ、やだぁ!」
少しずつ歩みを進める。幼子の様に泣き崩れる少女に、逃すものかとにじり寄る。
…どうして、こんなにも追い詰めた。たった一人の幼馴染を、前兆だってあった筈なのに…入着続きなどと言う結果に踊らされて彼女を見なかったのは誰の責任だ!
「ぁああ!ダメ!こないでぇ…」
どうしようも無い怒りに身を焼きながら、その勢いのまま小さな少女を抱きしめる。
狂いかねない激情で壊してしまわない様に、力強く、しかし繊細に。
駄々をこねる少女に背中を殴られながらただただ、自らの存在を少女に伝える。
「大丈夫だ、大丈夫だから…落ち着け、な?」
「ぁ…」
力強く打っていた衝撃が消え、白い少女とようやく視線が合う。
怯えきったその瞳が縋るようにこちらを覗き込み、握られていた拳が撫でるように背中に回される。
「落ち着いたな?大丈夫だ。私はいなくなったりしない。魚が観たけりゃ水族館なら付き合うし、星座探しなら毎晩だってやってやる。だから、な?安心しろ?」
「るなちゃん?ほんとに?」
不安そうな眼差しに安心させる様に微笑み、穏やかな気持ちが湧いてくる。
満月映る湖の中で確かに、力強く少女を抱きしめる。
「あぁ、お前のルナちゃんだ。なんならクランが初めて取った魚でも教えてやろうか?」
「覚えて、ないでしょ?」
「いんや、覚えてるさ。だって、私とやった金魚釣りが初めだったろ?」
不安げな瞳に光が宿り、弱々しく倒れた耳が恐る恐る起き上がる。
「じゃ、じゃあ2番目のさかなは?」
「近くの池の鯉だ、近所のおっさんに怒られた。」
「じゃあ、5番目は!」
「なんだったかな、確か…家族で行ったマス釣りか?」
「覚えてるんだ…」
「当たり前だろ?記憶力だけが取り柄なんだ。」
茶目っ気を出してウインクをしてやると柔らかく頬が緩む。
キラキラと光る瞳が真っ直ぐにこちらを覗き込む。
「ふふふ、すごい!」
「ん、やっと笑った。」
幼い少女の様に自然な笑い顔。表彰台の無理矢理なものでも、心配させないための固いものでもない。
柔らかい、穏やかな笑顔。
長らく見る事の無かった表情に、安心してこちらも笑顔になる。
「やっぱクランは笑顔が1番似合うよ。」
そして月の映る湖には小さな星々が、また星座を描き始めた。
読んでくださりありがとうございます。
こちらの小説は練習で書いた物でしたが、あの世界観ならこう言う事も起きかねないよなと考えつつ筆を取った所。想像以上に筆が乗り、投稿する事になりました。
テーマは先頭恐怖症、人望、魚、星。と言うめちゃくちゃな物でしたが、何とか形になったかなと思っています。
みなさんであればどんな展開にしましたか?
今後の参考にお聞かせいただければ幸いです。
それでは、またいずれお会いしましょう。|-°)ノシ
※2話以降の予定はありません