アニメ勢でネタバレ見たくない方はブラウザバック推奨。2期OPの拍手に殺意を持つ理由が分かる人向けなので……
呪術廻戦における懐玉・玉折編。
それは五条悟の学生時代の出来事である。
星漿体の護衛を当時の五条悟と呪詛師落ちする前の夏油傑の最強コンビが依頼されるお話である。
無論原作の流れを知っている紫水としては不干渉を貫くつもりであった。
そもそも紫水の目的は死滅回遊において、倒すべき三つの強敵にしか向いていない。
羂索、両面宿儺、一億人の呪力を孕んだ呪霊。
五条黒亡を集めたのは両面宿儺と五条悟の一騎討ちにさせることなく共に戦えるレベルの味方を作る為だ。
展開的には一騎討ちの方がワクワクするのは承知なのだが、世界存亡の危機に当事者になるとそんなこと言ってられないのである。
星漿体の同化一週間前に天元から呼び出されるまでは……
「正気か天元様?」
「ああ……君の考案したシステムを見た時から既に覚悟は出来ている。天内理子の護衛は五条悟と夏油傑に頼むつもりだ。だからこれは私のエゴなのだろう……君の力を貸して欲しい紫水」
天元から想定外の頼みに顔を引つらせながら紫水は協力せざるを得なかった。
星漿体の同化予定日であり、五条悟達の護衛三日目。
伏黒甚爾の襲撃により、天内理子は心臓を銃で撃ち抜かれて死亡し、五条悟と夏油傑は敗北。
五条悟は滅多刺しにされてるので本来ならば、死に至る重症なのだが、反転術式に目覚めれば回復してリベンジしに行くので問題ない。
盤星教にある天内理子の遺体の前に紫水は立っていた。既に盤星教の教祖を含めた上層部連中は既に始末済みである。
「甚爾に脳は狙うなと縛りを結んでおいて良かった。私の反転術式ならまだ治せる」
紫水は五条悟が産まれるまで神童と呼ばれた天才である。
それは水を操るだけの水原術式を拡張し水の性質を操れるようになったからではない。呪術におけるセンスと技術力がずば抜けて優れているからだ。
五条家にも他者へ反転術式を扱える呪術師達で構成された医療部隊を設立しているが、脳を除く内蔵器官まで治せる反転術式使いは五条白星の一人と五条紫水だけである。
「原作で虎杖悠仁が蘇生した時に疑問に思っていた。人は傷を治しただけでは生き返らない。魂と呼ばれる物が肉体から離れているから」
勿論、宿儺の器という例外の可能性はあるがある仮説に至り任務で数々の遺体を反転術式で治して仮説が正しいか確認した。
その結果、分かったのはこの世界において魂が肉体から離れるまでのタイムリミットである。
「それは24時間以内。つまり死んだ当日なら蘇生出来るってことだ」
五条悟は反転術式で自らの傷を再生後のリベンジマッチで伏黒甚爾を殺した後に天内理子の遺体がある筈の留置所に向かった。
そして目の前の光景に絶句する。
何せ甚爾から心臓を撃ち抜かれて即死した筈の天内理子が生きてソファに座ってマグカップに入ったココアをちびちびと飲んでおり、紫水も椅子に座って天内の方を向いていた。
「紫水どうしてここに……それにどうして天内は死んだ筈じゃ……」
「しくじったな若……俺は天元様からの依頼で万が一、天内が殺された時にすぐ蘇生が出来るようにここで待機していた」
「っ……」
紫水からの言葉に失望されたと思いショックを受ける悟。
五条悟は紫水の術式を見て生意気な態度を取ってたオスガキ時代にお仕置きの尻百叩きの刑を受けて以降は、修行や間違った行いを諌める以外では紫水から手厳しい言葉を向けられたことはない。
紫水は悟を若と敬意を払いつつも大人として導き支えて来たから、五条悟にとっては頼りになる大人として信頼していたし、慕ってもいたからだ。
紫水は顔を青褪めた悟を見て勘違いしてるなと思い、椅子から立ち上がり悟の前に立って訂正する。
「そんな捨てられた仔犬みたいな目をするな若」
「してねぇ……」
「してるよ。任務に絶対はないし、甚爾の方が上手だっただけだから失望とかはしてないさ」
「ん……」
紫水に頭を撫でられて目を細める悟。その光景を見た天内は絶句し、思わず呟く。
「お前……誰じゃ?」
「あ゛?」
悟の変貌っぷりに偽物を疑った天内にキレる悟。
生きてたのには素直に嬉しいが、護衛をした相手への態度にイラッと来た。かつて自分が紫水に行われたように、分からせが必要だと判断する悟。
それから夏油がやって来るまで天内と悟による醜い争いが続くのであった。
やって来た夏油にも紫水は事情を説明し、護衛の当事者達が集うことになる。
駆け付けた当初は悟が天内を抱き抱えて尻叩きをし、目の前で即死してた筈の天内が悲鳴を上げている光景に宇宙猫の表情になってたのは余談である。
因みに天内の世話掛かりである黒井は、五条黒亡の一人である扉間に回収させて医療部隊の手で治療済みなので今回の関係者は無事生存していることになる。
「俺は天元様との取引で天内が死ぬまで手を出さない代わりに死んだ後は蘇生して同化に協力する縛りを結んだ。つまり天内の同化はこの後行われることになる」
「待ってくれ紫水!天内は同化を望んでない!」
「当たり前だろう。今まで星漿体で同化を本気で望んでた奴はいない」
星漿体とは天元の延命の為の生贄であり、それを本心から望む人間など稀有だ。
「天内がせっかく助かったのに、死なせるなんて…」
「何を言っている。天内は死なないぞ」
「それは天元様の中で生き続けるということですか?」
夏油は紫水を睨むように厳しい目線を向けて言う。
かつて天内が同化しても天元様の中で生き続けると言ってたが、結界外で幽閉され続ける。
いや同化した時点で天内理子という人格は消滅するならば死んでいるのと変わらない筈だった。
「いや彼女に残された道は二択だ。天元様と同化し、自我を抹消されるか、天元様の術式と知識を継承し、二代目天元様として生きるかだ」
「「は?」」
その言葉に悟と夏油は呆けてしまうのだった。
「つまり天元様の仕組みをシステム化したから、理子ちゃんは術式と知識を継承すれば死なずに済むと……」
「私は元々天元様に何かあった際の代替え案を用意してた訳だが、結界内でやってたからか天元様にバレてね。縛りで天内理子が望む場合は継承を手伝う取引をした」
悟の言葉に紫水は答える。
日本国内のあらゆる結界の強化・行使出来る一人の呪術師がいれば運用出来るシステムを紫水は作り上げた。
死滅回遊で天元様が敵の手に落ち、呪霊となった際に元に戻せるなとと楽観視していないからこそ、セカンドプランとして五条黒亡のメンバー集めの傍らで五条白星のメンバー達と共に作り上げていた。
それを結界内だからと詳細を把握した天元様に呼び出されて取引を持ち掛けられたのである。
「皮肉な話さ。彼女はそれしか手段が無かったから同化を許容していたが、それ以外の手段があると知ってしまったことで犠牲にし続ける現状を許容出来なくなった。だから天内に不死の術式と知識を継承させて自分が死ぬことになることを受け入れさせてしまった」
「彼女?」
「ん?天元は男じゃなくて女性だよ。本人はババアと言ってたけどね」
「「ハァ!?」」
不死の存在から男と思ってた悟と夏油はまたもや驚愕する。
「だけど、どうして理子ちゃんが継承する必要があるんです。システムがあるならば他の者でも動かせるんでしょう?」
「システムを動かすだけなら問題ないが、試運転が上手く行かなかった場合のサブで天元様に匹敵する結界術の使い手が保険として必要になる。本来ならば後継者に結界術を師事させてから不死の術式を継承させる予定だったが、試運転もしてない状態で天元様の代わりを探す時間も猶予もない。
だから手っ取り早く同化による継承で術式と知識のみを継承させる」
「それが二代目天元様と言うわけか……」
天内が同化により天元様に取り込まれるのではなく、天元様が天内に不死の術式と結界術などの呪術師の知識を継承させる同化を行うのだ。
「逆にリスクもある。天元様の同化が認められたのは彼女が人格者だったからだ。継承する人間全員が健全である保証はないし、天元様以外でも代用が効くようになってしまったことは付け入る隙にもなる」
そう天元様で無くても結界の維持が出来るなら悪用もしやすくなる。天元様が絶対必要で無くなったことはテロを行った後の悪用も可能である。
五条悟や夏油傑は知る由もないが、羂索の行う死滅回遊において、一億の呪力を帯びた呪霊を作るのに、天元様以外でも代用可能という選択肢を与えてしまっているのである。
「天元様に感謝すると良い。システムが正常に作動し、後継者を作れたならば天内が薨星宮に居続ける必要はない。後継者を作るまで十数年位は掛かるかもしれないが、逆に言えば引退可能なのさ……」
「本当なの?……皆とまた会えるの?」
「ああ。というか天元様の知識を継承すれば式神を通して日本の結界内なら休みの日位なら会うことは出来るぞ」
「!?」
紫水の言葉で天内が望んでいた皆と一緒にいたいという願いが叶うことを知って涙をボロボロ流す。
泣いている彼女を慰める悟と夏油の傍らで紫水は天元様とのやり取りを思い出していた。
『同化を始めたら天元様は不死の術式を失い老化で死ぬことになる。何か言い残すことはあるか?』
『君の行動方針を見るに一度も会ったことのない羂索を想定して動いているね?』
『そうだよ。これから先に起こる羂索が起こす呪術テロに備えて準備をしている』
『事前に防ごうとは思わなかったのかね?』
『それも考えたが、防いだ場合は羂索が表舞台に出てこなくなり、仕留められない。数百年先延ばしにするだけで根本的な解決には至らない』
『羂索を表舞台に引きずり出す為に犠牲が出ても行うつもりなのか?』
『そうだ。俺を含めた五条黒亡は、刺し違えてでも羂索とそれに比類する巨悪を祓う目的で集めた。今ではなく未来に羂索を残さないことが最優先だ』
『ならば私は思い残すことはない。羂索はそれ位の覚悟が無ければしぶとく生き残るだろうからね』
『……最後くらい、呪いの言葉を吐けよ』
『今更だな。私は人を呪いたくて呪術師になったのではなく、人を守りたくて呪術師になったのだからないよ』
天元様は死ぬことになるというのに最後まで後世に呪いの言葉を残さない人格者だったのである。
「彼女を現世に縛り付けてたのは呪霊ではなく、俺達か……」
同化をさせてまで生き永らせて追い詰めてた事実に紫水は悲しそうに呟くのだった。
後日、元星漿体だったクラスメイトである九十九からどうして事前に話さなかったんだと五条家に殴り込みされたのは余談である。
原作との相違点
in天元の術式と知識を継承した二代目天元様こと天内理子
out天元様
因みにシステム化したせいで天元様の持つ結界の維持は天元である必要は無くなった。
つまり羂索の計画は天元様以外の誰でもシステムに同化させて人柱にすれば実行可能ということに……
天内理子
…二代目天元様になって生存することに。流石に結界術の継承したばかりでまだ経験が浅かったこともあり、学校は転校扱いで休みの日に式神を通して友人達と遊んだりはしていた様である。
因みに二代目天元様にならずに、非術師として地元で暮らして五条家の庇護下から外れた場合、一年後に呪詛師墜ちした夏油に猿と侮蔑されながら黒井共々殺されてた。
回避するには五条家で居候という形で庇護下に入れば夏油も悟や紫水率いる五条黒亡相手には敵わないので天内抹殺を断念せざるを得なかった。
しかし皆と一緒にいたいと願ったら間違いなく地元に戻るのが最善だし星漿体の価値も喪失した一般人を庇護する意味がないので、当主じゃない悟の一存で保護も不可能であり五条家の庇護下に置かれることは殆どない。
某リゼロの死に戻りレベルの奇跡でも起こさないと五条家に居候するなど難易度がルナティックである。
黒井美里
…本編では台詞無かったが、五条白星に回収され無事生存。二代目天元様になった天内の世話係として側仕えすることになる。
理子の元で働けることに安堵し、天元様のお世話係という最も安全な場所で働ける勝ち組ルートに入る。
因みに天内非術師ルートだと死亡率驚異の99%の地雷のある場所でコサックダンス踊らされるレベルの負け組ルートに入る。
特に夏油に名前を覚えられてる非術師の知人なので天内から離れようが絶対に居場所を割られて殺される。
あの弱者生存で自分達にも優しかった人が、猿呼ばわりして侮蔑の視線を向けてくるサイコパスになった事実に悲しみながら呪霊に踊り喰いされる未来が過ぎったが、人の心が無いのでボツになった。
天元様
…本編ではシステム化したことで役目を終えて、天内に術式と知識を継承して命を終えた人格者。
原作ではどんな思惑があって生き長らえてたのか、不明だが、本編では人を呪うより助けたいという願いで呪術師になった人格者という設定。同化という人柱制度にも内心胸を痛めてた。
だから紫水がシステム化を作ってたのを知って、糸が切れたように自身の解放を望んでしまった。
因みに紫水は彼女が追い詰められてたと知って同情から今回の同化継承計画を止めなかったが、デメリットの方がデカ過ぎて反対であった。
獄門疆・裏とか、死滅回遊で天使の存在を虎杖達に教えるとか、羂索vs九十九戦で領域展開の解体サポートを行うなどが天内では役不足で行えない可能性があるから。
夏油傑
…紫水が天内を蘇生したので、玉折編における天内の遺体に向けての拍手トラウマイベントを回避した。
しかし腐った蜜柑こと呪術界の上層部や呪霊操術を狙う
羂索が手を緩めるわけが無いので、似たようなトラウマイベントを用意され、呪詛師落ちは避けられなかった。
多分コロシアムみたいな感じで非術師の権力者の見世物として術式持った孤児同士で戦わせて拍手する非人道的な物を見せ付けられると思われる。
天内の非術師ルートだと呪詛師堕ちした際に決別の為に家族と同レベルで天内達は抹殺対象になる為、夏油に太刀打ち出来る特級術師が駆けつけないと何処までも追い掛けて殺しに来ていた。
自分で助けておいて一年後に殺しに来るとか『人の心は無いんか?』と言われても仕方がないと思う。
因みに紫水は天内を助けたが、夏油が生きてると羂索が表舞台に出て来ず行方を暗ますので手を差し伸べたりはしなかった。
次回予告『お前もミゲルにならないか?』