アサルトリリィ~円環の赫星~   作:ですティニー

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前回のあらすじ:誕生日連続ですよと隊服御披露目とお引っ越しとモンちゃんと、ジェラシーは無関係なので事後報告とクリコラと。
蠢いた定めへとつむの謎ラップ…まあ、中の人が聖地巡りのやつでOPのサビのとこって言ってたんで生まれた何かです、はい。
ところでOP詐欺の聖地って、なに?(史房会長並感)

最後は次のエピソードの触りも少々…それと、上手く調整できたので雪華の誕生日更新になるっす。作中はまだ一月ちょっとかかりますけども。


GO, shooting out 果敢に舞い踊れって話

「ミッションの概要を説明します」

 

 洋上、ガンシップに揺られながら中央の台に地図を広げて、そう告げるのは二水ちゃん。他所行き用に指ぬきグローブも付けて気合いもバッチリなようで。

 そう、今回は学院の外での任務──と言っても、まだ窓からは修繕の終わりきってない高等部の校舎が見える程度の距離だけども。

 

 何はともあれ、これは基本的にヒュージが出たからと迎撃に出るばかりだった一柳隊が初めて“攻める側”として参加する作戦に……横浜の件は、まあ元が捜索の名目だったし? 最終的にはゲヘナの連中が姉さんにしょっぴかれて、ヒュージを抑えるやつがいなくなったからって街を守るためだし? あれ、そう考えるとやっぱり体よく使われただけだな?

 

「今回のミッションは、敵本陣への強襲作戦になります。既に交戦を開始している他のレギオンが十分な数のヒュージを引き離したのを確認したら、指定ポイントへ降下後わたしたち本隊がこちらのエリアへ攻撃を開始。それと平行して、付近に存在するケイブの元に本隊を離れたミリアムさんと鶴紗さんが別動隊として突入し、護衛とされるヒュージ共々これを撃破してください」

 

 ともかく思考が横にそれてる間も作戦の概要を語る二水ちゃんだけど、やけに堂に入ってるのはなんなんだろう。最近工廠科を中心に流行ってるらしいロボゲーの影響?

 いや、私も新学期ガーデンに帰ってすぐ布教だって言われてなんか初代から全部をまとめて渡されたけど、ハードが散らばってるから後ろの方の作品以外ほとんど手付かずだしで、詳しいとはとても。まあ、父さんに頼めばゲーム機のひとつやふたつ送ってくれるだろうけど、なんで前世紀に出たのまでまだ動く状態で保管してんのさ。

 

「うむ! こういう一撃必殺の作戦にこそ、わしの『フェイズトランセンデンス』の出番という訳じゃな!」

 

「で、わたしはそのフォローか。お守りはちゃんとするから、任せて」

 

「子供扱いするでない鶴紗! なんなら誕生日はわしの方が3ヶ月は早いじゃろうが!」

 

 なんか今日は妙に沸点の低いミリアムちゃんだけど、ちびっこの扱いは手慣れた物だと言わんばかりに、楓さんが手を叩いてそれを遮る。

 

「はいはい、じゃれるのは入浴時にでもしなさいな。当然おふたりが抜けることになりますから、フォーメーションも普段とは違う形になりますわ。特に鶴紗さんが抜けることになる前衛、AZには梨璃さんと結梨さんを回し、夢結様との三人体制で当たってもらいます」

 

 元々二人しかいない前衛から鶴紗ちゃんが抜けると、残る夢結の負担が大きくなることから中衛からは理屈は未だ不明ながら複数のスキルにより対応力の高い結梨ちゃん、そしてどうやっても消耗の避けられない二人へのフォローとして後衛から『カリスマ』持ちの梨璃ちゃんを。狙ったことではないのだろうが、ちょうどゆりゆりトリオが前を固める形になる。

 ちなみに結梨ちゃんの本来の配置は私と同じTZで、フルメンバーの場合ちょうど私たち四人で彼女を囲う……つまりはインペリアルゲフンゲフン。

 

「乱戦になるのは見えてるから、こりゃ後ろの守りが大事になるねぇ」

 

「いつも通り、走り回れってことだろ?」

 

「頼りにしてるよ、いつも通りにね」

 

 そんな風に隣に座る梅と握り拳をお互いに作ってコツンと合わせていると、普段から装備の安定しない私へのチェックを兼ねてか、楓さんが話し掛けてくる。

 

「ところで雪華様、今回のCHARMは……ヒヒイロカネの第3世代、トリグラフですのね」

 

 一応ライザーも並べてラックに置いてあるけど、先に目につくのはレギオン内どころか百合ヶ丘全体でも珍しいだろう、支給されたばかりのそれ。他社の最新型だろうと一発で見抜くとは、流石は楓さん。

 ──まあ実際は中等部時代の縁で、楓さんも同じ機種を持ってるとかいう話らしいけど。それってやっぱり、石川の葵ちゃん経由か。

 

「感覚的に馴染みそうだなぁってティルフィング共々前から申請してたんだけど、どうしても新しいのは時間かかるね。結局ティルフィングの方は却下されっぱだし、なら今度は第2世代な『クルッジ』でも狙うか……?」

 

「チェーンソー装備の機体とは、また壊れやすいもんを。というか実力はともかく、すぐCHARMを壊すような雪華様にわざわざ数の限られる新型を回すのは……って渋られてるだけじゃろ?」

 

「ミーさん、本当のことでも口にしない方がいい時もあるんですよ?」

 

 なんて現実で殴ってくるミリアムちゃんを嗜めるように、神琳ちゃんも会話に混ざってきたと思えばなんか言い方としてはこっちを追撃してくるのだから、雨嘉ちゃんも首を傾げている。

 

「それって逆に追い討ちしてないかな、神琳……?」

 

「多分、本人にフォローしてるつもりは微塵もないと思うよ、雨嘉ちゃん」

 

 無自覚の追撃も追加な三連撃につい真顔になっていると、向かい側に座る梨璃ちゃんたちの様子が視界に入る。

 

「お、お姉様と最前線……よろしくお願いします!」

 

「今更緊張するようなことでもないでしょう、梨璃。それに、なんの指示もないのに毎回勝手に突入してくるのは、いったいどこのシルトだったかしら?」

 

「あ、あれはお姉様の暴走を止めるためだったり、鶴紗ちゃんを助けるためだったりと言いますか……」

 

 そんなこともあったなぁ、と梨璃ちゃんたちが入学してからしばらくのそれを振り替えっていると、食いついてくるのはその頃はまだこの中にいなかった結梨ちゃん。

 

「なーんだ、梨璃たちもリリィらしくなかったの?」

 

「ま、結梨ちゃんもこないだ見ただろうけど、夢結が暴走したり誰かが危ないって時だけはね。今はもう可愛い可愛いシルトのおかげで大丈夫でしょ、夢結?」

 

 なんてからかうように夢結へ話を振ってみれば、返事は顔を赤くしながら。

 

「え、ええ……そういう意味では、まだ結梨の方が心配ですが」

 

「なら二人が結梨を守ってよ。結梨はその分二人を守ってやるから」

 

 そう胸を張りながら臆面もなく言える辺り、一度は途切れかけた“繋がり”も、今は無事彼女をここに引き留めてくれているようだ。なんて思っていると、この言い回しに覚えのありそうな夢結は気を取り直すと横目で梨璃ちゃんを見る。

 

「ふふ、いつか聞いたような台詞ね。いったい誰に似たのかしら?」

 

「えへへ、誰でしょう♪」

 

 なんか楽しそうだね君ら。それはそうと、気になったことは晴らしておこうと質問をば。

 

「ところで結梨ちゃんがたまに喋りの感じ変わるの、鶴紗ちゃん辺りの影響?」

 

「どうだろう? 確かに鶴紗とは同じ寮だったし、今も結構話す方かもしれないけど」

 

「不安定って意味なら、雪華様の方がよっぽど近いでしょ」

 

 バッサリと真っ向唐竹割りしないでよ鶴紗ちゃん。本当なだけに何も言い返せないのがひでえやと項垂れていると、梨璃ちゃんからの補足が入る。

 

「うーん。生まれたばっかりで言葉遣いとかよく分かってなかった頃の癖が、まだ抜けてないだけなんだと思うんですが」

 

「と、保護者さんは申しておりますけど」

 

「どう喋るかくらい本人の勝手でしょ」

 

 うん仰る通りで。でもそろそろデレてくれてもいいのよ鶴紗ちゃん? なんて口にしたら絶対反抗されるから言わないけど、神琳ちゃんとは違うんだよ、神琳ちゃんとは!

 

「はい……はい……分かりました」

 

 そんな風に過度の緊張もなくわちゃわちゃしていると、二水ちゃんがインカムを付けている方の耳を押さえて通信の向こうに一言二言返して切ると、皆へその内容を告げる。

 

「陽動部隊の日羽梨様からです! 予定通りの数は引き付けたので、突入タイミングはこちらに任せるとのことで!」

 

「分かったわ二水さん。皆、出撃準備を!」

 

 操縦士さんの方にも連絡は通っているようで、副隊長としての夢結の号令を聞きながら私たちを乗せたガンシップが降下を開始する。

 さあここからが正念場だ、反撃の手始めにヒュージにはこの〈江の島〉から出てってもらおうか!

 

◆◆◆

 

 降下地点より少し進み、目標の〈シーキャンドル〉とやらが見える位置まで進むと、流石にこちらに気付いたのか大小様々なヒュージが姿を現したのを二水ちゃんが『鷹の目』で確認するが、こちらの準備もまた──

 

「前方にヒュージ多数、総員配置に付きました──梅様!」

 

「おう! ド派手な花火を上げてやるから、しくじるなよ二人とも!」

 

「問題ない!」

「わしらにドーンと任せい!」

 

 突入班の二人は勿論、他の皆も口には出さずとも気合いは十分──後は幕を開けるだけだ。そうチラリと梨璃ちゃんの方を見やると、無言で頷かれる。

 

「それではこれより江の島解放作戦、最終フェイズを開始します! 一柳隊、出撃っ!!」

 

「そーら吹っ飛べ!」

 

 隊長である梨璃ちゃんの号令と共に梅のタンキエムが誇る高出力砲が火を吹き、砲撃のあとを前衛の三人から突入を開始する。

 いつもの二水ちゃんメモ曰くこれが集団戦の定石らしいけど、なるほど見映えもいい……前のレギオン(烏丸隊)じゃ割りと日常茶飯事だったのも、ちゃんと考えられてたんだなぁと。

 

 当然そうなれば大量のヒュージたちもこちらに向かってくるけど、乱戦に紛れ鶴紗ちゃんとミリアムちゃんを目標ポイントへ向かわせるのが今回の主目的なのだから、むしろそれで構わない。

 

「さあ、煉獄の底でヒュージとダンスと行こうか!」

 

 こうまで数が多いと狙いを付けるまでもないなと、夜中なのを抜きにしても大分おかしなテンションになりながら、分離状態なトリグラフの二挺拳銃とライザーの搭載火器による総攻撃で、次々と小型のヒュージを爆炎の中へと送っていく。

 しかしヒュージたちもただやられているだけにあらず、砂煙を突き抜けて、どこか見覚えのある蛇腹状の触腕が飛び出してくる。その狙う先は──

 

「うわわっ!?」

 

「……っと、大丈夫二水ちゃん?」

 

「な、なんとか!」

 

 横っ跳びに攻撃をかわした二水ちゃんと触腕の間に割り込みながらシールドでカチ上げると、炎の中よりその本体である以前アールヴヘイムから引き継いだ時のと同タイプな、ウィッパー種のギガント級ヒュージがこちらに向かって来ているのが見えた。

 

「恐らくこのヒュージがこちら側のリーダーです、皆さん攻撃を集中して下さい!」

 

「だってさ。合わせろ楓!」

 

「お茶の子さいさいでしてよ、梅様!」

 

 私の打ち上げた触腕が更に二人のCHARMによって弾かれた瞬間、脳裏に過る未来のビジョン──鶴紗ちゃんの『ファンタズム』!

 

「あとは任せた」

 

「任されました!」

 

 それによると、それでもしつこく抵抗する触腕の狙いは離脱しようとしていた鶴紗ちゃん。

 しかし今回のファンタズムはこちら側に残る全員に渡っていたようで、それを自身のレアスキル(テスタメント)で拡大していたのだろう神琳ちゃんがスキルを解き展開する浮遊ユニットにて防御を強めたマソレリックで触腕を受け止めている間に、鶴紗ちゃんは振り返らずに駆け抜けて交戦エリアからの離脱を完了する。ミリアムちゃんの姿は既に見えないし、後は送り狼を行かせないだけか。

 

 そして、辺りの雑魚は前で暴れる夢結たちが引き受けてくれているのだから──

 

「雨嘉さん!」

 

「わたしにも視えてるよ、神琳……!」

 

 ──あとは共有された未来に従い、当然のように横並びになった神琳ちゃんと雨嘉ちゃんを中心に、六人がかりの一斉射撃をギガント級へと叩き込む。

 

「どうよ!」

 

「命中。効いてる……?」

 

 いくら同タイプのヒュージとはいえ、あの時のレストア個体でなければ耐久はそれ程でもないのか、明確に怯んで動きを鈍らせていた。

 

「だったらこのまま斬り刻むまでよ!」

 

 それならこちらにとっては都合が良いと、トリグラフを連結させて左手にソードガンを射出し、右のシールドからグリップのみを覗かせた片割れと連結させることで両手に双刃の形を取り、シールドからレーザーをばらまきながら突撃する。

 

「雪華様、援護しますよ!」

 

「そのまま突っ切って下さいまし!」

 

 そんな私を迎撃しようとしたヒュージの触腕は二水ちゃんと楓さんの支援射撃に勢いを潰され、苦労なく二刀で弾けた。

 更に残る三人分の発砲音も背に突入し、両手のCHARMの片刃ずつをギガント級へ突き刺すとそのまま表面を駆け上がって傷を広げ、頭頂部を蹴り宙を舞うと、そこに『縮地』の勢いで飛び込んで来るのは見慣れた緑のツーサイドアップ。

 

「なあ雪華サマ、たまには梅も混ぜてくれよナ?」

 

「いいけど、この領域であたしに付いてこれるかな?」

 

 梅と空中ですれ違うと気取るように指を鳴らして、いつものように空中へ足場を展開。分離させたソードガンを放り投げて、それぞれシールド先端に連結しレーザーブレードをビームソードと同調させ光の翼のように伸ばし、トリグラフはブレードを出したまま二挺へ分離──

 

「さあ、世界を切り開け!」

 

「おっと、雪華サマの悪いクセが出てきたナ。巻き込まれないように、っと!」

 

 足場からギガント級を挟んだ向こう側に出した足場へと勢い任せに突撃しすれ違い様に斬り裂くのを繰り返す私と、それとは対称的に近くの足場へ次々乗り移りながら射撃を加える梅。

 力と技、斬撃と射撃によるスピードの共演に翻弄されて反撃の狙いも定まらぬまま直りきらない傷を増やすギガント級。そんな隙を見逃さないのがうちの司令塔たちなのだから──

 

「一気に行きますわよ!」

 

─レジスタ─

─天の秤目─

─テスタメント─

 

 テスタメントにより共有される視力強化のスキル(天の秤目)の力で私と梅の連撃の合間に刺さる的確な援護射撃がヒュージに録な抵抗を許さず、出力を引き上げる『レジスタ』によりそれらの威力も底上げされているのだから、これでほぼほぼチェック。

 

「そろそろトドメ行けるだろ、梨璃っ!」

 

「はい、梅様!」

 

 タンキエムをブレードモードに切り替えながら、足場から飛び降りた梅がすれ違い様ギガント級の触腕を一本根本から断ち切ると、そのまま叫ぶのは前線のヒュージを片付け姉妹三人で駆け付ける我らがリーダーの名前。

 それに頷いて応える梨璃ちゃんの懐からは、既にノインヴェルト戦術用の特殊弾が取り出されていた。

 

「ノインヴェルト戦術、開始します──お姉様!」

 

 日々の訓練の賜物か、最初の頃の不安な感じはもうしない手付きで梨璃ちゃんのグングニルの弾倉へ素早く装填されたそれは、マギを込められると迷いなく夢結のブリューナクへと撃ち出される。

 

「ふふ、随分と頼れるようになったわね梨璃。次はあなたの番よ、結梨!」

 

「もらったよ、夢結! えっと……雪華でいいや、これあげる!」

 

「いいやって何よいいやって。あたしゃお姉様よっとと」

 

 そこから夢結、結梨ちゃん、私と流れるようにパスが回され、再度連結させたトリグラフのエネルギーブレードを展開し、順調に大きくなってきたマギスフィアを受け止める。

 

「まあいいや。お次は二水ちゃん、君に決めた!」

 

「は、はい!」

 

 トリグラフをグルっと回しつつ、ヒュージを挟んで反対側にいる二水ちゃんへ向けて、私色(深紅)に染め上げたマギスフィアを投げ飛ばす。

 

「おっと悪いね。私はもう持ってないんだ、よっ!」

 

 そこへ一拍遅れてヒュージの触腕が迫るが、右のシールドで防御フィールドを展開し弾くように反らしながらその根本へ左のシールドから連結したままだったソードライフルを射出し、袖口からのアンカーで叩き付けるように振り回して更に触腕を一本奪い取ると、追撃にマルチランチャーから四連で徹甲榴弾のプレゼント。

 

「受け取りました! か、楓さん。お願いします!」

 

「任せなさいな、行きますわよ神琳さん!」

 

「ええ。そろそろ大詰めですよ、雨嘉さん!」

 

「分かってるよ、神琳……! ラスト……梅様っ!」

 

 そうして私がギガント級の気を引いている間に残るパス回しもスムーズに終わり、最後にマギスフィアは雨嘉ちゃんから天高く飛び上がった梅の元へ打ち上げられる。

 

「皆のマギを感じる……お前もこれで終わりだナ!」

 

 天空から大地へと放たれるフィニッシュショット──それがトドメとなり、体のど真ん中を撃ち抜かれたギガント級が崩れ落ちて派手に爆発するのを背景に梅が私の前へスタッと降りてくると、こちらに振り向いて満足気にサムズアップしてくるなら、まあこちらも同じように返しておこうか。

 

「さて、粗方片付いたとは思うけど……二水ちゃん?」

 

 分離させたトリグラフでガンプレイを決めながら腰のアーマーに引っ掛け、ひとまずの状況確認を求めると二水ちゃんの目がいつものように赤く染まっているのを眺める。

 ──個人的な話だけど、なんか鷹の目使ってる時の目の色、結構好きなんだよね。私の目の(あか)さとも違う色合いがまた。

 

「はい……あ、鶴紗さんがミリアムさんを担いで出てきました!」

 

『こちら鶴紗。ケイブはミリアムが近くのヒュージごとふっ飛ばしたから、とりあえず成功でいいと思う』

 

『とりあえずとはなんじゃとりあえずとは! あと、もっとこう功労者に相応しい持ち方ってもんがじゃな』

 

 ふむ、これでこっちの仕事は終わりかな。先程遠方にもノインヴェルトのそれだろう光もいくつか見えたことだし、陽動部隊に誘き出された方のギガント級も無事討伐されたのだろう。

 ならば残党処理は汐里ちゃんたち水夕会や二水ちゃんに通信を飛ばした日羽梨のいるサングリーズル、そして天下のアールヴヘイムといった百合ヶ丘の精鋭レギオンがいるのだから、わざわざ仕事を終えたうちの隊が出張ることもなかろうて。

 

「ええい、というか今はフェイズトランセンデンスを使ってすぐでも少しなら歩くくらいは出来る! そろそろ降ろさんか鶴紗ぁー!」

 

「お守りは任せろって言ったでしょ? 気にしないで」

 

「うわー、俵様担ぎ……」

 

 何故かやけに優しげな鶴紗ちゃんの上で暴れるミリアムちゃんを眺める梨璃ちゃんは、なんとも言えない表情をしている。

 

「俵、ってお米入れるやつだっけ。ミリアム、喰っちまわれちゃうの?」

 

「別にそういう意味ではないのだけれど……あと、その言い方が亜羅椰さん辺りの影響なら、やめておいた方がいいわ」

 

 それに謎な反応をする結梨ちゃんや、やんわりと訂正する夢結といいもう突入してた組も談笑してる余裕があるくらいだし、今回も無事終わって何よりかな。

 

「あ、はい。こちら一柳隊……」

 

「ふーみん、どう?」

 

「付近の戦闘も終わりが近いようですが、我々はこのまま周囲の警戒をしつつ待機せよ、と」

 

 既に大きな群れはなくとも、どこかにまだヒュージが隠れてる可能性を考えるとそうなるか。今しばらくはCHARMを起動させたままでいる必要がありそうだ。

 

◆◆◆

 

 とはいえ身構えている時には厄介事もそうは来ない物なのか、各部隊のサーチャーが異常無しを伝え、作戦の成功が伝えられるまでの数十分間、特に問題は起きなかったんだけど。

 

「ふぅ、案外こんなもんか」

 

「お疲れ様じゃな」

 

 なんてアーマーからケースに戻してCHARMを背負っていると、休憩を終えて起き上がるミリアムちゃんが話し掛けてくる。

 

「にしてもネストがひとつなくなるだけで、こうも派手に戦力を動かせるとはのう。その分、わしらアーセナルはここからが本番なんじゃが」

 

「ま、だろうねぇ」

 

 聞くところによると、アールヴヘイムの方は新潟外征の後にフルメンテが必要となっていた各々の専用機や、初代組は予備にとはいえグラムまで持ち出した総力戦だったとか。だから、こないだ見たアーセナル二人も忙しそうにしてたと。

 そこまでして陽動に過ぎないのだからこの作戦の本気具合が伺い知れるし、それ故その後の整備が修羅場るのも、まあコラテラルコラテラル。

 

「あ、日羽梨だ」

 

「えっ、あ、ちょ……!」

 

 さて、なんて話をしていたらサングリーズル一行を見掛けた結梨ちゃんが二水ちゃんの手を掴んで駆けていくのと、それを見守る夢結の横へスルリと寄ってくる梅の姿が見える。

 

「で、あそこデートスポットとしてはいい感じだって聞くゾ?」

 

「……そ、そうらしいわね」

 

 梅が指差す塔みたいな建物、シーキャンドルはまだ電源が生きていたのか突入前からよく見えるくらい青白いライトで輝いていて、夜中だってのを抜きにしても結構なムードは出ているけど、夢結の歯切れの悪さは、この状況で副隊長が隊長を連れて離れていいのか。という問題かな? なら助け船くらい出してあげますかね。

 

「ま、他のレギオンも段々集まってるし、引き継ぎくらいあたしがやっとくからさ、たまには梨璃ちゃん連れて息抜きに行って来なさいな」

 

「雪華様、ですが……いえ、そうですね」

 

 そこで夢結が素直に頷いてくれたのは、梨璃ちゃんの期待に溢れた表情と遠目に天葉たちアールヴヘイムもやってきたからだろうか? まあ、変に意地張ったら余計弄られそうな面子と言われれば、否定はしないけど。

 

「行きましょう、梨璃」

 

「はい、お姉様♪」

 

 ともかく、ここしばらく苦労続きだった梨璃ちゃんにはこれくらいの役得は許されるだろうと、二人がシーキャンドルへ向かうのを見送れば、空いた梅の隣には鶴紗ちゃんが。

 

「梅様は、いいんですか?」

 

「ん? あー、なんていうかこういう時自分からっていうのは厚かましい、って話したのは雪華サマにか。それに、皆が幸せならそれで梅も幸せだからナ」

 

「……皆が、って言うんならその中に自分も入れろって、わたしはよく言われますけど」

 

 ほむ、これは梅も一本取られたかな。『皆』から自分を除外した時点で、その皆がどう思うかってところが抜け落ちてしまっている……というのは、本当によくある話。

 そういうやつ程、結局は自分だけでなく周りを巻き込んで不幸になるだけ──

 

「ま、あたしに言えたことでもないけどさ」

 

「なんの話です?」

 

「どうせまたいつもの先輩面でしょ」

 

 なんて言われる通りの後方先輩面をしていたら、天葉と依奈にはなんとも言えない視線を向けられてる訳で。そろそろ遠慮の欠片もなくなってきたね、君たち?

 

「その通りっちゃそうだけど……一応歳上よ、あたし?」

 

「一応って言っちゃってる時点で、語るに落ちてるでしょうに」

 

 うんまあ、似合ってない背伸びと言われたら何も否定は出来ないけども。それでも鶴紗ちゃんに押し付けるような形になっちゃった以上、どうしてもそういう目線になるんだから仕方ない。

 

「それはそうと、今ちょっと時間いいです?」

 

「ん? まあ撤収まで暇っちゃそうだけど」

 

 夢結にはああ言ったけど、正直やることは現状維持程度だし、サングリーズルやアールヴヘイムもいるのなら私一人くらいどうだっていい。ということで天葉の提案を受ければ、ちょっとした相談が──

 

◆◆◆

 

 轟音、そして爆発音と誰かさんの絶叫を耳当て越しに聞いて他人事のように眺めていると、黒煙の中から雨嘉ちゃんが目を閉じ手で口と鼻を庇いながら抜け出してくる。

 

「けほっ、ぇほ……うぅ……」

 

「これは、失敗なのでしょうか?」

 

 何事もなく百合ヶ丘に戻って数日後、なんか百由が急に実験するって言うんで朝っぱらから浜辺までついていったら、説明も程々に雨嘉ちゃんのアステリオンへ何かしらの強化パーツを付けてな射撃テストの結果は、的があった高台の崩壊とそのパーツの爆発四散という結果で、雨嘉ちゃんについてきた神琳ちゃんがなんとも言えない反応をしているのを横目に耳当てを外しながら、持参してきてくれていたミリアムちゃんへ返す。

 

「うへぇ、相変わらずめちゃくちゃやってんねー」

 

「じゃろ? まあそれ故退屈しないのも事実なんじゃが。にしてもなんちゅう威力なんじゃ、一発でパーツがダメになるのはなんか本末転倒な気もするが」

 

「うーん? これでもテストだっていうんで出力は相当絞ったはずなんだけど……おっかしいわね~?」

 

 曰く想定している実戦用出力の1/10でやってこれらしいけど、いつぞやの霊奈さんとやったフル改造状態も結局ノインヴェルト一回でおじゃんだったことから、雨嘉ちゃんの様子は少し不安が強い。

 ……まあ、前の件に関しては一柳隊(ウチ)が無理な運用したからとしても、一割ですらダメになる欠陥品を掴まされてこれでは、付き添いの神琳ちゃんもシルトのミリアムちゃんも呆れた視線を送るしかない訳だけど。

 

「いやぁ、なんかそんな風に見詰められると恥ずいわねー」

 

「自戒しろって訴えでしょうが、これは」

 

「まったく、困ったお姉様だぞい」

 

 先日のこともあってか、百由のことを話す時にわりと嬉しそうなミリアムちゃんはともかく、以前の魔改造のことを思い出した以上、ちょっと確認はしとくか。

 

「百由、もしかしたらだけど、これこないだのノインヴェルト狙撃再現しようとしてない?」

 

「少しも意識してないって言ったら嘘になっちゃいますけど、あの時のカスタムはその場のノリで色々付け足した結果だし、代わりかって言うとまた違うんですよねー」

 

 あ、違うんだ。まあきっかけ程度にはなったのかもしれないけど、時期的には暖めてたアイディアのひとつ程度かね?

 

「で、あんなめちゃくちゃを通した雨嘉さんなら、出力調整と耐久試験のついでに命中もさせてくれないかしらーって」

 

「いや、普通全部まとめてやるようなもんではなかろうに……正しい数値も分からずに混ぜたら、どれも半端な結果になるだけじゃろ」

 

 そのままミリアムちゃんが同じ技術屋として色々文句を付けてるのを聞き流しながら、百由は雨嘉ちゃんたちへ今回の実験の主役、『マギパーティクルカノン』というアタッチメントの説明を。

 並の高出力砲を余裕で凌駕する威力と射程を、距離による減衰をさせないまま通常のCHARMのサイズに留めて実現しようというのだから色々無理はあるだろうし、『天の秤目』抜きじゃまともに照準が定まらん暴れ馬になったっていうのも、まあ当然か。

 

「にしてもパーティクルカノン──荷電粒子砲ねぇ、まさか現実にお目にかかれる日が来るとは」

 

「なんじゃ、またいつもの趣味関連かのう?」

 

「まあねー。花形も花形な超高出力ビーム兵器、これが嫌いなメカ好きがいますかっての!」

 

 しかし生憎と私のレアスキルは天の秤目ではないので、自分の手だけでちゃんと使えるようになるには相当に技術の進歩を待たなければいけないんだけど、数年以内に到達してくれなければこっちが表舞台を去ってしまうのは、短命なリリィの悲しき定めか。

 

「『約束の領域』で借りる……いや、それするくらいなら普通に撃ってもらった方が早いし、んー」

 

 なんて頭を悩ませていると、いつの間にか人数が減ってるなと気付く。

 

「あれ、百由と神琳ちゃんは?」

 

「百由様なら言うだけ言って満足したのか、そそくさと残骸を回収して戻って行ったぞい。相変わらず落ち着きのないお姉様じゃな」

 

「えと、神琳はちょっと確かめたいことがあるって……」

 

 ふむ、百由はまあ早速データのチェックとして、神琳ちゃんはこんなところで何を確かめるのやら。

 

「まあ、今日は午後に哨戒任務も入っておるし、神琳も程々で切り上げるじゃろ」

 

「それもそっか、じゃあ先に戻っとく?」

 

 確認すれば雨嘉ちゃんもコクコクと頷いてくれたのなら、連れ立って帰るとしましょうか。

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