アサルトリリィ~円環の赫星~   作:ですティニー

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前回のあらすじ:アニメが終わったよと二川ちょくちょく身内すら餌にするよねと妹が妹になりましたよと…あれ?
後方先輩面していたら、いつの間にかシルトも持たされて完全に囲われた。そんな輩の戦いはまだまだつづく、つづくったらつづく…なんで、完結から二週間足らずで連載に戻ります。

改めて、ここから先は余計不定期になるとは思いますが、ぼちぼちお付き合いをば?とはいえメインストーリーで拾うのは、あくまで開幕だけですけども。流石に前提を壊しすぎてるんで、ここからじゃ一章すら成立させられない。


第二部~Memorial DAYS~
果てなき戦いの運命


 ──さて、いきなりですが只今ヒュージの群れの真っ只中という状況から、私黒紅雪華他二名がお送りします。

 

「なーに現実逃避してんだ雪華サマ。来るゾ!」

 

「囲まれた!」

 

「罠か……」

 

 姉さんが卒業したぶりにシュッツエンゲルの契りを結んだ、なんて大イベントから数日後──突如として百合ヶ丘近辺へ大量に出現したケイブへの対処のため、動けるレギオンから迎撃に出るようにと通達されたのは、もう一時間ほど前だっただろうか。

 

 ともかく近頃激戦続きで百合ヶ丘の稼働レギオン数は激減しており、そんな中で動ける貴重な戦力の一部として私たち一柳隊も出撃したんだけど……戦闘開始からしばらくして、順調に進んでいると思ってこの辺りに踏み行った途端ヒュージの大軍に強襲され、分断されたというのが今の状況。

 

 どうも隊を組んでからは大物狩りがほとんどだったもんだから、レギオンとしてはこういう乱戦も数度でまだ慣れてないってのを完全に失念していた……そろそろ節穴の三年呼ばわりされかねんね、まったく。

 

「一応確認、皆どの組み合わせで離れてった?」

 

「んーと、梨璃と夢結が一緒だった」

 

「こっちは鶴紗がCHARMを神琳と雨嘉の盾にしてたナ」

 

「で、楓さんが二水ちゃん背負って、ミリアムちゃんの手を引っ張ってた……綺麗に四分割かぁ」

 

 そしてとりあえずのチェックを済ませた私たちはと言うと、梅と結梨ちゃんと三人仲良く背中合わせでその大軍の内他の面々を追わなかった残りに森の中で囲まれている訳だけど、幸い飛行タイプは全て他所に向かったらしく、また同士討ちをするつもりもないのかヒュージ側は基本何体かずつ突っ込んでくるだけで、レーザーだのビームだのミサイルだのな飛び道具は囲まれてからしばらく経った現状、まだ飛んで来てはいない。

 

「てか、これ露骨に時間稼ぎよね」

 

「だナ。ところで結梨、今わたしたちの中で一番危ないチームってどこだと思う?」

 

「んー、楓のところ?」

 

 突っ込んでくるヒュージを適当に捌きながら現状の確認というか答え合わせというか、今更スモール級なら数匹まとめて来ようとそれぞれ片手間で始末できるのが今のメンバーだから、この程度問題にはならない。

 

 逆にそれだけの戦力が足止めをされているということは当然他に皺寄せが来ている訳で、特に顕著なのは初心者二人を抱えた楓さん組、次いで単純に人数が二人で手が足りず同じく初心者混じりのゆゆりりコンビになるか。

 逆に経験者のみで前中後揃っており司令塔の片割れもいる神琳さん組は、よっぽどのことがなければ安心だろうけど。

 

「正解。流石の楓も一人で二人カバーするのは厳しいだろうし、ミリアムもレアスキル使うと一発屋になっちゃうからナ」

 

「となると多少強引にでも突破しては、皆と合流を繰り返すべきかな? 作戦って呼ぶには、ちょっと脳筋過ぎるけどさ」

 

 皆が別れた方向にそのまま進んでいるのなら、楓さん組を拾ってから大回りでゆゆりり組、少し遠いが神琳さん組と合流出来る位置取りのはず。

 こういう時こそ状況確認の通信が使えればいいんだけども、戦闘の影響かここら一帯は電波状態が悪いようで、誰かに繋ごうとしてもインカムの向こうはノイズか他所との混線がほとんどなんて有様じゃあ、あまり期待はできない。

 

「じゃあ何かスキル使って、みんながどこいるか見てみよっか?」

 

「その提案はありがたいけど、今はやめといた方がいいゾ。こんな乱戦じゃ下手にレアスキルばっかり使うと、『フェイズトランセンデンス』じゃなくてもすぐガス欠だ。だから落ち着けるまでの間に一度くらいにしとくのが、長く戦うコツってもんだ、ゾっと!」

 

「とはいえ、梅の言う通り間を開けながら使えば多少は長持ちするし、合流して頭数増えれば誰かしらマギ回復に休ませてる余裕は出る、っしょ!」

 

 次のヒュージ波を片付けながらの作戦会議、というよりは結梨ちゃんへのレクチャー的なそれも、下手に付き合い過ぎるのも良くないなとヒュージを刈り取るように逆手に振り切ったダインスレイフを順手に回しながら、ここでの攻防は切り上げる方向へ。

 

「という訳でいちにのさんで正面突破ね、『縮地』よろしく」

 

 まあ私のは『インビジブルワン』だから置いてかれはするんだろうけど、殿─しんがり─をやるにはちょうどいい。

 

「任せろ!」

「はーい!」

 

「じゃあいち、にーの「さーん☆」ん?」

 

 そこに割り込む私たち以外の声と、木々の間を抜けて空中に躍り出る、蒼光を瞳の先に煌めかせたパステルピンクのパーカー姿。あの子、東京の時の──

 

「ほらほら、余所見しないの!」

 

「ああもう灯莉! ひめかより目立つなっていつも言ってるでしょ!」

 

 おやおや? 空の彼女に気を取られたヒュージたちを背後から強襲しながらこちらに向かってくるのも、声やら何からどこか覚えのあるメンツ……なら、この場はなんとかなりそうかな。

 

「ほいっと」

 

 そして相手の崩れた隙を見逃すような射手などおらず、『灯莉ちゃん』が放つ光が空から落ちれば、次々と足並みの乱れたヒュージを黙らせていく。

 ならばと私たちも目配せをして突入し、そのまま六人で斬って撃っての大暴れをすると、数分ほどで近場のヒュージは全滅させられた。やはり戦いは数だよ兄貴……いや上も下も擬似姉妹しかおらん、根っからの一人っ子だけどね? イトコも年下な子だけだし。

 

「やっほーせっちゃんせんぱーい、助けに来たよー☆」

 

 そんなよく分からないことを考えていると、灯莉ちゃんを先頭に援軍の三人がこちらへ駆け寄ってくる。

 

「なんだ、あだ名呼びまでされて随分仲良さそうだナ。雪華サマ?」

 

「前に言ったでしょ、下北沢で東京のガーデンの子たちと成り行きで共闘したって。彼女たちはその時の」

 

「ヘルヴォル及びグラン・エプレ合同の救援部隊、改めて到着しましたよ、セーンパイ?」

 

 なんて恋花が引き継ぐように言ってくれるけど、元々現地な東京組同士の前回と違って、今回はどういう経緯なんだろうか?

 

「……まあいいか、皆救援感謝するね。二人とも、そっちの二人が神庭のグラン・エプレ所属で、こっちのがエレンスゲのヘルヴォル所属。どっちも各校のトップレギオンだから、実力は保証するよ。あ、それでこっちはうちのレギオンの仲間ね」

 

 なんてざっくりと全員の知り合いな私がそれぞれの紹介を終えると、灯莉ちゃんがピョンっと前に出てくる。

 

「はいはーい! ぼくは丹羽灯莉☆神庭の一年生でー、こっちは定盛っ♪」

 

「さーだもりっ?」

 

「ひ・め・ひ・め! いつになったら苗字呼びやめるのよ灯莉ぃ、百合ヶ丘の子にもうつっちゃったじゃない!」

 

 うーん結梨ちゃんも巻き込んでなこの調子。直接会ったのは前に一度きりなのに、不思議と馴染みがあるというか。

 

「で、こっちのことエレンスゲ二年の飯島恋花でーす。センパイとはシモキタでの仲ってことで」

 

「百合ヶ丘二年の吉村・Thi・梅だ。下北沢での戦いのことは雪華サマから聞いてる、幸恵たちのこと助けてくれてありがとだゾ!」

 

「あー、なんか聞き覚えあると思ったらおたく迎撃戦のメンバーだっけ? いやー、あの人らには救援に行ったはずなあたしらの方こそ助けられたっていうか、ルド女組も御台場組もマジ濃かったしなぁ」

 

 あなたたちも大概濃いと思うけどね、とは言うなかれ。個性派なのは大体のリリィがそうなんだし……なんて方々から怒られそうなことを考えていると、聞こえた咳払いに視線を向ければ、一年組が自己紹介の続きをしている。

 

「コホン。ともかくあたしは神庭女子藝術高校声楽科の一年生、定盛姫歌よ。ひめかのことはひめひめって呼んでよね! いやホントお願いだから」

 

「わかったひめひめ! あ、わたしは百合ヶ丘女学院普通科一年椿組の、一柳結梨だよ。よろしくー」

 

 そんな風に結梨ちゃんが言われた通りに呼んでくれたのに目を丸くした姫歌ちゃんは、サッと灯莉ちゃんの側に駆け寄るとその肩を真正面からがガッと掴む。

 

「どうしよう灯莉、この子すっごい素直!」

 

「よかったじゃん定盛☆ところで一柳~ってことは、きみがせっちゃんせんぱいとこの隊長さん?」

 

「ううん。それは梨璃で、わたしは……えっと、どういうことになってるんだっけ?」

 

 皆早くも打ち解けているようだけど、自分の立場とかよく分かってなさそうな結梨ちゃんからは、チラリと視線で助け船を求められる。

 

「一応書類上はもう梨璃ちゃんちの子になってるから、名実共にあの子の妹ってことになるのかな? あ、ちなみに今は私のシルトでもあるから二重に妹で、梨璃ちゃんの上には夢結もいるしで妹ブルジョワジーね」

 

 梨璃ちゃん曰く電話でご家族と話すくらいはしたらしいけど、その内時間を見付けて改めてきちんと紹介しに連れて帰るつもりだとか……この忙しさじゃ、それもいつになるかは分からないとしても。

 

「え、書類上って……あ、そっか。確か拾った子だってこないだ話してたし」

 

「あーはいはい、うちの藍みたく訳アリってことっしょ?」

 

 姫歌ちゃんと恋花、各レギオンのサブリーダー的立場な二人は今ので色々と察したようだけど、とてとてと歩み寄る灯莉ちゃんはじーっと結梨ちゃんの顔を眺めている。

 

「んー……まいっか☆よろしくゆりゆり~、いえーい!」

 

「いえーい!」

 

「まーた灯莉は人に変なあだ名付けて……まあ、嫌がってないんならいいのかしら?」

 

 さて、ハイタッチしてる二人を眺めて挨拶はこんなもんでいいだろうか……ここからは、お仕事モードで行こう。

 

「それで、合同って割には他の面々いないけど、恋花?」

 

「うちからは瑤と藍、グラン・エプレからは紅巴の三人があっちの方ですねー」

 

 なんとなくの方向を恋花が指差してくれれば、残りの二人も同じように──

 

「それと、高嶺様とヘルヴォルの千香瑠様が、こちらの担当です」

 

「そっか、千香瑠も今恋花んとこのレギオンなんだっけナ」

 

「で、リーダー二人、かなほせんぱいと一葉がそっちだよー」

 

「なるほどー」

 

 それぞれ順に楓さん組、神琳さん組、夢結梨璃組と大体同じ方を指差している……ならこっちはもう落ち着いたのだから、手分けして向かうべきだろうか。

 

「それなら悪いけど私たちはちょっと急ぐわ。結果的にとはいえリーダー組が一番人数少ないし、カモン結梨ちゃん!」

 

「うん! じゃあまたねー、灯莉にひめひめ」

 

「んじゃ、梅に付き合ってくれるか。恋花?」

 

「オッケー。千香瑠たちの方ね」

 

「そうなると、ぼくたちはとっきーのとこだねー定盛っ☆」

 

「そうね、それでは皆さんもご無事で! あと、ひ・め・ひ・め!」

 

 パパッと担当を決め、三手に分かれそれぞれの戦場へと向かう。目的はただ一つ、仲間と共に生きて帰るために。

 で、そんなに呼んで欲しいなら私も……と思いはしたけど、キャラじゃないなと最後の姫歌ちゃんの叫びは悪いけど届かなかった、ということで。

 

◆◆◆

 

 森を抜け、放棄されて久しいようでろくに整備もされてない海沿いの道路をスキルの速度任せに駆け抜けていると、あちこちに焼け焦げた跡や真新しい破壊の痕跡が見える。

 

「さて、こりゃヒュージがどっかしらに向かったのでも追ってったか?」

 

 今回の作戦エリアの近くに民間人の居住区なり避難所なりがあるというのは出撃前に聞いていたし、あの二人の性格からしてそんな方に向かうヒュージを見かけたなら、自分たちの状態を問わず迷いなく追い掛けるはずだから。

 

「う、あぁ……っ……」

 

 そう考えたところで聞こえるのは戦闘中らしき音と、マギにより強化されたリリィの聴覚でなければ聞き逃していただろう、誰かの消え入りそうな悲鳴。

 その直後、逸る気持ちからか大分先行する形になっていた結梨ちゃんが、更にギアを上げて加速する。

 

「見つけた。先行くね!」

 

「まったく、判断が早いってのうちのおシルト様は」

 

 そこで振り向きながら私に一声かけるくらいには仲間との連携を意識してくれるようにはなったと、この子のシュッツエンゲルとしては喜ぶべきなのだろうか?

 まあ未だに一度もお姉様呼びされたことなんてないけど、別に私もシルト時代に好きに呼べと言われてたからって『姉さん』呼びだった訳で、姉に似たってことなのやら。

 

「梨璃ーっ!!」

 

「あ……結梨、ちゃ……?」

 

 彼女に少し遅れて到着すると、本来夢結と二人がかりであれば手こずることもないだろう、テンタクル種のミドル級を前にグングニルを取り落とし片膝をついてヒュージに押し潰されそうになっていた梨璃ちゃんを、結梨ちゃんが横から飛び込んで抱き抱えながら助けるところだった。

 その後ろに見える夢結はブリューナクを杖代わりに立っているのがやっとのようだし、それ以上にボロボロな梨璃ちゃんはこれまでの消耗と彼女を庇おうと無茶をした結果だろうか。

 

 さらに奥では他のヒュージの相手を叶星と一葉ちゃんのツインリーダーズが引き受けているようだから、近くのガードレールのぶち抜かれた様子を見るに、こいつは伏兵かはぐれか何かとして──

 

「ナイス結梨ちゃん! このまま仕留める!」

 

 さて、改めて今回私の持ち出せたCHARMは辛うじて修理の終わっていたブレイザーの本体なシールドと、その裏に懸けているノーマルのダインスレイフ一機のみとかなり少ないけど、背負っていたシールドを斜め前へ放り投げ、追うように跳ぶ。

 

「だぁぁぁぁぁっ!」

「やぁぁぁぁぁっ!」

 

 私がヒュージの腕刃を空中でキャッチしたシールドで弾きながら引き抜いたダインスレイフを逆手に突き刺し、その動きを止めたところに結梨ちゃんが背後より夢結のスタイルを真似た十文字斬りを炸裂させ、トドメに二人でヒュージを海側に向けてCHARM越しに投げ飛ばし、互いのCHARMからの一斉射撃で消し飛ばす。

 

 たかがミドル級相手にオーバーキルだって? うちのリーダーたちに手を出した報いなら、この程度優しい方じゃないかな、多分。

 

 そうしている間に向こうも掃討を終えたようで、ようやくの静寂が世界を包んむ。

 

「今日も生き延びることができた、ってね」

 

 なんてダインスレイフを道路に突き立てて黄昏ていると、梨璃ちゃんたちの様子を見に行った結梨ちゃんと入れ替わりに、救援なリーダーコンビがこちらにやって来る。

 結局例の〈ハレボレボッツ〉とか命名されたらしいあのレーザーレイ種のギガント級の一件じゃ私が目覚めたのは翌朝だったしで、なんだかんだで直接話すのは下北沢ぶり──と言っても、大体三週間くらい?

 

「お疲れ様でした、雪華様。最後に美味しいところ取られちゃったわね、一葉?」

 

「ですが、お元気そうで何よりです、雪華様!」

 

「二人とも、恋花たちの方にはさっき言ったけど救援ありがと。おかげでなんとかなったみたい」

 

 どうにも電波障害もヒュージの影響だったのか戦闘終了した今は収まったようで、梅や二水ちゃんたちからはそれぞれ全員無事だとの報告が来ていた。

 そして学院側からは確認したケイブも全て撃破され、他の戦線も多少の怪我人は出たが幸い死者はなしで終わったらしいとのことで。

 

「いえ、実はと言うと元々挨拶のためこちらに来る途中でしたので」

 

「ああ、例の他校のレギオンとの同盟がなんとかって話」

 

 そこで思い出すのは、前にこっちに叶星たちが来た時に夢結が触りの部分を聞いていたという、神庭の生徒会を通して提案された、鎌倉と東京の結び付きを強めようという動き。

 いつぞやそっちの会長さんの名前を呟いていたのも、多分そのことだったと。

 

「はい、私たちグラン・エプレと一葉たちのヘルヴォル、そして雪華様の所属する一柳隊ことラーズグリーズ。この3レギオンによる協力体制が各校の賛同により決まったので、まずはメンバーの顔合わせからと思っていたのだけれど」

 

 しかしレギオン同士の同盟というのは、百合ヶ丘内で例えるならアールヴヘイムとサングリーズル、うちと祀さんとこのエイルのように同じガーデン内で結ぶというのが一般的なのだから、二校間ならともかく三校に渡ってというのは非常に珍しい。

 

 まあ、けどその挨拶は戦火の中で──奇しくも下北沢の時の繰り返しのようになってしまったと。リリィ同士じゃ、そのまま背中を預けるまでよくある話ではあるけども。

 

「ま、手っ取り早くお互いのことを知るにはこういう形も悪くはないでしょ、揃ってから改めてちゃんとやる必要もあるけどさ」

 

「流石はデュエル世代! これも戦場での心構えというものですか」

 

「あはは……多分、違うと思うわよ?」

 

 なんというか一葉ちゃんって、やっぱり夢結同様真面目過ぎてどっか変なとこでズレてるタイプだよね。実力あるリリィって、皆こうなのかな?

 あとデュエル世代らしい、って言うなら直接CHARMぶつけ合えばその人となりも分かるとか、そういう方向だと思う。される側としては迷惑極まりないけど、もっと言葉を使え文明人ども。

 

「……にしても、よくウチのお偉方が納得したね? 最近といわず、ゲヘナには色々ちょっかい出されたばっかりだってのにさ」

 

「そこは私たちの個人的な知り合いがいるレギオンということで、押し通させてもらいました!」

 

「それに、一葉たちヘルヴォルは今回の件にあくまで1レギオンとして賛同してくれた形で、エレンスゲの教導官は後から理詰めで黙らせたみたいです」

 

 なんともまあ豪胆なことで。あるいはそういうところも含めての、一年にしてエレンスゲの序列1位なのか。

 それに、近頃の失態続きで国内のゲヘナ過激派は大分旗色が悪くなっている以上、他勢力との協力でイメージ戦略を……ああいや、エレンスゲの校長は過激派のやり口には反対してる側だって聞いたし、ヘルヴォルを理由付けてガーデンから離せるんなら、むしろ渡りに船ってやつだ。

 

「おーい雪華ー」

 

「はいはい、何かな結梨ちゃん?」

 

 なんて一葉ちゃんの存外強かなところに感心したり今回の件の裏側のことを考えていると、手を振りながら駆けてくる結梨ちゃんの後ろから、自分自身もフラフラなくせに明らか無理して梨璃ちゃんを背負っている夢結が歩いて来ていた。

 

「いや、一緒にコケたら危ないでしょーが」

 

「夢結様……その、ご無理はなさらない方が」

 

「わたしは、この子のシュッツエンゲルなのよ。これくらいなんてこと……」

 

「ヘイ結梨ちゃん、ゴー」

 

「らじゃー」

 

「あぁっ……」

 

 そんな夢結は一葉ちゃんの心配にも何かもう虚ろな目で今にも止まりそうな寝言を返しているので、何かが起こる前にシルトファンネル(ゆ)で梨璃ちゃんを救出しとくに限る。そろそろ休め。

 

「こ、これが百合ヶ丘の伝統、シュッツエンゲル制度……満身創痍の身であろうとシルトのためにここまでするとは──見事なお覚悟です、白井夢結様」

 

「……そういえば、この子が雪華様のシルトなんですよね。紅巴ちゃんが言っていたけれど」

 

「ツッコミするの投げたね、今叶星さん? まあ気持ちは分からんでもないけどさ」

 

 んで紅巴ちゃんといえば、確かに色々とリリィ同士の関係性には詳しかったけど……それでも私たちって本当に契ったばっかりなのに、もうそんなに有名なの? それとも毎度のリリィオタクのネットワークが凄いのか……まあ後者だろうね。二水ちゃんとかのあり得んほどの行動力を見るに。

 

「んー?」

 

 まさか自分たちがそんな風に注目されているだなんて露知らず、結梨ちゃんは梨璃ちゃんを抱えたまま首を傾げていた。

 

「成り行きというか、こっちの梨璃ちゃんに「うちの子を頼みます!」ってされてね。てか梨璃ちゃん落ちちゃってるか、お疲れ様」

 

「んみゅ……」

 

「私たちが到着した時には、既に相当な数のヒュージを倒した後のようでしたので……しかも、突入前の情報ではこの辺りが一番ヒュージの数が多かったと聞いています」

 

 なるほどねぇ、守るべき市民のこともあって、素直に増援を待てる訳がなかったと。でも動けなくなるまでって、寝息を立てる梨璃ちゃんはともかく夢結はそろそろその癖直してよと、梨璃ちゃんの横髪を優しく撫でながら話を続ける。

 

「ほっとくと突撃しいなのが、うちの隊長どのと副隊長どのの悩みどころでねぇ。それで今まで上手く行ってんのは、一緒に突っ込みがちな梅や私を始め、周りのフォローあってこそなんだけどさ……重ね重ねありがとうね」

 

「いえ、リリィとして当然のことをしただけですもの。雪華様はこれから?」

 

「このまま二人を持って帰るよ。そうでもしないとまた無茶しかねないし、ねぇ副隊長さん?」

 

「……雪華様にそう言われるのは少々、いえ大分納得しかねますが、お願いします」

 

 梨璃ちゃんを取られた時にはこの世の終わりみたいな顔でフリーズしてた夢結も、私の軽口に生意気言えるくらいには調子が戻ったようなので遠慮なく背負わせてもらおうか。ダインスレイフを戻したシールドは、肩掛け用の紐で体の前に吊ってと。

 

「では我々も一旦他のメンバーと合流します。正式なご挨拶には、また後程」

 

「ん、またね二人とも」

 

「ありがとう、助かったわ」

 

「ばいばーい」

 

 ──ところで、結梨ちゃんが寝ている梨璃ちゃんをお姫様だっこしているのをリリィオタク組に見られるとどうなるのかは、この際考えないことにしておこう。

 

 結果二水ちゃんは無言でその様子を連写して後日新聞の一面記事にすると宣言して、紅巴ちゃんは底知れぬ尊みの淵に沈みましたとさ。

 なお私が夢結を背負っていたことは彼女が合流前に強がって降りたから、私たち五人しか知らない事実です。

 

◆◆◆

 

 さて、改めて百合ヶ丘女学院は正門前、無理をし過ぎた夢結たちを運ぶのに一足先に戻っていた私は、こっちまで来てくれた東京組のリーダー二人をファイル片手に迎える訳だけど。

 

「で、書類は貰ってきたし、折角だからうちの控室で書いてく?」

 

「ええ、ではお言葉に甘え……一葉?」

 

 私の方は気楽に言ったつもりだけど、一人門の外に立ち止まっているのを叶星に気付かれ振り向いた先にある、一葉ちゃんの表情は固い。

 

「……私は、エレンスゲ女学園の序列1位です」

 

「知ってるよ」

 

「そのことには誇りを持っていますし、だからこそヘルヴォルの仲間たちと……そして叶星様や雪華様たち、他校の皆様ともこうして出会えました」

 

 普段の勢いが嘘のような静けさで、一葉ちゃんは語る。ただ事実だけを確認するように、淡々と。

 

「それは掛け替えのない“繋がり”だと、得難い絆だと思ってはいます。ですが……私は親ゲヘナ派ガーデンのリリィで「どうでもいいよ」え?」

 

「どうでもいいって言った。確かに所属がどうだってネチネチ言うやつはいるだろうよ、女子高なんてどこもそんな陰湿なのがいるもんだからね。だけどね一葉ちゃん、そんなやつらが私の戦友のことを何も知らずに好き勝手言うんなら……この私が、力尽くでも黙らせる」

 

 驚く一葉ちゃんへ見せ付けるように背中からダインスレイフを引き抜き、顔の前に掲げて迷いなく宣言する。彼女の言うような『正義』だなんて大それた物ではないけど、それが私なりの、リリィとして通すべき筋だと思っているから。

 

「戦友、ですか」

 

「私が一方的にそう思ってるだけだったら、ちょっと寂しいけどね?」

 

 そこで肩を竦めてみせれば、思い詰めていたような様子も少しは収まったのか、一葉ちゃんも笑顔を見せてはくれる。

 

「いえ……ありがとうございます。そう仰って頂けるのなら、私からもそうだと思わせてもらいます」

 

「それに、もっと私のことを頼ってくれてもいいのよ。一葉?」

 

「叶星様……はい!」

 

 ……いらぬお世話かもしれないけど、やっぱ妙に距離近いよねこの二人。レギオンどころか通うガーデンすら違うのに、こう。

 

 ともかくそんな仲良し二人を連れて校内に入ると、急な戦闘の後でバタバタしているのも相まって、私たちを気にしている余裕のある子はあまりいないのなら控室まですいすいと進めるし、さっきの一葉ちゃんの心配も杞憂そうだ。

 

「あれ、雪華様もう帰ってたんです?」

 

「ほら、例の同盟の話じゃないの? 他校の子二人も連れてるんだし」

 

「ん? あーそういや今日アールヴヘイムは待機だっけか」

 

 それでも知り合いには見付かるものというのか、ここしばらく私以上に直すそばからCHARMを壊しすぎると、またレギオンごと出撃担当から外れていた天葉と依奈が揃って寄ってくるのだから、先日はすれ違いになってたらしいこっちの二人もそれぞれ挨拶している。

 

「はい、神庭女子藝術高校二年生の今叶星です」

 

「私は……エレンスゲ女学園一年生、相澤一葉です」

 

「……へぇ、ってことはあなたが?」

 

 そうやって二人の自己紹介を聞くと、どこか品定めするように、ツカツカと近寄ると依奈は一葉ちゃんの顔を覗き込んでいた。

 

「えっと、あなたは……?」

 

「こないだは名乗る暇がなかったわね。番匠谷依奈、アールヴヘイムの〈プランセス〉──というより、今はこう名乗るべきかしら? あたしは御台場迎撃戦で()()()()()()()()()()って」

 

 有名人が相手故に誰なのか──というよりは何が目的なのか、というニュアンスでの一葉ちゃんからの疑問には依奈がしっかり過ぎるくらい強調して名乗れば、一拍置いてハッとする一葉ちゃん。

 

「第3、部隊……そうだ、千香瑠様の」

 

 件の戦いはノインヴェルト戦術黎明期の貴重な戦訓として、資料が様々な形で残されているのもあってか、レギオンメンバーの参加した戦いの関係者と名乗られれば、この言い回しの理由に──そこの縁で声を掛けられたのだと一葉ちゃんが気付くのを見て、依奈は満足気に離れる。

 

「あの子、エレンスゲじゃあロクに評価されてなかったみたいだけど、一転して今はトップレギオンの一員ってことは──序列1位であるあなたが直々に指名した、ってことでいいのかしら?」

 

「無論です! 千香瑠様は我がヘルヴォルになくてはならないお方として、レギオン一同“お世話に”なっていますから!」

 

 『お世話に』の部分に並々ならぬ実感がこもっている気がするけど、故に一切嘘は感じない。それは依奈も同じなのか、ひとまずは納得したような様子。

 

「ふぅん? まあ近い内にまた会いましょうか。ごきげんよう」

 

 とはいえそのまま意味深な言葉を残して一葉ちゃんの横を抜けて行くものだから、私たちだけでなく置いてかれた天葉も面食らっている。

 

「あ、ちょっと……えっとー、ごめんね? 依奈ってばたまーにピリピリしちゃうとこあるから」

 

「い、いえ。私が依奈様に何か粗相を働いてしまっていたのなら、すみませんでしたと伝えておいてください」

 

 とは言うけども、依奈がたまに千香瑠の話をする理由は自分で言ったようにガーデンからの扱いに不満があるからだろうし、自ら抜擢した一葉ちゃんに対しては文句らしい文句はなさそうだったけど。

 

「んー、多分そんなんじゃないとは思うけど……あ、こっちも自己紹介遅れちゃったね。あたしは「〈蒼き月の御使い〉天野天葉様、ですよね? ありがとうございました!!」う、うん?」

 

「「……?」」

 

 さて、わざわざ食い気味にお礼を言いながら割り込むだなんて、天葉と一葉ちゃんにそこまでの縁があっただろうかと叶星と二人首を傾げていると、そのままの勢いで答え合わせをしてくれるらしい。

 

「その、レギオンでの訓練の参考資料として、アールヴヘイムのノインヴェルト戦術の様子を使わせて頂いておりまして……なので、ありがとうございました!」

 

「あー、なるほど?」

 

 代替わりしようと未だ世界最高峰のレギオンと称されるアールヴヘイム──そのノインヴェルト戦術の速度と正確さは、百合ヶ丘内でも贔屓目なしにトップクラスだ。

 故に教導資料として他校でも用いられるのは分からん話でもないけど、よくもまあ親ゲヘナなエレンスゲで、反ゲヘナガーデン所属レギオンの戦闘記録なんぞ手に入れられたというか……どんな伝手を使ったにせよ、それだけ本気で打ち込んでいると見ればいいのやら。

 

「うん、アールヴヘイムの戦いが誰かの役に立てたのなら、あたしとしても幸いだよ」

 

「いえ、役に立ったなどのレベルではなく! 天葉様たちアールヴヘイムを参考にしたからこそ、私たちは今こうして生きていられると言いますか」

 

「じゃあ、お礼ついでに、あたしからもひとつお願いしていいかな?」

 

 理由さえ割れればこれくらいのテンションなファンにも慣れっこなのか、一葉ちゃんの熱意にも流されず宥めるように天葉は提案してくる。

 

「はい、なんなりと!」

 

「いい返事。まあ、そんなに難しいことじゃないんだけど……わざわざ東京から鎌倉まで来てくれたの、噂の一柳隊と同盟を結ぶって話よね? だから、あたしたちの仲間のこと、出来る限りで助けてくれると嬉しい」

 

 『仲間』がかつて同じレギオンだった夢結と梅のことなのか、それとも私たちを含むレギオン全体のことかは、チラリとこっちを見てウインクしてくる天葉の様子からして後者かな。

 

「……勿論です! 雪華様のみならず隊長の梨璃さんや副隊長の夢結様とも先程肩を並べたのですから、もう一柳隊も私にとって立派な仲間と呼べます!」

 

「オッケー、それだけ言ってくれるなら安心した。じゃああたしも「ソラー?」……そろそろ行かなきゃね」

 

 ちょうどそんなタイミングで廊下の曲がり角から依奈が顔だけ出して天葉を呼んでくるなら、微妙そうな苦笑いを返しておいて、こっちには手を振りながら去っていく。

 

「まぁたなんか起きそうな気配だなぁ」

 

「……こういうの、よくあるんですか?」

 

 どうだろう? と叶星への返事には困るけど、まあ学校に限らず人間関係なんてのは大なり小なり何かしら起きるものだろうと納得して、案内を続ける。

 

「とりあえずここがうちの控室だけど、鍵は……空いてるね」

 

「はい、では後はこちらで済ませておきますので」

 

 まあ、そのために案内してたんだし書類は一葉ちゃんに渡すけど。なんだろうなぁこの空気、強いて言うなら最初にこの部屋に入る……前の?

 

「じゃ、私は皆の様子見てくるから、こっちは任せるよ」

 

「ええ、ありがとうございました」

 

 とはいえ起きてるようなら後は私がどうこうするでもないかと、二人に手を振りながら残りの各レギオンのメンバーで集まってると連絡のあった辺りへ。

 

◆◆◆

 

「はーいお疲れー、差し入れ持ってきたよー」

 

 今はCHARMケースがスカスカだからと、購買部で人数分買ったドリンクを詰め込んでおいたのをドサッと置いてから開けば、近くの演習場で待っていた面々もぞろぞろ近寄ってくる。

 

「お、わざわざすいませんねー」

 

「はい恋花、カフェラテでいいよね?」

 

 まあ、わざわざそんなとこで待たされているのも()()()()()()()()()()()()()なヘルヴォルがいるからなんだろうけど、集まってくる時の感じから各々別れて話してたみたいだから、同盟を結ぶって話もあって空気は悪くなさそうだけど。

 

「んで、今は隊長たちで最後の書類確認か?」

 

「だね、邪魔するのも悪いしであたしは見ての通りだけど」

 

 『邪魔』の意味はともかく、梅にペットボトルを投げ渡しながら見渡してみると、端の方に並んでるベンチに二水ちゃんと紅巴ちゃんが寝かされているのが見える。何があったんだ……との答え合わせは、紅茶のペットボトルを取りながら楓さんが。

 

「二水さんと紅巴さん、でしたか? あの方たちなら何やら二人で情報交換していたと思ったら、急に仲良く倒れてあの様ですわ」

 

「はいはい、そういうやつね」

 

 つまりはまあ、リリィオタク特有の情報量に焼かれてのダブルKOと。二水ちゃんは元より紅巴ちゃんも中々のやり手だったし、さもありなん。

 

「あー、本当に紅巴はいつものことなんで気にしないで下さい。その内勝手に生き返るんで」

 

「にしても、ヌーベルがぼくたちのCHARM作ってるとこの人なんてねー?」

 

 とか言いながらペットボトルの底で姫歌ちゃんの頬っぺたを突っつく灯莉ちゃんの様子から、ここ三人はそんな繋がりと。いや、楓さん程の有名人なら、名乗っただけである程度情報を知ってるリリィなら食い付くだろうし、恋花とかも一発だったしなぁ。

 

「……ヌーベル?」

 

「んー、ヌーベルはヌーベルでしょ? 定盛が定盛なんだし」

 

「あんたねぇ、同盟を結ぶからって遠慮無さすぎでしょ……」

 

「まあいいでしょう、なにせわたくしは楓・J・ヌーベルですもの!」

 

 なんだろうね、この会話が成立してるのかしてないのかよく分からない感じ。いやまあ仲良くしてるならそれでいいんだろうけど、梅も笑って見守ってるし。

 

「やっほー」

 

「雪華ー」

 

「あ、お疲れ様です」

 

「そちらは問題なかったようで」

 

 なんて眺めていると残りの、藍ちゃんと結梨ちゃんが千香瑠と高嶺に挟まれてな感じでやってくるけど、二年組との身長差から保護者感半端ないな?

 

「ん、まあ色々バタバタしてたけど、案内するだけなら特に何が起きるでもないしね」

 

 一応依奈がなんか意味深なことは言ってたけど、千香瑠に用があるんなら性格上本人から直接言うだろうし? わざわざここで私が言うのは野暮ってもんでしょ。

 さて、とりあえずこの四人にあげれば全員にドリンクが……渡ってないな。二水ちゃんと紅巴ちゃん寝たきりだし、ちょうど三つ余ってる。

 

「た、只今戻りました!」

 

 なんてどうしたものかとなっていると、少し顔を赤くした一葉ちゃんが駆け足気味に来る後ろを叶星もトコトコ付いてきているから、書類の方は終わったようだ。

 ……で、控室でナニがあったかはあんまり気にしないでおこう。どうせゆゆりりが誰もいないからと毎度の二人きりの世界作ってたとかだろうし、だから一葉ちゃんの方を見てか嗅いでかで何かを察したろう結梨ちゃんの口は、余計なことを言う前に手で塞いでおく。

 

(むーーー!)

 

 まあ、こういう風にしていられるのなら、平和だってことなんだろうね?




そういえばで全体的な見直しをしたついでに、短編集へ誘導もしておいたり。こっちとは別次元の話っすけど(

雑多なアサルト短編
https://syosetu.org/novel/338567/
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