シモキタ遠征のリザルトタイム。にしてはなんか伸びたけど、だってここルド女の守備範囲よ?という思考がどうしても、ね。
あ、向こうの更新分に追い付いたので毎日更新はここまでで、来月からは不定期になりますわ。その代わりに章タイトル(部だけど)を。
「終わっ、たの?」
残ったギガント級の下半分が連鎖的な爆発をしながら倒れ、最後にド派手な爆発で夜空を照らしてしばらく経ち、ようやく実感が追い付いたようでペタンと崩れるように座る姫歌ちゃんの呟きに、他の面々も構えていたCHARMを下ろし息を吐く。
「ふぅ……結局日付変わっちゃってるし」
私がケータイで時間を確かめると時刻は既に午前0時を過ぎていて、周りの様子は疲れ果てて座り込んだり、CHARMを杖代わりにしたり壁にもたれたりと程度は違えど全員が全員疲労困憊。これ以上やっていたらまた脱落者が出かねなかった有様だ。
「皆ありがとう、おかげで下北沢を守ることが出来たわ。ルドビコ女学院のリリィを代表してお礼を「それは、私がやるべきでしょうね」
そんな中皆の前に出てお礼を言おうとした幸恵の隣に現れるのは、スラッと背筋を伸ばしたポニーテールのリリィ。専用機なのだろうCHARMを腕に添えるように持つ、幸恵や佳世と同じジャケットを羽織った彼女は、すなわちテンプルレギオンの一員ということで……
「
「そうね、ここまで時間が掛かってしまったのは事実。だから救援に来てくれた皆、私たちの代わりにこの街を守ってくれて、ありがとう」
「……まあ、リリィとして当然のことをしたまでですわ」
純の疲れながらもキレの落ちない皮肉にも怯まず、真っ正面から掛け値なしの感謝を示されてはさしもの彼女もそれ以上強く当たることは出来ないようで……やっぱ根っこは善良よね、船田純ってリリィは。
というのはさておき、少し気になった部分があるので現地の子を捕まえて聞き込みを。
(ところで佳世、『一之宮日葵』って言ったらあの〈イルマ四天王〉よね?)
(あ、はい。そうなんですけど、今年度から日葵さんはイルマ女子からルド女に転校してきまして……)
〈イルマ女子美術高校〉──ルド女や御台場と同じ東京御三家の一角で、そこのトップレギオン〈イルミンシャイネス〉選出メンバーの中でも現二年生世代の、全員が御台場迎撃戦参加者だったりと色々実績のあるガーデンを代表する四人のリリィが一人、それが去年先輩たちから噂に聞いた中にある一之宮日葵というリリィの概要。もっと言うなら、四天王のもう一人の子と夢結や幸恵たちと同じ第1部隊の所属だったってところ?
(イルマの同志からの情報では、その迎撃戦の縁がルド女への転校理由のひとつだと……もっと大本の部分は、デリケートな情報だと提供を断られてしまいましたが)
(や、ナチュラルに人の思考読まないでね紅巴ちゃん? けど、それなら百合ヶ丘に取られてても不思議じゃなかったんじゃないの?)
幸恵や楪、イルマの二人を除いて第1部隊のメンバーは夢結や聖を初め半分以上が百合ヶ丘のリリィだったのだから、彼女のような逸材がガーデンを出るというのならその内の誰かが勧誘したりしていてもおかしくないのに、そんな噂が微塵もなかったってことは、どうしても転校先がルド女でなければいけない理由があったのだろうか?
(あはは、その辺りはそこまで複雑でもないと言いますか……日葵さん、転校してから最初の出撃の時幸恵さんへ『あなたと一緒に戦うためにルド女へ来た』って言ってたらしいんで)
(ほうほう……佳世様、その辺りもっと詳しく)
あーあー紅巴ちゃんスイッチ入っちゃったし。とヒートアップするリリィオタク組から少し離れて眺めていると、佳世へとことこと近寄る人影が一人。
「ん?」
「佳世お姉様!」
「つ、つぐみさん!?」
お姉様、と呼びながらやってきたということはこの青っぽい髪にたれ目な子が佳世のシュベスターということでいいのだろう。
そして、辺りを見てみれば他にもテンプルレギオンに指名されたメンバーらしきルド女のリリィが続々とやってくるから、後始末は任せてよさそうだし鎌倉組の私たちはそろそろ帰るとしようか。てか明日というか今日も普通に学校だし、月曜日なんて来なければいいのに。
「そんなこんなで葵ちゃん、そろそろ時間が……ダメか、向こうの子たちと話し込んでるし」
多分さっきの話に出てた中等部時代の知り合いと、先輩らしき何人かに囲まれてて聞こえてないなこれ。
「んーむ……「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」んん???」
なんて少し目を逸らした間に、隣から過呼吸になってる感じのヤバそうな息遣いが聞こえて見てみれば、そこにはなんかもう今にもぶっ倒れそうな顔色の紅巴ちゃんが。いやなんなの?
「これが生シュベスターの威力ですか……大したものですね……ごふっ」
「おーーーい?」
威力と言われても、単に名前呼ばれただけでは……なんて疑問を持つのも程々に、そのままフラっと倒れちゃったもんだから私が紅巴ちゃんを受け止める形にはなるんだけど、なんでごふった? 口の端から血垂らしてるし。
「……ブリ、そこの子何かあったの?」
「へ? くくく紅巴さん!?」
なんて騒いでいるとまあ注目も集める訳で、グリップエンドにバックファイアユニットを装着したカスタムタイプのグングニル・カービンを手に青い長髪のリリィが寄ってくれば、彼女に呼ばれた佳世も魂抜けてる感じになってしまった紅巴ちゃんを見てあたふた。
「成仏……したみたいだね」
「んー、とっきーならその内起きるから平気じゃないかなぁ?」
当然そんなことになっていればルド女側どころかこっちの面々も気付いて、瑤がなんかキメ顔で断言してたら紅巴ちゃんと同じレギオンの灯莉ちゃんはいつものことと慣れた様子。
とはいえ今来た側からしたらこうも複数ガーデン入り乱れてるのは、少し物珍しそうにされる訳で。
「へぇ、話は聞いてたけど本当に所属バラバラなのね」
「寄せ集めってのは事実だからねぇ、てかそういうあなたは?」
彼女もまあテンプルレギオンのジャケットを着ている以上ルド女の子で、佳世と普通に話してるし二年なんだろうけど……去年先輩たちから聞いた話には、こういう風にCHARMを個人用にカスタムしてる子の情報ってなかったような。
「あ、こちらは
「ちょっとブリ、わたしの言うことなくなるでしょ?」
ともあれリリィオタク特有の語りたがりで聞きたかったところは全部分かった、にしてもヘイムスクリングラねぇ……
「雨嘉ちゃんの母校かぁ、相変わらず世間は狭いことで」
「あぁ、そういえばあの子百合ヶ丘行ったんだっけ。その様子だと知り合い?」
「ま、同じレギオンの後輩だからねぇ。近頃は元気に同室の子と〈イノチ感じてる〉とは言っとくよ」
「「!!!」」
名乗ってないからか反応も気安いけど、何故か私の返事には急に起き上がる紅巴ちゃんやバッと身構える佳世の方が、話し相手の渚よりリアクションが大きい。
「お姉様?」
「ホントだ、生き返った」
つぐみちゃんだかと瑤のWブレイブ持ちがオタクコンビの様子に反応する中思い出す、いつぞや二水ちゃんから聞いた『雨嘉ちゃんと神琳さんの仲はリリィオタク界隈では有名だ』って話に片手で頭を押さえる。
「いや、ここでこの話繋がってもなぁ……」
となるとその情報源たる二水ちゃん自身も、リリィオタク同士のネットワーク上では相当有名になってるのでは? なんて考えが浮かぶけどそれはそれとしてここまで人が集まったからと、疲れた身体に鞭打って立ち上がるのが一人。
「あの、少しよろしいでしょうか」
「あなたは……救援に来てくれたっていうエレンスゲのリリィね」
「はい、エレンスゲ女学園序列1位、LGヘルヴォルリーダーの相澤一葉です」
「また大物が出てきたわね。それで、何かしら?」
現場におけるルド女側の代表、ということになる日葵の前までフラついた足取りながらもたどり着いた一葉ちゃんは、特に含みもなく要件を聞かれたのもあってそのまま言葉を続ける。
「今回のケイブ、恐らくゲヘナによる仕込みであると、私は思っています」
「……そうでしょうね。同時にふたつの群れがこの近さで襲来するなんて、偶発的に起こったとするには不自然な程、出来すぎた話だわ」
しかしその辺りについては流石に地元組、言われるまでもない……というよりは、別に心当たりがある感じだろうか。
「つまり、さっき言ってた未来様の話?」
「……ああ。それに前にも来夢が一人でいるところにケイブが発生したり、ゲヘナのやり方っていくら疑われたって構わないくらい露骨なんだよ」
それを聞いて葵ちゃんが話してるサイドテールの子は、さっきの話に聞いたソフィア様だか聖恋ちゃんだかだろうか。実際政府がグルだって言うのなら、ゲヘナが首都で何をしようが不慮の事故だなんだと適当に処理されてお終い。現場の声など、何処にも届きはしないということ。
……だから多くのガーデンのリリィが集まっている今一葉ちゃんは動いたんだろうけど、彼女と日葵の間にスッと入り込むのはどこかお人形さんのようにも見える程整った容姿の、青いリボンをした黒い癖っ毛なルド女のリリィ。
「百合亜お姉様?」
そんな彼女に反応して聖恋ちゃんの呼ぶ名前は……なるほど、いつぞや言ってた麻嶺の用事の相手だったって『百合亜ちゃん』。ともかく彼女は一葉ちゃんの顔を覗き込むと、試すように問い掛けてくる。
「聖恋の言う通り、単なる実験動物でしかないリリィに疑われたところで、ゲヘナにとっては痛くも痒くもないわ。この下北沢のように街を焼いて、それが世のため人のためだと言い続けるだけよ」
「……だからこそ、その欺瞞を暴かないことには本当の意味で人に、世界に未来はありません!」
随分と大きく出たね。それが間違っていないっていうのが、今の世界が抱える歪みなんだろうけど。
ヒュージという危機を前に一致団結──なーんて夢物語をお題目としても、水面下では結局親ゲヘナと反ゲヘナのふたつに分かれて争っているのがヒトって生き物なのだから、仮に野生のヒュージを全て根絶したところで、今度はマギの力を以てヒトとヒトとで争う前世紀より何も変わらない構図が表層化するだけ。ならば先に潜在的な敵を潰しておかないと、いつまで経っても平和な世の中など夢のまた夢、終わりのない戦いが待つだけだ。
「なら、そのためにあなたに何が出来るというんですの。エレンスゲの序列1位さん?」
「私は……私だけでは、どうせガーデンの上層部にすら言葉が届くことはないのでしょう」
なんて私が心の中で世界を嘲笑っていると、純からの挑発的な質問にどこか自嘲混じりな返しをする一葉ちゃん。そりゃあこうも学園のやり口へ反抗的なのに序列は変わらず1位のままとなると、子供のやることなどたかが知れていると意図的に見逃されているだけともなるか。
「いくら私が現場で叫ぼうと、影響を与えられるのは精々指揮を執る教導官や、他のリリィ程度……だからこそ私は、ガーデンの垣根を越えて協力を申し出たいのです」
「……つまり?」
「こちらからも怪しいと思われる案件の情報は提供させて頂きます。ですので皆様も、出せる限りの情報で構わないのでお教え下さい!」
吐き出しながら頭を下げる様子に、これは渡りに船、というやつだろうかと一葉ちゃんの元へ寄ると、少し屈んで目線を合わせる。
「色々ちょうどいい話だねぇ、私は乗らせて貰うよ」
「雪華様……!」
ガーデンの立場上、そして東京へ行く前に主任から言われていたこともあって、逃す理由は無いもんでね。
「なるほど、親ゲヘナガーデンのリリィだからこそ見えてくる物もあると。どうするの、日葵隊長?」
「……確かに、こういった案件でガーデンをあまりあてに出来ないのなら、現場のリリィ同士でもある程度情報を共有する必要はあるわね」
「だったら、ルド女からはわたしと佳世が参加させてもらうわ。直接会う必要がある時でも、表向きは一緒に戦った戦友同士の集まりということに出来るでしょうし」
自分たちの守るべき土地でこうもゲヘナに好き勝手されたならと、ルド女組の反応は悪くない。会話に参加していない面々も、連中のやり口は見てきたろうし。
「……ってわたしですか!?」
「あら、相談ついでに色々他校のリリィ情報を聞けるかも知れないわよ?」
「うっ、そう言われると非常に魅力的といいますか……いやでも……」
「お姉様、頑張ってください!」
ふんふん、迷い気味な佳世に発破を掛けるように、
「わ、分かりました……やります、やらせてください!」
「ええ。そういう訳だから一葉さん、よろしくお願いするわね」
「ありがとうございます、幸恵様、佳世様!」
ともかくここのラインは問題なく成立したし、友人なのだろう二人の様子に百合亜も納得したのかシュベスターの隣へちょこんと戻っている。にしても、こういう時一葉ちゃんと一番親しい他校のリリィだろう叶星が大人しいのを意外に思って探してみれば、大分お疲れモードな高嶺の横に座って、何かを考え込んでいるのが見えた。
「叶星様? もしかして何か問題でも……」
「あ、紅巴ちゃん? 今のに参加するのは大丈夫なんだけど、ちょっと別のことをね」
同じく気付いた紅巴ちゃんがそっちに寄って問い掛けると、叶星も答えはしたものの微妙に暈してて要領を得ないし「
「ん、あーそういや秋日って今神庭の生徒会長なんだっけ?」
「えっ、聞こえてたかしら?」
ん、また変な方に飛び火した? 恋花が聞き覚えのある名前が出たぞと、叶星の横に座って話に混ざりだすし。
「あはは、ごめんごめん。急に知り合いの名前が聞こえたもんだからさ、それに幕張奪還戦じゃ、あたしらも秋日んとこの子に大分助けられたしね」
「今の生徒会で参加してたのは……
「そうそう、マジ『覚醒者に弱者なし』っていうかさー」
恋花の言い方からして『円環の御手』なんだろう藤乃……神庭……あれ、なんだろう、悪寒が。え、会ったこと……ないよね? え?
「あの、大丈夫、ですか?」
「あ、うん。気のせいだと……」
なんて謎の感覚に戸惑っていると、ルド女の下級生っぽいツインテの子に心配されてしまう訳で。ん、てか持ってるCHARMがアステリオンってことは……
「えっと、あなたが来夢ちゃんでいいのかな? 未来の妹で幸恵のシュベスターな」
「はい、岸本・ルチア・来夢です! 幸恵お姉様から聞いてました?」
直接聞いたのは葵ちゃんからだったりはするんだけど、一応幸恵も話題にはしてたし頷いたんでいいと思う、多分。
「まあね、『わたしたちのシュベスターもやわじゃない』ってさ」
「えへへ、まだ高等部からの新米リリィですけど、お姉様のご指導もあってなんとか頑張れてます!」
そこで来夢ちゃんがおにぎりを握るような仕草をするのは、新人の方の新米とお米的な新米をかけているのだろうか? でもそうやってるのも似合うんだから、可愛いっていいなぁと。
「ところで、お姉ちゃんのことも知ってるんですか?」
「ん? そりゃ私たちの世代でルド女の〈鬼神〉を知らなかったらモグリでしょ。そんなに話したことはないけど、遠征先の戦場ですれ違ったくらいなら何度か」
なんて話していると向こうの話も進んでいるようで、椛さんや純といった御台場の隊長陣が混ざっていた。
「そういう話であれば、我々も参加するのは吝かではありませんが……」
「いざ提供したらゲヘナにも全部筒抜け、というのは勘弁ですわよ?」
聞く感じ御台場組も割りと話に乗ってはくれても、実際連絡経路は問題か。親ゲヘナガーデンのメンバーもいる以上、表の連絡手段じゃどうしたって足が付く。
「それならひとつ、当てが無いこともないけど。ちょっと時間貰うね」
この時間だと若干怪しいけど、ケータイを取り出して目的の番号を呼び出し……ん?
『本日の営業は終了したので、上に繋ぎますですね』
「???」
繋がったと思えば聞こえる、わざわざ霊奈さんが自分で録ったのだろう謎な喋りのガイダンスボイスの後、再度のコール音……いや、『上』ってことは。
『霊奈? あなた今日は早めに休むって言ってたじゃない。それとも、わたしの声でも聞きたくなっ「姉さん?」はっ? えっ?』
あ、これ『素』が出てるな。
──別におかしな話じゃない、そこまで大きな会社でないにせよ、百合ヶ丘に通うような社長令嬢サマが男口調だなんて何かしら理由があるんだろうなぁ。とは姉さんたちの在学中から薄々と察してはいたし、不意にその『仮面』を外す相手が霊奈さんだっていうのならむしろ納得だしで。
『んっんー、その……コホン、こんな時間になんの用だよ?』
「……そのまま続けるんだ? まあちょっと確認というか、
『なんだ、レギオンの方で使うのか?』
「いや、今下北沢にいるんだけど、今回のケイブがゲヘナの仕業なのバレバレじゃん? だからそこで知り合った子たちと、色々情報交換するためにアレ使いたくてさ」
とりあえず隠す必要もなく状況を伝えると『シモキタァ!?』となんか慌てた反応からマイクを手で塞いだのか遠くに聞こえるようになった姉さんの様子は、周囲の誰かしらに色々確認しているようで。
『……事情は分かった、けど今そこにゃ結構なガーデンからリリィ来てたろ。1ガーデンにつき二人、それ以上は回線の方で誤魔化しきれねーからな? 鎌倉と違って東京は連中にとっても膝元だ』
「はいはい、じゃあ後で希望者のアドレス送るから。おやすみー」
言質は取った。ならもういいかとこれ以上の返事も待たずに通話を切ると、今の話の結果を皆に伝える。
「で、とりあえず前のレギオン時代使ってた連絡用のアプリ、姉さんの会社から送ってくれることになったよ」
「雪華様のお姉様……つまりは烏丸重工のご令嬢、烏丸零夜様ですね!」
そこで佳世に食い付かれるのは……まあ幸恵に私たちのこと話してたみたいだし、知ってないとおかしいか。
「まあ、ね。企業の内部用で秘匿性は高いけど、乱用するとバレやすくなるから1ガーデン二人までだってさ」
「ならルド女からは幸恵と佳世、二人に任せるわ」
「ええ、分かったわ」
ルド女の方はとっくに担当が決まっているのだからと、日葵がサッとまとめて次はもう片方の御三家な御台場組へ。
「当然、ロネスネスからは隊長としてわたくしが受けさせて頂きますわ」
「そうね、それが筋というものでしょう」
「ならセインツからは私だな。純のやつだけに任せたら偏った情報ばっかり「ゆず」……そ、それに椛は会長として忙しいもんね?」
完全に手綱を握られてる……まあ、楪の言い訳も別に間違ったことは言ってないし、それでいいんならいいんだろう。多分。
「んじゃ、ヘルヴォルからはあたしと瑤でいい? これでもガーデンじゃ顔広い方だからさ」
「確かに、おふたりがこの中ではエレンスゲで一番長いですね。瑤様、お任せしてもよろしいですか?」
「うん。任された」
そしてヘルヴォルからは、コンビらしいコンビの二年生二人が。同じ二年でも千香瑠は話を聞く感じ東京に来たのすら二年前ヒュージに甲州を追われてからだろうし、下級生の二人は単純に一年の差があるのと、色々目立ちすぎて敵も多いだろう一葉ちゃんと性格的にそういうのにはてんで向いてなさそうな藍ちゃんなのだから、まあ妥当というか。
「じゃあグラン・エプレからは「叶星様っ!」姫歌ちゃん?」
「あのっ、この話あたしと紅巴に任せてくれませんか?」
ほむ、このままサクサク決まるのかと思ったら、何やら意気込んだ感じの姫歌ちゃんが割り込んで来る。
「それはいいんだけど、どうしたの?」
「あたしは、ひめかは誰かの笑顔を守りたくてアイドルリリィをやってるんだと思います。だから、こんな酷いやり方は許せなくて……」
「えっと、わたしでいいんですか?」
まあ、普通の感性をしていればゲヘナが意図的に街を滅茶苦茶にしているなんて知れば、誰だってこうなるだろう。それで紅巴ちゃんもっていうのは……あれか、リリィオタク特有のネットワーク頼み。
(のう佳世殿、ちと相談があるのじゃが……)
(こ、こころさん?)
……ん? なんか視界の端で、ミリアムちゃんみたいな喋り方のサイドテールな子に佳世が絡まれてるし。ジャケット的にテンプルレギオンではあるんだろうけど、何故にこのタイミング?
ともかくこれで各ガーデンの定員は埋まったってことでいいんだろう、私と葵ちゃんは元から一人ずつだし、そもそも都外だし。
「はいはい、とりあえず後日企業からの依頼がどうこうって形でメール届くようにしとくから、参加者のアドレス集めるね」
私たちの時も表向きはそういう風になっていたし、それぞれのアドレスを登録ついでにメモっていると、ケータイの時計が1時を……え?
「あ、やば」
「どしたの雪華せんぱ、あっ」
終電、過ぎた……別に現地な東京組はまだいいだろうけど、鎌倉組な私たちにとっては結構困る話な訳で。いや頑張ればギリこの身ひとつで帰れなくはないけど、それやると確実にマギも体力もズタボロなまま、ろくに寝れず授業まで受けてられるかってなるし、さて?
「ん、あれって……よし、葵ちゃんなんか荷物ある?」
「え、特にないけど……うわっ!?」
その時再出撃前にいた公園へ見覚えのあるのが降りていくのが見えたから、葵ちゃんを連れて突入するしかあるまいて。
「んじゃ、後は色々よろしく。ごきげんよう!」
「ちょ、皆またねー!」
◆◆◆
「はあ……ったく、結局雪華をこっちの問題に首突っ込ませたのかよ。霊奈のやつ好き勝手やりやがって」
とはいえ直接文句を言ったところで「あの子の意見を尊重しただけですよー」とのらりくらりかわされるだけなのは目に見えているから、一人ごちるだけにして通話を終えた零夜はテントを出ると公園に残っていたリリィの元へ。
「それで、君はルド女の生徒だったね? 今車を回させてるから、こっちで送らせて貰うよ」
「い、いえ。もうちゃんと歩けますから」
「そう言われてもこんな時間に怪我人を一人で帰らせる訳にもいかないし、ガーデンの方にも話通しちゃってるんだけど?」
若干のお仕事モードで琴陽に話し掛けると、遠慮なのか警戒なのか分からない反応をされるのはまあ予想通り。『不自然なこと』はお互いにやれないと、ここからは腹の探り「よし、やっぱり姉さんのやつだ!」
「……ん?」
さて、機材撤収のために呼びつけた会社のガンシップになんか他所の生徒と大量の荷物を放り込んでいるバカは、いったいどこの誰なのか? その答えはガンシップの後部ハッチから顔を覗かせる、零夜の元シルト。
「姉さん、悪いけどこれ借りてくよ! 明日遅刻したくないんでね!」
「……あのなぁ、久しぶりに顔合わせた元シュッツエンゲルに言うことがそれかよ!?」
「さっき電話したばっかりでしょ。じゃ!」
そのまま雪華が内側から操作してハッチを閉じた途端ガンシップのエンジンが始動しているが、これに関しては社員からも「どうせお嬢はなんだかんだ言っても最後は許可する」と理解されているが故だろう、というのがなんとも。
「……ったく」
「あの、今のって」
「ああ、俺みたいなのが擬似姉妹契約結んでたのが意外だってんなら、百合ヶ丘にいた頃散々言われ慣れてるよ」
こうなると最早取り繕うのもアホらしいと、琴陽への返事は肩を竦めながら普段の調子で。
◆◆◆
「久しぶりなはずなのに相変わらずって感じするの、なんなんでしょうねー」
「そんな数ヶ月ぶり程度で言われてもねぇ」
お土産と葵ちゃんを放り込んだ機内、馴染みの操縦士さんと軽口を交わしていると、そろそろツッコミも諦めた感じの葵ちゃんがとりあえずという感じに聞いてくる。
「つまり、さっきの人の在学中からちょこちょこ借りてたってこと?」
「いんや、流石にレギオンとしてだけど。ま、顔見知り程度には乗ってたかな?」
つまるところ当時は姉さんがゲヘナのラボにカチコミかける時に使っていた、ということで。まあそこまで葵ちゃんに言う必要はないけど、目的は聞かずとも半目になられる。
「あの人といい、ホントこの世代はめちゃくちゃやってるなぁ……」
「そうでもしないと生き残れなかった、とまでは言わないけどね」
頭ん中でデュエル世代の知り合いと並べられてるようだけど、相模で有名な三年ってなると──ん……ぁ……限界か……これ……
「とりあえず……サガジョを、先に……んぅ……」
◆◆◆
「寝ちゃった。まあ、これだけ荷物あるってことは結構歩き回ってたみたいだしなぁ」
雪華の意識が飛んだ後、ズラリと空いた席に置かれている公園までの道すがら彼女がコインロッカーから回収していたお土産の数々を見て、下手しなくとも半日以上は動きっぱなしだったのだろうかと葵が思っていると、操縦席から声が。
「多少仮眠取っててもいいですよ、着く前くらいには呼びますんで」
「はーい。それじゃわたしも……」
軽い気分転換のはずが、随分と長い一日になってしまった。向こうに合流するのが遅かったとはいえその前にもちょこちょこヒュージと戦っていたのだから、葵の方も人のことを言えないくらいに疲れは溜まっていたと、目を閉じればそのままやってきた睡魔に身を委ねる。
◆◆◆
会社の車、と用意された物の車内──ルド女への道すがら特に話題もなく沈黙が続く中、赤信号に止まったところで不意に零夜が口を開く。
「──それで、このとりあえず特型投げ付けとけばいいだろってやり口は〈プロフェッサー〉の仕業だろ?」
「……ッ!」
不味い、と琴陽が慌ててグングニル・カービンを手に取ろうにもCHARMはケースごと後ろのトランクの中。しかし自分が今出された異名を持つ人物の手の者と分かった上で車内に連れ込んだのなら、今すぐ危害を加えるつもりは無いのだろうかと警戒はしたまま、ここは零夜の出方を伺うしかない。
「そのことを私が肯定したとして、何か意味が?」
「いいや、何も? けど、これで俺が今回の裏を分かってることは伝わったと思いたいが……その上で相談がある」
つまりは見逃す代わりに何かしらの情報を渡せと取り引きを持ち掛けようという腹積もりのようで、どの道バレてしまっている以上琴陽側に選択肢など無きに等しいのだから、わざわざこちらに聞いているポーズだけされても良い性格をしている。という感想にしかならない。
「……何が目当てですか」
「今回の『実験』の戦闘データ──どうせチラチラ見てたってのはそういうことだろ? そのコピーでいい」
現物を寄越せ、でなく写しでいい。というのに少しの引っ掛かりはあるが、最悪そのついでに消されたとしても重要な分はリアルタイムで送ってあるからと、零夜に片手で差し出された端末を受け取るとそれを琴陽は自前のタブレットへ繋ぐ。
「…………さて、ここから先はガーデンから迎えが来てるはすだ。ご協力感謝する、とは言っておくよ」
しばらくして、瓦礫が目立つ地区に差し掛かった辺りで零夜が車を止めたのに合わせてドアを開け車の後部からCHARMケースを回収すれば、車のガラス越しにルド女の制服を着て水色の髪をポニーテールにしたリリィが一人……連絡を受けて琴陽にも見覚えのある彼女が、わざわざ迎えに来てくれたようだ。
「こちらも、一応お礼は言っておきます」
お互いなんとも上っ面だけの言葉ではあるが、ここ東京に渦巻く物を考えればこの程度は可愛いものだろうと、そのまま窓から出していた顔を引っ込めた零夜が車を走らせて去って行けば、見送るまでもないなと視線を切ったところへ先輩から声を掛けられる。
「今のは烏丸の令嬢か、また随分と厄介なのに目を付けられたようね」
「お手数をお掛けします、
「いえ、私も気になってはいたから。あなたのことも、あちらのことも」
美岳と呼ばれた二年生は油断なく零夜の車が去った先を見ながら、前のガーデンにいた頃から聞いた話も合わせあの会社がどこまで干渉してくるつもりなのかと思案する。少なくとも琴陽へ手を出さなかった以上今すぐこちらと事を構えるつもりはなさそうだとしても、それがいつまで続くことやらと、警戒するように。