アサルトリリィ~円環の赫星~   作:ですティニー

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前回のあらすじ:自己紹介と拾える日来るかなってフラグ置きと迎撃戦迎撃戦…と。
にゃご。人数多いからやるの楽しくはある乱戦パート、大まかな流れは同じでも相変わらず味付けは変えていきますとも。
というか東京組もキャラが濃すぎるから動かし方に困らない、趣味と実益を兼ねれる寄り道だぜぇ…なんかちょこちょこ中の人インストール起きるのは、キャストさんも強いからってことで。


巨影の蔓延る都市で

「……にしてもあのヒュージ、大分でかくない?」

 

 いざ攻略プランも決まって近寄ってみる中見上げてみれば、一般的なギガント級の基準は体長20m前後とは言われているけど、そんな人間側の尺度なんぞは知らないでも言わんばかりにここ東京都内のビル街の中において尚巨大に見えるヒュージの全長は軽くその倍近くはあるように見えるし、球状の物体が付いている肩が余計威圧感を──

 

「てかあれ何? 対空レーザーでも撃てるの?」

 

「巣か、何かのようにも見えますが……っ!」

 

 この場では一葉ちゃんの見立てが正しかったようで、答え合わせでもするようにギガント級は肩の物体からヒュージを周囲にばら撒き始める。

 

「そういうタイプか、運び屋ってこと!?」

 

「各員、迎撃を!」

 

 椛さんに言われるまでもなく、ギガント級の肩からヒュージが拡散しだした段階で何人かは反射的にCHARMを向けて射撃を開始しており、落下中のヒュージからの反撃も合わせて無数の光が日の暮れだした下北沢の空を彩る。

 

「飛行型も多い、ここからは分かれた方がいいでしょ!?」

 

「そうですね。我々2レギオンは先行します、皆様も御武運を!」

 

 ヘルヴォルとグラン・エプレ、レギオン単位で来ていた二組が銃火飛び交う中を駆けてギガント級へ向かったのを見送ると、残される私たち八人もそれぞれCHARMを振るい近くへ落ちてくるヒュージへ対処することに。

 

「ともかくノインヴェルト戦術の障害になる飛行型やミドル級以上を優先して排除、でいいのかな?」

 

「あちらもトップレギオンで来ているのですからある程度は自力で対処していただくとして、それで問題はないかと」

 

 そんな中すれ違う椛さんに確認しながら周りを見渡すと、こちらの装備はルド女組が専用機のフィエルボワとシャルルマーニュの二刀流な幸恵以外の二人は佳世がダインスレイフの、琴陽ちゃんがグングニルのカービンタイプ。御台場組は椛さんが確か天津重工の代表的な機体の第2世代CHARM『布都御魂』、残り三人がそれぞれの専用機らしき機体とほとんどフル装備に近い私を含め中々に豪華だなぁと感心しつつ、もうひとつ確認したいことを聞いておく。

 

「ところで、私たち以外に誰か戦ってるの見えない?」

 

「いえ、雪華様たちと合流する前も後も『レジスタ』の俯瞰視野で見える範囲には……確か、相模からの方でしたか」

 

「うん、もしかして迷子になった……?」

 

 道中共有した情報の中には葵ちゃんのこともあったけど、それならそれで探しに行けないのは彼女には悪いけど仕方ないかと気持ちを切り替えて前を向けば、幸恵が二刀で切り裂いた道を楪が駆け抜けてヒュージの一団を蹴散らしているのが見えた。

 

「ヒュー、相変わらずやるじゃん幸恵!」

 

「ええ、お姉様の愛した世界を守るためにも、こんなところで負けてられないもの!」

 

 迎撃戦で同じ部隊だった二人の仲は見るからに良さそうだけど、個人的にはどうしても素直に頷けない部分がひとつ。

 

「世界ね……わざわざ守る価値があるモノなのかな、そんなの。どうせ後ろから撃ってくるヤツらばっかりなのに」

 

「何も最も広い意味でのそれを、という訳ではございませんわ」

 

 特に誰に聞かせるつもりもなかった独り言も近くにいた彼女には聞こえてしまったようで、椛さんと背中合わせにビルの上から降ってきたヒュージをそれぞれCHARMで貫きながらの会話になる。

 

「わたくしもゆずも、そして恐らくは他の皆さんも、自らの属する範囲の世界を愛おしく思っているからこそ、そんな自分の居場所を大切な仲間と共に守りたい。ただそれだけです」

 

「そういうもんかな」

 

「ええ。それこそ、誰か一人でも心から大切と思える相手を……だけでも、戦う理由としては十分でしょう? それとも百合ヶ丘の三年生ともなると、そういった方も多すぎて一人だけなんて選べませんか?」

 

 しかし最後に冗談めいて付け加えられた言葉への返事に詰まる自分に気付くと、たまに表層化する世界への不満などどうでもよくなっていた。

 

「……いや、むしろ逆かな? 漠然とし過ぎてて、一人も選べないや」

 

 元々私も去年まではレギオン内で唯一の年下、守られる側だったのだ。先輩たちに倣って守るだなどと格好付けてはみても、そこに明確なビジョンなど特になかった……

 あぁ、だからか。今のレギオンに入ることになってからも、その辺りの感覚が曖昧だったのは。後で謝らないといけないな……まだ一柳隊の皆のことは背中を預ける仲間というより、庇護する対象か何かとしてしか見れていなかったのは。こないだも皆に助けられたばっかりなのに、人には頼れと言っておいて、私自身はこれだ。

 

「でも、少しは見えた気がするよ。とりあえず今はこんな戦いさっさと終わらせて、『仲間』たちの所に帰らせてもらおうかな!」

 

 宣誓に合わせてヒュージに突き刺していた両手のソードガンを引き抜き、クルリと回しながらガンモードへ切り替え腕を交差させてから扇状に広げつつ乱射し、空を飛ぶヒュージをまとめて射抜く。

 

「ふふ、迷いは晴れたようですね」

 

「迷う以前の問題だったけどね。あたしはまだ入り口にすら立っていなかった……だから、そんな半端な自分は今ここに置いていく!!」

 

 想いを吐き出しソードガンを連結させながら頭上で振り回して、レーザーブレードを展開し大見栄を切るように構えると、同時にギガント級の方向でマギの高まりを感じる。

 

「向こうも始めたみたいだね、上げてくよ!」

 

「承知いたしましたわ!」

 

 椛さんからの返事を聴きながら勢いよく地面を蹴って跳び、降りた先のヒュージを振り回したナギナタで縦に横にと十字に両断しながら、更に前へ突き進むのみ!

 

◆◆◆

 

「んで、こっちは普段通りに回したんで大丈夫なワケ?」

 

「はい。私から叶星様、そしてグラン・エプレの皆さんへと繋ぎますので、まずはヘルヴォル内で回すのを最優先にお願いします」

 

「オッケー」

 

 ギガント級が大分近くなったからとレジスタを広域に展開し最前線を目指す一葉から投げ渡された特殊弾へ軽く口付けをして、愛用するCHARMブルンツヴィークへと装填し背負うように構えた恋花はそのコアへ手をかざしてマギを込めると、準備体操のように伸びをしてから全身にグッと力を入れ駆け出す。

 

「それじゃ、っと!」

 

 彼女の進行方向正面には空から降りてくる小型ヒュージ、飛行タイプなリッパー種のスモール級が三体。狙いを定められる前に斬り上げて一体を仕留め、踏み込みながら振り下ろしもう一体、最後の一体は反応し突っ込んで来たのを上下に連続で切り裂いて突破すると、拓けた道を後ろから付いてくる瑤へ振り向きながらCHARMの銃口も向ける。

 

「瑤、散らかしといたから後よろし……って藍!?」

 

「わーい! ヒュージがいっぱいだーーーっ!」

 

 そんな時恋花がまただよ。と呆れる間もなく瑤の後ろから飛び出し恋花すら抜き去って先頭に躍り出る藍は、タンと跳躍し力の限り愛機『モンドラゴン』の刃を叩き付けて進路上の交差点で四方に触手を伸ばし根を張るように陣取っていた、丸い胴体に三本の刃のような脚が特徴的なテンタクル種のミドル級の本体をスイカでも割るようにして粉砕すると、その勢いのまま小動物のようにクルクルと丸まって着地し前へ前へと駆けていく。

 

「あははははははっ!!」

 

「ちょ……あーもう、今度こそ瑤任せた!」

 

「うん、恋花は援護をお願い」

 

 見るからにテンションも高く、目からマギの残光を引く藍の様子は明らかに『ルナティックトランサー』発動中の暴走モード。そんな藍の乱入でパスのタイミングを見失っていた恋花だが、すれ違い様に瑤へマギスフィア自体はちゃんと渡すと突撃した藍のフォローのため、その特殊な産まれから彼女に惹かれて集まる上空のヒュージへ射撃を行う。

 

「ったく、藍のペースに合わせてちゃ命がいくつあっても足んないっての!」

 

「でも、おかげで大分上げられた……!」

 

 それに堪らず二体のヒュージが地上近くまで降りて来たところへ一体を瑤が大剣型のCHARM『クリューサーオール』の錆とすれば、恋花も少し屈んだその背に手を着いてもう一体へ跳び付くようにしてCHARMを振るう。

 

「それはそうだけ、どさっ!」

 

「ここにもいたー!!」

 

 しかし縦横無尽に駆け回る藍もいつの間にかこちらまで戻って来て同じ目標を狙っていたようで、ヒュージを切り裂いたCHARM同士の激突はサイズと勢いの違いから恋花のブルンツヴィークが大きく弾かれ、本人もCHARMへ引っ張られるようにのけ反りながら落ちる羽目になる。

 

「うわっ!? 藍、いつも間違ってあたしを攻撃しないようにって言ってるでしょーが!」

 

「むーっ! れんかもじゃましないでって、いつもらん言ってるでしょ!!」

 

「藍、そろそろ落ち着こう」

 

─ブレイブ─

 

 ルナティックトランサーのバーサーク状態もあって、今の藍は売り言葉に買い言葉な一触即発状態──というのも微笑ましい喧嘩で済む普段ならともかく戦場ではあまりよろしくないのだから瑤が藍の手を掴みながら自身のレアスキルを発動すると、彼女の殺気立っていた様子も少し収まった。

 

「……ん、瑤?」

 

「うん。次は千香瑠にパス、渡せるよね?」

 

「わかった、まかせて!」

 

 目をぱちくりさせて落ち着いた藍へそっとマギスフィアを託すと、瑤はクリューサーオールをシューティングモードへ展開、搭載された高出力砲を以て正面のヒュージをまとめて薙ぎ払うと生まれたその空白を藍が駆け抜けて行けば、スカートを払いながら起き上がる恋花も文句より労いを優先する。

 

「お疲れ様、瑤。相変わらず『ブレイブ』絶好調じゃん」

 

 瑤の持つレアスキルであるブレイブは使った相手へ精神の安定をもたらすスキルで、負のマギを浄化出来る特性と合わせ意図的に暴走状態に突入するルナティックトランサーの相棒として、最も力を発揮すると言われている。

 また、逆に自分に対して使用することで戦闘力の増幅を計り、負のマギこそ溜まってしまうが暴走のないルナティックトランサーのような使い方もやれるが、どちらのパターンにせよ消耗が激しく一度の戦闘で数回しか使えない虎の子には違いないのだから。

 

「わたしだけじゃないよ、藍も近頃は最初に比べて素直に話を聞いてくれてる」

 

「ははっ、違いないや。最初はただの暴走幼女って感じだったけど……いや、そこの部分は変わんないか」

 

 それでもこうして作戦の流れを伝えれば応じてくれるようになったと恋花も納得はして、ルナティックトランサーの力でビルの壁面を駆ける藍がそこの屋上より弾幕を張って空中のヒュージへ対応している千香瑠の元へ向かうのを見ていれば、彼女は屋上の柵を蹴って跳び上がったまま空中でクルリと一回転してマギスフィアを千香瑠へ投げ渡す。

 

「ぱーす!」

 

「ありがとう藍ちゃん、一葉ちゃんは……あそこね」

 

 パスを受け取ると同じようにビルの上から周囲を確認しつつヒュージを撃ち落としている一葉の姿を確認すると、千香瑠は彼女の近くのヒュージへ槍型のCHARM『ゲイボルグ』の銃口を向け、撃ち抜くのを合図代わりとした。

 

「っ、千香瑠様!」

 

「一葉ちゃん、行くわよ」

 

「はい!」

 

 一葉がビルから飛び降りるのに合わせて、千香瑠がゲイボルグを振るいその先へマギスフィアを飛ばす。そんな中ここまでのヘルヴォルの奮闘に惹かれてか、地上では更に周囲より集まるヒュージを恋花と瑤が背中合わせになって迎える形に。

 

「んじゃ、一葉が楽に繋げるよう出来るだけここで減らしときますか!」

 

「了解……!」

 

 ちなみに、千香瑠へマギスフィアを渡した後の藍が上空から適当なヒュージをモンドラゴンで叩き潰しながら降ってきたのにまたしても恋花が巻き込まれかけたのは、一葉が空中から叶星に向けてパスを放ってすぐ後の話。

 

◆◆◆

 

「そこっ!」

 

 正面突破を掛けるヘルヴォルとグラン・エプレを左右に広がりながら追い掛ける私たち掃討組だが、ヒュージの層も厚いもんだから進行速度は結構遅れ気味、今は上空のミドル級を倒すために突っ込んでいたら船田姉妹の担当する側に寄っていたようで、追い込んだヒュージはその接近に気付いた瞬間に跳んだ純の手により刀の錆となっていた。

 

「おっと、悪いね」

 

「この程度軽い物ですわ。それにしても雪華様、でしたか? あなた、どうにも百合ヶ丘というより御台場(こちら)に近い感覚ですわね」

 

 納刀しながらのそんな言われ様には、まあ今日は梨璃ちゃんたち後輩もいないしで遠慮なくかっ飛ばしてるからなぁと、大分普段より好き勝手している自覚はある。それが御台場的なのかっていうのが、どうかなのはわかんないけど。

 

「ま、こちとら折角の休暇をヒュージ(こいつら)に潰されてんだ、八つ当たり7割に普段のストレス発散が2割ってとこかな?」

 

「お堅いガーデンは大変そうですわねぇ」

 

「ノーコメント、でっ!」

 

 ともかく近くの曲がり角から飛び出てくる虫のようなミドル級をアンカーで引き寄せてから、突き刺したシールドより展開するビームソードで内側から焼き切ると縦に振り上げるように引き抜いて腰のグングニル・カービンもダブルで抜いての連続射撃で駆逐。ガンプレイをしながらアーマーに戻す。

 

「さて、大分減らしたはずだけど……ん?」

 

「悪い、そっちに抜けた!」

 

 そんな時聞こえた羽音と楪の声に見上げた先にはミドル級と思われる、羽虫のような飛行型ヒュージ。注目を集めたその個体に皆の射撃は次々と命中しているけど、よっぽど防御が堅いのか聞こえるのは銃弾やレーザーが装甲に弾かれる音だけ。なら──

 

「直接叩き斬る!」

 

「せぇっ!」

 

 近くにいた私たちが左右からヒュージへ跳び掛かり、挟み込むように振るったソードガンのレーザーブレード二刀と純の専用機『フルンティング』の刀型のブレードもヒュージの体表を断ち切れずに弾かれ、足が止まったならと続く地上に残った六人からの射撃も先程と同じ結果となる。

 

「ちっ、やけに堅い!」

 

「……もしかして、あのヒュージって特型じゃないでしょうか」

 

 ミドル級から反撃に放たれる弾幕を着地と同時物陰へ横っ跳びに隠れてやりすごしながら、先にそこへいた佳世がズレかけたメガネを戻しつつ何か噂でも聞いたことがある風にしているので、こっちのメンバーの視線も彼女へ集中する。

 

「特型というのは今ので分かりますわ。それで、どういうタイプなんですの?」

 

「え、あ、その……近頃この辺りで異常に固いヒュージが出没しているみたいで、なんでもノインヴェルト戦術でしか撃破が確認されていない、とか」

 

 道向かいにいる純からの圧にしどろもどろになりながらも、大事な情報は提供された。しかしノインヴェルトねぇ……特殊弾に関しては立場的に御台場組が誰かしら持っているだろうとして、先に行かせた2レギオンと違ってこっちはレギオン単位で来ている訳ではないし、合わせても八人なのだからそもそも人数が足りていない。それで平均的な威力が出せるかと言われたら──

 

「でしたら、メンバーを現地調達いたしますわ」

 

 考えが顔に出ていたのか言わずとも分かるとそのまま純はブレードを本体に納め、CHARMをグルンと回して銃口を空の特型へ向けると数度射撃を送る。しかしそのコースも密度も散漫で、わざわざ受ける必要もないと特型ヒュージは空中を舞いスルリと掻い潜る。

 

「まさか……おい純!」

 

 そこで楪も何かに気付いたようで、崩落した歩道橋の陰から半端に顔を見せてヒュージの行き先を確認すると咎めるように彼女の方を向くが、純はそんな文句の相手をしている暇などないと毅然と返す。

 

「ヒュージに近ければ近い程、マギは共鳴し強くなる! そのついでにあちらから一人こちらへ合流させれば、人数もちょうどよくなるでしょう?」

 

 つまりは九人同士にするよう向こうから一人引っ張ってくると。その上で耐久力だけならギガント級相当だという特型が相手ならば、本物のギガント級周辺のマギ濃度をも利用してやろうとは流石は御台場、実に豪胆な戦術だ。

 とはいえこちらは知り合い同士が何組かいてもほとんどにわか仕込みの連携、向こうのノインヴェルトと混線させるのは中々にハードだろうけど──

 

「純!」

 

「ふふ、面白いじゃん。乗った!」

 

「あっ……そうだよ、デュエル世代だよなぁあの人も!」

 

 宣誓とも取れる発言の後、一人跳び上がり特型を更に追い込む純を仕方なく追う初に私まで続いてしまえばもう流れが出来てしまうんだろうけど、どの道他に倒す手段が無いのならこんなところで悩む時間こそが勿体無い。

 

「仕方ないわね……行きましょう、皆」

 

「ですね、ノインヴェルト戦術のこと話しちゃったのわたしですし」

 

 チラリと後ろを見ればルド女の二年二人もなんだかんだで付いてきているし、残る三人もこうなれば飲まれる他あるまいて。

 

「まったく……そこの一年生、無理だと思ったらすぐ下がれよ! こういう無茶をするのは、慣れてる私たちだけでいい!」

 

「は、はい!」

 

「それでは参ります──《レジスタ》!」

 

◆◆◆

 

 掃討組の方針変更は、突入組にも分かりやすい形で伝わる。

 まずは特型を射撃で誘導しながら追い込みビルの間を跳び交う船田姉妹と、それにアンカーを織り混ぜた動きで続く雪華の姿。そして、一葉と叶星の二人が展開するレジスタの範囲に重なるように椛のそれが加わったことによる感覚の変化に気付いた藍がキョロキョロと辺りを見回す物だから、釣られて恋花や瑤もその足を止める。

 

「んー?」

 

「ここでもう一人レジスタ?」

 

「それにさっきの三人……っ!」

 

 その疑問への答えより先に目の前に現れたミドル級へ対応しようとCHARMを構えた瑤の前で、横合いからの射撃に足の止まったヒュージがフィエルボワの刃とシャルルマーニュのレーザーアックスにより刻まれる。

 

「瑤さん、こちらで発見した特型をギガント級の方へ追い込むわ! ノインヴェルトの混線に注意するよう伝えて貰える?」

 

「了解。こちら瑤、掃討組が特型をギガント級の近くに追い込んでノインヴェルト戦術で仕留めるみたい、パスコースや射線に気を付けて!」

 

 ヒュージを自慢の二刀で切り刻みながら飛び込んできた幸恵からの通りががりな言葉を瑤が通信で他のメンバーに共有していると、そこに割り込む声が一人。

 

『叶星、高嶺。どちらか片方こちらに合流なさい、腕が鈍ったなんて言わせませんわよ?』

 

『純様!? ですがこのタイミングでは』

 

『いいえ、純がそう言うのならやるしかないって状況よ。一葉』

 

 純による引き抜きに今からフォーメーションの変更は無茶だと言いたげな一葉も、『昔』の付き合いから彼女のやり方をよく知っている叶星が味方したとあっては、これ以上の反論も出てこない。

 

『叶星様が、そう仰るのなら……』

 

『それで、悪いんだけど高嶺ちゃん……お願いしてもいいかな?』

 

 一葉からのパスを受け取ったばかりな以上叶星が続けてこちら側のノインヴェルト戦術にも参加、というのは厳しい。であれば指名された内でまだノインヴェルトのパス回しに参加していない高嶺の出番になるが、頼んでいる立場である叶星の方こそが不安そうな様子に、彼女の隣に降り立つ高嶺は微笑んでみせる。

 

「心配しないで叶星。ペースは抑えてあるし、ギガント級はあなたたちが仕留めてくれるのでしょう?」

 

「うん……気をつけてね」

 

 少しの間だけ高嶺が跳び去った方を見詰めていた叶星だが、視界の端に見慣れた緑髪を見付けると、慌ててそちらに駆け寄る。

 

「く、紅巴ちゃん?」

 

「ああいえ、土岐にはお構い無く……!」

 

「次のパス先は紅巴ちゃんになるから、構う構わないの問題じゃないのだけど……」

 

 これはまた『いつもの』かと、建物の影にこそこそ隠れようとする紅巴を追及するのも程々に、彼女の手を取ると叶星は駆け出す。後から現れた特型の存在で先にこちらを終わらせる訳にはいかなくなったのなら、その分時間は有効に使わせて貰おう。

 

「……? 今のは」

 

 だからとレジスタの俯瞰視野で周囲を探りながら紅巴を連れてギガント級の周りを迂回するようにしていた叶星の見る世界に、一瞬過ったのは素早い桃色の残影。服装やCHARMから同じレギオンの姫歌や灯莉ではない、なら──

 

「叶星様?」

 

「……ううん、なんでもないわ」

 

 自分一人だけならともかく、今は後輩の前なのだからと呆けるのも一瞬。すぐに切り替えて叶星は愛機『クラウ・ソラス』の銃口を近くのヒュージへ向けて流れるように連射し、紅巴が鎌型のCHARM『シュガール』を振り回し一体にトドメを刺したのを確かめると自身もまたCHARMをブレードモードに切り替えながら残る一体の懐へ飛び込み、すれ違い様に横一文字に両断した。

 

「向こうも始めるみたいね、タイミングを見て灯莉ちゃんたちへ戻すわよ!」

 

「は、はい!」

 

 そうしているとビルの上で楪がノインヴェルト戦術用の特殊弾を自身の専用機『フロッティ』へ装填しているのが俯瞰視野により見えたので、かつての仲間と有名ガーデンの面々が組んだとなるとそこまで時間は掛けないだろうと、叶星も更に気を引き締める。

 

◆◆◆

 

 その頃、ギガント級を正面に臨む位置の楪はいつの間にか椛と二人きりになっていたのに気付く。

 

「ん、あの一年生は?」

 

「少し遅れていますが、付いて来てはいるみたいですわ」

 

 椛の返答を受けて流石に御三家のリリィかとの感心半分、結局彼女も無茶する側かと呆れ半分な様子でいた楪だが、どうせ人のことを言える立場でもないかと特殊弾へマギを注ぎ、CHARMの銃口にマギスフィアを形成しつつ上から戦場を見回していた。

 

「さて、船田姉妹はっと……うっわ、突っ込み過ぎだよあいつら。で、幸恵がここで高嶺がこっちに来てる途中、あの先輩があっち。あと、眼鏡の子は……結構手前か。だったらあの辺りからでいい?」

 

「ですわね。ヒュージの展開具合からもそれで行きましょう、ゆず」

 

 加えて遅れていた琴陽も今この下を通過した、なら気合いで付いてきた以上はある程度こちらに合わせて貰うしかないだろう。そこまで決めて椛がいくつか先の低いビルまで跳び継いで行ったのを確認すると、マギを込め終えた楪もビルから飛び降りる。

 

「んじゃ、小さい方はさっさと終わらせますか!」

 

「ええ! 佳世さん、そこを動かずに!」

 

「うぇ、はいっ!」

 

 空中でクルリと体勢を整えて放った楪のマギスフィアが椛の布都御魂に少しの溜めの後弾かれると、ヒュージを叩くように仕留めていた佳世は慌てて振り向きダインスレイフ・カービンの腹で受ける。

 

◆◆◆

 

「こっちも始まった!」

 

 楪から佳世までは流れるようにパスが回り、次は最前線で特型を追い込む船田姉妹へと向かうようだ。そうなるとグラン・エプレとの混線が怖いけど、姫歌ちゃんと灯莉ちゃんは狙いやすいよう近くのヒュージを牽制しながらギガント級からは少し離れ気味のポジションを取っていて、高嶺はこっちに合流するのだから問題は叶星と紅巴ちゃんの位置。とはいえそこら辺はさっきの流れで分かっているのか、私たちの突入方向とは逆に抜けてくれようとして──

 

「っと、邪魔!」

 

 ギガント級の肩から吐き出されるヒュージもギガント級へ近寄れば近寄る程増える訳で、目の前に飛び出してきたスモール級は『聖域転換』を纏った跳び蹴りを浴びせてそのまま踏みつけ、グングニル・カービンで蜂の巣にして撃破。途中近くに見えた飛行タイプにはシールドから引き抜いたソードガンを投げ付けて、引っ掛けておいたアンカーを引いて地面に叩き付け黙らせる。

 

「お、お願いしまーす!」

 

「受け取りましたわ……純!」

 

「ええ、姉様。となると次は……そこのあなた!」

 

 なんてヒュージに構っている間に今度は佳世から初、純とルナトラ三人でパスが回ってこっちは折り返しになるけど、私に来なかったということは……

 

「……あっ」

 

 見知らぬ一年にラストなんぞ任せられないから、折り返しからのパスを真っ先に回す──というのはセオリー通りかもしれなかったけど、取る側の方が気合いだけでなんとかなる物でもなかったようで、微妙に純からのパスに間に合わなかった琴陽ちゃんが前へ倒れるように滑り込んで無理にマギスフィアを確保したはいいが、そんな目立つ物を抱えてこの乱戦の中足を止めたのだから当然の結果として辺りをヒュージに囲まれてしまう。

 

「チッ……そこを動かないで! まとめて薙ぎ払」

 

─ゼノンパラドキサ─

 

「……おん?」

 

 回収したソードガンを左のシールドに連結させ、グリップをシールド側のに持ち替えようとした瞬間私の横を金の閃光が駆け抜け、琴陽ちゃんを囲んでいたヒュージは飛び出した順に解体され次の瞬間には無理に起きようとしていた彼女自身も支えるように抱き抱えられていた。

 

「あ、ありがとうございま……つぅっ」

 

「あら、少し捻ったみたいね。今は休んでなさい」

 

 それを成したのは片刃の斧型CHARM『リサナウト』を携えた高嶺で、CHARMごとマギスフィアを抱えている琴陽ちゃんから丁寧に貰ってこちらへ向けてトスしてくるのだからそれをグングニル・カービンで受け取ると、可能な限りの速さでマギを込めながら近くの建物の上へ跳び乗る。

 

「とはいえ、ちょっとこのコースは……」

 

 特型をギガント級の近くまで追い込んだはいいけど仲間を呼んだのか、辺りには飛行型が大分集まって来ている。この状況でパスをするのは怖いなと思っていたら、薙ぎ払うように地上からの閃光が空を焼くと半数近くのヒュージが消え、もう一周でほとんどパスの障害にならないような数まで減っていた。

 

「……恋花?」

 

 その発生源は両手で抱えるように保持して振り回している彼女のCHARM。しかしブルンツヴィークはどちらかと言うと近接寄りなCHARMのはずで、そこまでの砲撃火力は無かったような……なんて疑問への答えは、恋花がこっちにサムズアップした後『全身の力が抜けたように』倒れかけたのを藍ちゃんと瑤に受け止められる姿。ああ、そういうことね。

 

「ともかくラスト、持ってけ!」

 

「受け取りました!」

 

 ともかく道は拓けたと一旦軽く打ち上げ、右のシールドでマギスフィアを更に大きく弾き飛ばして回す先は天高く舞い上がる、下北沢本来の守り手であるルド女のリリィである幸恵──これでこちらはラストの九人目。

 

「灯莉ちゃん、行きます!」

 

「ほーらトリだよ定盛っ!」

 

「決めの場面くらいひめひめって呼びなさいよー!」

 

 どうやら向こうも弧を描くパスを渡してから叶星に抱えられて離脱する紅巴ちゃんからアクロバティックに受け取った灯莉ちゃんがフィニッシャーの姫歌ちゃんまで、問題なく回し終わったようだ。ならこれで──なんて余所見をしていたら、例の特型に命中した幸恵のフィニッシュショットによる爆風に曝される。

 

「……っと、やったみたいだね。後はあのギガント級を!」

 

 加えてギガント級の方もかなり近くで特型を撃破したのもあってか余波で右肩の巣のような物も潰れているのだから、今が狙い目。

 

「任せてください! 絶対に逃がさないんだから──《この世の理》!」

 

 それが姫歌ちゃんのレアスキルか。力のベクトルを感じ取る事で敵味方の動きを先読みする能力──なるほど、フィニッシュ役には適任みたいで。

 

「んー? 待って定盛、なんか様子がヘンだよ」

 

「えっ、そんなこと今更言われてもひゃあ!?」

 

 なんでこのタイミングで止め──灯莉ちゃんの片方だけ開けた目の先でスコープ状になったマギの光、彼女のレアスキルは『天の秤目』みたいだけど、何が見えた?

 とはいえ引かれた引き金は今更元に戻らず、急な制止に多少体勢を崩しつつもギガント級の顔面目掛け、姫歌ちゃんのフィニッシュショットは放たれる。

 

「──っ!」

 

 だが、マギスフィアがギガント級へ着弾する寸前、甲高い金属音のような音と共に何かに阻まれたように見え──私は咄嗟にグングニル・カービンをそこへ向けて全力で投げ飛ばしていた。

 

「近くの皆は伏せて! 爆破するッ!」

 

 そのままちょうど連結させていたからと片側のシールドのバスターキャノンを放ち、マギスフィアを巻き込むように投げたカービンを爆発させる。

 

「「きゃあああ!?」」

 

「……っ、ダメか!」

 

 姫歌ちゃんたちの前まで跳んで庇うようにフィールドを張りながら様子を伺うが、前の時同様威力の大部分は『リフレクター』に殺されたようで、表面に多少ならず焼け焦げた痕を残しながらもギガント級は未だ健在──しかし身の危険を感じたのか、浮き上がると開いたケイブを通り離脱していく。

 

「に、逃げたの?」

 

「外れたのか!?」

 

「ううん。定盛の狙いはバッチリだった……けど、なんかバリアーみたいなのに防がれたみたい」

 

 フィニッシュショットの様子を見て慌ててやって来た楪に語る、灯莉ちゃんの言葉は正しい。まさか、立て続けにこの手のに当たるとはね。

 

「やれやれ、こないだのやつだけかと思ったら……どうにも日々やりづらくなるなぁ」

 

「ん? 今のに心当たりがあるのか」

 

「まあね、こんなに早くまたこの手のヒュージの相手をするとは思わなかったけどさ……ともかく今は皆と合流しよう。向こうが引いてくれたならその余裕も「あ、いたいた。おーい雪華ー!」葵ちゃん?」

 

 総勢十八名でギガント級及びそれに率いられたヒュージ相手にここまで派手な大立ち回りを演じたからか、ようやく合流できたとここまで跳んでくるのは葵ちゃん。こんな大乱戦じゃ探してる余裕なんてなかったけど、無事で何よりだよ。

 ……ところでさっきは持ってなかったはずの荷物が、いつの間にか増えてるのはなんなのか。

 

「あー、そういえばせっちゃんせんぱいって最初あの子と来てたんだっけ」

 

「まあ、成り行きだけどね……ん、『せっちゃんせんぱい』って私のこと?」

 

 答えるだけ答えてから灯莉ちゃんからの変な呼び方に戸惑うけど、ギリギリ自分のことだと分かってしまうラインなのがまた。むしろ葵ちゃんの方が顔も引きつっててダメージがありそうだし。

 

「え、先輩? タメじゃないの?」

 

「おう。一応三年らしいけど、そんな気にしなくていいってさ」

 

 実際楽にしてくれている楪が気軽そうに告げるが、先輩は先輩でも二年と思われてたのか今度はオーバーリアクションが。

 

「ふーん、三年かぁ……えええええっ!? なんで黙ってたのさ、てっきり楓のこと話す感じから同学年だって思ってたのに!」

 

「いや、一応ウチのガーデンって下の子相手にさん付けくらい普通だし? 私は一年ちゃん付けの二年以上呼び捨てが基本だけど」

 

 というよりは結構接点多そうな言い方だったから、だろうか? なんて変な分析をしていると、気を取り直した葵ちゃんは空を指差しながらその先を見上げていた。

 

「むぅ……で、それはそうと今ギガント級っぽいの、逃げてったわよね?」

 

「「…………」」

 

 それはギガント級の消えていったケイブのあったところなのだから、誰も何も言えなくなると楪が場を繋いでくれる。

 

「あー、そのことは今から休憩がてらの作戦会議だ。葵だっけ、アンタも一緒に来るだろ?」

 

「勿論!」

 

 ともかく、これでこの戦場にいるリリィ全員と合流になるはずだ。ノインヴェルトで消耗したマギの回復やCHARMの調整のため休息も必要なワケだし、このまま突撃だなんて馬鹿なことはやってられんけど。

 

「ところで葵ちゃん、今までどこで何してたのさ?」

 

「えっと、実はルド女の方に出ちゃって……いや、わたし前にちょっとの間ルド女に通ってたから見慣れてる道だったしで、その」

 

 ふむ、なまじ土地勘があったばかりに慣れた方に迷い込んでしまったと? なんともまあ。ともかく長居は無用だと、見える限りのヒュージは撃ち落としながら一旦後方へ下がるとしよう。

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