アサルトリリィ~円環の赫星~   作:ですティニー

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前回のあらすじ:ちょこちょこ増える人脈とぁああああ!!一回目。それとリリィの嗜み的な。
八重樫センセのスパッツ梅様いいよね…あと夢結様はアニメ1話の甲州撤退戦の回想見る限り見せパン。
多分他時空の初陣も混ぜたくて、人数多めにしてるんだろうなとは。クロスオーバータグの意味の一つは、ちょくちょく挟む見覚えのあるような台詞的な。


小さな世界を護る者

 わちゃわちゃしていた梨璃ちゃんたちの近くに降り立つと、未だ『ルナティックトランサー』暴走中な夢結と交戦中のヒュージへアステリオンの銃口を向け睨み付ける。

 

「抑えられないって言われた矢先にこれだよ。あのレストアめ……何人()った?」

 

 この間軽く話を聞いただけでも大分不安定そうだったのに、降りる途中にも見えたヒュージの背に無数に遺されたCHARMの山を叩き付けられたとあらば、こうもなるか。

 なんて考えていたら、後ろから冷ややかな声が飛んでくる。

 

「あーら雪華様、随分と重役出勤ですねぇ?」

 

「うっ……こないだの、まだ根に持ってる? 私のデュエルの実力なんて、あれくらいの無茶前提だって知ってるでしょ」

 

 振り向くとそこには、眼鏡を鋭く光らせながら威圧してくる百由の姿。またも壊したCHARMの修理を黙って押し付け、ついでに色々追加の調達も頼んだのもあってか、随分とご機嫌斜めである。

 

「にしたって単なる手合わせであれはわしもフォローしきれんぞー、流石にやりすぎじゃ」

 

「んぐ……ともかく、ああなった夢結をどうにかするアテあるの? 都合よく『ブレイブ』持ちさんとか、どっかに落ちてない?」

 

「仮にいたとして、元チームメイトの梅さんですら離れてヒュージの気を引くようにしか動けてない時点で、そこら辺に落ちてるレベルのリリィじゃ近寄った瞬間にバッサリでしょうに」

 

 一理ある。そもそも今周りにいるのはパッと見る限り見覚えのないリリィが多く、ほとんどが一年生だろう。

 この状況について行けてなさそうな彼女たちがお目当てのレアスキルに覚醒しているかどうかはともかく、トランス状態の夢結の動きについていける程の腕の子がいるかどうかと言われると……まあアプリゲームの単発ガチャレベルの可能性。ヤケで回して当たればおめでとうだけど、流石にリアルで試したくはない。

 

「となると私がやるしかない、か……こういう時に『あの子たち』修理に出してるのが心許ないけど、皆の邪魔にならんよう夢結のマギが切れるまで相手するだけなら、まあなんとかやれるでしょ。さあ行こうか、レアスキル《円環の(サークリット)「あのっ、雪華様!!」……ん?」

 

 そう覚悟を決めアステリオンを勢いよく振ってアックスモードにしながら、右手をグングニル・カービンのグリップに回しいざ飛び出そうとしたところを、梨璃ちゃんに左腕を掴まれ呼び止められた。ふむ、何か策でもあるのだろうか。

 

「どしたの梨璃ちゃん?」

 

「いえ、その……さっき夢結様の攻撃を受け止めた時、夢結様を感じた……夢結様の、声が聞こえたような気がしたんです」

 

 はて、見ての通り絶賛暴走中の夢結がまともに言葉を発せるとも思えないし、マギを通した精神感応の類いだろうか?

 てか、あの状態の夢結に近寄ってよく無事だったね梨璃ちゃん。それも持ち前の反射神経と、ここしばらくただひたすら夢結にしごかれていた成果なのやら。

 

 とはいえその手の話は噂に聞きはしても半信半疑というか、自分がなったことのない案件となると判断も難しい訳で。

 

「んー、どう思う百由?」

 

「そりゃあ、どういう原理かはともかく本当に精神的に繋がったのなら、やってみる価値はあると思いますけど……」

 

 そこで言葉を切ると、梨璃ちゃんに向き直って百由は話を続ける。

 

「だけどね梨璃さん、今の夢結はルナティックトランサーで自分からヒュージ側の、負のマギを纏っている状態。無理にあの子の心に触れようとすると、逆にあなたの精神まで引っ張られる可能性がある……それでもやるの?」

 

「……やります! 今はわたしもリリィなんです、シルトだからってただ守られてるだけじゃいられません! それに、あの時故郷でわたしを助けてくれた夢結様のように、誰かを助けられるようになりたくて……わたしは、そのためにリリィになったんだから!」

 

 上級生相手であろうとも一歩も引かず啖呵を切った、それが梨璃ちゃんがリリィになったワケ。

 二年前甲州で夢結に助けられたからこそ芽生えた、リリィとしての根底にある強い想い──ならばそれは、尊重されるべき物のはずだ。そう思うと、私の手は自然と梨璃ちゃんの頭を撫でていた。

 

「わっ、雪華様?」

 

「自分の周りって小さな世界を護るのにすら、私たちの手は短すぎる……けど、他の誰かと手を繋げば、多分この手はいくらでも伸ばせるよ。私たちのこの力はきっと、そのための物だからさ」

 

 そう言ってアステリオンの刃を、梨璃ちゃんの持つグングニルの刃にカチンと軽く鳴るように当てる。

 

 私の持つ『円環の御手』というレアスキル──そのリリィの生き様などに惹かれて目覚めるとされるこの力の、本質的な部分はそこなんじゃないかなと思う。伸ばす手が増えれば、誰かの手を掴める可能性もまた上がるのだから。

 そう考えると、他に持っているサブスキルたちも概ねそんな方向性のように思えた。一度ソロになったからこそ、仲間と戦うための力の意味を知るというのも、皮肉な話だけど。

 

「つまるところ、誰かを助けるためにリリィになったのなら、同じリリィを助けたっていい……少なくとも私はそう思うよ。それに、あり得ないことすんのがリリィでしょ?」

 

「……はい!」

「…………?」

 

 む、素直な梨璃ちゃんと比較するまでもなく、振り向きながら皆へ向け言った『決め台詞』への二水ちゃんの反応が怪しい。もしやこっち方面もイケる“同族”だったのだろうか……

 でも、元がどうあれ、これはもうそれらを飲み込んであたしの言葉にしているんだから、多分問題ないでしょ。

 

「コホン。ともかく、ほっといたら一人で無謀にも飛び込んじゃうでしょ。こういう子は?」

 

「なんならもう前科一犯ですけどねー。こうなるんなら、わたしもCHARM持ってくればよかったかな?」

 

 なんて横目で同じ担当外の工廠科生ながら、こちらはちゃんとCHARMを持って来ていたミリアムちゃんをチラチラと見ている百由。露骨が過ぎるが。

 

「ええい、わしもやればいいんじゃろが!」

 

「あは、話の早い子は好きよ?」

 

 これで頭数は集まって来た。梨璃ちゃんと楓さんと二水ちゃんは言わずもがな、梅も私が突っ込めば大体察してはくれるだろうけど、それでも戦力の未知数なレストアの相手をしようっていうには、ちょーっと足りないか?

 

「という訳で無茶に付き合うつもりな子、この指とーまれっと」

 

「そんな軽いノリで募集していいんですの?」

 

「ふふ、どうやらお困りのご様子ですね」

 

 なんて楓さんに白い目で見られながらも人差し指で天を差しながら言ってみると、私の言葉に反応して近寄ってくるのが二人。共に制服をカスタムしていることから、結構腕に覚えはありそうだ。いや、オシャレと実力が比例するのかは知らんけど。

 

 その子たちの内声をかけて来た方は上着をケープに替えて腕にはアームカバー……というのだったかを着けている、ライトブラウンの長髪を左側でサイドテールに結っている、赤と黄の虹彩異色(オッドアイ)な……いや、なーんかどっかで見覚えあるんですけど?

 

「くぉ、くぉくぉくぉくぉくぉくぉくぉ!?」

 

「くぉ……?」

 

 そんな彼女の姿を見た途端、壊れたラジオみたいになって梨璃ちゃんに首を傾げられている二水ちゃんの鳴き声のようなそれで、既視感が確信へと変わった。

 彼女は百合ヶ丘の学院案内の表紙や〈ワールドリリィグラフィック〉の雑誌モデル等でお馴染みな──

 

(くぉ)神琳(しぇんりん)さん!?」

 

「えっと、確か同じクラスの?」

 

「それだけでなく、神琳さんは台北市からの留学生ながら百合ヶ丘には幼稚舎から通っている、いわゆる『生え抜き』組のお一人なんです!」

 

 梨璃ちゃんが確認してくるのにも食い気味にオタクモード入るし、ご本人の前だってのに二水ちゃん、色々とブレないね。

 

「わたくしとしてはいつかお話したいと思っておりましたが……梨璃さんたちもお忙しそうでしたので」

 

 で、梨璃ちゃんたちは高等部入学……どころか、あの新聞によると入学式前からかなりド派手に立ち回ったというのだから、そんな彼女たちと同じクラスとなったのならそりゃあ気になって仕方ないだろう。

 

「それで、そっちの子は?」

 

「こちらは寮で同室の、(わん)雨嘉(ゆーじあ)さんですわ」

 

「よ、よろしく……お願いします……」

 

「あ、アイスランドの王いちぞもがががが」

 

 神琳さんの隣の黒髪の子、雨嘉ちゃんにもまたまた反応しそうになった二水ちゃんが楓さんとミリアムちゃんに押さえられてるってことは、こっちも結構な有名人に違いはないのだろう……って今はいいか。梨璃ちゃんも二人の方にてくてくと寄っていってるし。

 

「おふたりとも、ありがとうございます!」

 

「いえ、あんな状態の夢結様を放っておけないのは、わたくしたちも同じですもの。義によって、などと格好付ける程でもありませんが」

 

「援護くらいは、やれるから……」

 

 これでにーしーろー……後は梅とっ捕まえれば、例え相手がレストアのラージ級だろうと十分か。

 

「作戦らしい作戦なんかどこにもないけど、ともかく梨璃ちゃんを夢結のところまで行かせる。それが一番の目的、いいね?」

 

「「はい!」」

 

 ただヒュージを倒すことだけを目的とするのなら、今も狂乱し暴れる夢結が放っておいても勝手に達成してくれるだろう。

 しかしそれではいけない。私たちリリィは目の前の敵を倒すだけの戦闘マシーンではなく、一人の生きた人間だ。あんな風になった仲間をそのままにしておくなんて、自分で自分を許せなくなるから。

 

「そうそう、その前に……」

 

「な、なんですか?」

 

 懐から取り出した『ある物』を梨璃ちゃんの耳へかけ、そして私が元々着けていた同じ物を、本来CHARMとの契約やその起動に使われる右手の中指に着けている指輪でトントンと叩く。

 

「え、えーっと?」

 

「これ、指輪でCHARMと契約するみたいに登録できるからさ、真似して」

 

「はぁ……ところでこれ、なんなんですか?」

 

 まあいきなりよくわからん何かを着けられましたじゃあたまらんか、と一旦自分のを外して掌の上へ。

 

「インカム──まあ通信機の類いかな。これはリリィ用ので装着者のマギで動くタイプだし、登録すればある程度考えた通りに音量とか周波数とかの合わせや、マイクのオンオフもやってくれるよ」

 

「見たところCHARM技術の応用ですわね。となるとスポンサー企業辺りの?」

 

「そういうこと。いくつか試供品でね」

 

 CHARMメーカーのご令嬢である楓さんに言われた通りのスポンサーというか個人的なコネというかだけど、一応あれのテストを任されてるし多分どっちでも変わらんだろう。

 

「しっかし上から見ても思ったけど、このまま突っ込むには邪魔だねこいつら」

 

 自分のインカムを着け直しながら前を見ると、ヒュージの放ったミサイル的なそれらが浮遊機雷の壁とでもいう風に、夢結や梅のいるヒュージとの交戦エリアとこちら側との間へ無数に配置されている。この規模じゃ撃ち落とすのも迂回するのも面倒だし、どうしたものか。

 

「さっきより数が増えてる……ずっと夢結様たちと戦ってるはずなのに」

 

「それだけリリィを警戒してる、か。レストアってのはつくづくズル賢い」

 

「ならばそのような小細工など、圧倒的なパワーの前では無意味なのだと教示してやるまでじゃ!」

 

 そのまま私たちの先頭に立ち、グルングルンと愛機ニョルニールを頭上で回すミリアムちゃんの周りで、いつぞや見たような雰囲気でマギが渦巻く。

 

「これって、前に言ってたミリアムさんのレアスキル……?」

 

「そうじゃとも! 受けてみよ、これがわしの──《フェイズトランセンデンス》じゃあ!!」

 

 あくまで手合わせだからと力の使い方が限定された以前の亜羅椰ちゃんのそれと違い、実戦だからとその真価を発揮するレアスキル『フェイズトランセンデンス』。

 

「うぉおおおおおおお!!」

 

 その無限のパワーを注がれたCHARMがスパークする程のマギを光の奔流として解き放つと、ミリアムちゃんはニョルニールを思い切りブン回して、視界を埋めるミサイルを右から左へ根こそぎ薙ぎ払う。

 

「ふはははは、どうじゃ! 綺麗さっぱりと、したじゃ、ろ……うっ……」

 

「うわわ! 大丈夫ですか、ミリアムさーん!」

 

 とはいえそれが限界、S級でないフェイズトランセンデンスの使用後はマギを使い果たし、使用者はしばらくまともに動けなくなるのだから。

 

「あぁー……うぅー……」

 

「え、えっと、どうしよう?」

 

 そういった部分を話に聞いてはいても、急に脱力しヘナヘナと倒れ込み呻いているミリアムちゃんの様子を実際に目の当たりにしては、梨璃ちゃんも大慌てである。

 

「まあこうなるのは分かってたから、後はわたしに任せなさいな」

 

「ともかく行くよ、突撃っ!」

 

 なんにせよミリアムちゃんの面倒は彼女をよいしょと肩に担いだ百由に任せるとして、残りのメンバーで揃って飛び出すと、『鷹の目』を使う二水ちゃんから警告の声が。

 

「本体からのミサイル攻撃、来ます!」

 

「こちらで対処します。雨嘉さん!」

 

「う、うん。やってみる……!」

 

 当然自ら築いた防衛線が崩壊すれば警戒も強まるわけで、再度夢結に上に乗られてブリューナクでの斬撃をひたすらに浴びせられながらもこちらへ向け放たれるヒュージからの攻撃には、神琳さんと雨嘉ちゃんが近くの廃ビルの上に降り立ち、CHARMをシューティングモードにして迎撃に専念してくれるようだ。

 

「《天の秤目》……!」

「《テスタメント》!」

 

 目標との距離を正確に把握する視力強化のスキル『天の秤目』と、スキルの範囲や対象を拡大させる広域化のスキル『テスタメント』。雨嘉ちゃんと神琳さんの持つレアスキルはそれらのようだけど、その同時発動ということは──

 

「狙い撃つ……!」

 

 雨嘉ちゃんのアステリオンから放たれる弾丸と、それにより即座に撃墜されるミサイルの数は共に五発。

 全てを完璧に捉えた人力でのマルチロックという領域のそれは、テスタメントによる対象拡大以上に個人の技量による物が大きいのだろう正確さで行われた。

 

「流石ですわね。では、残りはわたくしが!」

 

 それらより遅れて迫る第二波のミサイル群は、神琳さんの手にする盾型のユニークCHARMだろう物の銃口が火を吹き、次々と空を彩る花火へと変えていく。ガトリングシールドとは中々小洒落た物を。

 その援護の甲斐もあり、残る四人で辿り着くのは少しでもヒュージの隙を作らんと、下がった位置でCHARMでの砲撃を繰り返す梅の近く。

 

「おいおい雪華サマ、なんだってこんな人数で」

 

「見ての通りの救援だよ。まずは夢結をヒュージから引き剥がす! 私はこのまま突っ込むから、梅はバックアップよろしく!」

 

「あっ……相変わらず無茶苦茶だゾ、雪華サマは!」

 

「梅様、心中お察しいたしますわ」

 

「それじゃあ改めて、レアスキル発動──《円環の御手(サークリットブレス)》!」

 

 後輩からのこの人は扱いを背に受けながら二機のCHARMを抜刀、加えてサブスキル『インビジブルワン』先程から駆け回る梅の持つレアスキル『縮地』のサブスキルとなるその力を行使し、空間のベクトルを操ることでそれに囚われない速度でヒュージの背中側へ跳躍する。

 

「はあぁっ!」

 

 流星もかくやの勢いで飛び込みながら、振り抜くのは左手のアステリオン。既に気配で気付かれていたのか、それを真っ向から迎え撃つのは夢結の持つブリューナク。

 その結果耳障りな金属音を立ててぶつかり合うのは本来リリィ同士で向け合う物ではなく、敵であるヒュージを駆逐するために振るわれるべき刃であるはずの、ふたつの決戦兵器CHARM。

 

「ぐうぅぅぅっ!」

 

 リリィの呼び名にそぐわぬ夢結の呻き声。はたしてそれは力に呑まれたが故のものなのか──あるいは、彼女の心の奥底からの悲鳴なのか。

 

「……ったく“らしくない”よね、お互いさぁ!」

 

「っ、ぁあああああああああああ!!」

 

 咆哮を上げた夢結により技も駆け引きもなく力任せに拮抗は破られ、アステリオンを弾き胴へ叩き込まれんとするブリューナクを上からグングニル・カービンの一撃で叩き落とすが、構うものかと落ちきる前に強引に向きを変え振り上げられるそれをアステリオンで受けた衝撃に身を任せて後ろへ飛ぶと、視界に入るのは頭上で暴れる私たちへ向けたヒュージの腕。

 

「夢結っ!」

 

「っああ!!」

 

 そのまま梅たちの射砲撃も気にせず私より伸ばした方に近かった夢結を狙うが、真っ向からブリューナクで受け止められる。けどその隙は──

 

「デュエル世代の前じゃあ、ワンターンキルものの致命傷!」

 

 着地と共に駆け出した勢いのままスライディングに移行し、数瞬遅れてこちらへヒュージの腕を弾きながら振るわれるブリューナクには『聖域転換』の盾を右腕へ展開しその刃を火花と共に逸らしながら夢結の背後を取ると、グングニル・カービンを上に放り投げながら体を起こし、ブレイドモードに切り替えたアステリオンを両手で持ち横薙ぎに一閃。

 

「せいぃぃぃっ!」

 

「──っっ!!」

 

 それは背中に担ぐようにして強引に差し込まれたブリューナクに防がれるが、この瞬間だ。と視線を夢結の向こうへ向けながらインカムに向けて叫ぶ。

 

「梨璃ちゃん、後は任せた!」

 

『はいっ!』

 

 結局私じゃあ心の距離が遠すぎる、どうしても『美鈴(あいつ)』越しの先輩と後輩というフィルターが抜けきらない。

 けどあの子なら、最初から単なる個人として夢結を見ている梨璃ちゃんならあるいは……なんて、我ながら情けない先輩だことで。

 

「しゃおっ、らぁ!」

 

 だとしても託すくらいはできると、聖域転換の力を集中し纏わせた右手で二機のCHARM越しに夢結を梨璃ちゃんの方に殴り飛ばした時、理屈は分からないが脳裏に夢結のものと思われる弱々しい言葉が響く。

 

『見ないで……ください……』

 

「ああ、その役目は小さくとも立派な後輩に任せるよ。だから今は、先輩の活躍を目に焼き付けときなさいな!」

 

 これが梨璃ちゃんの言っていた現象かと、思考を挟むのは一瞬。落ちてきたグングニル・カービンを右手を上に掲げてキャッチするとその場で半回転しながら両手のCHARMも揃って回し、腰と背中のアーマーへ架ける。

 

「夢結様! わたしを見てくださいっ!」

 

 背後で聞こえる梨璃ちゃんの叫び声とCHARMのぶつかる音も、ここしばらくひたすら夢結の鬼のような打ち込みを受け続けてきた梨璃ちゃんならば、理性を失ったそれの軌道など今更読むまでもないだろうから不安はない。

 

「さてと──では諸先輩方、遺された力お借りしますよっと」

 

 なら後はこっちの始末をつけるだけだと、ヒュージに突き刺さるCHARMの内まだ刃の使えそうな物を引き抜いては砕けるまで斬り、射撃機構の生きてそうな物は撃てるだけ撃っては投げ捨てと、可愛い後輩を暴走させてくれたお礼に、お前の持ってきたCHARMの本当の意味をかつての持ち主たちの無念と共に教えてやろうと、ヒュージの背へ攻撃を加え続ける。

 

「……噂以上の暴れっぷりですわね」

 

「CHARMの山見た瞬間あの人ならやるだろうナ、とは思ってたけどマジかー」

 

 しかし後輩に呆れられながらも次々と使い捨てているそれらで攻撃する私には構わず、ヒュージから再び放たれるミサイルの群れの狙いは私ではなく、ヒュージから見て前方の『光』に向けて。

 

「ええい、まだ元気なことで。梅!」

 

「おう、露払い行くゾ!」

 

 であればと最早使い物にならなさそうなCHARMを数機投げ飛ばし、両腰のグングニル・カービンを揃って引き抜きながら飛び上がると空中で梅とすれ違い、それぞれ左右のミサイルを手当たり次第に撃って叩き落とす。

 

「皆、悪いけどそっちは任せ──」

 

 残る中央のミサイル群は楓さんたちに任せようと思っていたが、いつの間にか近くの廃ビルの上にいた金髪のハイポニーテールをしたリリィが持つ大剣型の第3世代CHARM『ティルフィング』それが半ばで折れ曲がり展開された砲撃形態、バスターランチャーと呼称されるその砲口から放たれる熱線が“置かれた”先に吸い込まれるように、そのほとんどが消えていく。

 

「ふむ?」

 

 意外な助太刀はともかく、多少の生き残りも予定通り後ろにいる皆が落としてくれているから、これで目立った被害は出ないだろう。

 

 そして私たちは自分たちの行動を露払い、つまりは前座だと定義した。

 

「二人とも、花道だ!」

 

 であれば当然大トリを勤める主役は別にいるわけで、このミサイル攻撃のターゲットだった真に生まれたばかりになるのだろう一組の〈シュッツエンゲル〉へ、空中から叫ぶ。

 

「跳ぶわよ、梨璃?」

 

「……はい、『お姉様』!」

 

 先ほどヒュージに狙われた光、それが更に輝きを増しマギの流れに乗り飛び上がった二人が重ねるように構えているCHARMの元にマギの塊、〈魔力球(マギスフィア)〉として具現化される。

 見たところルナティックトランサーの暴行状態も解け夢結の見た目も元に戻っていることから、どうやったのかはともかく無事上手く行ったようだ。

 

「「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 

 新姉新妹(シュッツエンゲル)によるヒュージ入刀にございます。そのまま二人の一撃を受けてヒュージの巨体が吹き飛ばされるのなら、これにて幕引きだとヒュージに突き刺さっていた残りのCHARMがキラキラと光る粒子と共に降ってくる。

 

「やったナ、夢結」

 

 降りた先でその光景を見上げる梅の無意識に零れたのだろう呟きには、内心頷いておくのを答えとしよう。

 

◆◆◆

 

「えっと、皆さんありがとうございました!」

 

「迷惑をかけたみたいね、ごめんなさい」

 

 ヒュージこそ無事ぶっ飛ばしたが、今回の問題はそればかりという訳ではなく、夢結が暴走した件で頭を下げている梨璃ちゃんと夢結だけど──なんかこう、周りの雰囲気は特に気にしてはいないように見える。

 

「まあ、あんな風に見せ付けられては特に怒る気にもなれませんので」

 

「その、おめでとう……で、いいのかな?」

 

「あ、あははは……」

 

 はたして照れ隠しに笑う梨璃ちゃんがどういう言葉と手段をもって夢結を現実に引き戻したのかは、ヒュージに怨念返しをしていた私には知り得ないことだけど、こうして援軍の二人に茶化されているということはその様子はさぞアツアツだったのだろう。

 なんて腕を組み納得していると、CHARMをケースに納めて背負いながら私の隣を抜けていく金髪の子が一人。

 

「……お疲れ様でした」

 

「ん、援護ありがとね」

 

「あのっ……行っちゃった。雪華様、今の子は?」

 

 なんて先程の彼女を見送る梨璃ちゃんの疑問には聞かれたはずの私が口を開ける間もなく、待ってましたと言わんばかりの様子で二水ちゃんが答える。

 

「彼女も同じ一年椿組の安藤(あんどう)鶴紗(たづさ)さんです! 一年生ながら実戦経験豊富なリリィで、先行量産段階の第3世代CHARMであるティルフィングを任される程の実力者な上、レアスキルはなんと希少スキルの『ファンタズム』!!」

 

「ああ、先程の砲撃を“置く”感じ、やっぱりファンタズムでの予測による物でしたのね」

 

「恐らくは! でも、雪華様たちには伝えていなかったみたいですが……」

 

 ファンタズム──幻視した複数の未来の中から、自らの望む物への道筋を選び取るレアスキル。とだけ聞けば単なる未来予知能力なのだが、その真価は周囲の仲間へとそのビジョンをテレパスによる共感で共有する部分にある……はずなんだけども。

 

「まあ飛び入りだったし、二水ちゃんの疑問には頷くしかないけど。どうせ梅も知らされてなかったでしょ?」

 

「そうだナ。でも、あの子って確か……」

 

「…………」

 

「先輩がたも、彼女の名前には覚えがあるようですわね」

 

 否定はしない。とはいえそれはあくまでも“被害者”としてなので本人のいない場で勝手に話すのはアレだし、彼女が百合ヶ丘に“保護”されることとなった原因も、未だに解決していないらしいのだから。

 

「あの子、鶴紗さんっていうんだ」

 

「まあ同じクラスだっていうんなら、その内いくらでも捕まえられるでしょ」

 

 その辺りの事情を知らない梨璃ちゃんなら私たちみたく変に遠慮することもないし、こうして命懸けの戦場に繰り出そうと私たちはまだ学生なんだから、鶴紗ちゃんにしたってそちらの生活も充実させるに越したことはないだろう。

 

「ところで雪華様、そのCHARMケースはどこに置いておったのじゃ?」

 

 もう戦闘も終わってしばらくしたからと自力で起き上がるミリアムちゃんへの質問には、再度戦闘中と同じ配置にケースを変形させ、バトルクロスとして身に纏うのを答えとする。

 

「……ふむ?」

 

「あー、この人の使う装備にイチイチ合理性とかそういうの求めても仕方ないわよーぐろっぴ?」

 

 そこまで言うか。いやまあ趣味に生きてる人間な自覚はあるけども……てかぐろっぴイズ誰?

 

「ぐろっぴ?」

 

「『ぐろぴ』ウスさん」

 

「わしかよっ!?」

 

 何を当たり前のことを聞くのか、とでも言いたげにミリアムちゃんを指差す百由だが、小さい『つ』はいったいどこから生えたのやら。

 

「じゃ、お後がよろしいようで」

 

「あ、“勿論”雪華様もヒュージのサンプルや刺さってたCHARMの回収、手伝ってくれますよね?」

 

 ……断れないと知ってて一応の確認してくるの、つくづくいい性格しているなと。とはいえ百由に借りがあるのも事実なので、渋々だろうと従うしかない情けない先輩が私なんだけども。




新衣装
解放

黒紅雪華/百合ヶ丘標準制服
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