アサルトリリィ~円環の赫星~   作:ですティニー

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前回のあらすじ:呼び出しと悪巧みは続くよとお手合わせとちへどとぞろぞろと。
彼女色々と出歩いてるみたいだし、こういう遭遇もありかなと。そして+αの元は居残りメンバーでしたとさ、縁作りとて出し惜しみはなしだ。アサルトしようじゃないの!
なおまだ遭遇編。人数が…人数が多い…!


惹き合う下北沢

 ともかくここに来るまでのあらましは、多少はしょりつつもヘルヴォルの皆に共有した。一応葵ちゃんには『先行くね』とは連絡しといたし、あの程度六人がかりならなんとかなるでしょう。

 

「そんな感じで色々無視して突っ込んできたのが、こちらになりますよっと」

 

「なるほど。結構無鉄砲?」

 

「相模の子と赤い制服の……神庭(かんば)の皆さんかしら?」

 

「ていうか楓って、こないだ中等部のレギオン予備隊格付けで世界一取ってたグランギニョル社総帥令嬢の楓・J・ヌーベル? そんな有名人と知り合いって、おたく何者なのさ?」

 

 まあ聞かれたからには答えてやるのが世の情けだと、エレンスゲの先輩組の前で少し仰々しく咳払いしてから名乗ろうか。

 

「コホン。私立百合ヶ丘女学院三年生、LGラーズグリーズこと一柳隊所属の、黒紅雪華だよ。ガーデンの方針上この場限りの付き合いかもしれないけど、とりあえずはよろしく?」

 

 そう、この場にいるリリィで私以外の八人の所属であるルド女とエレンスゲは共にいわゆる親ゲヘナ主義のガーデンで、私の所属する反ゲヘナ主義な百合ヶ丘とは正反対の立場になる。

 

 まあ所属ってだけで、そこの思想にまでは染まっていないリリィと戦場で会うくらいでとやかく言われるのかは知らないけど。

 ……てかそれだけでダメなら、ルド女や同じ御三家のイルマからも結構な人数のいた御台場迎撃戦に参加してた、初代アールヴヘイム他多数の時点でアウトか。

 

 ともかく所属も含めて名乗りはしたのだから、皮肉の方にも納得したような反応が返ってくる。

 

「まあ仕方ないよねー、ウチって『あの』エレンスゲだし……え、待って待って待って。三年? マジ?」

 

「あー、最上級生らしくないとはよく言われるし、別に態度とか気にしなくていいよ? あたしも気にしな「一葉!」ん?」

 

 そんな彼女はどうやら二年生のようでタメ口だった態度を気にしているようだけど、私が構わないと返している途中一葉ちゃんを呼ぶ声の後に複数人の足音が聞こえると振り向けば、噂をすればと言うべきか先程の赤い制服の五人組。その先頭を走る、うっすらとした紫色の長髪な子は確か──なんて記憶を探っていると、彼女に一葉ちゃんが嬉しそうに駆け寄っていた。

 

「叶星様! やはり〈グラン・エプレ〉もこちらに来られたのですね!」

 

「ええ。ここまで事態が悪化したとなるともう東京全体の問題だもの、協力を惜しむ理由なんてないわ」

 

「そうですね、我々も同じ考えで……雪華様、こちらの方は〈神庭女子藝術高校(かんばじょしげいじゅつこうこう)〉の」

 

(こん)叶星(かなほ)さん、だよね? さっきは押し付けるようなことして迷惑だったかな」

 

 別に一葉ちゃんと違って彼女と個人的な知り合いということはないけど、彼女が同じ東京の御台場女学校出身で、神庭女子に転校してすぐそこのトップレギオンであるグラン・エプレの隊長を任せられ、今年も引き続きそうである──という話が前に読んだ雑誌に、今のグラン・エプレ五人の活躍と一緒に載っていた記憶が頭の端に残っていたからの反応になる。その時は制服じゃなくてレギオンとしての隊服姿だったから、遠目にチラッと見たさっきはピンと来なかったけど。

 

 ……なんでそんなの持ってたかって? ふたつ下の従姉妹が今年から神庭でリリィやってて、同級生が所属してるレギオンの特集記事が載ってるからってこないだ自慢するように送って来たのよ。

 

「いえ、先に戦っていた葵さんと協力したらすぐに終わりましたから」

 

「そっか。で、その葵ちゃんは?」

 

「雪華様のことを話したら、合流するって先に行ったはずなんですけど……どこかで別のヒュージと交戦しているのかしら?」

 

 わざわざこっちに反応した以上私の名乗りも聞こえてたか。で、葵ちゃんの方はそも新型を任される腕な上に実績も十分な彼女なら余計な心配も無用かもしれないけど、あまりに顔が見えないようなら探しに行くべきなんだろうか。

 なんて話している内に向こうも説教タイムが終わったのか、ぞろぞろとルド女の三人もこちらに寄って来た。

 

「あっ、いつの間にか、結構人増えてますね」

 

「みたいね。琴陽さん……何度も言うけれどここは戦場よ、今は無闇な手合わせは控えなさい。いいわね?」

 

「流石に、この人数相手にはやりませんよ?」

 

 つまり一人ずつだったのなら……まあやるんだろうね。ともかくルド女組も合わせ、三校総勢十三人──とオマケの私で結構な大所帯になっている。

 

「うーん……何人か初対面の人もいるようだし、一旦自己紹介にしましょうか?」

 

「いいですね叶星様! ガーデンは違えどこうして背中を預ける以上、まずはそこから信頼を築いていかなくては! ルドビコの皆様も、それでよろしいでしょうか?」

 

「え、ええ。構わないけれど」

 

「ふふ、がっつかないの一葉」

 

 なんだろうか、この一葉ちゃんの叶星への懐き具合は。少し話をしただけでも真っ直ぐな子だとは思うけど……他校の先輩相手にしてはやけに距離感がこう、近い。とはいえ叶星の方は慣れてる風なのだから、色々馴染みのある間柄ってことなのか。

 

「では改めて、神庭女子藝術高校二年、LGグラン・エプレリーダーの今叶星です、よろしくお願いします。それじゃあ次、高嶺ちゃん!」

 

 そこで振られるのは先程から叶星の横に佇んでいた、さらりとした金の長髪をしたリリィ。二人はまるでそうしているのが当然かのように並んでいるのがお似合いだったと、よくわからない感想を抱いてしまう。

 

「二年生の宮川(みやがわ)高嶺(たかね)よ、よろしくお願いするわね。次は、紅巴(くれは)さん?」

 

「はっ、はい!」

 

 そう言われて二年組に続いて前に出るのは、ライトグリーンの長髪で制服の上からカーディガンを羽織った子……大分緊張してるように見えるけど、大丈夫なんだろうか。

 

「声楽科一年生の土岐(とき)紅巴(くれは)です。よろしく、お願いします……次は、灯莉(あかり)ちゃん」

 

「はいはーい、絵画科一年の丹羽(たんば)灯莉(あかり)だよー。ユニコーンを見付けたらぼくによろしくねー☆」

 

 名乗り終わると遠慮がちに下がる紅巴ちゃんとは対照的に元気よく飛び出てくるのは、派手なピンク色のパーカーを着た薄桃色の長髪にお団子ヘアーの子。それにしてもユニコーン、ねぇ。

 

「それって、御台場にあった変形するやつ?」

 

「うーん、それはまた違うユニコーンなんじゃないかしら?」

 

 なんとなくで叶星に振るけど反応はなんとも、となると名前の元ネタな幻獣の方か。確かに今や大分限定的とはいえ魔法的なソレのある世の中になったんだし、そういったファンタジーな存在がいても不思議じゃない、か。

 

 ──あ、初心者にも大して役に立たない設定上CHARMの妖精(チャーミィ)はお呼びじゃないんで。なるほどね?

 

「じゃあ最後、定盛(さだもり)~☆」

 

「灯莉ぃ! こ、コホン。グラン・エプレサブリーダー、声楽科一年生の定盛(さだもり)姫歌(ひめか)です。あ、アイドルリリィ部やってます」

 

 そして伸ばした両手をヒラヒラさせる灯莉ちゃんに紹介されるのは、他の神庭一年の二人と違って制服の上には特に何も羽織っていない普通の着方をした、いかにもってピンクのツインテールの子。

 ふむ、しかし一年にしてサブリーダーなんてのはともかく〈アイドルリリィ〉とは。神琳さん辺りが雑誌モデルをやっていることから周りに時々冗談めいてそう呼ばれたりもしてるみたいだけど、姫歌ちゃんのは言い方からして所謂スクールアイドル的な活動? 髪もツインテだし。

 

 ……で、『あやちゃん』の言ってた同級生って学科的に紅巴ちゃんの方なのか姫歌ちゃんの方なのか。あるいは両方?

 

「なになに、緊張してるの~?」

 

「し、仕方ないじゃない……初対面の人たち、大体上級生っぽいんだから!」

 

 そんな姫歌ちゃんをからかいながらも、途中でさっきの発言に何か引っ掛かりを感じたのか灯莉ちゃんは首を傾げていた。

 

「……っていうか、ぼくたち学校から部として認められてたっけ?」

 

「う、それは今いいでしょ……こほん。ではヘルヴォルの皆さん、どうぞ」

 

「はい、姫歌さん!」

 

 ともかくグラン・エプレ五人の自己紹介が終われば、続いて前に出てくるのは一葉ちゃん。二回目だろうと気合い十分な様子である。

 

「私も改めてになりますが、エレンスゲ女学園一年生、LGヘルヴォルリーダーの相澤一葉です。皆様、此度の遠征では全員の力を合わせ、ここ下北沢を守るため共に頑張りま「かーずはぁー、それじゃ堅すぎるってば。っていうか、一度名乗ってるんなら二度目は簡単でいいっしょ?」あっ、恋花様」

 

 一葉ちゃんの挨拶というか最早宣誓というかを途中で遮りながら、そのまま彼女にどこぞのカフェの物らしきカップを押し付けて前に出てくるのは、茶髪のなんかこうギャルっぽい雰囲気な子。右の方で髪をひとつ房にしているのが、さり気無いアクセントなんだろうか。

 

「というわけで、二年の飯島(いいじま)恋花(れんか)でーす! よっろしくね~!」

 

「おっ、そういうノリ? いいね、嫌いじゃないよ」

 

 彼女が勢いのままこっちに手を掲げて来たからにはと、応えるようにパシンとハイタッチ。一葉ちゃんの態度から結構お堅いレギオンかと思えば、中々どうして。

 

「「イエーイ!」」

 

「恋花たのしそー。あ、らんはね、佐々木藍だよー」

 

 そんな私たちを横目にルド女の後から来た二人に向かってペコリと頭を下げて、一葉ちゃんと比べるまでもなく簡潔に済ませる藍ちゃん。まあ向こうは彼女の体の後ろで変に上がってる腕もあって微笑ましそうにしていて、特に失礼だとかは思ってないようだけど。とはいえそれでも礼儀としてどうなのかと、腕を優しく押さえるように下げさせられながら赤毛の先輩に窘められている。

 

「藍、流石に短すぎるんじゃない?」

 

「でも雪華とことぴにはもうしたし、グラン・エプレのみんなは前からしってるし……あとなに言えばいいの?」

 

「こ、ことぴ?」

 

 そこ二組にレギオン単位で繋がりがあったのはともかく、何故か変に懐かれたらしい感じに困惑する猫耳ちゃん。そりゃあいきなり乱入してぶっ飛ばそうとしてきた相手にそういう扱いをされれば、さもありなん。

 

「それでも、だよ」

 

「じゃあ瑤がおてほん見せてよー」

 

「えっと……ヘルヴォルの初鹿野(はつかの)(よう)、二年生。ぬいぐるみとか好きかな、よろしく」

 

「むーっ、瑤もたいして変わんないー!」

 

 まあ、軽い挨拶がある分一応藍ちゃんよりは長いんだけど、この子はあんまり口数の多くないタイプか。なんというか極端なメンバーだことで。

 

「ほーん。思ったより賑やかだね、一葉ちゃん?」

 

「あはは……少し個性的ではありますが、今のヘルヴォルのメンバーは私が信頼できると集めた大事な仲間です! では最後に千香瑠様、お願い致します」

 

 そう一葉ちゃんに呼ばれて前に出るのは茶色のポニーテールな……ん、千香瑠? さっきは私が話すからって流してたけど、確かその名前って依奈がたまに言ってる、例の迎撃戦で同じ部隊だったって──

 

「私は二年生の芹沢(せりざわ)千香瑠(ちかる)です。幸恵さん、今度もよろしくお願いしますね」

 

「ええ。部隊は違ったけれど、あの時の仲間と一緒なら心強いわ!」

 

 幸恵と話す様子からもそこは確定でいいだろう。えっと、依奈のとこだから……確か茜もいた第3部隊か、ありがとういつかの月詩ちゃん。

 

「ふーん、なるほどねぇ」

 

 なんて意味深に顎へ手を当てて眺めていると、当然気になるのか困惑した様子で見詰め返される訳で。

 

「あの、私が何か……?」

 

「ん、まあ知り合いの知り合いって感じ? うちの隊にも校内の知り合いにも、迎撃戦組は結構多いからさ」

 

 割合としてはやっぱりアールヴヘイムが一番にはなるけど、一柳隊とて夢結と梅の二人が迎撃戦の参加者なのだから、縁ならそこそこあると言えなくもない。なんて謎のアピールをしていると、ルド女の眼鏡の子がずいっと寄ってくる。

 

「あ、あのっ! ところで雪華様の先程仰られていた一柳隊というレギオン名……も、もしかしなくても()()白井夢結様のレギオンですよね!」

 

「うん? そうだけど、なんか詳しいね」

 

「そ、その……わたしもレアスキルは、『ルナティックトランサー』なので……」

 

 あー、なんとなく分かるような気がする。レアスキルの傾向というのにそこまで詳しくはないけど、雰囲気からルナトラ的な空気は。ついでに彼女からはどことなく二水ちゃんと似たソウルも感じるなぁとまじまじと観察していると、眼鏡の子も我に返ったように慌て出す。

 

「あ……も、申し遅れました! わ、わたしは私立ルドビコ女学院二年、松永(まつなが)・ブリジッタ・佳世(かよ)です!」

 

「白井、夢結様の……」

 

「んー。ほらことぴ、先輩の終わったよ?」

 

「「うわあ!?」」

 

 そこでどこか上の空なネコミミの子が藍ちゃんに背中を押され、佳世を押し退けるように突き飛ばされてくる。

 

「え? わ、私?」

 

「うん。ほらご挨拶ー、らんは二回もやったよー?」

 

 ハッとしたようになっている琴陽ちゃんだったかは、目の前で藍ちゃんにダボ袖をプラプラさせられてようやく気付いたようで、少し息を整えてから口を開く。

 

「……一年生の戸田(とだ)・エウラリア・琴陽(ことひ)です。まだまだ未熟ではありますが、よろしくお願いします!」

 

「挨拶だけは元気いいんだから……」

 

 勢いよくお辞儀してるのはいいけど、隙あらばそのテンションのままお手合わせと突っ込んで来るんだから、迷惑千万というかなんというか。ともかくこれで残り一人、皆の視線も自然と幸恵へ向く訳で。

 

「最後はわたしね。私立ルドビコ女学院の二年生、福山・ジャンヌ・幸恵よ。名前だけなら、知ってるって人も多いかもしれないけれど」

 

「はい、同じ東京のリリィとしてかの〈ラ・ピュセル〉の勇名は聞き及んでおります!」

 

 少し謙遜気味な幸恵の言い種に一葉ちゃんがグイグイ乗っていると、それを眺める藍ちゃんは首を傾げて頭上にハテナを浮かべていた。

 

「らぴゅ……さんぷんかんまってやる?」

 

「はいはいバルスバルス」

 

「滅ぼさないの恋花。あのね藍、幸恵さんの洗礼名の『ジャンヌ』って、世界史か何かで聞いたことない?」

 

 今のやり取りでだいたいここ三人の関係性は分かったような気がする。見た目以上に子供っぽい藍ちゃんを恋花がからかって、瑤が真面目方向に戻す的な?

 

 ちなみに洗礼名とはルド女がミッション系──つまりは宗教色の強いガーデンだからと、高等部のリリィたちが進学時にガーデンから授けられる呼び名のこと。名字と名前の間の、ミドルネーム的な位置のやつね。

 それらは過去の聖人たちの名前から取られているってことは当然歴史上の人物なんかの名前も対象ということで、そういう風に話を持っていけば藍ちゃんも思い当たる物があったようで、コクコクと頷いている。

 

「うん、なんかヨーロッパの人だよね?」

 

「そう、フランスの聖女〈ジャンヌ・ダルク〉。彼女の呼ばれ方のひとつにもラ・ピュセルってあるから、そこから取られたのかな?」

 

「多分そうだと思うわ。人から言われているだけで、自分から名乗るってことはあんまりないけれど」

 

 その辺りは有名税の類いだろうか。本人も呼ばれ慣れてなさそうなことからも分かる通り、ガーデン側の宣伝とか雑誌で勝手に言われてるだけとかなんだろうけど。

 

「ついでに、CHARMの名前もそっちのジャンヌの剣からだっけ? 『フィエルボワ』とかなんとか」

 

「ええ、柳都の天津麻嶺さんが私専用にって作ってくれたの。これまでは、あまり使う機会はなかったのだけど……折角作ってくれたんだもの、ね?」

 

 なんて恋花にCHARMを覗き込まれての反応で、そういやこないだ百合ヶ丘に来てた麻嶺がルド女に行ってたのもそういう絡みな……いや、その時はまた違う子の名前出してたか。聞き覚えはあったから迎撃戦絡みではあっても。

 

「さて、自己紹介も終わったし、とりあえずガーデンごとに別れてこのケイブの親玉を探「きゃっ!?」っと?」

 

 ともかく最年長として少しはやることをと話を進めようとした時、挨拶を終えた後そそくさと人の輪から離れていた琴陽ちゃんの悲鳴にそちらを向くと、彼女の近くに小さなケイブが発生し二足歩行型のミドル級ヒュージが現れていた。

 

「ちぃっ!」

 

 また変な位置に出てきた。距離的に攻撃を見てから割り込むより、その前に打って出た方が速い。そう『インビジブルワン』を使い瞬時に突撃し琴陽ちゃんを押し退けると、相対するヒュージ越しに飛び込んできた一人のリリィと目が合う。

 

「~~~♪」

 

「ん?」

 

 カーディガンの下で前ボタンを半分くらい開けてと随分ラフな着崩し方をしているシャツだとか、頭にしたヘッドホンだとか、左右で長さどころかモノが違うソックスだとか諸々──てか見るからにブラしてないし。

 そんな色々特徴的なファッションの彼女はこのスピード下においてもなんてことのないように、鼻歌混じりにヒュージへ左手に持つ赤いフレームなCHARMの鋭利な刃を突き刺していた。同系統のスキル持ちさん?

 

 ともかく彼女の背後からの不意討ちにヒュージの動きが止まったところへシールドからバルカンを撃ち込み、潜り込みながらブリューナクによる至近距離からの砲撃でその上半身を下から吹き飛ばすと、件のリリィが倒れるヒュージの亡骸から引き抜いたCHARMを肩に担ぎながら、琴陽ちゃんの手を引いて起こしていた。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「ちょうど集まってるのが見えたからさ、怪我がなくてよかったよ。それでそっちのあんたは、百合ヶ丘のリリィ?」

 

「制服見て分かるんならそういうことでしょ? あなたは、あー……スカートからして御台場?」

 

 こっちに振り向いてくる彼女の格好からは他のパーツの主張が強すぎて確信は持てないけど、多分そうだと思いたい。ホントなんなのこの首都。

 

「まあね。それにしてもわざわざ鎌倉からって、もしかして「ゆず!」お、(もみじ)か。こっちは終わったよ」

 

 ゆず……柚子さん? いやこの親しげな感じはあだ名か何か? そうして駆け寄ってくるのは、今度こそちゃんと御台場の制服だなと分かる青基調のものをきっちりと着こなしている、どこかお嬢様っぽい雰囲気な黒い長髪のリリィで、彼女を見て紅巴ちゃんは何かのピースがハマったかのような反応をしていた。

 

「ゆず……もみ……ま、まさか。まさか!?」

 

「ん、とっきーあの二人のこと知ってるのー?」

 

「そういえば紅巴って、神庭に来る前は御台場の中等科だったのよね?」

 

 ほむ、そこら辺の経歴ってグラン・エプレの二年二人もだし、となると神庭原産は残りの一年二人になるのか──なんの話だか。

 ちなみに灯莉ちゃんは鎌倉、姫歌ちゃんは新潟出身らしいとはまた後で聞いた内容。

 

(ゆずりは)!」

 

「幸恵! それに、叶星に高嶺もいるのか?」

 

「まさかここで会えるとは思ってなかったわ!」

 

「ええ、本当に久しぶりね」

 

 ともかくそういった経緯からか知り合いは結構いるようで、楪は彼女に反応した二年の三人へ向けてヘッドホンを外して首にかけながら駆け寄ってくるのだから、幸恵の隣の佳世が紅巴ちゃん同様に引っ掛かっていた何かが確信に変わったのだろうか、ハッとして声を上げる。

 

「や、やっぱり御台場女学校二年生、生徒会副会長にして生徒会直属のトップレギオン〈ヘオロットセインツ〉副隊長〈セインツの宝石〉川村(かわむら)(ゆずりは)様!?」

 

「あれ、そういえばかよせんぱいも二年なのに、なんで他の先輩に様付けしてるのー?」

 

「えーと、佳世は有名なリリィ相手だと、同学年でもよくこうなるのよ」

 

 なるほど、この感じからしてリリィオタク組特有の腰の低さというやつだろうかと灯莉ちゃんの疑問に振り向いて答える幸恵を横目に、やっぱり佳世に二水ちゃん紹介したら愉快なことになりそうだなぁと謎な考えを抱いていると、彼女のオタクモードはまだフルスロットルだった。

 

「そしてあちらは間違いなく生徒会長でセインツ隊長の〈暴君の花嫁〉月岡(つきおか)(もみじ)様! あぁ、まさかこのおふたりが援軍に来てくださるなんて……!」

 

「あ、わたくしはそんな」

 

「へぇ、椛有名人じゃん?」

 

「……こほん。ともかく御台場女学校よりLGヘオロットセインツ隊長月岡椛と副隊長川村楪の二名、ただいま馳せ参じましたわ」

 

 なんとも仲が良さそうな感じだけど、御台場の生徒会長に副会長だなんて超が付く有名人なら私だって聞いたことはある。というか、この二人だってかの──

 

「ふーん。千香瑠、あの二人って確か」

 

「ええ。楪さんも椛さんも部隊は違ったけれど、同じ御台場迎撃戦を戦い抜いた仲間よ」

 

 つまりは幸恵と千香瑠を合わせて四人、どうにも世間は狭いようだと恋花に返しているのを見ていると、その声で楪たちも気付いたようで揃ってヘルヴォルの方へ。

 

「おっ、千香瑠もいたんだ。迎撃戦といい不思議と縁があるみた「ほんっとうに、あなたたちはそればっかりですのね」

 

 ──そんな時、ここまでの誰とも違う刃のように鋭い声がして、全員の視線が聞こえた方向へ集まる。

 

(きいと)……(うい)もか」

 

「あ、先程は……どうも……」

 

「ふん……」

 

 そこには御台場の制服がベースなのだろうけどそこまで原型がない感じからレギオンとしての衣装なのだろう物を身に纏うリリィが二人、近くのビルの上から飛び降りてきていた。知り合いであってもそこまで仲の良さそうな感じではない反応な楪はともかく、ガーデンも違うだろうに佳世までたじたじだ。

 

(なんかあったの? あの〈ロネスネス〉の『船田(ふなだ)ツインズ』と)

 

 ロネスネス──今降ってきた船田姉妹率いる御台場女学校初の自主結成レギオンで、ぶしつけに割り込んで来た隊長さんの性格通り超攻撃的な戦術を以て戦場を切り開く、実力派のレギオンだ。

 そんな彼女たちは楪たちのセインツ共々、アールヴヘイムと新潟で肩を並べた間柄だとかなんとか。もっと言えば、ロネスネスの専用CHARMの開発・提供者が百由だっていう不思議な縁もあるけど。

 

(つい先程、佳世が一人で先走り過ぎてしまった時にヒュージの不意討ちからあの二人に助けて貰う形になりまして……)

 

(ふーん? ま、風の噂じゃ言動や訓練は厳しいけどリリィのことは決して見捨てないとも聞くし、その通りではあるのかなぁ)

 

 なんて幸恵とコソコソ話をしていると、ツカツカとこちらの集まりに近寄って来る蝶の髪飾りを着けた紫の長髪──双子姉妹の妹な船田(ふなだ)(きいと)が不満そうに鼻を鳴らしていた。

 

「これだけのリリィが集まって何事かと思えば、戦場を同窓会の場か何かかと思っておりますの?」

 

「今から散らばるとこだったんだよ。それに、これだけの面子ならあの時みたいに」

 

「まぁた迎撃戦? いつまで過去の栄光にすがってらっしゃるのかし「楪。下北沢にいるリリィはこれで全員かしら?」……姉様」

 

 ここには遊びに来たのではないし、ましてや喧嘩をしに来た訳でもないのだと、威圧的になり過ぎている妹に有無を言わさず白い長髪に巫女服のような衣装をした姉の船田(ふなだ)(うい)が丁寧に、しかし油断ならない声音で割り込んでくれば流石の純も血を分けた姉には逆らえないようで、不満げな様子もここは飲み込む。

 

「ああ、えっと……そこら辺どうなんだ?」

 

 そしてそうなると楪もたった今このメンバーと合流したばかりなので、周りに確認するしかなくて純共々突っ掛かるに突っ掛かれなくなる訳で。

 

「ルド女から出て今こっちに残っているのは、わたしたち三人だけよ」

 

「ヘルヴォルは、我々五人だけです」

 

「グラン・エプレも五人で全員よ、初」

 

 ガーデンごとの面々は見ての通りだとそれぞれ集まっているとなると、何か言うべきは私だけか。

 

「あー、百合ヶ丘からは私一人で、さっきそこら辺で知り合った相模の子がどこかにいるけど、多分心配はいらないんじゃないかな?」

 

「つまりはわたくしたち御台場女学校の四人を合わせて十九人、ということでよろしいので?」

 

 それに対しては首肯で答えるけど、そういえばここはルド女の守備地域だっていうのに肝心のルド女からは三人だけだなんて、少しおかしく感じる。

 とはいえ東京の各校に救援要請を出したということは、自前の戦力だけでは対処し切れない事態──例えばさっき街中で聞いた話から下北沢以外のどこかにこちらより優先されるべきケイブが発生し、最低限の戦力を残して主力はそちらに急行させられたとかそういうパターンだろうか。

 

「でしたらそちらの予定通りいくつかの部隊に分けて周辺のヒュージに対処しつつ、ケイブの主であるギガント級の捜索から──っ!」

 

 なんて初も私の出していた案に乗ろうとした瞬間、空気が揺れた。と感じる程の振動に、この場の全員が襲われる。

 

「きゃっ!? もしかして……」

 

「こりゃ、噂をすればってやつ?」

 

 姫歌ちゃんに恋花、レギオンごとに来た組がその中心なのだろう方向へ視線を向け残りの面々も続くと、答え合わせと言わんばかりに()()()()()

 

「やっぱり出たか、ギガント級!」

 

「あの肩、見たことのないタイプですわね。特型……?」

 

 上空の特大ケイブから現れる人型の巨体を見上げながら、同型のヒュージとは明らかに違う部位を持つ姿にセインツの二人が警戒を強めていると、ギガント級出現の衝撃から立ち直った叶星が一葉ちゃんと顔を見合わせている。

 

「ギガント級が現れた以上、ノインヴェルト戦術を行う必要があるわね……一葉!」

 

「はい、叶星様! あのギガント級はヘルヴォルとグラン・エプレで対処しますので、他校の皆様は周囲のヒュージの掃討をお願いします!」

 

 それの意味するところを察した一葉ちゃんの提案は道理ではある。レギオンで来ているここ二組以外は多くとも一校から最大でも四人、ノインヴェルトの最小人数すら満たしていないのだから、即席のメンバーよりはまだ慣れているレギオン同士の方が確実ではあるのだろう。

 

「へぇ……流石に叶星の知り合い、()()()()()()()()()まともな判断が下せますのね」

 

「──っ」

 

「抑えなよ一葉。分かってたことじゃん」

 

 一葉ちゃんの肩を掴む恋花が挨拶の時にも自分たちのガーデンのことを自虐的に言っていたように、エレンスゲ女学園は親ゲヘナだ反ゲヘナだといった勢力的な立場とは関係なく、非常に評判の悪いガーデンになる。

 その一例として外征宣言もなしに他所のガーデンの守備範囲、それも他県であろうと平然と乱入し辺りの地形にも構わずヒュージごと全てを焼き払っては後始末もせずに去っていく、なんて災害のようなガーデンだと認識されているから。

 

 ……ちなみに百合ヶ丘(うち)の生徒会長の一人、レギオン統括の〈ブリュンヒルデ〉出江(いずえ)史房(しのぶ)さん曰くエレンスゲのやり様は『戦の作法を知らない野蛮人』とのことで。その時につい『いや、「悪魔的な戦い方」なんて称されてる人がそれ言う?』とか言ったら静かに怒られたけど。笑顔で、一切笑ってない目で。

 

 ともかく『武のガーデン』と呼ばれる御台場女学校所属の純としてはそんな噂通りに荒らしのような真似をするリリィが来ていたのなら容赦しないつもりでいたようなのが、一葉ちゃんが叶星に同意する様子を見て少しは評価を上げたような反応からも察せられる。

 

「気にすんな、純は誰にでもこんなだからさ」

 

「はぁ? ともかくこのわたくしたちが獲物を譲るのです、きっちり仕留めなさい」

 

「……はい。楯の乙女(ヘルヴォル)の名に懸けて!」

 

 場の空気を紛らわすためな楪のフォローのようなトドメのような言葉へキレ気味に返しながら、純が一葉ちゃんへCHARM本体から引き抜いた刀型のブレードを突き付けその覚悟を試すように告げると、その切っ先から目を逸らさず一葉ちゃんは頷く。

 

「あのー、椛様。つかぬことをお伺いしますが、あちらのおふたりは普段からこうなのですか?」

 

「……? ゆずと純さんのことなら、昔からよく意見が衝突してはいますが」

 

「ふむふむ……ありがとうございますっ」

 

 そんな中なんか端っこで紅巴ちゃんが椛さんによく分からないことを聞いているのは、気にしない方がいいのだろうか?

 などと気を逸らしていると、地響きに再びギガント級の方へ視線が集まる。

 

「ぎ、ギガント級が動き出しましたよ!?」

 

「ええ、行きましょう皆!」

 

 何はともあれ力強く幸恵が告げると、慌てていた佳世も含め全員がギガント級へ向けて駆け出す。さて、ちゃっちゃとボス退治と行こうか!

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