ここから元が今年更新な、うちの子+αで行くLoG、あるいはシモキタ激動編。はたまたほんのコネ作り。
そんな訳でしばらく東京単身赴任の巻。なお超絶後回しになってる模様(本来の舞台版だとあんまりに展開がマッハ過ぎて入学直後だし、フルブルでもアールヴヘイムが新潟行く直前だしで5月末頃?)
「あー、なんですこの状況?」
レギオンとしては隊長と副隊長である梨璃ちゃんや夢結のCHARMが派手に壊れたこともあって、新潟帰り一週間ちょっとで予備機すらほとんど直ってないとCHARMが壊滅状態なアールヴヘイム共々うちの隊も出撃当番からはしばらく外されることになり、ならたまの休みだし東京にでも行こうかと外出届けを出したところ、何故か生徒会直々に呼び出しを食らった。というのが今の有り様。
「お時間を頂いてすみません雪華様。特に何かをやらかした、という話ではないのでご安心を」
「いやまあ、それなら今頃徹夜明けテンションな百由辺りに首根っこひっ掴まれてるんだろうけど……じゃあなんなんです、祀さん?」
そんな私と生徒会室で対面しているのは祀さん──状況的に今の彼女は同盟レギオンの隊長や夢結のルームメイトではなく、生徒会の一員として扱うべきだろう。ともかく彼女はファイルから取り出した私の外出届を机に置き、こちらに問い掛けてくる。
「雪華様は明日東京へ行かれるとのことですが、その目的は?」
他の内容には一応先に横浜で修理に出してたCHARMの受け取りもあったりはするけど……確認するのは東京の方だけ、ね。
「目的って言われても、まあ書いてある通りに買い物とか、ついでに何か食べるか……程度で普通の休日を送る予定ですけど」
「そうですか。でしたら下北沢の近辺にはなるべく近寄らないよう
「……
下北沢──現地のガーデンであるルド女が防衛担当であるそこに近寄るな。という話は百合ヶ丘の場合だと縄張り争いか何かというよりそのバックにいる組織、新宿御苑にあるガーデン近くにラボを構えるゲヘナへの警戒を意味するのだろう。
「はい、あくまでも忠告です。不確定な情報も多いので」
「……それ、あなたのルームメイトには?」
ジャブというよりいきなり本題のボディーブローだけど、いくら代行といえど流石に生徒会長、この程度では動じる様子は見られない。
そんなことをわざわざ聞いた理由としては、下北沢や新宿を守るルド女といえば夢結たちが御台場迎撃戦に参加した時の戦友が数名在籍しているはずのガーデンだからだ。それを実質的に見捨てろという話を、わざわざしているとも思わないけど。
「伝えるようには言われておりません……それに今の夢結さんには、他所に気を回している余裕なんてないでしょう?」
「否定は……できないか。私としてもまだ危なっかしいと思うんで、近頃のレストアみたいなリリィの神経を意図的に逆撫でしてくるようなのがまた出てくるとしたら……」
極論、何をしてもいいのであれば強引に止めることだけなら可能だろうけど、ネストから直行でヒュージが一体だけなこれまでのような状況ならばともかく、わざわざこんなことを言われる以上確実に敵味方入り乱れての乱戦になるだろう中へ『ルナティックトランサー』がいつ暴発するかも分からない上に、今月いっぱいは無理しないようにと校医の先生から宣告されている夢結を連れ込むなど、流石に自殺行為が過ぎる。
それに、仮に夢結が肩の傷を押してでも行くと言ったなら確実にレギオン単位での出撃になるんだろうけど、録な準備もできないというにこういうキナ臭い話に梨璃ちゃんたち後輩を何度も巻き込むのも、正直不本意だ。
──だから、この件は私で止めておく以外の道はない。それだけの話。
「ま、そういうことなら仮にも上級生として反対はできないか。お互い、損な役回りですね?」
「すぐに慣れますよ、こういうのにも」
そこで微笑まれてもなぁ、生徒会のお役目だからって無理してない? とまで口出しできるほど私は彼女と親しくはないのだから、下手に踏み込まないのも弁えか。
◇◇◇
それが昨日──夢結のダインスレイフを取り戻した戦いから見て翌日の夕方での出来事、今私は主任に送ってたライザーを受け取りに先月ぶりな烏丸重工の横浜支社へ来ており、終わったら即座に東京へ向かうからほとんど通りすがる感じにはなるけど、研究室で機体チェックの待ち時間に祀さんから聞いた話を主任に伝えてみると返ってくるのはなんとも言えないような反応。
「まあ、東京なんて防衛のあれこれに基本ゲヘナが絡んでますからねぇ。そんな中でいくら御三家とはいえ海の上な御台場だけが反ゲヘナとか言ってても、正直お話にならないと言いますか」
「その上他の御三家以外にもエレンスゲ辺りがラボ付きなんでしょ? この国もうダメじゃん」
首都でさえこの様なんだから、そりゃあ裏の事情を知る人間の間では政府がリリィの敵とすら言われる訳で。腐敗ここに極まれりってか。
「それでも表向きはそこまで混乱させてないんですから、隠蔽の手腕だけは一人前ってことなんですけど」
「だったら少しでもその労力を他に回してくれませんかねぇ。陥落地域や
だいたい国単位で違法行為に加担しておいて、何処が平和なんだか。私利私欲のまま切り刻んだ屍の上に成り立つそれなぞ、古来より綻びが生まれなかった試しはなかろうて。
「で、そこら辺どうなんです? こないだの件といい卒業後もネタは集めてるんでしょうけど」
「相手は世界規模の複合企業ですからねぇ、いくらゲヘナのやってることが計画性の欠片もない研究とは名ばかりの行き当たりばったりだらけでも、組織としてあまりにも大きすぎて極東の一島国でのスキャンダル程度でどうにかなるかって言うと、正直微妙なとこです。とはいえ、そんな逃げ場もない政府のお偉方の方にはそろそろツケを払わせてやれそうですけど」
「そこから少しでも切り崩せたら、かぁ」
めちゃくちゃな言い方になる気持ちも分かるくらい酷い話だけど、国やゲヘナが多数派を気取っている以上そんな土台があろうと関係ない程のダメージを与えられないのなら向こうの立場は揺るがない、結局今まで通りに揉み消されて終わりなのだから。
故に仕掛けるなら一撃必殺。お偉方が保身に走ることも許されないような致命傷を与えて、一息に押し潰すしかない──物理的に『消す』のが一番楽で確実だと思えてしまうから、私には向いてない領域になるけど。
「政府さえ関与しないのなら向こうも民間、こっちも民間、後ろ楯の無くなったところをひとつひとつ潰して行けます。その間も少しずつ味方を増やして、ゲヘナその物が人類の敵だと……ヒュージと同列にまで人々の認識を持っていく、それが私たちの定めた勝利条件ですから」
「その間、ヒュージやそれを使うゲヘナに全部壊されないようにするのが私たち現役組の仕事かぁ。ま、やれるだけはやりますよ」
「なので東京でドタバタに巻き込まれたら、なるべくデータ取って来てくださいねー♪」
「おいおい」
その中でヒュージの規則性なんかがあれば連鎖的に国なりゲヘナなりの関与まで引っ張って行けるんだろうけども、なんで巻き込まれる前提なのか……やだよ折角のぶらり一人旅なのに。
ともかく呆れている間にもやることはやっていたようで、主任は作業台から離れて眼鏡の上から付けていたゴーグルを外している。
「とりあえず調整は終わりましたよ。一度形さえ作ってしまえば後は基本量産機からのパーツ流用で済みますからね、大量生産万歳ってもんです」
「……ったく、ともかくありがとうございました。備えにはしときますよ」
やれやれとなりながらも受け取ったライザーをケースに納めて立ち上がると、背中側から最後に報告が。
「あ、雪華ちゃん雪華ちゃん。予備のリングカートリッジは百合ヶ丘にも送っておきますねー」
「ういうい」
B型兵装用のリングカートリッジの手持ちは今左手に着けているのと懐にひとつ。とりあえず巻き込まれたとしても最悪これでなんとかなるとは思いたいけど、何事も無いのが一番とか言ってる時に限って厄介事ってのは来る物だからなぁ。
◆◆◆
「交戦区域に現着、とはいえ酷いなぁ」
そして案の定こうなってしまった以上半ば自棄になりながら誰に伝えるでもなく呟くけど、瓦礫の山と言って差し支えのない有り様となっているここ東京は下北沢ではそこかしこから銃声や破壊音、あるいはレーザーの発射音やヒュージの断末魔やらが聞こえる。なんというか阿鼻叫喚だ。
──ちなみに飛び入り参加への交戦許可に関しては、現地のガーデンに繋いだところ通信に出た声が無駄にデカイ
「その制服……もしかして百合ヶ丘女学院の方ですか?」
「ん、そうだけど?」
なんて状況を整理していると下北沢の守備担当なルド女──ちゃんと呼ぶなら〈私立ルドビコ女学院〉のコルセットが目立つ制服を着て、そこの生徒らしくカービンタイプのCHARMを持ち、頭には多分ヒュージサーチャー─読んで字の如くな装置で、通信機器に備えられたりもするけどアクセサリーの一環として身に付けるタイプとか色々バリエーションはある。百合ヶ丘だと主に亜羅椰ちゃん辺りが着けてたし、楓さんもたまに髪飾り型のを持ち出すとかなんとか聞いた─か何かだろう、猫耳っぽいのを付けたピンク髪のリリィに声をかけられた。
いきなり趣味的なのが出てきたなと思うが、ともかく現地の子なら話を聞いてみようかと近寄ると、おもむろにCHARMを振り下ろしてくる。
「は?」
「急ですみませんが、私とお手合わせ願えませんか?」
私が身体を捻って避けたことにより深々と地面に刃の食い込んだグングニル・カービンを「よいしょ」と抜き、改めて切っ先を向けられてのそんな台詞。
なるほどバトルジャンキー……にしてはそこまでがっついた殺気はない。であれば救援というのならお前の力を見せてみろ的な、東京ないしルド女流の挨拶とでもいうのか。流石デュエル戦術の大手、なのかなぁ?
「とう」
なんて考える間にもグングニル・カービンをブンブン振り回して猫耳リリィが迫ってくるが、この程度ならCHARMを抜くまでもなく体捌きとシールドだけでいなせる。レアスキルもなしとか流石にこれで本気とも思えないし、やはりここでやれる程の腕前か見るつもりなのだろうか?
「百合ヶ丘の方だけあってやりますねー。けど、反撃してこないとお手合わせにならないじゃないですか!」
「そうは言われてもねぇ、状況分かってる?」
両手での分かりやすい唐竹割りを避けた勢いのまま懐に入り、いつぞやの天葉のようにカービンのポール部分を掴んで動きを止める。流石我が国の首都東京、なんかこう濃い──なんて思っていると、私たち二人を覆うように上から影が差す。待って、この音はCHARMの変け「え~いっ」
「っと!」
「な、なに!?」
慌てて目の前の彼女を突き飛ばしてそのまま横に転がると、それまで私たちのいた位置へ既にボロボロだったアスファルトの地面をド派手に砕きながら、かなり大型な斧のようなCHARMと少し遅れてその傍らに持ち主だろう灰色の髪をした大分小柄なリリィが降ってくる。いや、上から下にブン投げたにしても威力おかしくない?
「あはははは! こんなところでなにしてるの? らんもまーぜてっ!」
「まさか、バーサーク状態?」
そのリリィが地面に刺さる自身の身の丈以上な大きさのCHARMを無邪気に引き抜き、緩そうな構えから急な突撃をして分厚い刃を振り下ろして来たのを咄嗟に展開した防御フィールドで弾いての感想がそうなる。
この子の異様な動きと見た目以上に幼く見える言動も、
「よかったね。この子なら喜んでお手合わせ受けてくれそうだけど?」
「流石に、『ルナティックトランサー』発動してる子の相手はちょっと……どうしましょうか?」
皮肉を投げると背中に庇う形になったなんちゃって猫耳の子も同じ答えに行き着いたようで、思ったよりは冷静な判断も出来るようなら何より。それを最初からしてくれてたらなぁとは、高望みだろうか。
「しゃーない、こうなりゃ気絶させてでも……」
「来ないの? じゃあらんから「
私がやむを得ず背中に背負うブリューナクを抜こうとした時、藍と呼ばれた子の長すぎてダボってる袖を掴んで止めたのは、彼女と同じ白いジャケットの制服を着たいかにも生真面目そうな髪も瞳も
ともかく彼女の名前を呼んでいて制服もお揃いなのだから同じレギオン、ないしガーデンの仲間なんだろう。
「んー、かーずはー! おーそーい!」
「藍が出過ぎてるだけだって……あぁ、この子が何か失礼をしていたみたいで。すみませんでした! ほら藍も」
「ごめんなさーい」
いくら仲間に言われたとはいえ、さっきまでの様子が嘘のように『かずは』と呼ばれた子と揃ってあっさり頭を下げられたのには面食らうけど、最近見た面々が面々だから忘れがちだけど本来ルナティックトランサーとは個人差こそあれどバーサーク状態をある程度制御下に置いているが故に、レアスキルという枠組みに括れるのだ。
実際この藍ちゃんとやらも少し前の夢結と違い敵味方の見境なく襲ってきた、というよりはこんなところで私たちがじゃれ合っているようだから気になって飛び込んで来ただけ。という風に見えなくもなかったし。
「いやまあ、悪気がないんならいいんじゃないかな。うん」
「助かります。それでおふたりは……ルドビコ女学院と、鎌倉の百合ヶ丘女学院のリリィとお見受けしますが」
「はい、ですがガーデンの仲間とはぐれてしまって……」
んー? にしては私に意気揚々と挑んできた気がするけど、物は言いようか。
「まあいいや。こっちはちょうど一人で東京まで出掛けてた通りすがりだから、レギオンの子たちはいないけど」
「なるほど……挨拶が遅れました、私は〈エレンスゲ女学園〉一年生、LG〈ヘルヴォル〉リーダーの
「おなじく、らんも一年の
「……ヘルヴォルって、
ヘルヴォル──それは確か北欧神話のヴァルキリーが一人『楯の乙女』の名を冠するエレンスゲのトップレギオンとして、代々受け継がれている名前のはずだ。良くも悪くも有名な。
しかし今年度の彼女らは以前の物騒な噂ばかりなそれから『変なリリィの集まり』って噂にシフトしたとも聞くけど……こんないかにも「学級委員長やってまーす」ってタイプな子がリーダーでそんなになるって、残りのメンバーはどれだけ濃いのだろうか?
……いや、ダボ袖アホ毛のバーサークヨージョーだけでも十分個性的だけどさ。
「あの、も何もエレンスゲのヘルヴォルは我々だけのはずですが? それとも、あなたが仰っているのは以前の──」
「つまりはリーダーのあなたが、序列1位……でもデータは……まあ、アー……もあの人も、白……も来てないし……少しくらい好きにしても……か」
「ん、ちょっと君またぁ? あー、一葉ちゃんだっけ。悪いけどこの子そういう繊細なんじゃなくて」
一葉ちゃんの返事を聞いた通り魔リリィの子の様子がおかしい。具体的には聞き取りづらいくらいの小声で何かぶつぶつ言いながら、
ともかく私が止める間も無くグングニル・カービンを振りかざし一葉ちゃん目掛けて飛び掛かる猫耳ちゃんだが、そこへ“両手に持つ”CHARMの片方を割り込ませて、ルド女の制服の上へそこのレギオンの物と思われるジャケットを羽織った、青いポニーテールのリリィが現れる。
「
へぇ、これまた結構な有名人が出てきた。
ついでに言うとその縁で聖のシルトな汐里ちゃんに円環の御手持ちの先輩として戦い方を教えたとかなんとか。実際彼女も汐里ちゃん同様メインの攻撃機を右手に持ち、左手には防御用のシャルルマーニュといったバランスタイプのCHARM構成だし。
……でも、汐里ちゃんってシャルルマーニュで直接攻撃することの方が防ぐのに使うより余裕で多かった気がするんだけど、その辺りもお師匠譲りなんだろうか?
ともかく猫耳ちゃんのお手合わせを防ぎ、乱入に驚いたまま動きを止めるその子の様子を見て幸恵もまた彼女のグングニル・カービンを弾きながら専用機なのだろう見慣れないCHARMを下げ──ん、大分フリップ利かせるね? なんにせよ、同じガーデンの先輩として色々言いたいこともあるようで表情も大分険しい。
「確か一年生の……
「はい! あの幸恵様に覚えて頂けてるなんて光栄です!」
「それは、いいのだけど……あなたそうやって誰彼構わず手合わせをお願いするの、お止めなさい。この間も柳都の麻嶺さんに「誰彼構わずではありません。私はちゃんと、私が相応に興味を持った相手にしか!」
「はは。興味、ね……」
そしてもう一人、幸恵と同じジャケットで丸眼鏡に三つ編みのおさげな子もこっちに来ながら胡散臭そうに琴陽という名前らしい猫耳の後輩をじとーっと見ているが、先輩から叱られているはずな彼女の様子はどこ吹く風な感じだ。見掛けによらず、随分と図太い神経をしていらっしゃる。
「なになにー、なんの騒ぎよ?」
「一葉と藍、見付けた」
「どうやら揉めているようですが……」
なんてルド女組の様子に気を取られていると、反対側から今度はエレンスゲの制服を着た三人のリリィがぞろぞろと駆けてくる。こっちは一葉ちゃんたちのお仲間だろうか? こんな時代だってのにこの人口密度、流石首都だなぁと謎な思考になってしまう。
「
「かーずーはー。ルナトラって突撃した藍追っかけんのはいいけど、そのままあんたもはぐれちゃダメでしょー?」
「ミイラ取りが、ミイラになってる」
「みいらみいらー」
なるほど……なるほど? 一年生の一葉ちゃんに様付けされていることから三人とも上級生なんだろうけど……なんか藍ちゃんの反応も含めて大分和気藹々としている。
エレンスゲってもっとこうお堅いというか冷たいイメージなんだけど、「任務の達成以外には興味ありません」的な。
「ところで一葉ちゃん、そちらの皆さんは?」
「あ、はい。ルドビコと百合ヶ丘の──」
その様子を怪訝そうに見ていたからか、向こうからの視線もこの中で唯一東京組ではない制服な私の方へ。
「ふーん、百合ヶ丘ねぇ? なんでまた東京に?」
「さーて、どっから話したもんかな……」
ともかくこれで少しは落ち着けたろうから、私が東京に来てからのあれこれを話すとしようか。
◇◇◇
だいたい1時間くらい前。横浜から電車に乗って東京へ着いた私は、普段の会話や二水ちゃん出典な情報を頼りに隊の皆や知り合いの面々が好きそうな物を一通り買ってから近場のコインロッカーへ預けると、折角だし自分用にも何か買うかとそこら辺の店を物色していた。
「にしてもこんなご時世だってのに、休日の首都は流石に人多いね」
それでもヒュージのヒの字もない頃と比べたら、人の数は物理的に減ってはいるのだろうけど。
なんて生まれる前に想いを馳せる……という程でもないけど少しセンチメンタルになっていると私同様CHARMケースを背負った、蒼い髪を左でサイドテールに結んだリリィに後ろからぶつかってしまう。
「おっとっと。ごめん、ちょっと前見てなかった」
「あ、わたしは平気だけど……ところでその制服、あなた百合ヶ丘のリリィよね?」
そう聞いてくる彼女の服装を観察すると頭に着けたよく見るタイプのヒュージサーチャーはともかく、この制服はうちと同じ鎌倉にある〈
「パッと見で分かるって、知り合いでもいるの?」
「うん。有名人だから聞いたことあるとは思うんだけど、なんとメルクリウスの中等部で一緒だった楓・J・ヌーベルが!」
なんとまあ、こんなところまで来てその名前を聞くとは……
「あれ、楓さんの知り合い? やっぱ世間って狭いなぁ。東京はこんなにも広いのに」
「ん、その反応ってまさか」
「なんと奇遇にも、あたしってばその楓さんと同じレギオンだからねー」
となると彼女も一年になる訳なんだけど……まあ別に他所のガーデン同士だし、そこまで気にしないでいいか。
「へー……ねえねえ、じゃあ最近の楓ってどうなの?」
「どう、かぁ。まあうちのレギオンの司令塔として周りのことよく見てる、んじゃないかなぁ」
確かに楓さんとは彼女が入学してきてすぐ知り合ったとはいえ、学年の違いもあって顔を合わせる時間が本格的に増えたのはレギオンメンバーを集め出した先月の途中からだしで、中学からの知り合い以上のことは言えそうになくてそんな当たり障りのない答えになってしまう。
「もう、そういうのはいいってば。普段の方は?」
「いや、連絡くらい取ってんじゃないの?」
「そりゃあ取ってるけど……ほら、自分じゃ分かんないこともあるだろうし」
普段、普段かぁ……『うちのリーダーのお尻追ってるよ、比喩でも直喩でも』なんて、素直に言っていいものか。でも楓さんの女癖の悪さって百合ヶ丘に来てからじゃなくて前々からみたいだし、この子も知ってんのかなぁ?
「まあ、仲の良い友達……うん、友達と三人でいることが多いかな。てか名乗ってなかったね、見ての通り百合ヶ丘の黒紅雪華だよ、よろしく」
「ふーん、友達ねぇ? あ、こっちも見ての通り相模女子の
あー、格好で微妙に判断付かなかったけど確か異名は〈
とはいえこうしてガーデンは違えど年頃のリリィが二人揃ったのだからとどこかスターなカフェでも探そうとしたら、葵ちゃんのヒュージサーチャーが震えたと思えば周囲に鳴り響くサイレン音によって、抗えない現実へ引き戻される。
「「ヒュージ警報!?」」
『下北沢に発生したケイブより出現したヒュージの一部が周囲へ侵攻しつつあります、市民の皆様は直ちに指定の避難場所へ避難して下さい。また、付近のリリィは直ちにヒュージの迎撃を──』
街頭のスピーカーからはそのまま何度も市民に避難を促すアナウンスと近場のリリィにヒュージを迎撃せよと命じる内容が繰り返し流されて、辺りは大騒ぎになる。
「下北沢って、ルド女は何やってんのよ!」
「最近あっちの方はケイブがひっきりなしに発生してるって聞くぞ!」
「なんだよそれ、エリアディフェンスはどうなってんだ!」
「あっ、リリィのお姉ちゃんだ。がんばってー」
そうなると当然道行く人々は我先にと下北沢方面から離れるよう駆け出す訳で、とりあえず親に抱き抱えられながらこっちに手を振る小学生くらいの小さい子には応援ありがとうと手を振り返しておこう。
「下北沢の辺りは今キナ臭いから学院出る前になるべく近寄るなー……とは聞いてたんだけど、いつの間にかご近所だったか。流石は魔都東京」
「そんな呼び方されてたっけ? ともかく、まさか目の前で誰かが困ってて黙って見てるようなリリィが、あの楓の仲間な訳ないわよね?」
「まあ、ね。CHARM持ってきてるのも万一の時はこうするつもりだったからだし……仕方ない、行きますか」
特に示し合わせたでもなく二人揃って人の波に逆らって駆け出すと、背負ったケースをアーマーとして展開しライザーとブリューナクを装着、ついでに整備返りなグングニル・カービンも二機腰のアーマーに。さて葵ちゃんの機体は──って。
「うっわ、それ『トリグラフ』じゃん。いいなー」
それは以前私も使っていたアステリオンでお馴染み〈ヒヒイロカネインターナショナル〉開発の第3世代CHARM。親機の方がテイザーガン──ワイヤー式のスタンガンの機能を持つ二挺拳銃、合体状態の長刀、さらにエネルギーブレードを展開すれば双剣やダブルブレードとも扱えると分離・合体機構が非常にロマン溢れる先行量産段階の新型だ。
今年度になってから何度か申請はしてるんだけども、国内でもテスターが非常に少なく、まだ正式採用型もないからかいつまでも予定は未定である。そういえば、
「いや、専用機? 持ちに羨ましがられても……というかもしかしなくても、雪華ってレアスキルは円環の御手?」
「ま、こうもゴテゴテ背負ってれば嫌でも分かるよね。とりあえずどうする?」
下北沢の方から流れて来たと思われるヒュージは、たどり着いた交差点の先で二方向に別れている。つまりこの場合はどっちがどっちをやるか、だけど。
「じゃあわたしが右引き受けるから、雪華は左よろしく!」
「オーライ、出る!」
葵ちゃんと軽くハイタッチしてすれ違いながら引き抜いたブリューナクを振りかぶって手近なスモール級から両断、そのまま突っ込んでシールドのレーザーバルカンをばらまきながら群れの注意を引く。
「ほーらほら、遊んでやりますよっと!」
流石に全てを引き付けられた訳ではないけど、無視した連中を背中から狙おうとカービンを抜こうと右手を伸ばす前に何度もCHARMの発砲音が聞こえ、私に構わず進もうとしたヒュージは撃破された。
「あれは……」
そっちの方を見れば東京のガーデンからの救援だろうか、百合ヶ丘じゃそこまで見掛けない型のCHARMを持ったリリィの一団が見える。
「あれー、なんかあんまり見ない制服の人いるよ?」
「──っ! ま、まさかあの制服は鎌倉の百合ヶ丘女学院の!?」
「えっ、それって郭神琳のいる……あのー、あなたはいったい?」
「単に居合わせただけの一般リリィだよ、お構い無く!」
自分で言っておいてあれだけど、一般リリィとはなんなのか。
ともかくその遠目でも分かる程真っ赤な制服のリリィたちはそれなりに人数がいるようなので、この場は任せていいなと判断しシールドの先にソードガンを付けた状態でレーザーブレードを起動、回転しながら突撃して届く範囲のスモール級をまとめて薙ぎ払うとそのままツインバスターキャノンに切り替え、ブリューナクとの一斉砲撃で前方に残るヒュージの群れを吹き飛ばす。
「じゃ、もう一人この辺りで戦ってる子いるからよろしく!」
こうなりゃ毒を食らわば皿まで、大元な下北沢のケイブを叩くしかあるまいて。そういう訳で学院からの忠告なんぞ知らんなと、私は何も考えずに駆け出していた。
「あら、行っちゃったわね」
「
「あの人が言うように誰かが戦っているみたいね。皆、援護しましょう!」
後ろから聞こえる声からして彼女たちは問題なくそっちの対応に回ってくれるようだし、こちらはこちらでやらせてもらおうとアンカーを適当な信号機に打ち込み、そこを起点に跳んで一気に突き進む。